平成22年度 第1回水道における微生物問題検討会議事録     日  時:平成22年10月12日(火)14:00〜16:00   場  所:中央合同庁舎7号館9階金融庁904会議室   出席委員:遠藤座長、秋葉委員、泉山委員、片山和彦委員、片山浩之委員、    勝山委員、国包委員、黒木委員、西村委員、福井委員、船坂委員   出席説明員:猪又説明員、金見説明員、竹内説明員、溝口説明員 ○松田室長補佐  それでは、定刻となりましたので、ただいまから「平成22年度第1回水道におけ る微生物問題検討会」を開催いたします。委員の皆様方には、御多忙中にもかかわら ず、御出席いただきまして大変ありがとうございます。  本日の出席状況でありますけれども、現時点で9名の委員の方に出席をいただいて おります。片山和彦先生は、本日出席されると聞いておりますが、遅れているという ことだと思います。また、西村委員は、30分遅れるという連絡がございました。  また、本日の検討会では、委員の方以外に、遺伝子検出法のバリデーションについ て協力いただいた検査機関の研究者の方に出席いただいておりますので、御紹介いた します。  まず最初に、東京都健康安全研究センター環境保健部・猪又主任研究員でございま す。 ○猪又説明員  よろしくお願いします。 ○松田室長補佐  次に、東京都水道局水質センター検査課・金見係長でございます。 ○金見説明員  よろしくお願いします。 ○松田室長補佐  次に、財団法人岐阜県公衆衛生検査センター生物臨床検査課・溝口係長でございま す。 ○溝口説明員  よろしくお願いします。 ○松田室長補佐  次に、愛媛県立衛生環境研究所・竹内主任研究員でございます。 ○竹内説明員  よろしくお願いします。 ○松田室長補佐  また、事務局の水道水質管理室におきまして異動がございまして、7月27日に着 任した松本水道水質管理官よりごあいさつ申し上げます。 ○松本管理官  ただいま紹介されました松本でございます。  クリプトスポリジウム対策につきましては、皆さんよく御存じのように、平成19 年3月に対策指針が定められておりまして、体系的な対策がとられているところでご ざいますが、その管理体制のかなめとなりますクリプトスポリジウムの検査方法につ きましては、より簡便で効率的な方法として遺伝子検査法への期待が高まっていると ころであります。  本日、御協力いただいた検査機関の皆様と専門の先生方で活発な御議論をいただく ことによりまして、確実な検査方法の開発が進むものと期待しておりますので、どう ぞよろしくお願いいたします。 ○松田室長補佐  続きまして、事務局のメンバーも変わっておりますので、その変わったメンバーを 紹介したいと思います。  私の隣に座っております基準係長の橋口でございます。 ○橋口係長  橋口です。よろしくお願いいたします。 ○松田室長補佐  また、松本水道水質管理官の隣に古林でございます。 ○古林技官  古林でございます。よろしくお願いいたします。 ○松田室長補佐  次に、お手元の配付資料でございますけれども、議事次第に配付資料一覧を記載し てございます。読み上げます。  資料1「遺伝子検出法のバリデーションの進捗について」。  資料2「遺伝子検出法検討の詳細について」  資料3「遺伝子検出法の現時点における評価及び今後の取組について」。  また、参考資料を3つほど用意しております。  なお、資料2につきましては、遺伝子検出法のバリデーションに協力いただいた検 査機関の方が作成した資料を基に、泉山委員に編集いただいたものでございます。  また、資料3につきましては、泉山委員からの提出資料でございます。  資料の不足等ございましたら、事務局にお申し付けいただくようお願いいたします。  マスコミの方におかれましては、恐縮ですが、カメラ撮りは会議の冒頭のみとさせ ていただいておりますので、御協力をお願いいたします。  それでは、これ以降の議事進行は座長の遠藤先生にお願いしたいと思います。よろ しくお願いいたします。 ○遠藤座長  遠藤でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。  それでは、早速議事に入りたいと思います。本日の議題はクリプトスポリジウム等 の遺伝子検出法のバリデーションの進捗状況についてです。  昨年、3月23日に開催されました本会議で、クリプトスポリジウムの検査法に関 して、各検査機関に御協力いただきながら、遺伝子検出法のバリデーションを進めて いく方針を御了解いただいたと思います。前回の会議から少し日が空きましたので、 事務局から前回の検討会資料で確認された方針等を御紹介いただくとともに、遺伝子 検査法のバリデーションの進捗状況につきまして御説明をいただきたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○松田室長補佐  それでは、事務局から資料1「遺伝子検出法のバリデーションの進捗について」、 説明します。