1 日本経済は、平成11年4月を景気の谷として、改善を続けてきたが、生産・企業収益の回復、民間設備投資の持ち直しなど企業部門の復調にもかかわらず、所得・雇用環境の改善は遅れ、個人消費の回復は見られない。
また、最近はアメリカ経済の減速に伴って輸出が減少し、生産も弱含みとなっており、景気の改善に足踏みが見られるなど、民間需要を中心とする本格的な景気回復への移行が遅れていることは否めない状況である。
2 今般の経済対策は、我が国にとって喫緊の課題である構造問題を取り上げ、その根本的な解決に取り組もうとするものであるとともに、構造改革に伴う調整を考慮して、長期的な経済活力を引き出す規制・制度改革やイノベーションへの取組み、それらによる新市場の開拓と雇用の創出、雇用面のセーフティネットの整備等を図るものである。
3 当該対策には、別添のとおり厚生労働省関係施策が盛り込まれたところであり、厚生労働省としては、これらの施策の実施に全力を傾けていく。
(連絡先)政策統括官付労働政策担当参事官室 電話 5253-1111(内線7715)
第1章 基本的考え方
3.経済対策の基本的考え方
(略)
さらに、構造改革に伴う調整を考慮して、長期的な経済活力を引き出す規制・制度改革やイノベーションへの取組み、それらによる新市場の開拓と雇用の創出、雇用面のセーフティーネットの整備等を図ることも必要である。
(略)
第2章 具体的施策
2.証券市場の構造改革
(2)確定拠出年金及び確定給付企業年金
個人又は事業主が拠出した年金掛金を、個人が自己責任において運用指図を行い、掛金と運用収益を基に年金給付額を確定する形のポータビリティが確保された年金制度導入等を図る確定拠出年金法案や、確定給付型の企業年金の受給権保護等を図る確定給付企業年金法案の本通常国会での早期成立を期する。
4.雇用の創出とセーフティーネット(別添2参照)
(1)新市場開拓に資する規制・制度改革
(3)雇用面のセーフティーネットの整備
不良債権のオフバランス化等構造改革に伴う雇用情勢の変化に機動的・弾力的に対応することとし、当面、次の対策を実施する。
I 新市場開拓に資する規制・制度改革 |
○ 医療システムの効率化
利用者の視点に立った効率的で、安心かつ質の高い医療の提供や医療の質の向上と効率化を図る観点からの診療報酬体系の見直し等により医療システムの効率化を推進する。
保健医療情報システム検討会を設置し、保健医療サービスの効果的かつ効率的な提供に必要な社会基盤としての保健医療情報システムのあるべき姿及び開発普及方針について検討し、その推進のための戦略的なグランドデザインを13年度中に策定する。
また、今後とも病名や医薬品等の用語・コードの標準化や、医療情報を安全に共有、保存するためのシステムの開発等に努め、カルテの電子化等IT化の推進を図る。
○ 保育・介護分野
保育分野においては、公立保育所の業務を委託する場合、社会福祉法人以外の民間事業者に委託することが可能であることを周知徹底し、民間活力の導入を促進する。
特別養護老人ホームと同様の要介護者に対応できるようなケアハウスについて、十分な経済的基盤と人的資源を有する民間企業等が都道府県知事の許可を受けて運営できるよう検討を進める。
II 雇用面のセーフティネットの整備 |
1 雇用対策
○ 緊急雇用創出特別奨励金及び新規・成長分野雇用創出特別奨励金(別紙1・別紙2)
完全失業率に基づく発動要件を満たした地域内に所在する事業主が中高年非自発的離職者等を雇い入れることを奨励する緊急雇用創出特別奨励金について、全国での発動要件の緩和及び対象労働者等に係る拡充措置(来月15日までの暫定措置)を、本年9月末まで延長する。
また、新規・成長分野の事業を行う事業主が中高年の非自発的離職者等を雇入れ時期を前倒しして雇い入れることを奨励する新規・成長分野雇用創出特別奨励金について、対象労働者の拡大及び支給額の増額に係る拡充措置(来月15日までの暫定措置)を、本年9月末まで延長する。
○ 中高年ホワイトカラー離職者向け訓練コースの充実(別紙3)
介護・福祉分野等の新規・成長分野を中心として中高年ホワイトカラー離職者を対象とした委託訓練を重点的に実施する(対象労働者:約3万人)。
○ IT関連の能力開発の推進(別紙4)
情報格差(デジタル・ディバイト)解消のためのIT職業能力開発機会の確保、提供事業(対象労働者:12〜13年度で約140万人)及び企業内のITインストラクターの計画的育成に向けた「中小企業IT化人材育成支援プログラム」を継続して実施する。
○ 改正雇用保険法の円滑な施行(別紙5)
中高年齢層を中心に倒産・解雇等による離職者に対して、一般の離職者と比べて手厚い給付日数を確保すること等を内容とした改正雇用保険法(本年4月1日施行)の円滑な施行を図る。
○ 離職予定者がまとまって生じる場合に在職中から必要な支援の実施
主要ハローワークに設置する離職予定在職者に対する相談コーナーの機能の充実によって、大量離職者発生事案等の場合の企業・関係労働者双方に対する支援を機動的に行うことにより、失業なき労働移動を援助する。
○ 官民連携した雇用情報システムである「しごと情報ネット」の早期実施(別紙6)
