報道発表資料  トピックス  厚生労働省ホームページ
厚生労働省発表
平成13年7月26日
担当 厚生労働省労働基準局賃金時間課
 課長 石井 淳子
 課長補佐 須田 俊孝
 電話  03-5253-1111(内線5527)
      03-3502-6757(夜間直通)


平成13年度目安額は0.68%アップ

−「平成13年度地域別最低賃金額改定の目安について」の
中央最低賃金審議会の答申について−


 中央最低賃金審議会(会長 神代和俊 放送大学教授)は、本年5月11日、厚生労働大臣から「平成13年度地域別最低賃金額改定の目安について」の諮問を受け、目安に関する小委員会を設けて審議を重ねてきたが、本日、別添のとおり厚生労働大臣に対して答申を行った。
 答申の内容は、平成13年度地域別最低賃金額改定の目安額については、意見の一致をみるに至らず、昨年度同様、目安に関する公益委員見解を地方最低賃金審議会に提示するというものである。
 公益委員見解として示された平成13年度地域別最低賃金額改定の目安は、全国の都道府県をA、B、C、Dの4つのランクに分け、引上げ額をAランク日額38円、Bランク日額36円、Cランク日額35円、Dランク日額33円とするもので、引上げ率は各ランクそれぞれ0.68%(平成12年度0.8%)となっている。
 今後、各地方最低賃金審議会は、この公益委員見解を参考にしつつ地域における賃金実態調査、参考人の意見等も踏まえ審議を行い、その審議結果に基づき都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなっている(したがって、参考4の現行最低賃金額に公益委員見解額を加算したものが、必ずしも改定最低賃金額となるものではない。)。



別添

平成13年7月26日
厚生労働大臣 坂口 力 殿
中央最低賃金審議会
会長 神代 和俊

平成13年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)


 平成13年5月11日に諮問のあった平成13年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。



1 平成13年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。

2 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。

3 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。



別紙1

平成13年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解



 (1) 平成13年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。

平成13年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安

ランク 都道府県 金額
東京、神奈川、大阪 38円
栃木、埼玉、千葉、長野、静岡、愛知、滋賀、京都、兵庫、広島 36円
北海道、宮城、福島、茨城、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、岐阜、三重、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡 35円
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 33円

 (2) 賃金の大部分が時間によって定められている者について適用する最低賃金の時間額の算定方式については、従来どおりとする。


 (1) 目安小委員会は、本年度の目安の審議に当たっては、平成2年5月15日に了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、特に、地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。
 目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に際し、上記資料を活用されることを希望する。

 (2) 目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。



別紙2

中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告

平成13年7月19日


1 はじめに

 平成13年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。

2 労働者側見解

 労働者側委員は、産業構造や就業構造の転換に伴って、失業や不安定な雇用労働者の増加など、雇用不安、生活不安が蔓延しつつあるという考え方を表明した。厳しい経営環境の中、使用者が企業の支払能力を重要視することに一定の理解はできるが、最低賃金の適用を受ける労働者にとっては、生活を守るという視点が大変重要であり、デフレスパイラルに落ち込んでいる日本経済を回復基調に乗せるためにも、最低賃金制度の持っている生活の底割れを防ぐという機能が重要となってきているとの考え方を主張した。
 また、一般労働者の賃金水準と最低賃金の比率は横ばいで推移し、先進国の中でかなり低い比率になっており、今の最低賃金では健康で文化的な生活ができる水準ではないと考えるため、引上げ幅だけでなく最低賃金の水準そのものについて漸次改善していくことが必要である旨主張した。
 さらに、経済のグローバル化が進展し、産業構造や労働市場・雇用構造が急速に変化する中で、非正規型労働者が急速に増加し、労働者間の賃金格差の拡大が見込まれる中にあって、最低賃金の持つ社会的な役割や機能の重要性が高まっていること、及び影響率は、昨年度は一昨年度と同様の数字となっており低下傾向にあり、賃金構造基本統計調査特別集計結果によれば、影響率はわずか1.1%と最低賃金の存在感がほとんど感じられないものになっており、賃金改善に結びつく実効力のある最低賃金にすべきと主張した。
 以上のような現状を改革、打開するためにも、最低賃金の対象労働者のおかれている現状にも十分配慮し、公労使の三者が難しい環境にあっても、今年度の目安を決定すべきである。特に結果の不平等を緩和するナショナル・ミニマムとしての地域別最低賃金の役割を十分果たすような対応をすべきとの観点から、今年の賃上げについては、連合、日経連双方の調査ともおおむね昨年並みの賃金引上げが行われた状況を十分勘案して、昨年並みの最低賃金の引上げを図ることが必要であると最後まで強く主張した。