あわせて、参考資料3として、前回の検討会資料の検討の進め方という ものがございますので、こちらの方についても若干触れさせていただきたいと思いま す。  それで、経緯でございますが、前回の検討会におきまして、遺伝子検出法と粉体ろ 過法が検査法として妥当か検証していくということで、複数の協力機関で試料の検査 を実施して、その結果について、この検討会で評価をしていくということが適当とさ れたところでございます。  これを受けて、本検討会に参加する委員が所属する機関、及び本日出席していただ いている機関の方に協力を依頼いたしまして、河川水を用いた遺伝子検出法や粉体ろ 過法に関する検査を実施し、バリデーション結果の検証作業を進めていただいてきた ところでございます。  具体的には、泉山委員の方から、協力いただける機関に対して、標準試料、試薬、 機材などの送付を行っていただいた上で、前回の検討会資料に示される遺伝子検出法 の概要及び手順、またバリデーションの進め方に沿って、検査機関に検査を依頼・実 施していただいた。それで検査結果、精度、感度、再現性などに関する評価書を作成 いただいたところでございます。  その検討の進め方につきましては、参考資料3に記載しておりますが、こちらの中 の2ポツの遺伝子検出法の評価のポイントとして、検査表の感度・精度、また検鏡法 と比較した十分な感度、クリプトスポリジウムが少数の場合の検出可能性、繰り返し 試験による再現性など、こういった点について評価を行っていただいたということで ございます。  また、資料1に戻りまして、この検査法の検証には多くの機関の意見を取り入れる ことが望ましいということで、この遺伝子検出法についての各機関の検証結果を示し ているということでございます。なお、粉体ろ過法のバリデーションにつきましては、 現在、分析機関において検査中ということでございますので、評価書が作成され次第、 今後この検討会に提出したいということでございます。  それで、バリデーションの進捗でございますが、このバリデーションについて協力 いただいた機関において、検量線あるいは感度の確認作業から開始して、試験環境の 整備を図っていただく。これをまず第1に、次のステップとして、添加回収試験、さ らに河川等実試料からの検査を行い、検鏡法と遺伝子検出法の比較を行っております。  この現時点での結果を一覧表にまとめておりまして、2枚目の資料に付けておりま す。  協力機関のバリデーション進捗一覧表ということで、8つの協力機関ごとにLAM P法とRT−PCR法、また、それぞれクリプトスポリジウムとジアルジアがあるわ けですが、それについての進捗状況を付けさせていただいております。  この注意書きに書かれていますが、横バーが未実施。1が、感度試験を実施して、 高感度な検出が可能であるか確認した。2が、添加回収実験を行った。3が、河川等 実試料により検出を行った。また、検鏡法と比較した。4番目に、RT−PCR産物 の塩基配列を決定したということで、1から4にかけて、作業が進捗すれば4に行く ということで、それぞれの機関において進捗状況が異なりますが、こういった作業を 行っていただいているところでございます。  戻りまして、こういった一覧表にまとめられた内容にもお示ししていますが、協力 機関の方で、もともと行っている業務との兼ね合いというのもございますので、それ ぞれクリプトスポリジウム、ジアルジア、またLAMP法、RT−PCR法、いずれ かを主とすることで作業負担を抑えながら協力いただいてきたということでござい ます。  ただ、ジアルジアの添加回収試験に使用したシストの活性が余りよい状態ではなか ったということで、一部は参考結果にとどまるものもあったということでございまし た。  とりあえず、資料1については以上でございます。 ○遠藤座長  ありがとうございました。  それでは、今回御協力いただいた検査機関の方々に、遺伝子検査法に関する検証結 果と、その評価について御説明いただきたいと思います。また、委員の皆様には、そ れを受けて御議論いただきたいと思います。  最初に、このバリデーションの評価に当たりまして、各機関から提出いただいた資 料の編集等を行っていただきました泉山委員に、実験条件や、資料の編集方針につい て、まず御説明いただき、その後で各検査機関から検査結果の内容について御報告い ただきたいと思います。  泉山委員、お願いいたします。 ○泉山委員  泉山です。よろしくお願いします。資料2を用いて御説明申し上げます。「遺伝子 検出法検討の詳細について」というタイトルが付いております。  1.提供した消耗品として、以下のような試薬等を使っております。遺伝子検出試 薬として、このような列挙してある市販のキットを使ったというわけです。