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平成13年5月8日
(情報提供)

大阪大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究について



1.平成11年11月10日に大阪大学医学部附属病院(現代表者:松澤佑次 附属病院長、研究総括責任者:荻原 俊男教授)より申請のあった「HGF遺伝子プラスミドを用いた末梢性血管疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・ビュルガー病)の治療のための遺伝子治療臨床研究」については、本年3月、米国の国立がん研究所(National Cancer Institute)の研究者らが、HGF遺伝子を導入したマウスと、がん抑制遺伝子の一つであるp16遺伝子を欠損させたマウスを交配したところ、3ヶ月程度で極めて高頻度に横紋筋肉腫が発生したとの情報が得られたため、本臨床研究の実施の可否に係る厚生労働大臣からの意見を保留したところであるが、追加情報等を入手したため、本日、末梢性血管疾患遺伝子治療臨床研究作業委員会・遺伝子治療臨床研究(末梢性血管疾患)審査ワーキンググループ合同会議(委員長:北徹 京大教授)を開催した。

2.本日の合同会議においては、上記の情報や大阪大学医学部附属病院から提出された追加資料等に基づき、HGFの発がん性を中心に議論が行われた。
 その結果、米国のデータは、大量かつ長期のHGF暴露という条件下のものであること、横紋筋肉腫は小児にみられる疾患であること、今回の計画では投与から3週間程度でHGFの発現は終了すること等から、被験者の選定、経過観察を厳格に行う旨留意事項に追記することで意見の一致を見た。

3.厚生労働省としては、本日の結果を踏まえ、早急に、厚生労働大臣から大阪大学医学部附属病院あて留意事項を付した上で正式な回答を行う予定である。
なお、文部科学省においても、同様の対応がとられる見込みである。

(参考1)「HGF遺伝子プラスミドを用いた末梢性血管疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・ビュルガー病)の治療のための遺伝子治療臨床研究」は、血管新生作用を有するといわれているヒト肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを末梢性血管疾患患者の罹患肢筋肉内に注射するものであって、安全性の検討をその主たる目的としている。

(参考2)本臨床研究については、平成13年3月19日の厚生科学審議会科学技術部会における審議を経て、科学的、倫理的に妥当であるが、慎重に実施すべきとの観点から留意事項を付した上で、同日、厚生労働大臣に答申されたところである。


実施にあたっての留意点

 本遺伝子治療臨床研究は、血管性病変を国内ではじめて対象とするものであるので、実施にあたり、下記の点に留意されたい。なお、被験者への説明文書とともに本文書の写しを被験者に手交されたい。

 本研究の対象は、確立した治療法のない末梢性血管疾患であり、HGFのこのような病態に対する効果に関しては、今後の検討に待つ点が大きい。また、本研究の主たる目的は安全性の検討である。従って、本研究の実施にあたっては、安全性に細心の注意をはらいながら進めること。

 HGFは、広範な細胞群に多様な機能を発揮しうる点に十分留意し、継続的に安全性をモニターすることが望ましいこと。特に、HGFががん細胞の増殖を促進することを示す動物実験のデータがあることから、被験者の選定、経過観察を厳格に行うこと。また、被験者に対して、あらかじめこれらの点をわかりやすく説明すること。

なお、有効性の評価は、プラセボコントロールを用いた比較対照試験ではない点、遺伝子発現を直接確認する方法が未だ確立されていない点、患者の自然経過、新生血管の評価方法の限界などの点に鑑み、十分慎重に行うこと。

本研究の実施にあたっては、統括責任者が、進行状況についても、実施施設に置かれた審査委員会と密接な連絡をとり、研究の安全性及び有効性について、客観的評価を受けつつ行うこと。

連絡先
厚生労働省大臣官房厚生科学課
担当 中垣(内3803)
   広瀬(内3807)
電話 03-5253-1111(代表)
   03-3595-2171(直通)

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