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報告書





平成13年3月30日

肝炎対策に関する有識者会議


肝炎対策に関する有識者会議名簿

(◎座長、○副座長)
  飯野 四郎(いいの しろう) 聖マリアンナ医科大学教授
  石井 裕正(いしい ひろまさ) 慶應義塾大学医学部教授
  浦川 道太郎(うらかわ みちたろう) 早稲田大学法学部教授
  遠藤 久夫(えんどう ひさお) 学習院大学経済学部教授
  岸  洋人(きし ひろと) 読売新聞社論説委員
  齋藤 英彦(さいとう ひでひこ) 名古屋大学大学院医学研究科教授
島田 馨(しまだ かおる) 東京専売病院長
  下遠野 邦忠(しもとおの くにただ) 京都大学ウイルス研究所教授
杉村 隆(すぎむら たかし) 国立がんセンター名誉総長
  曽野 綾子(その あやこ) 作家
  久道 茂(ひさみち しげる) 東北大学大学院医学系研究科長
  矢野 右人(やの みちたみ) 国立長崎中央病院長
  雪下 國雄(ゆきした くにお) (社)日本医師会常任理事
  吉澤 浩司(よしざわ ひろし) 広島大学医学部教授
  若林 敬二(わかばやし けいじ) 国立がんセンター研究所部長
(50音順、敬称略)


目次

はじめに

第一章 肝炎対策の検討等

I肝炎対策検討の経緯
II 肝炎対策に関する有識者会議の設置

第二章 肝炎に関する基本的な知見

I肝臓病の原因
IIウイルス肝炎の種類
III 肝炎ウイルスの感染経路
IVB型、C型肝炎ウイルスによる感染者の数・感染率
VB型、C型肝炎ウイルスキャリアの経過
VIB型、C型肝炎ウイルス感染者に対する治療等

第三章 これまでの肝炎対策

I概要
II研究
III 血液製剤等の安全管理
IV普及啓発

第四章 今後の肝炎対策

I対策を進める上での基本的考え方
II 対策の内容

おわりに


はじめに

 我が国のC型肝炎の持続感染者は、100万人から200万人存在すると推定されているが、自分自身が感染していることを自覚していない者が多く、感染者の中から肝硬変や肝がんへ移行するものがあることが分かってきた。
 こうした状況の中、旧厚生省は、平成12年11月1日、省内に「肝炎対策プロジェクトチーム」を設置し、関係部局を横断した総合的な対策の検討に着手した。その第1回会議は同日開催され、外部の専門家からなる「肝炎対策に関する有識者会議」を設置すること、両組織が連携をとりながら対応を考えていくことが決定された。
 有識者会議は、こうして平成12年11月30日に第1回を開催し、以来、約5か月間、5回にわたって専門の立場から議論を重ねてきた。この間、患者団体や学会・研究者、地方行政機関等からの意見聴取を行った。
 有識者会議は、以上のような検討を踏まえ、厚生労働省などのこれまでの肝炎対策を総点検するとともに将来に向けての提言を報告書に取りまとめた。


第一章 肝炎対策の検討等

I 肝炎対策検討の経緯

 輸血は、出血を伴う疾病や手術において欠くことのできない治療として行われてきているが、かつては高い頻度で輸血後肝炎に感染する可能性があった。また、血液を原料とするその他の血液製剤の使用によっても、同様に高い頻度で感染する可能性があった。
 B型肝炎については、1968(昭和43)年に発見され、1970(昭和45)年に検査法が確立した。C型肝炎については、20年程経った1988(昭和63)年に発見され、1989(平成元)年にその検査法が確立した。さらに数年後には、それまで「非A非B型肝炎」と呼ばれていた肝炎の多くが、このウイルスの感染によるC型肝炎であることが判明した。このようなB型、C型肝炎ウイルスの発見と検査法の普及により、感染した血液が排除され血液製剤の使用による感染の機会は著しく減少することになった。
 また、近年のC型肝炎についての知見の集積に伴い、この疾病が国民に及ぼす影響や問題点が明確になりつつある。例えば、感染している者が相当数いると考えられ、そのうち感染に気づいていない者が相当数いること、C型肝炎ウイルスへの感染は肝がん発生の大きな危険因子であること、治療成績は向上しつつあるがまだ一層の改善の可能性が残されていること、さらに、今なお血液透析医療機関等における感染事例の報告もあることなどである。