あとは、 この列挙した以外に、自家製の試薬を使われた、検討されたという場合もございます。  2番目、標準試料としまして、クリプトスポリジウムのオーシスト、あるいはジア ルジアシストを配付しております。これは冷凍したもの、あるいは紫外線照射をして 不活化をした後に、添加回収用としてお送りした精製標品がございます。冷凍品が主 に感度試験に使われたり、紫外線照射したものが添加回収実験に使われたりというよ うに使い分けています。  それから、かなり細かく書いてありますけれども、TE緩衝液を始めとして、 Proteinase Kといった核酸抽出の試薬をお渡ししてあります。  それから、そのほかの消耗品として、クリプトスポリジウム、ジアルジア等を精製 するのに使う免疫磁気ビーズ等、あとは通常のプラスチックチューブ等をお送りして あります。  2番の実験条件としまして、LAMP法あるいはRT−PCR法を用いております。 検証について、これは試料水を濃縮して免疫磁気ビーズ法を行ってクリプトスポリジ ウム等を精製しております。精製したクリプトスポリジウムから凍結融解を行って、 Proteinase K溶解処理を行って核酸を抽出しています。抽出核酸の一部を用いて遺伝 子増幅反応を行い、増幅の有無を判定しました。  検証の流れに関して、3月の会議の内容から多少の変更が行われております。添加 回収試験は5機関で実施していただいたのですけれども、免疫磁気ビーズの後に添加 するという、評価として一番簡単な評価の方法もあったのですけれども、それだけで はなくて、免疫磁気ビーズの直前に添加したり、試料水への添加回収試験も行われま した。濃縮精製を含む評価も行われたということになります。  また、実試料を用いた検討が3機関において実施されました。これは、河川水中か らクリプトスポリジウム等を検出して、顕微鏡検査の結果と遺伝子検査の結果を比較 したものになります。  フローというところを見ますと、この検査法の一連の流れが紹介してあります。  上水20リットル、あるいは原水10リットルを試料として濃縮します。濃縮が終わ ったら、免疫磁気ビーズ法による精製を行います。特に遺伝子増幅の際には、夾雑物 による反応阻害が生じてしまいますので、洗浄操作を徹底していただくということが あります。  核酸抽出については、繰り返しになりますけれども、凍結融解をしてクリプトスポ リジウム等を破壊。その後にProteinase K反応液を使って酵素で溶解反応を行います。 その後に超音波処理を行って物理的な破壊を徹底したり、再加熱を行って溶解を徹底 するという操作の後に、95℃、5分間の熱処理と急冷。これによって酵素の失活ある いは核酸を変性状態にするということをしています。最後に遠心、フラッシュを行っ て、上清を核酸抽出液として遺伝子検出に使用します。  遺伝子増幅反応は、通常試薬20マイクロリットルに対して、核酸抽出物、ここで 5マイクロリットルと書いてあるのですけれども、大体1から5マイクロリットル程 度ということで、混合して反応を行います。  判定を行って、LAMP法の場合は濁度、PCR法の場合は蛍光を指標に装置で読み 取り、標的遺伝子の存在を判断しました。  最後に、得られた結果についてまとめる作業は、3.資料の編集方針に基づき行な いました。  協力機関の検証作業の経過は、電子メール等で私まで御連絡いただき、必要により 技術的な助言を行って検証が適切に行われるように努めました。各機関において検証 を行っていただいた際に、当該機関で当初予定していた検証方法、実際には修正を加 えて実施された機関、あるいは労力等の制約があって検証の範囲が限定されてしまう という場合もあり、結果は残念ながら必ずしも一律ではなく横並びで比較するもので はなくなっているのですけれども、それはともかくとして、検証シートの書式に記入 していただくことで、表記を統一して見やすい形にまとめてあります。  そして、各機関が作成された検証シートですが、これを私まで電子メール等で送付 していただいて、必要によって表記の改善・修正等の助言を行って、最終的な内容の 判断は各施設においてなされたものとなります。  以上でございます。 ○遠藤座長  ありがとうございました。  それでは、早速ですが、各機関からの御説明をお願いしたいと思いますが、説明の 順番は資料1の2ページ目にございます表の順番に沿っていきたいと思います。  東京都健康安全研究センターの猪又さんからお願いいたします。 ○猪又説明員  それでは、御報告いたします。  まず初めに、検証結果の概要ですが、私たちは浄水、水道原水あるいは養豚場の排 水といった約100試料を用いまして、それぞれについて顕微鏡法、LAMP法、RT −PCRを行い、それらの結果を比較しました。