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労働契約承継法指針全文

分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成十二年労働省告示第百二十七号)

1 趣旨
   この指針は、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「法」という。)第8条の規定により、法第2条第1項の分割(以下「会社分割」という。)をする同条第2項の会社(以下「分割会社」という。)及び同条第1項の承継会社等(以下「承継会社等」という。)が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な事項を定めたものである。

2 分割会社及び承継会社等が講ずべき措置等
 1  労働者及び労働組合に対する通知に関する事項
(1)  通知の時期
 法第2条第1項及び第2項の労働者又は労働組合への通知は、次に掲げる会社法(平成17年法律第86号)に規定する日のうち、株式会社にあっては、イ又はロのいずれか早い日と同じ日に、合同会社にあっては、ハと同じ日に行われることが望ましいこと。
 吸収分割契約等の内容その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置く日
 株主総会を招集する通知を発する日
 債権者の全部又は一部が会社分割について異議を述べることができる場合に、当該分割会社が、会社法に掲げられた事項を官報に公告し、又は知れている債権者に催告する日
 なお、法第2条第1項及び第2項の通知を郵便等により行う場合は、民法(明治29年法律第89号)第97条第1項により、相手方に到達した時からその効力を生ずるものであるので、法第2条第3項に規定する通知期限日までに当該労働者又は労働組合に到達する必要があること。この場合において、法第4条第2項(第5条第2項において準用する場合を含む。)の「通知がされた日」とは、「通知が相手方に到達した日」をいうものであること。
(2)  通知を行う労働者の範囲
 分割会社が法第2条第1項の規定により通知を行う労働者は、当該分割会社が雇用する労働者(いわゆる正社員に限らず、短時間労働者等を含む。)のうち、承継会社等に承継される事業(以下「承継される事業」という。)に主として従事する労働者及び当該労働者以外の労働者であって法第2条第1項の分割契約等(以下「分割契約等」という。)にその者が当該分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがあるものであること。
 なお、承継される事業に主として従事する労働者であって分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがないもの及び承継される事業に主として従事する労働者以外の労働者であって分割契約等にその者が当該分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがあるものについては、法第4条第1項及び第5条第1項の規定に基づき、当該分割会社に対して異議を申し出る機会が与えられていること。
(3)  通知を行う労働組合の範囲
 分割会社が法第2条第2項の規定により通知を行う労働組合は、当該分割会社との間で労働協約を締結している労働組合であること。労働組合の組合員が当該分割会社との間で労働契約を締結している場合には、当該分割会社は、当該労働組合との間で労働協約を締結していない場合であっても、当該労働組合に対し、法第2条第2項の規定の例により通知を行うことが望ましいこと。
 2  労働契約の承継に関して講ずべき措置等
(1)  分割契約等に定める方法等に関する事項
 会社法の規定に基づき分割会社から承継会社等に承継される労働契約を分割契約等に定める場合には、当該承継される労働契約に係る労働者のすべての氏名が特定できることが必要であること。当該承継される労働契約に係る労働者のすべての氏名が特定できるときには、分割会社の特定の事業場を明示して、当該事業場のすべての労働者又は特定の者を除くすべての労働者に係る労働契約が当該承継される労働契約である旨を分割契約等に定めることができること。
(2)  労働者による異議の申出に関する事項
 申出の内容等
 法第4条第1項の異議の申出については、当該労働者は、当該労働者の氏名及び当該労働者に係る労働契約が当該承継会社等に承継されないことについて反対である旨を書面に記載して、同条第3項の異議申出期限日までに当該分割会社が指定する異議の申出先に通知すれば足りること。