II 肝炎対策に関する有識者会議の設置

 こうした状況の中で、旧厚生省は、まずC型肝炎について、国民一人一人が一定の共通認識を持ち、重要な健康問題であるということを理解する必要があると考えた。そして、そのために旧厚生省のような行政や学術団体、関係機関がどのように情報提供を行っていくのか、必要とされる対策とその中の優先順位をどのように決定していくのか、さらに医療資源をどのように有効かつ公平に配分していくのか、といった問題について再検討する必要があると考えた。
 そこで、関係部局を横断した総合的な取組みを検討する場として、平成12年11月1日、省内に「肝炎対策プロジェクトチーム」が設置された。その第1回会議が同日開催され、その場で、医学、法律、医療経済、報道関係、その他の外部の専門家から構成される「肝炎対策に関する有識者会議」を設置することと、両者が連携をとりながらこの問題への対応を考えていくことが決定された。
 こうして、有識者会議には、これまで行政や学術団体、関係機関によって実施されてきた肝炎対策を総点検しながら、今後の方向性や充実の方策について提言するという役割が与えられた。
 有識者会議は、以下に示すとおり、公開の場で約5か月、合計5回にわたって開催され、この間には患者団体や学会・研究者、地方行政機関等からの意見聴取も行った。

第1回
平成12年11月30日開催
議題
(1)有識者会議開催の経緯及び主旨について
(2)肝炎に関する現状について
(3)肝炎に関する疫学的状況について
(4)今後の肝炎対策について
(5)その他

第2回

平成12年12月21日開催
議題
(1)参考人からの意見聴取
 (1)患者の立場から
 (2)学会・研究者の立場から
 (3)行政機関の立場から
(2)その他

第3回

平成13年 1月29日開催
議題
(1)論点整理について
(2)その他

第4回

平成13年 2月22日開催
議題
(1)「非加熱血液凝固因子製剤による非血友病肝炎ウイルス感染に関する調査研究(案)」について
(2)「肝炎対策に関する有識者会議」の議論のまとめに向けて(骨子案)について
(3)その他

第5回

平成13年 3月30日開催
議題
(1)報告事項について
 (1)「非加熱血液凝固因子製剤による非血友病肝炎ウイルス感染に関する調査研究」進捗状況について
 (2)フィブリノゲン製剤について
 (3)各国における対策の状況
(2)「肝炎対策に関する有識者会議」報告書(案)について
(3)その他


第二章 肝炎に関する基本的な知見

 C型肝炎をはじめとする肝炎の問題を考えるとき、国民全体が一定の共通認識を持ち、重要な健康問題であることを理解する必要がある。そこで以下に、その前提となる肝炎に関する基本的な知見の要点を示す。

I 肝臓病の原因

 肝臓病の原因は、ウイルス肝炎を代表とする「生活習慣以外に起因するもの」と「主に生活習慣に起因するもの」(脂肪肝、アルコール性肝障害などがあげられる)とに大別できる。
 肝硬変の主な原因は、これまで一般国民を中心に、飲酒であると考えられてきたが、研究の進展により、その多くはB型ないしC型肝炎ウイルスの持続的な感染によって、肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返され線維化が進んだ状態であることが分かってきた。ただし、飲酒の影響もあり、B型、C型肝炎の患者が過度の飲酒をすると肝硬変への進行を促進するという報告がある。
 肝がん(肝細胞がん)は、B型、C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎が進行し、肝硬変へと進行したものが、さらに進行して発生することが多いとされている。

II ウイルス肝炎の種類

 ウイルス肝炎は、A型肝炎、B型肝炎及びC型肝炎が代表的である(参考資料1)。このうち、慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと移行する可能性があるのは、B型、C型肝炎である。
 A型、B型、C型以外にも、E型肝炎ウイルスその他が報告されている。

III 肝炎ウイルスの感染経路

1.血液感染

 40年ほど前までは、輸血を受けた人の半数以上が輸血後肝炎を発症したと言われる。当時、輸血後肝炎と呼ばれたものは、今から考えればそのほとんどがB型、C型肝炎(1988(昭和63)年以前は、非A非B型肝炎といわれた)であったと思われる。
 我が国においては、次章に述べるとおり、B型、C型肝炎ともに、その検査法が開発され、実用化されるとほぼ同時に、献血時の検査にも導入され、随時その精度の向上が図られてきた。従って、現時点では輸血その他の血液製剤投与による肝炎の発生は、限りなくゼロに近づいている。
 今なお、血液を介してB型、C型肝炎ウイルスに感染する危険性が高いと考えられるのは、薬物濫用者間の注射器の回し打ち、入れ墨、消毒などを十分に行っていない器具によるボディピアスを行った場合などである。また、医療現場では、血液透析を受けている者は、感染する可能性が残されている。

2.その他の感染経路

 B型肝炎ウイルスの感染経路には、血液の他に母子感染や性行為がある。現在、母子感染については、制度として妊婦に対する検査が行われ、母親が感染しているとわかった場合には、子どもへの感染を防ぐ措置がとられており、母子感染の発生はほとんどなくなった。一方、不特定の相手との性行為による感染は、コンドームの着用等、性感染症対策の一環として知識の普及を行う必要がある。
 C型肝炎は、血液感染以外の感染の可能性は極めて低いとされている。

IV B型、C型肝炎ウイルスによる感染者の数・感染率

1.持続感染者(キャリア)

