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厚生労働省記者発表
平成13年10月25日

「労働分野における人権救済制度検討会議」の開催について

 平成13年5月25日、法務省の人権擁護推進審議会において、「人権救済制度の在り方について」の答申がなされた。これは、我が国における人権侵害の実情や救済に関わる制度の状況を踏まえ、我が国にふさわしい人権救済制度の整備を提言したものである。
 厚生労働省においては、従来から労働基準法や雇用機会均等法の施行等を通じて労働分野における差別禁止等について中心的な役割を果たしてきたが、上記答申に基づき新たに制度を設けるなかで、厚生労働省がいかなる役割を果たすべきか等について検討する必要がある。
 このため、厚生労働大臣が学識経験者及び労使関係者の参集を求め、労働分野における人権救済制度の在り方について検討するために労働分野における人権救済制度検討会議を開催することとした(別紙1 開催要領別紙2 参集者名簿 参照)。
 なお第1回会合は10月30日(火)に開催することとしている(ただし検討会議については非公開とする予定である。)。


担当
政策統括官付労政担当参事官室
労政担当参事官 岡崎 淳一
調査官 清川 啓三
参事官補佐 鈴木 英二郎
電話 03(5253)1111(内線7748)
   03(3502)6734 (直通)

(別紙1)
労働分野における人権救済制度検討会議開催要綱

1 趣旨

 平成13年5月25日、人権擁護推進審議会において、「人権救済制度の在り方について」の答申がなされた。これは、我が国における人権侵害の実情や救済に関わる制度の状況を踏まえ、我が国にふさわしい人権救済制度の整備を提言したものである。
 厚生労働省においては、従来から労働基準法や雇用機会均等法の施行等を通じて労働分野における差別禁止等について中心的な役割を果たしてきたが、上記答申に基づき新たに制度を設けるなかで、厚生労働省がいかなる役割を果たすべきか等について検討する必要がある。
 このため、厚生労働大臣が学識経験者及び労使関係者の参集を求め、労働分野における人権救済制度の在り方についての検討会議を開催するものである。

2 会議の検討事項

 人権擁護推進審議会答申を念頭に労働分野における人権救済制度の在り方及びこれに関連する諸問題について

3 会議の運営

(1) 会議は、厚生労働大臣が学識経験者及び労使関係者の参集を求めて、平成13年10月から開催する。

(2) 座長は、学識経験者の中から、互選により選出する。

(3) 会議の庶務は、厚生労働省政策統括官付労政担当参事官室において行う。

(4) 法務省人権擁護局担当者が、オブザーバーとして会議に出席する。


(別紙2)
労働分野における人権救済制度検討会議参集者名簿

(五十音順、敬称略)

渥美 雅子 弁護士
海老原 正 全国商工会連合会指導部長
奥山 明良 成城大学法学部教授
片岡 千鶴子 サービス連合男女平等局長
小山 正樹 JAM副書記長
坪田 秀治 日本商工会議所産業政策部長
中嶋 士元也 上智大学法学部教授
根本 良作 日本労働組合総連合会組織調整局長
長谷川 裕子 日本労働組合総連合会労働法制局長
堀野 紀 弁護士
矢野 弘典 日本経営者団体連盟常務理事
山極 清子 株式会社資生堂人事本部人事部課長(ジェンダーフリー推進事務局)
山崎 克也 全国中小企業団体中央会事務局長
吉宮 聰悟 日本労働組合総連合会総合男女平等局長
渡辺 章 筑波大学社会科学系教授


(参考)
人権救済制度の在り方について(答申)
(抄、労働分野で指摘されている部分)

平成13年5月25日
人権擁護推進審議会

第2 我が国における人権侵害の現状と被害者救済制度の実情

1 人権侵害の現状

○ 差別の関係では,女性・高齢者・障害者・同和関係者・アイヌの人々・外国人・HIV感染者・同性愛者等に対する雇用における差別的取扱い,ハンセン病患者・外国人等に対する商品・サービス・施設の提供等における差別的取扱い,同和関係者・アイヌの人々等に対する結婚・交際における差別,セクシュアルハラスメント,アイヌの人々・外国人・同性愛者等に対する嫌がらせ,同和関係者・外国人・同性愛者等に関する差別表現等の問題がある。

2 被害者救済制度の実情

 法務省の人権擁護機関は,広く人権侵害一般を対象とした人権相談や人権侵犯事件の調査処理を通じて,人権侵害の被害者の救済に一定の役割を果たしているが,現状においては救済の実効性に限界がある。また,被害者の救済に関しては,最終的な紛争解決手段としての裁判制度のほか,行政機関や民間団体等による各種の裁判外紛争処理制度(ADR)等が用意されているが,これらは,実効的な救済という観点からは,それぞれ制約や限界を有している。

(2) 司法的救済と各種裁判外紛争処理制度(ADR)等

イ 各種裁判外紛争処理制度(ADR)等
 労働問題,公害,児童虐待等の分野においては,最終的な紛争解決手段である裁判制度を補完する裁判外紛争処理制度(ADR)や被害者保護のための特別の仕組みが設けられており,また,様々な分野で,公私の機関・団体による被害者保護の取組が行われている。これらは,それぞれに被害者救済の機能を果たしているが,実効性の観点から限界や問題点を指摘されているものもあり,改善のための取組も行われている。また,これらの制度等は,そもそも総合的な人権救済の視点に立って設置されるなどしたものではないため,救済が必要な分野をすべてカバーしているわけではない。