民間(職業紹介事業者、求人情報提供事業者等)とハローワークの保有する求人情報に係るインデックス情報を、インターネットを利用して誰もがどこからでも一覧、検索すること等ができる「しごと情報ネット」について早期実施を図り、労働力需給調整機能の強化により雇用のミスマッチ解消を図る。
○ 雇用対策法等改正法案の早期成立(別紙7)
経済社会の変化に対応して、円滑な再就職を促進し、職業生活の全期間を通じて職業の安定を図っていくため、事業主による離職予定者の計画的な再就職支援の促進や募集・採用時の年齢制限緩和に向けた事業主の取組の促進を図ること等を内容とする雇用対策法等改正法案の早期成立を図る。
2 調整機能強化のための規制改革
○ 労働者派遣事業の対象業務・派遣期間等の在り方に係る検討
労働者派遣事業に係る対象業務・派遣期間等の規制の在り方について、「規制改革推進3か年計画」を踏まえ改正労働者派遣法の施行状況の把握に努めるとともに、関係者の意見も踏まえ、同法に基づく所要の検討を行う。
○ 特定求職者雇用開発助成金等の公共職業安定所紹介要件の緩和
高年齢者、障害者等特に就職が困難な者を雇い入れた事業主に対し賃金の一部を助成する特定求職者雇用開発助成金等の支給に際して、公共職業安定所の紹介を要件とすることを平成13年中に見直す。
1 趣旨
雇用失業情勢が悪化し、完全失業率に基づく発動要件を満たした地域内に所在する事業主が、中高年の非自発的離職者を公共職業安定所の紹介により、常用労働者として雇い入れた場合に1人あたり30万円の奨励金を支給するもの(平成13年度末までの事業として、一般会計で600億円の基金を設け、平成11年1月より実施)。
2 今回延長する拡充の内容(平成12年5月16日から平成13年5月15日までの暫定措置として講じられたものを、さらに同年9月30日まで延長)
拡充前 | 拡充後 | |
雇入れ事業主 | ・雇入れ1カ月後の常用労働者数が雇入れ前よりも増加していること。 ※一定期間常用労働者を解雇していないこと等の要件有 |
・撤廃 ※一定期間常用労働者を解雇していないこと等の要件有 |
雇入れ対象労働者 | ・45歳以上60歳未満の非自発的離職者 | ・同左 ・45歳以上60歳未満の公共職業訓練受講者 |
全国での発動要件 (※) |
・全国において、連続する3カ月の各月における完全失業率(季節調整値)が5.2%を超える場合 | ・全国において、単月の完全失業率(季節調整値)が5.0%以上となった場合 |
発動期間 | ・3か月間 | ・6か月間 |
3 申込窓口
都道府県高年齢者雇用開発協会
拡充前 | 拡充後 | |
雇入れ対象労働者 | ・30歳以上60歳未満の非自発的離職者 | ・60歳未満の 非自発的離職者 公共職業訓練受講者 未就職卒業者 |
支給額 | 雇入れ対象労働者1人について、次の額を支給。 ・45歳以上60歳未満70万円 ・30歳以上45歳未満40万円 |
雇入れ対象労働者1人について、70万円を支給。 |
3 申込窓口
都道府県高年齢者雇用開発協会
1 趣旨
中高年齢ホワイトカラーを中心とした離職者に対する雇用面のセーフティネットの整備が特に重要な課題となっていることから、これらの者の就職促進に資する職業訓練コースの充実を図ることとする。
2 概要
介護・福祉分野等の新規・成長分野を中心として中高年ホワイトカラー離職者を対象とした委託訓練を重点的に実施する(対象労働者数:約3万人)。
(1) 「職業能力のミスマッチ解消のための高度人材養成事業」等を中高年ホワイトカラー離職者向けの委託訓練に重点化して実施する。
(2) 上記の実施に当たり、民間機関を活用し、積極的かつ効果的なコース設定を行う。
1 趣旨
急速なIT化の進展に伴う、労働者の間の情報格差(デジタル・ディバイド)の解消や、雇用不安の防止を図るため、労働者の能力水準、ニ−ズに応じたIT関連の職業能力開発を図るための総合的な施策を継続して実施する。
2 概要
(1) 情報格差(デジタル・ディバイド)解消のためのIT職業能力開発機会の確保・提供(平成12年度補正・13年度対象労働者数:約140万人)
ITに係る公共職業訓練について、離職者、在職者を含めた幅広い労働者の訓練ニ−ズに応じ、高度な情報通信技術から、ITに係るユ−ザ−側として必要な能力習得を図るものまで、多様な水準・期間のコ−スの整備、大幅な拡充を図る。
(2) IT化に対応した先導的な教育訓練コ−ス・システムの開発
高度なIT分野の職業能力開発に資するため、先導的な教育訓練コ−スや、ネットワ−クを活用した新たな訓練システムを開発する。
ITインストラクタ−の計画的育成を図ること等により、中小企業のIT訓練体制整備を支援する。
1 趣旨
(1) 今後、産業・職業構造の変化、労働力人口の高齢化等に伴い、求人・求職のミスマッチによるいわゆる構造的、摩擦的失業は中長期的に増加するおそれがあり、労働市場における労働力需給調整機能を今以上に高めていくことが喫緊の課題となっている。
(2) このため、今後一層の普及が見込まれるインターネットを利用して、民間職業紹介事業者、民間求人情報提供事業者、経済団体、公共職業安定所等が保有している求人・求職情報(当面は、求人情報のみ。)をインターネットを利用して、誰もがどこからでも一覧、検索し、詳しい情報については、それぞれの機関のホームページにアクセスする等により、把握することができる仕組みである「しごと情報ネット」(以下「システム」いう。)を構築することとする。