抽出試料は、20マイクロリットルで 行ったものをLAMP法とRT−LAMP法が当初5マイクロリットルで、その後阻 害の影響を見るためにRT−LAMP法については1マイクロリットルで行ってお ります。  その結果、1マイクロリットルで行ったRT−LAMP法の結果が一番陽性率が高 く、阻害回避の効果が認められたので、1マイクロリットルでの反応がよいではない かと考えられました。  顕微鏡法、LAMP法、RT−PCR法は、それぞれほぼ同等の結果が得られました。 時に不一致となることもありましたが、もともとのオーシストやシストの数が環境サ ンプルということもあって少ないので、試料を最初に10リットルずつに分割してか ら、それぞれ検鏡あるいは遺伝子検査に持っていく際の確率の問題が大きいのではな いかと考えられました。  糞便汚染の強い畜産排水試料からは、顕微鏡法の結果が陽性にもかかわらず、遺伝 子検査が陰性となることが時々見られ、若干阻害が生じたと考えられました。これに つきましては、RT−LAMP法に使う試料を1マイクロリットルとすることで、陰 性となる遺伝子検査の試料数を減らすことができましたので、ある程度の阻害回避が できることを確認しました。  顕微鏡法と遺伝子検査法の結果を比較しますと、遺伝子検査の方が陽性率が高いと いう傾向がありました。RT−LAMP法とRT−PCR法で結果が一致することが 多く、この結果から、違う遺伝子のところを見ていても同じ結果が出るということな ので、偽陽性ではなく、正しい結果が出ていると考えられました。また、PCR産物の 塩基配列の決定では、クリプトスポリジウムからはクリプト、ジアルジアからはジア ルジアのそれぞれの塩基配列が得られたことからも、遺伝子検査法の結果が正しいと いうことが示唆されました。  以上が概要です。  次の試験詳細のところですが、試料水の概要は、先ほど申しましたように、実際の 環境試料を100検体ほど使っております。  濃縮方法は、PTFEフィルター法で行いました。  分析操作と遺伝子検出法は、先ほど泉山委員のおっしゃったとおりの試薬を使って おります。  その他特記事項のところで、逆転写反応を行う場合と行わない場合を比較したとあ りますが、当初はDNAを対象としたLAMP法を行い、その後逆転写を入れたRT −LAMP法を行って、両者の結果を比較しております。更に、RT−LAMP法に つきましては、当初は5マイクロリットルの抽出液を使っておりましたが、その後、 1マイクロリットルに減らしたものとの比較を行っております。また、研究協力者に RT−PCRの実施を依頼して、それぞれの結果の比較も行いました。  顕微鏡の観察法につきましては、一般的な方法で行っております。  遺伝子検出法の評価ですが、感度といたしましては、顕微鏡法と同等あるいはそれ 以上の感度が得られました。  検査の特異性につきましては、特異性に問題はなく、多くの場合、顕微鏡法陽性の 検体は陽性、陰性は陰性という結果が得られました。また、LAMP反応の反応産物 の電気泳動を行った結果、同一のパターンを示したことから、特異的な増幅が得られ たと考えられました。まれに異なるパターンがありましたが、その場合には遺伝子解 析を行い、クリプトであることは確認したのですが、詳細については今後検討すべき と考えられました。  特異性は高く、LAMP法陽性の試料からは、PCR法を用いても陽性が得られ、 また塩基配列決定を行った結果、クリプトはクリプト、ジアルジアはジアルジアの配 列が得られたことから、非常に特異性は高いと考えられました。  再現性につきましては、2回繰り返して行った検査では、2回ともほぼ同じ結果が 得られ、再現性はあると考えられました。  顕微鏡法との比較では、定性的にはほぼ同様な結果となりました。ただ、一部の試 料で顕微鏡法と1対1にはならず、顕微鏡法のみ、あるいは遺伝子検査法のみ陽性と いう場合も見られました。この理由としては、先ほど述べたとおり、サンプルの分割 が均等でなかったことが考えられます。  また、養豚場排水などにつきましては、核酸の分解あるいは阻害物質による妨害な ども考えられました。複数の遺伝子検査法による確認や塩基配列による確認も行った ことから、偽陽性ではなく、顕微鏡法とは検査法の原理が違うという影響が考えられ ました。  実用性の評価ですが、当初は磁気ビーズの精製後に塩酸解離を行わずに、そのまま 抽出を行っていたのですが、途中から塩酸解離を行うことになり、顕微鏡法と同様の 手間がかかることになりました。ただ、顕微鏡法と同じ操作なので、実際操作してみ て不便は感じませんでした。遺伝子検査法になれている衛生研究所の職員にとっては、 顕微鏡法よりも負担が少ないのではないかと考えられました。  その他特記事項としては、ジアルジアのRT−LAMPにつきまして現在当施設で のみ行っております。感度の向上には逆転写をかけることが必要だと考えているので すが、一方で偽陽性が生じるおそれもあり、こちらについては現在検討を進めている 段階なので、結果が出ましたらまた御報告させていただければと思います。