 B型、C型肝炎ウイルスの感染で、肝がん等への移行が問題となるのは、感染が持続する場合である。持続感染の状態にある人を「キャリア」と呼んでいる。
 B型肝炎ウイルスに感染しても、時間の経過とともに自然に体内から排除される例もしばしば見受けられる。一方、ウイルスが排除されずにキャリアとなる例があるが、これは、出生時や乳幼児期に感染した場合が多いとされており、成人に感染した場合はまれといわれる。我が国には120〜140万人のキャリアがいると推定されている。
 一方、C型肝炎の多くは、感染した年齢に関わらずキャリアとなる場合が多く、我が国に100〜200万人のキャリアがいると推定されている。

2.年齢による感染率の差

 B型肝炎ウイルスのキャリアの率は、40歳代以上では、どの年代でも人口の1〜2%であり大きな差はないが、30歳代以下では、1%未満と少なく、特に制度として母子感染対策を開始した1986(昭和61)年以降に生まれた世代での新たなキャリアの発生はほとんど見られていない。
 一方、C型肝炎ウイルスキャリアの率は、40歳代以上で高く、しかも年代が高くなるほど高くなる傾向がある。また、地域によりキャリアの率に差があるのも特徴である。これらは、感染が広がった時期や地域の社会的背景の差によるものと考えられる。

3.我が国における感染拡大の機序(仮説)

 B型肝炎ウイルスの感染源は、一般的にはキャリアの血液である。B型肝炎ウイルスのキャリアとなる原因の多くは、前述の通り母子感染や乳幼児期までの感染による。B型肝炎ウイルスは、母子感染により世代を超えて受け継がれ、人類の長い歴史の中で継承され、現在の状況に至ったと考えられる。
 一方、我が国におけるC型肝炎ウイルスの感染のまん延は、1950年代から1960年代を中心に、社会全体を巻き込んだ複合要因による感染の悪循環が起こった結果であると考えられる。すなわち、戦後の混乱期に、まず覚醒剤濫用者の間での注射器、注射針の共用・回し打ち等により感染が拡大した。次いで、これらの濫用者が当時の売血者集団の一部に加わり、売血者集団が頻回の売血による貧血の治療のために鉄剤等の静脈注射を行い、その集団内にも感染が拡大するとともに、これらの集団から供血された血液の輸血を受けた者にも感染が拡大した。さらに、現時点からみれば必ずしも適切とは言えないような当時の医療行為、鍼等、さらには入れ墨等もC型肝炎ウイルス感染拡大の原因になったと考えられる。

V B型、C型肝炎ウイルスキャリアの経過

 B型肝炎ウイルスのキャリアのうち、約9割の人は明らかな症状が出現しないまま、特に治療を必要とすることもなく一生を終えるとされる。
 一方、前述の通り、C型肝炎ウイルスキャリアの場合は、その多くが慢性肝炎の症状を呈し、一部は肝硬変、肝がんへと進行するとされている。現在、我が国の肝硬変、肝がんによる死亡は、年間約4.5万人であり(参考資料2)、その約7割以上がC型肝炎ウイルスの持続的な感染に起因している。また、肝炎の進行や肝がんの発生は、年齢の要因に大きく影響されているという報告があり(参考資料3)、感染した年齢に関わらず、40歳代前後から肝炎が進行し、60〜65歳から肝がんの発生が急増する場合が多いと報告されている。

VI B型、C型肝炎ウイルス感染者に対する治療等

 B型肝炎ウイルスについては、感染予防のためのワクチンが実用化されている。感染後の治療については、一定の成果が得られているものの、引き続き新しい治療方法の検討が行われている。
 一方、C型肝炎ウイルスについては、感染予防のためのワクチンは研究途上である。治療薬として代表的なインターフェロン療法については、我が国における治療数は世界でも有数といわれており、その結果を見ると、感染したウイルスの遺伝子型、ウイルスの量、肝炎の病期などを適切に選択することによって、ウイルスを排除する、あるいは肝炎の症状軽減や進行を遅延させる効果が高いことが明らかになっている。しかし、その詳細を見ると、完全にウイルスを排除して将来の肝がん等の発生リスクをなくすことができる症例が、全体の1/3、ウイルスは排除できないが肝炎の進行を遅らせる可能性のある症例が同様に全体の1/3、インターフェロン無効の症例が残り1/3となっている。これは、我が国の約7割の感染者のウイルスが、インターフェロンの著効する遺伝子型ではないことによると考えられる。
 インターフェロンについては、発熱その他の副作用の報告もあることや、治療費、通院等の治療を受ける者の身体的、経済的、労力的負担もあることから、十分な説明と同意の上で投与されるべきである。また、専門医の支援の下に適切な治療計画と投与が行われることが求められる。
 インターフェロンの効果が十分に期待できず、しかも肝炎の活動性が高い症例には、抗炎症療法によって肝炎の進行を遅らせることが期待できる。また、適切な生活習慣の励行によって肝炎の進行を遅らせる可能性があるとの報告もあり、この分野の研究も推進されている。なお、C型肝炎の治療については、治療の効果とともにその治療にかかる医療費が高額であることも大きな問題として指摘されている。これは、感染者やその家族にとっての負担であるだけでなく、医療保険制度を支える国民全体の問題としても重要である。今後、安価なインターフェロンの供給による治療コストの低減や、症例に合わせた効果的な投与方法等について知見の収集に務めるとともに、これらの知見を踏まえた適切な対応が望まれる。
 一方、肝がんを早期発見して治療する技術も向上しており、定期的に医療機関で検査を行うことにより、肝がんによる死亡を低減することができる可能性が示されている。
 以下に、代表的な治療法を示し、現時点における評価を簡単に述べる(第4章・II.1.(5)治療も参照。)。