第3 人権救済制度の果たすべき役割

1 人権救済制度の位置付け

 人権侵害の現状や被害者救済制度の実情,特に,最終的な紛争解決手段である裁判制度における一定の制約などを踏まえると,今日の幅広い人権救済の要請に応えるため,人権擁護行政の分野において,簡易性,柔軟性,機動性等の行政活動の特色をいかした人権救済制度を整備していく必要がある。すなわち,新たな人権救済制度は,被害者の視点から,簡易・迅速で利用しやすく,柔軟な救済を可能とする裁判外紛争処理の手法を中心として,最終的な紛争解決手段である司法的救済を補完し,従来くみ上げられなかったニーズに応える一般的な救済制度として位置付けられるべきである。
 既に個別的な行政上の救済制度が設けられている分野,例えば,女性の雇用差別に関する都道府県労働局(雇用均等室)・機会均等調停委員会や児童虐待に関する児童相談所など,被害者の救済にかかわる専門の機関が置かれている分野においては,当該機関による救済を優先し,人権救済機関は,当該機関との連携の中で必要な協力を行うとともに,当該機関による解決が困難な一定の事案については,人権救済機関として積極的な対応を行うなど,適正な役割分担を図るべきである。

第4 各人権課題における必要な救済措置

1 差別

 人種,信条,性別,社会的身分,門地,障害,疾病,性的指向等を理由とする,社会生活における差別的取扱い等については,調停,仲裁,勧告・公表,訴訟援助等の手法により,積極的救済を図るべきである。差別表現については,その内容,程度,態様等に応じた適切な救済を図るべきである。

(1) 人権侵害の現状と救済の実情

(1) 先に指摘したとおり,女性・高齢者・障害者・同和関係者・アイヌの人々・外国人・HIV感染者・同性愛者等に対する雇用における差別的取扱い,ハンセン病患者・外国人等に対する商品・サービス・施設の提供等における差別的取扱い,同和関係者・アイヌの人々等に対する結婚・交際における差別,セクシュアルハラスメント,アイヌの人々・外国人・同性愛者等に対する嫌がらせ,同和関係者・外国人・同性愛者等に関する差別表現等の問題がある。
(2) これらのうち差別的取扱いに関しては,雇用や公共的な各種事業等の分野ごとに禁止規定が設けられているが,社会的身分に基づく募集・採用差別や,一般業種に関する商品・サービス・施設の提供等における差別的取扱いなど,私人間における差別に関しては明示的に禁止されていない領域もあり,違法な差別の範囲が必ずしも明確ではない。
(3) そのほか,これらの差別に関する司法的救済については,一般に,異なる取扱いの差別性,不合理性を立証するための証拠収集が被害者にとって重い負担となっており,また,特に雇用等の継続的関係における相手方との力関係や人間関係悪化等への懸念もあり,被害者が訴えにくい状況がある。
(4) 雇用における差別に関しては,厚生労働省都道府県労働局長による紛争解決援助や機会均等調停委員会による調停,募集等における個人情報の収集制限に関する厚生労働大臣(公共職業安定所長)の指導,助言,改善命令等の行政上の取組がなされている。
(2) 必要な救済措置等
ア 差別的取扱い等
(ア) 救済対象
 これらのうち差別的取扱いに関しては,一般に積極的救済が必要であるが,まず,その対象とすべき差別的取扱いの範囲を明確にする必要がある。
(1) 積極的救済を行うべき差別的取扱いの範囲は,上記の問題状況や,差別を禁止する憲法14条1項,人種差別撤廃条約(特に1条,5条)の趣旨等に照らし,人種・皮膚の色・民族的又は種族的出身,信条,性別,社会的身分,門地,障害,疾病,性的指向等を理由とする,社会生活(公権力との関係に係るもののほか,雇用,商品・サービス・施設の提供,教育の領域における私人間の関係に係るものを含む。)における差別的取扱いを基本とすべきである。
(2) 一定の年齢以上であることを理由とする差別の問題については,雇用の場面では定年制等の年齢を基準とする雇用慣行が存在し,許されない差別の範囲が必ずしも明確でないことから,これを積極的救済の対象とすることは困難である。一方,住宅の賃貸等の場面において人権擁護上看過し得ない事案があれば,個別に事案に応じた救済を図っていくことが相当である。
(4) セクシュアルハラスメントや人種,民族,社会的身分等にかかわる嫌がらせも,差別的取扱いと同様,積極的救済の対象とすべきである。
(イ) 救済手法
(1) 積極的救済の対象とすべき上記差別的取扱い等に関しては,当事者間の合意を基本とする調停や仲裁のほか,勧告・公表,さらには,これらが奏功しない場合の訴訟援助の手法が有効と考えられる。
(2) 差別の事後的救済には限界があることから,差別的取扱いを内容とする営業方針が公表されるなど,将来,不特定又は多数の者に対して差別的取扱いが行われる明白な危険がある場合に,勧告・公表までの手法で解決をみないときは,具体的な被害発生後の被害者による訴訟提起を待つことなく,人権救済機関の積極的な関与により当該差別的取扱いを実効的に防止する仕組みを導入すべきであり,そのための手法を検討する必要がある。

第5 救済手法の整備

 第4において各人権課題との関係でみたとおり,人権救済制度における救済手法を大幅に拡充することが必要であり,簡易な救済のための相談やあっせん,指導等に加え,積極的救済のための調停,仲裁,勧告・公表,訴訟援助等の手法の整備を図る必要がある。


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