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。  それでは、御討議いただきたいと思います。御質問等あるいはコメント等ございま したらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。 ○黒木委員  今、偽陽性というお話がありましたけれども、それを偽陽性とする根拠といいます か、なぜそれを偽陽性とみなしたかというのを教えていただきたい。 ○猪又説明員  クリプトスポリジウムでないものを遺伝子検査でクリプトと判断してしまうこと を偽陽性と考えたのですが、今回、検鏡法で出なくて遺伝子で陽性になった検体があ りましたが、それにつきましては、LAMP法あるいはLAMP法とは違う遺伝子の 部位を増幅するPCR法を行って、どちらも陽性になりました。  更に、PCR法につきましては、産物の遺伝子の塩基配列の解析をした結果、クリ プトスポリジウムと一致したことから、遺伝子検査法で陽性になったものは偽陽性で はなく、確かにクリプトスポリジウムを検出したと判断いたしました。 ○遠藤座長  偽陽性はなかったということですね。 ○黒木委員  ないということですね。 ○猪又説明員  はい。 ○遠藤座長  最初に戻ってしまいますが、クリプトはRT法(逆転写)で初めからやっています が、ジアルジアではRT法を行っていませんが、それはなぜなのでしょう。 ○泉山委員  泉山です。クリプトの方は、RT法をかけて1,000倍の感度向上があることが検討 でわかっていまして、一方、(標的DNAのコピー数の多い)ジアルジアの方はそうい う極端な感度向上がなくて、あっても1桁程度の感度上昇があるか否かという程度の 感度向上しか得られなかったことが基礎的な検討でわかっていました。それで検証を お願いするときにRTのあるなしどちらでお願いするかということで非常に迷いまし て、並行して行ったといういきさつがありました。  それで、今のところRTをかけなくても、ジアルジアについてはLAMP法でも検 出できるのだろうと考えているところです。PCRについては、鋳型を共通化するこ とができるので、RTをした後にクリプトとジアルジアの検出をすればいいと考えて います。 ○遠藤座長  ありがとうございました。ほかにございませんか。どうぞ。 ○西村委員  遅れて来て申しわけありません。先ほど御説明があったのですけれども、3ページ の畜産排水試料の影響。これは、水道原水の場合、影響がないということはないと思 いますけれども、薄くなっていると思いますが、その辺のところは、検討なさった結 果、清浄な水のときにはどの程度影響があるかどうか、その辺の何か御見解があれば 教えていただきたい。  もう一点、それと関係すると思いますけれども、1から5という容量だと思います けれども、1マイクロリットルがどの辺まで正確に加えられるか、情報がありました ら、1マイクロを正確にとるのはどうかなと思っておりますので、御回答いただけれ ばと思います。 ○泉山委員  まず、1マイクロリットルがどの程度正確にとれるかということですけれども、こ れは慣れが必要な作業だと思います。それで、定量試験をもしするということであれ ば、それはかなり気を付けて、いいピペッターを使って、目視で液量をきちんと確認 しながら加えるという注意深い試験が必要と思います。再現性良く実施できるとした ら、2マイクロリットル程度が妥当な液量かなと思っていまして、1から5マイクロ リットル程度とはあいまいな書き方かもしれないですけれども、もし統一する必要が あれば、例えば2マイクロリットルとか、そういう数字の方が好ましいのかなという 気はしています。  それから、糞便汚染についてですけれども、これはPCRを非常に強く阻害するこ とがわかっている試料ということになりますので、そういう場合にはもっといいプロ トコルをつくっていく努力が必要なのかなということは考えています。一方で、河川 水の原水試料については、このプロトコルで対応できるつもりで用意させていただい ていまして、そういう特殊な試料については特殊なプロトコルを用意していく努力を 今後していきたいと考えています。 ○西村委員  2マイクロリットルがいい量だという御説明がありましたけれども、1マイクロリ ットルでもきちんと正確にやればとれるということですね。安心いたしました。どう もありがとうございました。 ○遠藤座長  ほかにございませんでしょうか。 ○遠藤座長  それでは、神奈川県内広域水道企業団の勝山さん、お願いいたします。 ○勝山委員  ただいま御紹介にあずかりました勝山でございます。それでは、私の方で実施しま した検証結果の報告をさせていただきたいと思います。  