 法第5条第1項の異議の申出については、当該労働者は、当該労働者の氏名、当該労働者が法第2条第1項第2号に掲げる労働者に該当する旨及び当該労働者に係る労働契約が当該承継会社等に承継されることについて反対である旨を書面に記載して、法第5条第1項の異議申出期限日までに当該分割会社が指定する異議の申出先に通知すれば足りること。
 異議申出期限日に関する留意事項
 法第4条第1項又は第5条第1項の異議の申出を郵便等により行う場合は、民法第97条第1項の規定により、相手方に到達した時からその効力を生ずるものであるので、法第4条第3項又は第5条第1項の異議申出期限日までに当該分割会社に到達する必要があること。
 異議の申出に係る取扱い
 分割会社は、法第4条第1項又は第5条第1項の異議の申出を行おうとする労働者に対しては、異議の申出が容易となるような異議の申出先の指定をするとともに、勤務時間中に異議の申出に必要な行為が行えるよう配慮すること。
 また、分割会社及び承継会社等は、労働者が法第4条第1項又は第5条第1項の異議の申出を行おうとしていること又は行ったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
(3)  承継される事業に主として従事する労働者の範囲に関する事項
 分割契約等を締結し、又は作成する日における判断
(イ)  分割契約等を締結し、又は作成する日において、承継される事業に専ら従事する労働者は、法第2条第1項第1号の労働者に該当するものであること。
(ロ)  労働者が承継される事業以外の事業にも従事している場合は、それぞれの事業に従事する時間、それぞれの事業における当該労働者の果たしている役割等を総合的に判断して当該労働者が当該承継される事業に主として従事しているか否かを決定するものであること。
(ハ)  総務、人事、経理、銀行業における資産運用等のいわゆる間接部門に従事する労働者であって、承継される事業のために専ら従事している労働者は、法第2条第1項第1号の労働者に該当するものであること。
 労働者が、承継される事業以外の事業のためにも従事している場合は、上記(ロ)の例によって判断することができるときには、これによること。
 労働者が、いずれの事業のために従事するのかの区別なくしていわゆる間接部門に従事している場合で、上記(ロ)の例によっては判断することができないときは、特段の事情のない限り、当該判断することができない労働者を除いた分割会社の雇用する労働者の過半数の労働者に係る労働契約が承継会社等に承継される場合に限り、当該労働者は、法第2条第1項第1号の労働者に該当するものであること。
 分割契約等を締結し、又は作成する日で判断することが適当でない場合
(イ)  分割契約等を締結し、又は作成する日において承継される事業に主として従事する労働者であっても、分割会社が、研修命令、応援命令、一定の期間で終了する企画業務への従事命令等一時的に当該承継される事業に当該労働者を従事させた場合であって、当該命令による業務が終了した場合には当該承継される事業に主として従事しないこととなることが明らかであるものは、法第2条第1項第1号の労働者に該当しないものであること。
 また、育児等のために承継される事業からの配置転換を希望する労働者等であって分割契約等を締結し、又は作成する日以前の分割会社との間の合意により当該日後に当該承継される事業に主として従事しないこととなることが明らかであるものは、法第2条第1項第1号の労働者に該当しないものであること。
(ロ)  分割契約等を締結し、又は作成する日前において承継される事業に主として従事していた労働者であって、分割会社による研修命令、応援命令、一定の期間で終了する企画業務への従事命令(出向命令を含む。)等によって分割契約等を締結し、又は作成する日では一時的に当該承継される事業以外の事業に主として従事することとなったもののうち、当該命令による業務が終了した場合には当該承継される事業に主として従事することとなることが明らかであるものは、法第2条第1項第1号の労働者に該当するものであること。
 分割契約等を締結し、又は作成する日前において承継される事業に主として従事していた労働者であって、その後休業することとなり分割契約等を締結し、又は作成する日では当該承継される事業に主として従事しないこととなったもののうち、当該休業から復帰する場合は再度当該承継される事業に主として従事することとなることが明らかであるものは、法第2条第1項第1号の労働者に該当するものであること。
 労働契約が成立している採用内定者、育児等のための配置転換希望者等分割契約等を締結し、又は作成する日では承継される事業に主として従事していなかった労働者であっても、当該日後に当該承継される事業に主として従事することとなることが明らかであるものは、法第2条第1項第1号の労働者に該当するものであること。