1.B型慢性肝炎

 これまで、インターフェロン療法、ステロイド離脱療法などが限定された範囲で有効とされているが、近年、ラミブジン(ゼフィックス)が新たな治療薬として使用できるようになり、治療効果の向上が期待されている。

2.C型慢性肝炎

1)抗ウイルス療法

 ウイルスを完全に排除し、将来、肝がん等の発生を回避することを期待する治療法である。

(1)インターフェロン療法

 インターフェロンは、現在、C型肝炎治療に関して保険適用されている唯一の抗ウイルス薬である。著効する場合には、ウイルスを完全に排除し、肝がん等の発生を回避できる。また、ウイルスが完全に排除できない症例でも、肝炎の進行を抑える効果が期待される。しかしながら、ウイルスの遺伝子型、ウイルス量によっては、効果の低い集団があることも明らかになっており、患者に対しては、予想される効果や今後の治療方針、副作用等についての十分な説明を行い、患者の意志が尊重された上で治療の決定がなされるべきである。

(2)その他の抗ウイルス療法

(ア)リバビリン

 インターフェロンとの併用によりウイルスを排除する効果がさらに向上すると期待されており、欧米においては既に使用されている国がある。現在、国内においても、その有効性について治験による確認が行われており、有効性・安全性が確認されれば、所定の手続きを経て一般の医療において使用できるようになる。

(イ)ペグインターフェロン

 作用の持続が長いインターフェロンとして、現在、国内においても、その有効性について治験による確認が行われている。通院などの患者の負担の軽減やインターフェロンの効果の向上が期待されているが、有効性・安全性が確認されれば、所定の手続きを経て一般の医療において使用できるようになる。

2)抗炎症療法(肝庇護療法)

 インターフェロンなどの抗ウイルス療法が著効しない症例、あるいは副作用などによりインターフェロンを使用できない症例にも、抗炎症療法によって肝炎の進行を遅らせて、肝がん等の発生を抑制、遅延させる効果が期待される。この治療法には、グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤(強力ネオミノファーゲンシー)の注射、ウルソデオキシコール酸(通称:ウルソ)の内服などがある。

3.肝がん

1)早期発見

 B型及びC型肝炎ウイルス感染者の定期的な経過観察において、血清中の肝がんマーカー、超音波検査等を実施することにより、肝がんを早期に発見する試みがなされている。

2)治療法

 B型肝炎及びC型肝炎より移行した肝がんの治療法としては、外科的療法である肝切除やその他の療法である肝動脈塞栓術(TAE)、経皮的エタノール注入療法(PEIT)の3療法が行われている。これらには、それぞれ長所・短所があるため、がんの大きさ、数、残存肝機能等の観点から適当な療法が選択されている。
 ラジオ波焼灼術(RFA)は、局所病変に対する有効な治療法として期待されている。
 放射線療法は骨に転移した場合など適応が限られている。
 化学療法(抗がん剤投与)は一般に奏功率が低いとされる。
 肝臓移植は、ウイルス肝炎から移行した肝がんが多発する傾向があることを考慮すると、今後は肝がん再発の危険性を減らす有用な治療法として期待される。


第三章 これまでの肝炎対策

I 概要

 厚生労働省におけるウイルス肝炎対策は、1963(昭和38)年の血清肝炎調査研究班に始まる。以来、「研究」、「血液製剤等の安全管理」、「普及啓発」などを中心に対策が進められてきた。
 一方、治療薬の承認、さらにその診療報酬上の評価等についても医学的・薬学的な知見に基づき随時対応がなされてきた。
 なお、B型肝炎については、HBIG(*1)及びワクチンを用いた母子感染予防対策も実施されてきた。
 これらの対策の歴史的な経緯を参考資料4に、研究以外の予算を参考資料5に示し、その中のいくつかの項目については、以下に概略を示す。