当方では、感度試験と実試料の検査にLAMP法とRT−PCR法を使わせていた だきました。  2番の検証結果に書いてありますけれども、感度試験のクリプトスポリジウムに関 しては、0.0006個、ジアルジアに関しましては0.06個から陽性反応をLAMP法で 得ることができました。  実試料の検査の概要ですけれども、水道原水、河川水を対象に、顕微鏡法、LAM P法、RT−PCR法を比較いたしました。定性的には顕微鏡法とほぼ同等の結果が 得られましたが、一部試料では顕微鏡法と必ずしも1対1にはならず、顕微鏡法のみ、 遺伝子検査法のみ陽性となった場合が見られました。  この理由といたしましては、試料水中に原虫数が少ないため、分割したそれぞれの 試料に等しく原虫類がいなかった場合が生じること。また、原水由来の阻害物質が遺 伝子反応を阻害していることが考えられました。  次のページの3.2に移らせていただきます。  実試料の詳細ですけれども、通常、当方の原水は、ほとんど0から10個程度の検 出の河川水となっております。ただし、畜産排水が流入する試料などについては、多 いところでは103個オーダーのクリプトスポリジウム等が検出される場合もあります。  試料の濃縮方法は、PTFEフィルターを用いた方法。  精製法は、磁気ビーズです。  特記事項といたしましては、原水に阻害の方が影響されると思いましたので、遺伝 子反応阻害防止剤を添加した系としなかった系、また遺伝子の抽出試料の添加量を5 マイクロの系と1マイクロの系、合計4系統の試験を実施しております。  12ページの説明に移らさせていただきたいと思います。検証結果に基づいた評価で す。  検査法の感度は、クリプトスポリジウムに関しては0.0006個、ジアルジアに関して は0.06個程度から陽性反応が得られ、高い感度が得られたと考えております。  検査法の特異性ですけれども、およそ陰性試料からは陰性、陽性試料からは陽性の 反応が得られ、特異性に問題は特に感じられませんでしたが、一部、検鏡法と不一致 が見られました。  アガロースゲル電気泳動によるバンドパターンの解析を行ったところ、クリプトス ポリジウムからはクリプトスポリジウム、ジアルジアからはジアルジアのパターンが 得られましたので、特異性には問題はないと考えられます。  顕微鏡法との比較ですが、定性的に顕微鏡法とほぼ同等の結果が得られたと思われ ます。しかし、一部の試料で必ずしも1対1にはならず、顕微鏡法のみ、遺伝子検査 法のみ陽性となった場合も見られました。理由としましては、先ほども申しましたよ うに、試料中に入っている原虫数が少ないため、分割したそれぞれの試料に等しく原 虫類がいない場合が生じること。また、原水由来の阻害物質が遺伝子反応を阻害して いることが考えられました。  実用性の評価に関しましては、遺伝子検査法はある程度の経験を積めば、だれにで も容易に実施可能であると考えられました。特に磁気ビーズ法までは検鏡法と同じ操 作であるので、水道事業体の方でも使用することは十分に可能と考えられました。  その他の特記事項ですけれども、遺伝子検査法は顕微鏡法より試料中に残る濁質に 影響されるため、丁寧な操作が必要であると考えられます。また、試料に混入する阻 害物質等は、なかなか完全に排除し切れないと考えられますので、操作に影響されな い精製法、適用できる試料の種類が広い阻害物質の阻止剤等の開発が今後は望まれる と考えられました。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。それでは、御意見あるいはコメントございませんでしょ うか。片山先生。 ○片山(浩)委員  阻害物質阻止剤は、今回は何を使用されたのでしょうか。 ○泉山委員  これはレジオネラのLAMP法の開発で試験的に作られているものになるのです けれども、フミン酸とか、そういうものを阻止してくれる試薬となりまして、試験的 に試したものです。この阻害阻止剤を念入りにチェックしてくださったのは、勝山さ んの施設ということになります。 ○遠藤座長  それは市販されていないのですか。 ○泉山委員  現時点では、まだ市販されていなかったと思います。現在、研究開発中だと思いま す。 ○遠藤座長  西村先生、どうぞ。 ○西村委員  先ほどのことに絡むことなのですけれども、原水由来の阻害物質となっていますけ れども、これも先ほどの御説明で畜産系の排水が影響していると考えてもよろしいの ですか。 ○勝山委員  それも関係しているとは思いますが、採水地点の直前に畜産排水施設があるわけで はないので、ほかの阻害物質も入っているとは考えられます。 ○遠藤座長  ほかにございませんでしょうか。また、すべての報告が終わったところでもう一回 御質問等をお受けしたいと思いますので、もしなければ次の演者に移りたいと思いま す。よろしゅうございますでしょうか。 ○遠藤座長  それでは、財団法人岐阜県公衆衛生検査センターの溝口さん、お願いいたします。 ○溝口説明員  溝口です。よろしくお願いします。  当センターでは、顕微鏡法とLAMP法の比較を行いました。  試料は、蒸留水、水道水、施設排水、河川水です。河川水の方は、これまでにクリ プトの検出がないことが確認されております。これらに、濃縮前や精製前後など、さ まざまな場面で添加しました。添加量はおよそ20から200個程度になるように入れ ました。  ろ過濃縮法は、アセトン溶解法およびPTFEフィルター法で実施しました。  精製は、磁気ビーズ法を使用しました。  特記事項としましては、指針ではPTFE法では孔径1マイクロのPTFEフィル ターが推奨されているのですが、5マイクロのPTFEフィルターが使えないかとい うことについてと、アセトン溶解法と磁気ビーズ法の組み合わせが問題ないかという ことについても検討してみました。  15ページです。  顕微鏡法とLAMP法に関しては、陽性試料からは陽性、陰性試料からは陰性とい うことで、良好な結果が得られました。繰り返し行った試験でも再現が得られていま す。添加量をコントロールするのがすごく難しかったのですけれども、どの量を入れ ても良好な結果が出ているので、高感度な遺伝子法からは、もっと少ない量でも検出 可能ではないかと期待しております。  当センターとしましては、磁気ビーズ法で塩酸解離を行うところが、遺伝子法の場 合は少し煩雑だなと感じました。顕微鏡が苦手などで、最後、遺伝子法に頼る場合は よいのではないかと思いますけれども、当センターの場合は顕微鏡にそれほど面倒を 感じていませんので、塩酸解離がちょっと面倒かなと思いました。  あとは、特記事項です。PTFEフィルターは1マイクロが推奨されているのです が、5マイクロを使用して繰り返しやってみましたが良好な結果が得られ、使用可能 ではないかと考えています。さらに、アセトン法と磁気ビーズ法の組み合わせは、回 収率が低下して使えないのではという漠然としたうわさがあったのですが、これに関 してもPTFEフィルター法から磁気ビーズ法、アセトン溶解法から磁気ビーズ法と も同等の結果が得られておりまして、どちらの組み合わせも顕微鏡法でも遺伝子法で も使うことが可能ではないかと評価しております。  簡単ですが、以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。御質問、御意見等ございましたら。どうぞ。 ○秋葉委員  5マイクロのPTFEフィルターを使ったということですが、表の試験法の比較で 出ておりますけれども、これ全部について1マイクロと5マイクロで行ったと考えて、 それで判断して大丈夫だということでよろしいのですか。 ○溝口説明員  載せてあるものの他にもっとたくさん実験しておりまして、その結果で大丈夫と結 果が出たため、その中の一部を載せております。十分なデータを取りましたので 、結果に関しては大丈夫です。 ○遠藤座長  フィルターの濃縮法に関しましては、今回の遺伝子法とは直接的には関係ございま せんが、濃縮方法に関する新しい知見は一連の検査法にとって大変参考になるデータ だと思います。  ほかに特にございませんでしょうか。なければ、とりあえず次の方に移っていただ いて、後で討議を進めたいと思います。 ○遠藤座長  次は、株式会社環境科学研究所、船坂委員の方からお願いいたします。 ○船坂委員  私どもは16ページからでございますけれども、感度試験と添加回収試験を行いま した。  感度試験の概要にございますように、RT−LAMP法とRT−PCR法を用いて クリプト、ジアルジアとも6から0.0006個の範囲で感度試験を行いまして、クリプト が0.006、ジアルジアが0.006という陽性反応を得ております。いずれも感度よく検 出できたと確認しております。  添加回収試験に関しましては、私どもは実はDNA−LAMP法を従前から検討し ておりましたので、先ほどのRT−LAMPと混在しておりますけれども、この添加 回収に関しましてはDNA−LAMPで、添加数がクリプト、ジアルジア、10または 100個で、濃縮前に添加して遺伝子陽性確認をしております。その後、RT−PCR、 50個を濃縮前に添加し、遺伝子陽性を得ております。この際、顕微鏡法によってクリ プト、ジアルジアが検出されていないことを確認した河川水を用いております。  感度試験の詳細が3.1にございますけれども、使用したキット等に関しましては、 泉山先生から御説明があったとおりでございまして、特記事項といたしましてオーシ スト、シストは、凍結標品だけでなく、添加回収用のUV照射標品も使用し、核酸抽 出前に濃度を顕微鏡下で確認しております。  次に、その結果でございますけれども、先ほど言いましたように、感度試験がRT −LAMP、RT−PCRとも0.006までの確認をいたしております。