(3) システムの構築は、求職者等による民間の労働力需給調整機関の積極的な利用促進を可能とし、労働市場全体における労働力需給調整機能の一層の強化が図られることとなることから、失業者の早期再就職、失業なき労働移動の実現に資するものである。
2 システムの概要
(1) システムを利用して仕事を探す場合、インターネット上でシステムにアクセスして、職種、賃金等の求人情報の項目について、希望する条件等を入力し、検索することができる。
(2) 検索結果は、一覧表のような形で、条件に合う複数の求人情報の概要(インデックス情報)が表示され、それらの情報について、詳しい情報を知りたい場合には、この一覧表上の所定の欄をクリックしてシステムとリンクしているそれぞれの参加機関のホームページにアクセスしたり、掲載されている連絡先に電話で連絡をしたりすることにより、詳しい情報を入手することができる。
3 参加機関の募集
平成13年3月27日(火)より、参加機関の募集を開始している。
I 背景と課題
・ 経済・産業構造が大きく転換する中で、労働移動が増加し、失業率が高止まりすることが懸念。
II 概要
1 特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の廃止
2 雇用対策法の一部改正
(1) 在職中からの計画的な再就職援助の実施
離職を余儀なくされる者を相当数生じさせる事業主に再就職援助計画の作成を義務づけ、計画に基づく再就職援助措置を国が支援
(2) 募集・採用時の年齢制限緩和に向けた取組の促進
事業主は、一定の場合に年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めることとするとともに、これを具体化するため厚生労働大臣は必要な指針を策定
3 雇用保険法の一部改正
4 地域雇用開発等促進法の一部改正
(1) 地域の自主性、創意工夫を生かしつつ、地域の実情に即した地域雇用開発を推進するため、都道府県が地域を提案し、国が同意する方式に変更
(2) 新たなしくみとして、国と都道府県と連携して行う事業を新設
5 職業能力開発促進法の一部改正
(1) 労働者の自発的な職業能力開発を促進するために事業主が講ずべき措置として、業務に必要な職業能力についての情報提供、相談その他の援助等を追加するとともに、事業主が講ずべき措置の有効な実施を図るために必要な指針を策定
(2) 民間機関の活用による適正な職業能力評価を促進するため、技能検定制度について、試験業務の委託対象となる民間機関の範囲及び民間機関に行わせることのできる試験業務の範囲を拡大
III 施行期日
1 特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の廃止
平成13年6月30日
2 その他
平成13年10月1日
また、公共職業能力開発施設等で、夜間・土日も含め、パソコン(自習用端末)を活用した、ITに係る職務上必要な能力習得の支援を実施する。
(3) 中小企業IT化人材育成支援プログラムの実施
〔早期再就職を促進するための給付体系の整備〕
○ 中高年リストラ層等への求職者給付の重点化 <13年4月施行>
○ 倒産・解雇等による離職者(特定受給資格者)に該当する者の例
区分5年未満
5年以上
10年未満10年以上
20年未満20年以上
一般被保険者
90日
120日
150日
180日
倒産・解雇等による離職者に対する給付日数
年齢1年未満
1年以上
5年未満5年以上
10年未満10年以上
20年未満20年以上
30歳未満
90日
90日
120日
180日
−
30歳以上45歳未満
90日
90日
180日
210日
240日
45歳以上60歳未満
90日
180日
240日
270日
330日
60歳以上65歳未満
90日
150日
180日
210日
240日
2 事業所において大量雇用変動の場合の届出がされたため離職した者及び当該事業所の被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
3 事業所の廃止(裁判上の手続を伴わない私的整理等により事業活動が停止し、再開される見込みがない場合を含む。)に伴い離職した者
4 解雇(重責解雇を除く。)により離職した者
5 事業所から直接若しくは間接に退職することを勧奨されたことにより退職した者(人員整理を目的とする希望退職者募集に応じ、退職した者を含む。)
6 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又 は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
雇用対策法等の一部を改正する等の法律案の概要
・ 円滑な再就職を促進し、職業生活の全期間を通じて労働者の職業の安定を図っていくため、
等関係法律について所要の整備を行う。
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