(ハ)  過去の勤務の実態から判断してその労働契約が承継会社等に承継されるべき又は承継されないべきことが明らかな労働者に関し、分割会社が、合理的理由なく会社分割がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)以後に当該労働者を承継会社等又は分割会社から排除することを目的として、当該効力発生日前に配置転換等を意図的に行った場合における当該労働者が法第2条第1項第1号の労働者に該当するか否かの判断については、当該過去の勤務の実態に基づくべきものであること。
 分割会社と労働者との間で見解の相違がある場合
 法第2条第1項第1号の労働者に該当するか否かの判断に関し、労働者と分割会社との間で見解の相違があるときは、当該分割会社は、法第7条及び商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。以下「商法等改正法」という。)附則第5条並びに下記4により、当該労働者との間の協議等によって見解の相違の解消に努めるものとすること。この場合においては、次のことに留意すべきであること。なお、この協議等によっても見解の相違が解消しない場合においては、裁判によって解決を図ることができること。
(イ)  承継される事業に主として従事する労働者であって、分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがないものが、法第2条第1項の通知を適法に受けなかった場合(当該分割会社が当該労働者を当該承継される事業に主として従事していないものとして取り扱い、当該通知をしなかった場合のほか、意図的に当該通知をしなかった場合を含む。)は、当該労働者は、当該効力発生日以後においても、当該承継会社等に対してその雇用する労働者たる地位の保全又は確認を求めることができ、また、当該分割会社に対してその雇用する労働者ではないことの確認を求めることができるものであること。
(ロ)  承継される事業に主として従事しない労働者であって分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがあるものが法第5条第1項の異議の申出をした場合において、当該分割会社が当該労働者を当該承継される事業に主として従事しているため当該労働者に係る労働契約を承継会社等に承継させたものとして取り扱うときは、当該労働者は、当該効力発生日以後においても、当該分割会社に対してその雇用する労働者たる地位の保全又は確認を求めることができ、また、当該承継会社等に対してその雇用する労働者ではないことの確認を求めることができるものであること。承継される事業に主として従事しない労働者であって分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがあるにもかかわらず、法第2条第1項の通知を適法に受けなかった場合もこれに準ずるものであること。
 その他の留意事項
(イ)  分割会社は、不当労働行為の意図をもって効力発生日以後における分割会社又は承継会社等から当該労働者を排除する等の違法な目的のために、当該効力発生日前に配置転換等を行ってはならず、このような配置転換等は無効となるものであること。
(ロ)  承継される事業に全く従事していない労働者についても、会社法第5編第3章並びに第5章第2節及び第3節並びに法が適用され、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約を分割会社から承継会社等に承継させる場合には、当該労働者は法第2条第1項第2号の労働者に該当するため、同項の通知が必要であること。当該労働者が労働契約を当該承継会社等に承継されることについて反対であるときは、法第5条第1項の異議の申出ができること。会社分割の手続によらずに当該労働者の労働契約を承継会社等に承継させる場合には、民法第625条第1項が適用され、当該労働者の個別の承諾を得る必要があること。
(ハ)  労働契約のみ承継する会社分割の場合も、承継される労働者に対して上記(ロ)と同様の取扱いがされること。
(4)  労働条件等に関する事項
 基本原則
(イ)  維持される労働条件
 会社法の規定に基づき承継会社等に承継された労働契約は、分割会社から承継会社等に包括的に承継されるため、その内容である労働条件は、そのまま維持されるものであること。
 この場合において、労働協約、就業規則又は労働契約に規定されている労働条件のほか、確立された労働慣行であって分割会社と労働者との間で黙示の合意が成立したもの又は民法第92条の慣習が成立していると認められるもののうち労働者の待遇に関する部分についても、労働契約の内容である労働条件として維持されるものであること。
 また、年次有給休暇の日数、退職金額等の算定、永年勤続表彰資格等に係る勤続年数については、分割会社におけるものが通算されるものであること。
