医療

 我が国の医療提供体制は、国民皆保険制度とフリーアクセスの仕組みの下、国民が必要な医療を受けることができるよう整備が進められ、国民の健康を確保するための重要な基盤となっています。
 一方で、医療をめぐる環境は、急速な少子高齢化の進展、医療技術等の進歩、安全で安心できる医療を求める国民の要請など大きく変化してきており、安定的で持続可能な医療保険制度を構築するとともに、安全、安心で、より質の高い効率的な医療サービスを提供するための改革を推進することが求められています。
 このため、医療保険制度については、閣議決定した「基本方針」に基づき、保険者の再編・統合、新たな高齢者医療制度の創設等について、現在、検討が進められています。また、医療提供体制についても、「医療提供体制の改革のビジョン」に即して、「患者の視点の尊重」、「医療機関の機能分化、連携」等の観点から、質が高く効率的な医療提供体制の実現に向けた改革の議論が行われています。説明会では、こうした議論について皆さんと率直な意見交換ができればと考えています。


 働き方

 現在、我が国では急速な少子高齢化といった人口構造の変化や経済社会の変化に伴う企業間競争の激化が進む中で、労働者の働き方も多様化しているところです。例えば、労働時間に関しては「長短二極化」という状況が進展しています。これは、企業間競争の激化などを背景に、短時間労働者とともに著しい長時間労働者も増加し、その中間の者が減少するという状況であり、この結果、過重労働に伴う健康障害の問題や、労働者が仕事と育児・介護や自己啓発などの生活とをバランス良く組み合わせることを希望する場合への対応などの課題が生じています。この他にも、単身赴任や複数就業者(いわゆる、「二重就職者」)の増加など、多様化する就業形態に合わせた労働者の保護の在り方についても、新たな取り組みが必要となっています。

このような状況に対して、今後とも我が国の労働者の健康や生活を充実したものとし、我が国の経済社会の成長を持続可能なものとするために、労働者の健康や生活に配慮した労働時間等の設定が行われるような体制の整備や、長時間労働を行った労働者に対するメンタル面も含めた健康対策の充実など、労働者の意欲・能力が十分に発揮できる環境の構築を進めるとともに、労働者が納得・安心して働くことができるような、働き方に関する包括的なルール(いわゆる、「労働契約法制」)の整理・整備を行うための検討を進めるなど、多様な働き方に対応する制度の充実を図っているところです。

今回の説明会では、上記のような状況・制度についてご紹介することで、皆さんが近い将来必ず直面することになる「働き方」について考えていただく際の参考になれば幸いです。

 介護

 現在、急速に高齢化が進む中で、特に「団塊の世代」が高齢者となる10年後には、急激に高齢化が進展することとなり、このような状況を踏まえれば、我が国は、今後の高齢者保健福祉施策の在り方を決めていく極めて重要な時期に来ています。平成12年度から始まった要介護の高齢者を支える介護保険の施行状況は、サービス利用者数は在宅サービスを中心に大きく伸び、また、「家族の負担が軽減した」など国民からの評価も徐々に高まってきています。
 一方、今後要介護者が急速に増大し、また、(「痴呆」改め)「認知症」や独居の高齢者も増大していくため、これまでの介護の仕組みを見直し、「総合的な介護予防システムの確立」や「認知症ケア」、「地域ケア」の推進を図るという課題や、総費用の急速な増大に対する「制度の持続可能性」の確保が重要な課題となっています。
 現在、介護保険は施行5年後の見直しを行う時期にあり、これらの課題に対応できるよう、幅広い関係者からの意見を伺いながら検討を行っています。ついては、次期通常国会には、認知症や独居の高齢者が住み慣れた地域で生活が継続できるような「新たなサービス体系の確立」などを含む法案を提出することとしており、こういった内容も含めて、参加者の皆様にはご説明・ご紹介できればと考えております。


  障害者

 「障害者」について、皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。
 日本選手団が大活躍した昨年のアテネパラリンピックを思い出す人もいれば、盲導犬の物語や手話を使うドラマの主人公を思い浮かべる人もいるかもしれませんね。「障害者」と一口にいっても、身体障害・知的障害・精神障害というように種類やその程度は様々ですし、また、芸術の分野で活躍する人もいれば工場で働く人もいて、一人ひとり、必要としている支援も違います。
 ですから、厚生労働省は、現在、福祉の原点に立ち返って、ともすると弱い立場に置かれがちな障害者を、単に保護するのではなく、働くことも含めて社会の中で自分らしく生きていくことができるように支援することをねらいとして、障害者施策の改革を進めています。
 具体的には、これまで障害種別や年齢ごとに分かれていた施設や事業の体系を再編し、一つの共通した制度のもとで市町村が福祉サービス等を提供する仕組みとするほか、公平で安定的な制度とするために、利用者にサービスの利用量と所得に応じた負担を求めつつ、国の財政責任を明確化することとしています。このように、障害のある方の一人ひとりに合った支援を目指して、制度が抜本的に変わろうとしています。

 今回の説明会では、旧厚生省の「福祉」と旧労働省の「雇用」との連携が進み、新しい仕組みが作られつつある、いま一番「厚生労働省らしい」分野である障害者施策の現状とこれからの方向性について、お話したいと思います。


