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III
医療制度の現状と課題


 医療提供体制の現状と課題
(病床数の多さ、入院の長さなどの課題も指摘される)
○ 我が国の医療提供体制は、戦後、全ての国民に平等に医療を受ける機会を保障するという観点から整備が進められてきました。また、国民皆保険制度の下で、国民が容易に医療機関を利用できる体制が整備されました。
○ しかしながら、現在は全国的には必要病床数を上回る数が整備されており、国際的にみても人口当たり病床数が多いこと、平均在院日数が長いことや1床当たり医療従事者数が少ないことなど、全体として広く薄い提供体制となっていることなどが課題として指摘されています。
※ なお、国により制度が異なるため、単純な比較は困難であることに留意が必要です。

人口当たり病床数の国際比較
平均在院日数の国際比較
看護職員数(人口千対)の国際比較
100床当たり看護職員数の国際比較

参 考
○ 人口10万対病床数と1人当たり入院医療費の関係をみると、病床数の多い県は入院医療費が高く、逆に病床数の少ない県は入院医療費が低いという傾向がみられ、病床数と入院医療費にはかなり強い相関関係があると言えます。

入院医療費と病床数の相関(平成10年度)

(医療機関の機能分化が不十分)

○ 我が国の医療提供体制は、入院については病床の機能分化が十分ではなく、急性期の患者と長期の療養が必要な患者が混在することが多くなっています。外来についても、大病院と中小病院、診療所の機能分化が十分ではなく、大病院へ患者が集中し、長い待ち時間などの問題も指摘されています。このため、医療法改正による病床区分の見直しなどを進めています。

病院と診療所の外来患者数の推移
外来の1日当たり医療費の比較(平成12年4月から9月平均)

(医療の質の向上は、医療従事者の資質の向上とともに、質の高い医療提供の環境整備が課題)
○ また、医療の高度化、専門分化が進む中で、質の高い医療従事者の養成や、質の高い医療提供の環境整備を図っていくとともに、患者・国民の適切な選択によって良質な医療が提供されるよう、情報の積極的な提供を図る必要があります。

医師・歯科医師の臨床研修の必修化
○ 今回の医療法改正において、診療に従事しようとする医師・歯科医師の臨床研修を必修化しています。

  医  師:平成16年4月から実施(2年間)
  歯科医師:平成18年4月から実施(1年間)

EBMの推進の支援
○ 各種の医学文献を幅広く収集し科学的に分析・評価を行って得られたものを活用して医療を行う「根拠に基づく医療」(Evidence-based Medicine:EBM)の推進が求められています。
○ 厚生労働省としては、具体的な推進策として、臨床医が日常診療の中でEBMを実践できるように、即座に参照できかつ治療方針決定の際の参考となる「科学的根拠に基づくガイドライン」について、学会等の専門家が作成することを支援することとしています。

電子カルテ等による情報化の推進
○ 医療分野における情報化は、医療従事者同士による診療情報の共有などにより、医療の質を向上させるだけではなく、安全性の向上にもつながり、さらに、業務の効率化にも寄与すると考えられています。
○ 厚生労働省も情報化を推進するために、1)平成11年4月には、関係局長通知により診療録等の電子保存、いわゆる電子カルテを認めるとともに、2)診療情報の用語・コードの標準化や病院間での情報伝送におけるセキュリティの確保といった技術面での取組を進めており、3)さらに、平成12年度補正予算において医療施設の情報化に補助しています。

医療に関する情報提供の取組み
○ 平成9年医療法改正において、いわゆるインフォームドコンセント(説明と理解)に関する規定を追加
○ カルテなどの診療情報の提供について、日本医師会など関係者の自主的取組が進められていることから、今回の医療法改正において広告規制を緩和
○ 改正法施行(本年3月)にあわせて、広告規制を見直し、(財)日本医療機能評価機構が行う医療機能評価の結果などを広告できる事項に追加

(医療安全対策は喫緊の課題)
○ 医療の質ということでは、近年続発している医療事故について、患者の安全を守るという観点から、国、関係者がともに総合的に取り組むことが求められています。
厚生労働省における医療安全対策の取組
○ これまでの取組

(1)医療事故防止関連マニュアルの作成及び周知徹底
1)患者誤認事故防止方策に関する検討会報告書の作成
2)国立病院等における安全管理体制の徹底
(2)特定機能病院の安全管理体制の強化
1)安全管理の確保のための体制の義務化
2)特定機能病院における安全管理体制の取組の徹底
3)医療事故が発生した特定機能病院に対する措置
 
(3)医療安全管理体制確保に関する調査研究
(4)医療関係者等への周知徹底
1)医療安全対策連絡会議の開催
2)医療安全対策特定機能病院長会議の開催
3)医療の安全対策に係る報告書等の配布
(5)医薬品・医療用具等関連医療事故防止システムの確立

○ 平成13年度予算案における取組

(1)医療安全確保のためのインシデント事例(ヒヤリハット事例)の収集体制の整備
(2)医療安全対策検討会議の設置
1)収集された情報の分析
2)改善方策の策定
(3)医療安全対策に関するワークショップ(討議等)の開催


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