 社宅の貸与制度、社内住宅融資制度等の福利厚生に関するものについても、労働協約又は就業規則に規定され制度化されているもの等分割会社と労働者との間の権利義務の内容となっていると認められるものについては、労働契約の内容である労働条件として維持されるものであること。この場合において、その内容によって承継会社等において同一の内容のまま引き継ぐことが困難な福利厚生については、当該分割会社は、当該労働者等に対し、効力発生日以後における取扱いについて情報提供を行うとともに、法第7条及び商法等改正法附則第5条並びに下記4により、代替措置等を含め当該労働者との間の協議等を行い、妥当な解決を図るべきものであること。
 なお、法人税法(昭和40年法律第34号)附則第20条第3項の規定に基づく適格退職年金その他の外部拠出制の企業年金に係る退職年金で、事業主と金融機関等との間で締結される退職年金契約に基づき労働者に支払われるものについては、当該退職年金の内容である給付の要件、水準等が労働協約又は就業規則に規定される等、その受給権が労働契約の内容となっている場合には、会社分割によって分割会社から承継会社等に労働契約が承継される労働者の受給権は、労働条件として維持されるものであること。
(ロ)  会社分割を理由とする労働条件の不利益変更等
 労働契約の内容である労働条件の変更については、労働組合法(昭和24年法律第174号)における労使間の合意や民法の基本原則に基づく契約の両当事者間の合意を必要とすることとされていることから、会社分割の際には、会社は会社分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更を行ってはならず、また、会社分割の前後において労働条件の変更を行う場合には、法令及び判例に従い、労使間の合意が基本となるものであること。
(ハ)  会社分割を理由とする解雇
 普通解雇や整理解雇については、労働基準法(昭和22年法律第49号)第18条の2の規定が定められているとともに、判例法理が確立しており、会社は、これらに反する会社分割のみを理由とする解雇を行ってはならないこと。
 恩恵的性格を有する福利厚生に関する留意事項
 上記イ(イ)のとおり、分割会社と労働者との間の権利義務の内容となっていると認められる福利厚生については、労働契約の内容である労働条件として維持されるものであるが、このような性格を有しない恩恵的性格を有するものについては、当該分割会社は、当該労働者等に対し、効力発生日以後における取扱いについて情報提供を行うとともに、法第7条及び商法等改正法附則第5条並びに下記4により、当該労働者等との間の協議等を行い、妥当な解決を図るべきものであること。
 法律により要件が定められている福利厚生に関する留意事項
 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第9章第1節の規定に基づく厚生年金基金、確定給付企業年金法(平成13年法律第50号)第2章第3節の規定に基づく企業年金基金、健康保険法(大正11年法律第70号)第2章第2節の規定に基づく健康保険組合、勤労者財産形成促進法(昭和46年法律第92号)第6条の金融機関等、中小企業退職金共済法(昭和34年法律第160号)第6章の規定に基づく独立行政法人勤労者退職金共済機構等分割会社以外の第三者が、各法令の規定に従い福利厚生の全部又は一部を実施している場合においては、効力発生日以後における当該福利厚生の取扱いについては、会社法第5編第3章並びに第5章第2節及び第3節並びに法の規定によるもののほか、各法令の規定に従った取扱いが必要であるため、当該分割会社は、次のことに留意して、労働者等に対し、当該効力発生日以後における取扱いについて情報提供を行うとともに、法第7条及び商法等改正法附則第5条並びに下記4により、当該労働者等との間の協議等を行い、妥当な解決を図るべきものであること。
(イ)  厚生年金基金
 厚生年金基金(以下この(イ)において「基金」という。)は、厚生年金保険法第9章第1節の規定に基づき、任意に設立される法人であり、会社分割がされても、当然には分割会社の雇用する労働者を加入員とする基金から承継会社等の雇用する労働者を加入員とする基金に変更されるものではないこと。
 この場合において、基金の加入員たる分割会社の雇用する労働者であってその労働契約が承継会社等に承継されたものに対する基金が支給する年金又は一時金たる給付を継続する方法としては次のようなものがあるが、いずれも基金の規約の変更又は基金の分割若しくは新設が必要なため、主務大臣の認可が必要となるものであること。
 吸収分割の場合
(a)  承継会社に基金がある場合
 分割会社に係る基金の加入員の年金給付等の支給に関する権利義務を会社法第2条第29号の規定による吸収分割(以下「吸収分割」という。)によって事業を承継する会社(以下「承継会社」という。)に係る基金に移転させる方法又は分割会社に係る基金と承継会社に係る基金が合併する方法