 次世代育成

 急速な少子化の進行は、我が国の経済社会全般に深刻な影響を与えるものであり、これまでも様々な取組を進めていましたが、その流れを変えるには至っておりません。今後は、こうした流れを変えるため、「待機児童ゼロ作戦」をはじめ、働き方の見直しや教育、まちづくり等の分野も含め、国全体で総合的に取り組んでいくことが必要です。
 このため、各地方公共団体や企業においては、今年3月までに次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を作成することとされており、国においては、「少子化社会対策大綱」に基づき昨年末に策定した「子ども・子育て応援プラン」により、これらの行動計画の達成に向けた様々な支援を行うこととしています。
 「子ども・子育て応援プラン」においては、大綱に掲げる4つの重点課題に沿って、@「若者の自立」から、A「働き方の見直し」、B「生命や家庭の大切さへの理解」、そしてC「地域の子育て支援」までの幅広い分野において、具体的な施策内容と目標を提示しています。また、おおむね十年後を展望した「目指すべき社会の姿」も掲げ、それに向けて施策の内容や効果を評価しながら、平成21年度までの5年間に必要な施策を重点的に実施することとしています。
 こうした取組を通じて、国民に子どもを生み育てやすい環境整備が着実に進められているとの実感を持ってもらえるよう、国全体で取り組んでいくこととしています。
 説明会では、女性、子ども、家族にとって何が真に幸せか、参加者の皆様と一緒に考えてみたいと思います。


 雇用

 最近の我が国の雇用失業情勢は、厳しさが残るものの、完全失業率は低下傾向にあり、有効求人倍率も上昇しているなど総じて改善しています。
 その一方で、フリーターが増加し続けていることや障害者の雇用は厳しい状況が続いていること、地域の雇用情勢については格差がみられることなどの従来からの課題に加えて、近年、働かず教育も訓練も受けていない若年者(いわゆる「ニート」)の増加が、新たな問題として社会問題化していることなど対処すべき課題も存在しています。
 また、少子・高齢化の進行等による労働力人口の減少は、経済活力の低下など我が国の経済社会の在り方に大きな影響を与えるものと考えられており、中長期的な視野に立って、取り組まなければならない課題となっています。
 厚生労働省では、雇用のセーフティネットとして国の役割を十分に発揮するため、ハローワークにおける求職者の個々の状況に応じた就職支援や雇用保険の運営を着実に行うことに加え、上記の課題を解決していくために、働く意欲の不十分な若年者に働く意欲を喚起するための施策や、地域が自発的に創意工夫を活かしながら雇用創造に取り組むことに対する支援などを行っています。また、今後は、精神障害者も含めた障害者に対する就労支援や雇用・福祉の連携による障害者対策を推進するための制度改正も行うこととしています。
 今回の説明会では、雇用を取り巻くこれら様々な状況について皆様にご紹介し、雇用について考える一つのきっかけにして頂ければと考えています。


 年金
 産業構造が変化し、都市化、核家族化が進行してきた日本では、従来のように家族内の私的扶養により高齢となった親の生活を支えることは困難となり、社会全体で高齢者を支える社会的扶養(世代間の支え合い)の仕組みが必要です。
 年金制度は、こうした社会的扶養の仕組みであり、将来にわたり受け継いでいくべきものと考えています。
 昨年の制度改正では、少子高齢化の急速な進行による保険料収入の減少や平均寿命の伸長等に対応するため、厚生年金や国民年金といった公的年金制度を持続可能で、国民に安心される制度とするため、負担と給付を両面から大きく見直しました。
 具体的には、@保険料の引上げ、年金財源に占める税の割合の拡大(基礎年金の国庫負担割合の引上げ)、積立金の活用などにより、保険料収入などの減少に対応[負担面の改正]し、A被保険者数の減少などに応じて給付水準を調整する仕組み(いわゆる「マクロ経済スライド」)の導入[給付面の改正]を行いました。
 今後は、まず、この改正を確実・円滑に進めて行くとともに、改正法に沿って、年金財源に占める税の割合(「基礎年金の国庫負担割合」)のさらなる引上げを行います。また、引き続く課題である公的年金一元化については、昨年からの「社会保障の在り方に関する懇談会」での検討も踏まえ、政府一体となって議論・検討していくこととしています。
 年金制度については皆さんも様々な御意見を持っていると思いますので、説明会では、皆さんの疑問にお答えするとともに、率直な意見交換ができればと考えています。


 社会保障改革

 年金、医療、介護、生活保護などの社会保障制度は、病気やけが、失業、介護など個人の責任や自助努力では対応し難いリスクに対して、社会全体で支え合って保障する仕組みです。我が国の社会保障制度は、これまでの制度の充実により、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるいわば「セーフティネット」として重要な役割を果たしてきました。
 一方、現在、我が国では、少子高齢化の急速な進行や個人個人のライフスタイルの多様化、非常に厳しい財政状況など、社会保障制度を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。また、昨年行われた世論調査では、政府に対する今後の要望として「医療・年金等の社会保障構造改革」の割合がトップになっており、社会保障改革に対する国民の期待が高まっています。いまや、小泉内閣の構造改革のテーマの中でも、我が国の社会保障制度を将来にわたって安心して運営していくことを目指す「社会保障構造改革」が大きなテーマとなっています。
 こうしたことを背景に、昨年七月、内閣官房長官の下に「社会保障の在り方に関する懇談会」が設けられ、社会保障制度全般について、制度横断的な観点からの一体的な見直しの議論が開始されました。社会保障の一体的見直しに当たっては、まずは、現在の年金、医療、介護など各制度において、同じような重複した給付が行われていないか、非効率な運営がなされていないかなど、給付の一層の効率化を図ることが重要です。その上で、我が国の経済や財政との均衡にも配慮しながら、負担の問題も含めた制度全体の再設計を考えていく必要があります。
 国民が安心して暮らすことができる社会保障制度の構築に向け、将来の姿をどう描いていくのか、参加者の皆様と一緒に考えてみたいと思います。