3 使用者側見解

 使用者側委員は、昨年に比べて経済の全体の状況は明らかに悪化しており、今年こそ賃金改定状況調査の第4表の数字のみによるのではなく、全体的な状況を踏まえた目安を決定すべきであるという考えを表明した。
 また、3年連続物価が下落し、政府も初めてデフレと宣言するような状況の中では、基本的には最低賃金を上げる必要性はなく、倒産が増加するなど雇用は厳しい状況が続き、失業率も史上最悪となっているが、今後痛みを伴う構造改革、不良債権処理が進むと、状況は更に悪化する懸念があり、このような状況の中で今年の目安を判断していかなければならない旨主張した。
 加えて、賃金交渉について、日経連、連合どちらの調査でも、史上最低であった昨年の結果を下回り、大変厳しい過去最低の水準で推移したこと、企業内最低賃金や初任給の引上げ率はほぼゼロに近いことなどを参考にすべきであり、地域別最低賃金の引上げ割合に比べ、高卒初任給や消費者物価の上昇度合いはかなり低い割合であり、法定最低賃金を今年も改定する必要があるか疑問がある旨主張した。
 さらに、中小企業の経営状況は大変厳しく、全国中小企業団体中央会の中小企業労働事情実態調査によれば、4年連続4割を超える水準で賃上げを凍結した事業所が出ている。そうしたことから、最低賃金の引上げはよほど慎重にすべきであると主張した。
 以上のような状況から、今年の目安の審議では、賃金改定状況調査の第4表を尊重することはやぶさかではないが、経済社会情勢を判断して、目安をどうすべきかについて慎重な議論をしていかなければならないと最後まで強く主張した。

4 意見の不一致

 本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。

5 公益委員見解及びこれに対する労使の意見

 公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、極めて厳しい経済状況における小規模企業の経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
 なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。



(以下、別紙1と同じ。)



(参考1)

最低賃金制度と地域別最低賃金額の改定に係る目安制度の概要


1 最低賃金制度とは

 最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなけれはならないとする制度である。
 仮に最低賃金額より低い賃金を労使合意の上で定めても、それは法律により無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされる。

2 最低賃金の種類

 最低賃金には、産業に関わりなく地域内のすべての労働者に適用される都道府県別の「地域別最低賃金」と、例えば電気機械器具製造業、自動車小売業など特定の産業に働く労働者に適用される「産業別最低賃金」の二種類がある。

3 最低賃金の決定と最低賃金審議会

 最低賃金は、最低賃金審議会において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分参考にしながら審議が行われ、

(1)労働者の生計費
(2)類似の労働者の賃金
(3)通常の事業の賃金支払能力

の3要素を考慮して決定又は改定されることとなっている。
 最低賃金審議会は、厚生労働省に中央最低賃金審議会が、都道府県労働局に地方最低賃金審議会が置かれており、都道府県別に適用される地域別最低賃金は、各地方最低賃金審議会の審議を経て、決定又は改定することとなっている。

4 地域別最低賃金にかかる目安制度の概要

 昭和53年から、地域別最低賃金の全国的整合性を図るため、中央最低賃金審議会が、毎年、地域別最低賃金額改定の「目安」を作成し、地方最低賃金審議会へ提示している。
 目安制度の概要は、次のとおりとなっている。

(1)全国の都道府県を4ランク(A,B,C,D)に分けること
(2)引上げは、各ランクごとの引上げ額で示すこと
(3)目安は、地方最低賃金審議会の審議の参考として示すものであって、これを拘束するものでないこと

 ※ 平成12年3月24日に了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会の検討状況の中間的な取りまとめ」により、それまでのランク区分と都道府県の経済実態とに乖離がみられた4県(長野、広島、茨城、福島)について、平成12年度から新しいランク区分が適用されることとなった。



(参考2)

地域別最低賃金額改定の目安の推移

(単位:円)
  平2年度 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
引上げ率
(%)
4.8 4.9 4.2 3.1 2.4 2.3 2.1 2.2 1.8 0.9 0.8 0.68
Aランク 197 213 192 148 118 116 108 116 97 49 44 38
Bランク 193 206 185 143 114 110 103 110 92 47 42 36
Cランク 185 196 176 135 108 106 99 106 89 45 40 35
Dランク 173 185 167 128 102 100 93 100 84 43 38 33


(参考3)