(b)  承継会社に基金がない場合
 分割会社に係る基金の規約を一部改正し、承継会社を当該基金の設立事業所に追加する方法又は承継会社を適用事業所とする基金を新たに設立する方法
 新設分割の場合
(a)  分割会社に係る基金の規約を一部改正し、会社法第2条第30号の規定による新設分割(以下「新設分割」という。)によって設立する会社(以下「設立会社」という。)を当該基金の適用事業所に追加する方法
(b)  その労働契約が設立会社に承継される労働者に関して分割会社に係る基金を分割し、設立会社を適用事業所とする基金を新たに設立する方法
 なお、承継会社が企業年金基金を設立している場合には、分割会社に係る厚生年金基金の加入員の年金給付等の支給に関する権利義務を当該企業年金基金に移転することが可能であること。
(ロ)  基金型企業年金
 確定給付企業年金のうち基金型企業年金は、確定給付企業年金法第2章第3節の規定に基づき任意に企業年金基金を設立して実施するものであり、基本的には上記(イ)の厚生年金基金の場合と同様の対応となること。
 なお、確定給付企業年金のうち規約型企業年金については、分割会社以外の第三者がその全部又は一部を実施している場合に該当せず、当該規約型企業年金の内容である給付の要件、水準等を規定する規約が労働協約に該当する等その給付の支給に関する権利義務が労働契約の内容となっている場合には、会社分割によって分割会社から承継会社等に労働契約が承継される労働者の給付に関する権利は、労働条件として維持されるものであること。
 また、承継会社が厚生年金基金を設立している場合には、分割会社に係る確定給付企業年金の加入者の年金給付等の支給に関する権利義務を当該厚生年金基金に移転することが可能であること。
(ハ)  健康保険組合
 健康保険組合は、健康保険法第2章第2節の規定に基づき対象事業所を基礎として任意に設立される法人であり、基本的には上記(イ)の厚生年金基金の場合と同様の対応となること。
(ニ)  財産形成貯蓄契約等
 財産形成貯蓄契約等(財産形成貯蓄契約、財産形成年金貯蓄契約及び財産形成住宅貯蓄契約をいう。以下同じ。)は、勤労者と金融機関等が当該勤労者の財産形成に関し締結する契約であり、その契約の締結の際勤労者は、勤労者財産形成促進法第6条第1項第1号ハ等により事業主と賃金控除及び払込代行について契約を締結するものとされており、当該契約は、労働契約の内容である労働条件として維持されるものであること。したがって、会社分割によって分割会社から承継会社等に労働契約が承継される場合、当該契約に基づく賃金控除及び払込代行を行う義務も承継会社等に承継されることとなるため、当該承継される労働契約に係る労働者は、当該財産形成貯蓄契約等を存続させることができるものであること。なお、この場合、当該承継会社等の事業場において労働基準法第24条第1項の労使協定があることが必要となるものであること。また、承継会社等は金融機関等との間で所定の手続を行う必要があること。
(ホ)  中小企業退職金共済契約
 中小企業退職金共済契約は、中小企業退職金共済法第2章の規定に基づき、中小企業者(共済契約者)が、各従業員(被共済者)につき、独立行政法人勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)と締結する契約であり、当該中小企業者が機構に掛金を納付し、機構が当該従業員に対し退職金を支給することを内容とするものであること。また、当該従業員が機構から退職金の支給を受けることは、当該中小企業者と当該従業員との間の権利義務の内容となっていると認められ、労働契約の内容である労働条件として維持されるものであること。また、会社分割により事業主が異なることとなった場合であっても、当該会社分割によって労働契約が分割会社から承継会社等に承継される従業員について、共済契約が継続しているものとして取り扱うこととなるものであること。なお、この場合、承継会社等は機構との間で所定の手続を行う必要があること。
 3  労働協約の承継に関して講ずべき措置等
(1)  分割会社と労働組合との間の合意に関する事項
 合意の時期
 法第6条第2項の分割会社と労働組合との間の合意については、分割契約等の締結前又は作成前にあらかじめ労使間で協議をすることにより合意しておくことが望ましいこと。
 労働協約の取扱い
(イ)  法第6条第2項の合意がある場合の取扱い
 会社法及び法第6条第1項の規定に基づき労働協約を分割会社から承継会社等に承継させる旨が分割契約等に定められた場合であって、労働組合法第16条の基準以外の部分に関する法第6条第2項の合意がなされたときは、当該合意に係る部分に限り、当該労働協約は、当該効力発生日に、分割会社から承継会社等に承継されるものであること。