*1 Hepatitis B Immunoglobulin:高力価HBs抗体含有免疫グロブリン

II 研究

 旧厚生省の肝炎研究は、前述の通り1963(昭和38)年に血清肝炎調査研究班として始められた。
 現在は、参考資料6に示すとおり、ウイルス肝炎と併せて、その進行の結果である肝硬変、肝がんについての研究が進められている。またその内容も、ウイルスの増殖機構などの基礎的な分野から治療効果の評価を行う臨床応用の分野まで及んでいる。
 平成12年度は、C型肝炎ウイルスの持続感染の機構、ウイルス性慢性感染疾患の発症に関与する宿主遺伝子の解析、C型肝炎ウイルスのワクチンの開発等の基礎的な研究から、抗ウイルス療法などの新しい治療法の開発に関する研究などの分野で研究を行っており、合計16課題、研究費総額5.3億円程度となっている。
 なお、旧文部省の研究について、その課題名に「肝炎」「肝硬変」「肝がん」等の用語を含む研究課題を抜き出すと、平成12年度においては合計180課題、3.8億円程度であった。

III 血液製剤等の安全管理(参考資料7

1.B型肝炎(B型肝炎ウイルス)

1)献血血液については、1972(昭和47)年よりHBs抗原検査が導入された。1989(平成元)年よりHBc及びHBs抗体検査が、1999(平成11)年より核酸増幅検査(NAT:Nucleic acid Amplification Test 、以下「NAT」という。)が導入された
 なお、HBV(*2)抗原検査のウインドウ・ピリオド(*3)は約59日間、HBV NATのウインドウ・ピリオドは約34日間とされている。

2)現在使用されている血漿分画製剤(血液凝固因子製剤)(*4)については、原料血漿にかかる上記の検査に加え、製造工程に不活化除去工程(*5)が導入されており、感染例は報告されていない。

*2 Hepatitis B Virus:B型肝炎ウイルス
*3 感染後間もない時期に採取された血液に関しては、抗体の生成がなされていない場合や血液中のウイルスが少なく、大量増幅して確認出来る最低レベルに達していない場合がある。このように実際にはウイルスが存在するのに、検査が陽性とならず感染の有無を判定できない期間をいう。
*4 血液製剤には、輸血用製剤(全血製剤及び赤血球・血小板・血漿の成分製剤)と血漿分画製剤(凝固因子製剤、アルブミン製剤、グロブリン製剤等)とがある。
*5 不活化除去工程には、加熱処理、SD(界面活性剤)処理などがある。

2.C型肝炎(C型肝炎ウイルス)

1)献血血液については、1989(平成元)年よりHCV(*6)抗体検査が、1992(平成4)年より第2世代HCV抗体検査が、1999(平成11)年よりNATが導入された。
 なお、HCV抗体検査のウインドウ・ピリオドは約82日間、HCV NATのウインドウ・ピリオドは約23日間とされている。 2)現在使用されている血漿分画製剤(血液凝固因子製剤)については、原料血漿にかかる上記の検査に加え、製造工程に不活化除去工程が導入されており、感染例は報告されていない。

*6 Hepatitis C Virus:C型肝炎ウイルス

3.検討中の課題

 輸血用製剤については、原料となる献血血液について上記の通り検査が実施されているほか、製剤の製造工程での不活化方法についても研究が行われている。

IV 普及啓発

 1979(昭和54)年に発足した「厚生省肝炎研究連絡協議会」(肝炎の研究者、専門医等による任意団体)と旧厚生省とが連携をとりながら、「B型肝炎医療機関内感染ガイドライン」を公表するなど、正しい知識の普及による感染拡大防止が図られてきた。さらに1981(昭和56)年には(財)ウィルス肝炎研究財団が設立され、平成3年より毎年5月の第4週を「肝臓週間」とし、全国の自治体、関係機関等との協力・連携の下にシンポジウムを行うなど、普及啓発の一層の充実が図られてきたところである。
 また、近年は(社)日本肝臓学会が平成11年に「肝がん白書」、平成12年に「慢性肝炎診療のためのガイドライン」を作成する等、学術団体や関係機関においても普及啓発への取組みが行われている。