全国・ランク別加重平均額と引上げ率の推移

(単位:円、%)
年度

ランク
平成

年度
10 11 12
全国 3,928
(4.03)
4,117
(4.81)
4,319
(4.91)
4,501
(4.21)
4,644
(3.11)
4,757
(2.43)
4,866
(2.29)
4,965
(2.03)
5,075
(2.22)
5,167
(1.81)
5,213
(0.89)
5,256
(0.82)
Aランク 4,154
(3.98)
4,357
(4.89)
4,570
(4.89)
4,762
(4.20)
4,910
(3.11)
5,028
(2.40)
5,144
(2.31)
5,252
(2.10)
5,368
(2.21)
5,465
(1.81)
5,514
(0.90)
5,559
(0.82)
Bランク 4,014
(4.04)
4,208
(4.83)
4,415
(4.92)
4,601
(4.21)
4,746
(3.15)
4,861
(2.42)
4,938
( − )
5,041
(2.09)
5,152
(2.20)
5,245
(1.81)
5,292
(0.90)
5,319
( − )
Cランク 3,808
(4.10)
3,992
(4.83)
4,190
(4.96)
4,367
(4.22)
4,503
(3.11)
4,611
(2.40)
4,716
( − )
4,817
(2.14)
4,924
(2.22)
5,013
(1.81)
5,059
(0.92)
5,085
( − )
Dランク 3,589
(4.06)
3,762
(4.82)
3,948
(4.94)
4,117
(4.28)
4,247
(3.16)
4,350
(2.43)
4,443
( − )
4,539
(2.16)
4,642
(2.27)
4,727
(1.83)
4,770
(0.91)
4,807
( − )
(注)1 ( )内は引上げ率を示す。
2 金額は、適用労働者数による加重平均日額である。平成8年度以降の加重平均日額及び引上げ率は、平成8年事業所・企業統計調査に基づく適用労働者数によって算出した。
3 平成7年度及び平成12年度に各都道府県の各ランクへの振分けの見直しが行われたため、当該ランクに含まれる道府県に変更のあったB、C及びDランクについては、平成7年度及び平成12年度の引上げ率は算出していない。


(参考4)

平成12年度地域別最低賃金額

(単位:円)
目安が適用
されるランク
最低賃金額 発効日
日額 時間額
Aランク 大阪 5,560 699 平成12年9月30日
東京 5,559 703 平成12年10月1日
神奈川 5,558 701 平成12年10月1日
Bランク 愛知 5,411 677 平成12年10月1日
埼玉 5,372 673 平成12年10月1日
京都 5,372 673 平成12年10月1日
千葉 5,372 672 平成12年10月1日
兵庫 5,353 671 平成12年9月30日
静岡 5,329 667 平成12年10月1日
滋賀 5,163 647 平成12年10月1日
栃木 5,143 643 平成12年10月1日
長野 5,126 641 平成12年10月1日
広島 5,104 638 平成12年10月1日
Cランク 岐阜 5,302 663 平成12年10月1日
三重 5,300 663 平成12年10月1日
茨城 5,132 642 平成12年9月30日
山梨 5,131 643 平成12年10月1日
奈良 5,125 643 平成12年10月1日
石川 5,123 641 平成12年10月1日
和歌山 5,122 641 平成12年10月1日
富山 5,116 640 平成12年10月1日
群馬 5,111 639 平成12年10月1日
福岡 5,107 639 平成12年10月1日
福井 5,095 637 平成12年10月1日
新潟 5,089 637 平成12年9月30日
岡山 5,082 636 平成12年10月1日
北海道 5,060 633 平成12年10月1日
山口 5,055 632 平成12年10月1日
宮城 4,897 613 平成12年10月1日
香川 4,891 613 平成12年10月1日
福島 4,833 606 平成12年10月1日
Dランク 徳島 4,852 607 平成12年10月1日
愛媛 4,852 607 平成12年10月1日
高知 4,845 606 平成12年10月1日
鳥取 4,831 605 平成12年10月1日
島根 4,818 603 平成12年10月1日
熊本 4,799 600 平成12年10月1日
山形 4,797 600 平成12年10月1日
長崎 4,797 600 平成12年10月1日
大分 4,797 600 平成12年10月1日
鹿児島 4,796 600 平成12年10月1日
沖縄 4,796 600 平成12年10月1日
佐賀 4,796 600 平成12年10月1日
青森 4,795 600 平成12年10月1日
岩手 4,795 600 平成12年10月1日
秋田 4,795 600 平成12年9月30日
宮崎 4,795 600 平成12年10月1日

(注)時間額は、賃金の大部分が時間によって定められている労働者に適用される。



トップへ
報道発表資料  トピックス  厚生労働省ホームページ