 法第6条第2項の合意は、労働組合法第16条の基準以外の部分の全部又は一部の承継について行うことができるものであること。例えば、「「会社は、労働組合に対し100平方メートルの規模の組合事務所を貸与する。」という労働協約の内容のうち40平方メートル分の規模の組合事務所を貸与する義務については当該会社に残し、残り60平方メートル分の規模の組合事務所を貸与する義務については承継会社に承継させる。」という内容の分割契約等の定め及び合意も可能であること。
(ロ)  法第6条第2項の合意がない場合の取扱い
 労働組合法第16条の基準以外の部分に関する法第6条第2項の合意がないときは、当該部分に関しては、法第6条第3項の規定により、分割会社は、効力発生日以後も労働協約の当事者たる地位にとどまり、当該労働組合の組合員に係る労働契約が承継会社等に承継されるときは、当該承継会社等は、当該労働協約と同一の内容を有する労働協約の当事者たる地位に立つこととなるものであること。この場合、当該承継会社等には、当該労働協約に係る権利義務関係の本旨に従った権利又は義務が生じることとなるものであること。
(ハ)  労働組合法第16条の基準に関する部分の取扱い
 労働組合法第16条の基準に関する部分については、会社法及び法第6条第1項の規定に基づき労働協約を分割会社から承継会社等に承継させる旨が分割契約等に定められた場合であっても定められなかった場合であっても、法第6条第3項の規定により、当該分割会社は、当該効力発生日以後もなお当該労働協約の当事者たる地位にとどまり、当該労働組合の組合員に係る労働契約が承継会社等に承継されるときは、当該承継会社等は、当該労働協約と同一の内容を有する労働協約の当事者たる地位に立つこととなるものであること。
(2)  承継会社における既存の労働協約との関係
 労働協約は使用者と労働組合との間で締結されるものであることから、一の会社にその所属する労働組合が異なる労働者が勤務している場合には、同一の事項に関し、各労働組合ごとに内容の異なる労働協約が締結され、併存する場合もあり得るものであること。
 したがって、吸収分割の場合であって、法第6条第3項の規定により分割会社との間で締結されている労働協約と同一の内容の労働協約が承継会社と当該労働組合との間で締結されたものとみなされるときは、当該承継会社が同一の事項に関して複数の労働組合と内容の異なる労働協約を締結したこととなるため、同種の労働者の中で労働条件が異なることは起こり得ること。
(3)  組織要件が効力発生要件とされている労使協定等
 労働組合法第17条の一般的拘束力等
 労働組合法第17条の一般的拘束力については、その要件として、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったとき」でなければならないこととされており、効力発生日前に分割会社の工場事業場において労働組合法第17条が適用されていた場合であっても、当該会社分割の際に当該要件を満たさなくなった分割会社又は承継会社等の工場事業場においては、労働組合法第17条は適用されないこと。
 労働組合法第7条第1号ただし書のいわゆるショップ制に係る労働協約についても同様であること。
 労働基準法上の労使協定
 労働基準法第24条、第36条等の労使協定については、民事上の権利義務を定めるものではないため、分割会社が分割契約等に定めることにより承継会社等に承継させる対象とはならないものであること。これらの労使協定については、会社分割の前後で事業場の同一性が認められる場合には、引き続き有効であると解され得るものであること。事業場の同一性が失われた場合は、該当する労働基準法上の免罰効が失われることから、当該効力発生日以後に再度、それぞれの規定に基づいて労使協定を締結し届出をする必要があるものであること。
 4  労働者の理解と協力に関する事項
(1)  商法等改正法附則第5条の協議
 労働者との事前の協議
 商法等改正法附則第5条の規定により、分割会社は、法第2条第1項の規定による通知をすべき日(以下「通知期限日」という。)までに、承継される事業に従事している労働者と、会社分割に伴う労働契約の承継に関して協議をするものとされていること。
 分割会社は、当該労働者に対し、当該効力発生日以後当該労働者が勤務することとなる会社の概要、当該労働者が法第2条第1項第1号に掲げる労働者に該当するか否かの考え方等を十分説明し、本人の希望を聴取した上で、当該労働者に係る労働契約の承継の有無、承継するとした場合又は承継しないとした場合の当該労働者が従事することを予定する業務の内容、就業場所その他の就業形態等について協議をするものとされていること。
 法第7条の労働者の理解と協力を得る努力との関係