第四章 今後の肝炎対策

I 対策を進める上での基本的考え方

 肝炎対策を進める上で、正しい知識の普及は最も重要である。正しい知識に基づいた適切な行動によって、肝炎による健康障害を回避することが可能であるし、症状や進行の軽減や進行の遅延効果が期待できる。
 また、感染者に対する偏見や、就業、入院、入所に伴う差別を防ぐという観点からも、正しい知識の普及は重要である。
 このように、感染者のみならず感染していない者も対象にして、普及啓発のより一層の充実を図ることが必要である。そのためにも行政のみならず、学術団体、関係機関が相互に連携・協力しながら取組んでいかなければならない。
 もっとも、C型肝炎ウイルス感染者の数は極めて多く、しかも全国に広く分布しているので、その対策は体系立てて効果的・効率的に展開していく必要がある。例えば感染率等の要素を勘案して、ある程度対象集団を絞り込み、重点的に迅速に対応していくことを考えるべきである。
 こうした重点的かつ迅速な対応が必要となる集団としては、当面は、1996(平成8)年の「非加熱血液凝固因子製剤による非血友病HIV感染に関する調査」(以下「平成8年調査」という。)の対象となった非加熱血液凝固因子製剤(*7)及びこれと同等のリスクを有する非加熱血液凝固因子製剤(*8)を投与された非血友病患者が考えられる。これらの集団については、感染の実態についても不明な点が多く、本人も不安を感じている場合が多いと考えられるので、行政が医療関係者の協力も得ながら早急にその実態の解明に着手する必要がある。
 なお、行政その他が一連の対策を実施するに当たっては、まず現在の科学的知見に照らしてその妥当性や効果について十分な検討がなされなければならない。次には、社会全体の視点、例えば費用対効果等の資源の効率的な配分についても勘案されなければならない。
 以下に示す対応は、C型肝炎対策を中心に実施されるべきものと考えるが、感染の経路や予後等の類似性を考えると、B型肝炎についても念頭に置いて対応すべきである。

*7 血友病以外の疾患における非加熱血液凝固因子製剤の投与によるHIV感染について、「HIV感染者発症予防・治療に関する研究班」による調査や、旧厚生省による都道府県・指定都市を通じた調査が実施されたが、必ずしも満足できる調査結果ではなかった。そこで、非加熱血液凝固因子製剤の使用実態の把握とHIV感染者の早期発見を図り、発症予防及び治療、二次感染の防止に資するとともに、感染者の早期救済につなげることを目的として、1996(平成8)年に旧厚生省が実施した調査。なお、当時の対象製剤は第IX因子3種類(クリスマシン、コーナイン、ベノビール)、第VIII因子8種類(コンファクト8、コンコエイト、コーエイト、クリオブリン、プロフィレート、ヘモフィルS、ヘモフィルH、ファイバ「イムノ」)であった。
*8 国内血由来の非加熱血液凝固因子製剤(PPSB−ニチヤク、ハイクリオ)やエタノール処理された輸入非加熱血液凝固因子製剤(プロプレックス、オートプレックス)。これらの製剤は、平成8年調査対象製剤ではないが、HCV感染のリスクがあると考えられている。

II 対策の内容

 肝炎対策を推進するための具体的な内容、例えば手法や財源の確保の方策等については今後の行政その他の検討に委ねるとして、おおよそ次のように考えるべきである。

1.国民一般への対応

1)国民が自身のC型肝炎ウイルス感染の状況を認識し、その結果に基づき必要な相談指導や医療を受けるなど、自らの適切な行動により自身の健康を守ることが重要である。従って、行政としても、これまで進めてきた対策を充実強化して、こうした個人の取組みを一層支援していく必要がある。

2)具体的な内容

(1)普及啓発(正しい知識の提供とその活用)

 正しい知識の普及とともに、感染者(又はその可能性の高い者)が自身の感染の状況を認識し、必要な相談指導や医療を受けられるよう、広く呼びかけを行うことが重要である。
 そこで、国民向けにはC型肝炎に関する問答集(Q&A)を作成し、これを提供する必要がある。また、行政担当者や医療従事者向けには、学術団体、関係機関が作成した検査指針や治療指針を提供する必要がある。
 これらの情報については、政府広報やポスターなどによって提供するほか、インターネットや肝臓週間等の機会の活用、報道関係者との連携等によって、多くの国民が入手しやすい形で提供されるよう工夫すべきである。
 Q&Aの項目としては、以下の様な内容が考えられる。

(2)相談指導

 相談指導の目的は、感染者等の相談に応え健康上の不安の解消に努めることや、就業、入院等に伴う偏見や差別問題への相談に応じることにあるが、それだけではなく、円滑な連携によって次項以下に述べるスクリーニング検査や診療へと結びつけることである。
 このような相談指導の中心は医療機関と考えられるが、これ以外にも地域の身近な相談の場である、保健所、市町村保健センターや、さらに産業保健分野における地域産業保健センターの健康相談窓口等の活用が図られる必要がある。特に相談に対応できる人材の確保については、地域の保健医療従事者に対する研修会等を実施し、国からも支援を行う必要がある。
 なお、相談指導の実施に当たっては、プライバシーの保護や経済状況、さらに地域の特性等にも配慮する必要がある。

(3)スクリーニング検査

 国民が、自身のC型肝炎ウイルス感染の状況を認識し、その結果に基づき必要な診療を受けることが重要であるが、健康診断等において実施されるスクリーニング検査はその重要なきっかけになると考えられる。なお、現時点ではC型肝炎の新規感染の可能性は極めて低いため、一般的には一回の検査で感染の状況を判断できるとされている。
 近年、診断、治療法が進歩していることから、診療の必要性が高いキャリアを効率よく発見し、適切な診療を受ける機会を確保できるような、スクリーニング検査の方法についても速やかに研究を進める必要がある。
 行政としては、こうした研究の成果も踏まえながら、地域や職域における現行の健康診断等の仕組みが活用できるかどうかについて引き続き検討していく必要がある。