 当該協議は、承継される事業に従事する個別労働者の保護のための手続であるのに対し、法第7条の労働者の理解と協力を得る努力は、下記(2)のとおり、会社分割に際し分割会社に勤務する労働者全体の理解と協力を得るためのものであって、実施時期、対象労働者の範囲、対象事項の範囲、手続等に違いがあるものであること。
 労働組合法上の団体交渉権との関係
 会社分割に伴う労働者の労働条件等に関する労働組合法第6条の団体交渉の対象事項については、分割会社は、当該協議が行われていることをもって労働組合による当該会社分割に係る適法な団体交渉の申入れを拒否できないものであること。
 協議に当たっての代理人の選定
 労働者が個別に民法の規定により労働組合を当該協議の全部又は一部に係る代理人として選定した場合は、分割会社は、当該労働組合と誠実に協議をするものとされていること。
 協議開始時期
 分割会社は、通知期限日までに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて協議を開始するものとされていること。
 会社分割の無効の原因となる協議義務違反
 商法等改正法附則第5条で義務付けられた協議を全く行わなかった場合又は実質的にこれと同視し得る場合における会社分割については、会社分割の無効の原因となり得るとされていることに留意すべきであること。
(2)  法第7条の労働者の理解と協力を得る努力
 内容
 分割会社は、法第7条の規定に基づき、当該会社分割に当たり、そのすべての事業場において、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との協議その他これに準ずる方法によって、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとすること。
 「その他これに準ずる方法」としては、名称のいかんを問わず、労働者の理解と協力を得るために、労使対等の立場に立ち誠意をもって協議が行われることが確保される場において協議することが含まれるものであること。
 対象事項
 分割会社がその雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める事項としては、次のようなものがあること。
(イ)  会社分割をする背景及び理由
(ロ)  効力発生日以後における分割会社及び承継会社等の債務の履行に関する事項
(ハ)  労働者が法第2条第1項第1号に掲げる労働者に該当するか否かの判断基準
(ニ)  法第6条の労働協約の承継に関する事項
(ホ)  会社分割に当たり、分割会社又は承継会社等と関係労働組合又は労働者との間に生じた労働関係上の問題を解決するための手続
 労働組合法上の団体交渉権との関係
 会社分割に伴う労働者の労働条件等に関する労働組合法第6条の団体交渉の対象事項については、分割会社は、法第7条の手続が行われていることをもって労働組合による当該会社分割に係る適法な団体交渉の申入れを拒否できないものであること。
 開始時期等
 法第7条の手続は、遅くとも商法等改正法附則第5条の規定に基づく協議の開始までに開始され、その後も必要に応じて適宜行われるものであること。
 5  その他
(1)  安全衛生委員会等従業員代表を構成員とする法律上の組織に関する事項
 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第19条の安全衛生委員会等法令上企業又は事業場規模が設置要件となっている委員会等については、効力発生日以後に設置要件を満たさなくなった場合であっても、分割会社及び承継会社等において当該効力発生日前と同様の委員会等を設置することが望ましいこと。
(2)  派遣労働者の取扱い
 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)の規定に従い派遣労働者が分割会社に派遣されている場合であって、当該派遣労働者に係る労働者派遣契約が当該分割会社から承継会社等に承継されたときには、当該承継会社等が派遣先の地位を承継することとなることから、同法第40条の2、第40条の3等の派遣労働者を受け入れる期間に係る規定の適用に当たっては、当該期間は、効力発生日前の分割会社における期間も通算して算定されるものであること。
(3)  船員の取扱い
 船員法(昭和22年法律第100号)の規定による労使協定及び船員災害防止活動の促進に関する法律(昭和42年法律第61号)第11条の安全衛生委員会についても、労働基準法上の労使協定及び労働安全衛生法上の安全衛生委員会に関する取扱いと同様の取扱いをすること。
(4)  雇用の安定
 分割会社及び承継会社等は、効力発生日以後における労働者の雇用の安定を図るよう努めること。

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