(4)研究

 これまで、基礎研究領域、臨床研究領域、疫学的研究領域において様々な研究が進められ、知見が得られてきた。しかし未解明の部分や研究者内の十分なコンセンサスが得られていない部分もある。
 今後とも、各研究領域間の情報交換や相互評価などを充実させながら、研究全体の質を向上させていく必要がある。具体的には次のような課題について、総合的に研究を進めて行くべきである。

ア)HCVキャリア成立の機構及び感染維持機構の解析とウイルス排除法の開発
 HCV感染増殖系の開発、遺伝子変異の特定と変化の解明、病態の解明、さらにその成果を基にしたワクチン開発など

イ)C型慢性肝炎の治療法の開発
 抗ウイルス薬の開発、治療法の標準化など

ウ)肝硬変の治療法の開発

エ)新しい肝がん治療法の開発
 肝がんの局所療法・全身療法の開発など

オ)その他
 蔓延状況、長期予後等の疫学研究、高精度のスクリーニング検査の導入に関する研究など

(5)診療

 研究の推進とその成果を踏まえ、患者の利便性にも資するような新しい治療法導入、治療法の普及、治療体制の整備が重要であると考えられる。
 代表的な治療法とその現時点における評価については第二章・VIに示したのでここでは省略する。

ア)診療体制

a.治療法の指針等医療機関への周知

 C型肝炎については、現在、急速に知見が集積されつつあり、学術団体におけるコンセンサスの形成とそれに基づく普及が望まれる。
 一方、C型肝炎ウイルスの感染者は、100万人〜200万人と推定されていることから、その治療が、特定の医療機関のみに限定されることは患者の通院等の利便性の観点からも好ましくなく、一般医療機関全体の機能と質を充実させて対応するべきである。
 近年、学会・研究者においても最新の知見のとりまとめが行われており、その結果が「治療の指針」等のわかりやすい形で迅速に周知されるよう、行政をはじめ学術団体や関係機関が連携・協力することが重要である。

b.専門医療機関の確保

 上述の一般医療機関を支える専門医療機関の確保も重要である。対応困難例などへの対応という観点から、肝臓専門医、肝がん専門医などによる、治療支援の体制が求められる。
 地域の中核的な病院において、こうした役割を担いつつ、さらに診断・治療法の開発や研究を担うことのニーズと可能性について、引き続き検討を行う必要がある(*9)。

*9 なお、国立病院・療養所においては、肝疾患を政策医療分野の一つとして位置づけ、国立長崎医療セ ンターを中心に肝疾患に関する診断・治療法の開発及び研究等に取り組んでいるところであり、今後、 同センターには臨床研究センターを整備していく予定としている。

イ)その他

 既存の医薬品等と比較して、有効性等が明らかに優れていると認められる新たな医薬品等については、優先審査の対象とすべきである。さらに、こうした医薬品等については、迅速な保険適用を行うなど機動的な対応が望まれる。

(6)予防・感染経路の遮断

 医療行為に伴うウイルス肝炎の新規感染の可能性は、現在ではきわめて低くなっているが、感染リスクが高いと考えられる医療行為や医療現場については、引き続き徹底した感染経路遮断策を行い、感染予防を図ることが必要である。
 とりわけ、観血措置を反復し、既感染率が一般より高いとされる血液透析患者における感染予防については、現行のマニュアル等の不断の見直しとともに、従事者講習会等により周知徹底を図る必要がある。
 また、輸血や血液製剤については、前述の通りNATの義務化等、逐次最新の科学的知見に基づく安全対策が講じられてきているが、今後とも、科学技術の進歩に応じ見直しを行っていく必要がある。当面NATの基本指針を策定し、さらに随時見直しを行うなど、国内血、輸入血の双方において肝炎ウイルス検査法の標準化を図ることにより、検査が適切に行われるようにすることが重要である。自己の血液を用いる場合以外の院内採血による輸血については、採血された血液の安全性の確認が十分行われるべきであり、今後院内輸血の指針の策定等により輸血療法の一層の適正化が推進されるべきである。
 なお、C型肝炎ウイルスの母子感染については、その頻度は少ないものの、B型肝炎ウイルス感染のようなHBIGやワクチンによる対応がないため、今後研究等を進める必要がある。

2.感染率が一般より高いとされる集団への対応

 C型肝炎の感染率が一般より高いとされる集団については、国民一般への対応と併せて次のような考え方で対策を進めるべきである。

1)考え得る集団

 感染率が一般より高いとされる集団としては、諸外国の状況も勘案して(参考資料8参考資料9)次のような集団が考えられるが、その感染率等については不明なものもある。

a.1992(平成4)年以前に輸血を受けた者
b.長期に血液透析を受けている者
c.輸入非加熱血液凝固因子製剤(平成8年調査対象製剤)を投与された者
d.cと同等のリスクを有する非加熱血液凝固因子製剤を投与された者
e.フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む)を投与された者
f.大きな手術を受けた者
g.臓器移植を受けた者
h.薬物濫用者、入れ墨をしている者
i.ボディピアスを施している者
j.その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにも関わらず、その後肝炎の検査を実施していない者、感染率の高い地域に住んでいる者等)

2)集団ごとの対応方針

(1)上記1)の「c.輸入非加熱血液凝固因子製剤(平成8年調査対象製剤)」及び「d.これと同等のリスクを有する非加熱血液凝固因子製剤」を投与された非血友病患者については、一般に比べて感染率が高いと考えられるものの、感染の実態等についてなお不明な点があるので、これを把握するための研究を早急に実施すべきである。
 この場合、患者又は家族は製剤投与の事実を必ずしも認識しているとは限らないので、プライバシーの保護に留意しつつ、できる限り早期に必要な検査の実施による感染実態の把握を行うべきである。また、その結果を踏まえて一般対策に述べた診療等に結びつけていくべきである。

(2)上記1)の「c.輸入非加熱血液凝固因子製剤(平成8年調査対象製剤)」及び「d.これと同等のリスクを有する非加熱血液凝固因子製剤」を投与された血友病患者、「b.長期に血液透析を受けている者」、「g.臓器移植を受けた者」については、すでに医療機関等において感染の有無等が確認され、適切な治療等を受けていると考えられることから、今後は感染経路の遮断を徹底し、新規感染の防止を図るべきである。

(3)上記1)のa、e、f、h〜jの者のうち、「a.平成4年以前に輸血を受けた者」等の集団については、本人又は家族がその事実を認識している場合が多い。また、現時点では行政等による特定も困難である。
 なお、「e.フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む)」については、産科疾患、内科疾患、手術時等、多くの診療科において広く使われていた(*10)と考えられる。また、納入医療機関も多数にわたると想定される。
 従って、a、e、f、h〜jの者については、C型肝炎ウイルス感染の可能性について必要な相談指導や医療が受けられるよう、地域の実態も踏まえながら普及啓発等の対策を充実強化して支援していく必要がある。

*10 フィブリノゲン製剤が注射薬として使用された例としては、(1)胎盤早期剥離、死亡胎児の子宮内残存、羊水塞栓症などの産科疾患、(2)体外循環装置を使うような大手術、(3)敗血症、(4)悪性腫瘍、(5)白血病、不適合輸血時の溶血性輸血反応、紫斑病、(6)蛇咬傷、(7)広範な外傷等、(8)先天性低フィブリノゲン血症の患者などが想定される。この他、トロンビン等と混合して「フィブリン糊」を作成し、出血創傷面の閉鎖、骨折片の固定、末梢神経ならびに微小血管の吻合、腱接着または腱縫合の補強、実質臓器の創傷部の接着などに使用されていたと想定される。(ウェルファイド(株)から厚生労働省への報告による)。
 フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む)の使用状況及びこれによるHCV感染の実態等については、現在厚生労働省から薬事法に基づく報告命令が出ているところであり、その結果を見た上で必要な対応を行うこととしている。

3.その他(医薬品等による健康被害救済の新たな枠組みの研究)

 血液製剤を含むヒトの細胞組織等に由来する医薬品等については、その時点における最新の医学的・薬学的な知見に基づいて対策をとったとしても、製品の特性もあり、感染の危険性をゼロにすることは困難であると考えられる。そこで、将来的な課題として、今後新たに生じ得る健康被害に関し、それらの製品に起因する健康被害の特性やそれらの製品に対する規制の効果等を十分に踏まえた上で、救済の新たな枠組みについて研究を進めるべきである。


おわりに

 有識者会議においては、多くの資料や意見を元に大変活発な議論が交わされ、その成果として、行政をはじめ学術団体・関係機関が今後とるべき対応について一定の方向性を示すことができたと考える。
 行政その他におけるこれまでのウイルス肝炎対策について検討したが、先進諸国における状況との比較からみても概ね適切に対応できていたように思える。当面の最重要課題として、感染率の高い集団を中心とした呼びかけや普及啓発について、最優先で取り組むべきであろう。
 有識者会議は、この報告書をもって一応解散するが、ここに述べた意見や提言については、今後、厚生労働省において十分にご検討いただき、適切に対応されるよう要望する。予算の制約や時期的な問題等を踏まえ、まずは可能なものから順次実施していくべきである。その対策の状況については、随時あるいは一定の期間の後に、国民に分かる形で公表していただきたい。
 多忙の中、あるいは病をおしてご出席いただいた患者団体や研究者の皆様方に、この場を借りて深甚なる感謝を申し上げる。


照会先
厚生労働省大臣官房厚生科学課
担当・内線 新木(3806) 磯貝(3807)
電話代表03-5253-1111

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