両方とも感度 よく確認できたと思っております。  次に、18ページ、添加回収の詳細ですけれども、これも先ほど言われましたように、 10または100個を添加したものについてはDNA−LAMP、50個添加したものに ついてはRT−PCRで確認しております。  その結果につきまして、まず操作の方法は先ほどの表にあるとおりでございまして、 特記事項としてDNA−LAMP法でクリプトスポリジウムの検出を実施している ということがございますが、先ほど言いましたRT−LAMPとの違いが若干ありま す。しかしながら、同じような結果になっていると思いますし、私どももこのRT− LAMPについての検討を進めているところでございます。  顕微鏡観察結果につきましては、うちはウェルスライド法を用いておりますので、 PTFE法に変更すべく、今、検討しているところでございますが、この方法で行っ ております。  検証結果ですけれども、オーシスト、シストとも陽性は陽性、陰性は陰性という確 認をしております。表1、2のとおりでございます。  表3は、クリプト50個、ジアルジア50個での確認の結果でございます。同じよう に、陽性は陽性という確認をしております。  総括ですけれども、検査法の感度につきましては、0.006個に相当するクリプトス ポリジウム、ジアルジアから陽性反応が得られました。配付された冷凍標品だけでな く、UV照射品からも同程度に高感度であることを確認いたしました。  検査法の特異性としては、とりたてて特異性に問題はなくて、陽性は陽性、陰性は 陰性という確認をいたしております。  再現性も問題なく得られました。  顕微鏡法との比較として、今回行った添加回収試験では、顕微鏡法と遺伝子検査法 の判定結果に矛盾はなく、定性的に同等の結果が得られたということでございます。  実用性につきましても、遺伝子検査法は顕微鏡にかかる負担が少ないことから、好 ましいと感じました。更に、一度に多数の検体を検査する際に遺伝子検査法は有用に 感じたということでございます。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。コメント等、ございませんでしょうか。  ちょっと確認させてください。17ページの反応結果の一覧がございますが、LAM Pはクリプト、ジアルジア、両方ともRT法でおやりになったのでしょうか。PCR の方はRT法を用いたと理解してよろしいですか。 ○船坂委員  PCRはRTです。 ○遠藤座長  確認ですが、この表にはジアルジアに関してLAMPもRTとなっていますが、こ れもRT法でおやりになったのでしょうか。 ○船坂委員  これはRTで行いました。 ○遠藤座長  わかりました。  ほかにございませんでしょうか。 ○遠藤座長  それでは、とりあえず先に進めさせていただきたいと思います。次は、国立保健医 療科学院の秋葉委員の方から御説明をいただきたいと思います。 ○秋葉委員  国立保健医療科学院の秋葉です。21ページからでございます。  我々のところは、利根川水系の河川水、つまり実河川水を用いまして顕微鏡検査と 各種遺伝子検査、RT−LAMP、TaqMan RT−PCR、Universal Qprobe RT− PCR、ABC RT−PCRで検討を行いました。  26ページにその結果の一覧表が載ってございます。  4つともに、ほぼ問題なく、差が生じていなかったということであります。  下の方は、顕微鏡観察が横軸で、縦軸がTaqMan PCRということで相関をとってお りまして、右側の方は内部構造とスポロゾイドを見ているものであります。これもほ ぼいい相関が得られました。  結果ですが、27ページに総括しました。  検査法の感度は、いずれの方法におきましても高い感度が得られ、小数点以下に相 当するクリプトスポリジウム、ジアルジアから陽性反応が得られました。  検査法の特異性に問題はなく、顕微鏡陽性からは陽性、数は余り多くありませんで したが、陰性からは陰性という結果が得られております。また、顕微鏡法陰性で遺伝 子検出法が陽性も見られましたが、LAMP法と各種PCR法では同様の定性的な結 果が得られております。  再現性ですが、感度試験を2回繰り返し行った試験では、低濃度試料を除きまして、 ほぼ2回とも同様の結果が得られております。実試料へ適用した際は、3回の繰り返 し試験を実施しましたが、変動は少なかったということです。  顕微鏡法との比較でありますけれども、遺伝子検査法と顕微鏡観察結果を定性的に 比較しますと、おおむね一致しましたが、14試料中3試料に関しましては若干結果が 異なっておりました。これは、10リットルの河川水を濃縮・精製した際に試料を2つ に分化するということで、その辺の問題ではないかと考えております。  また、各種遺伝子定量法と顕微鏡観察の定量値に関しましては、遺伝子検査法によ る定量値と顕微鏡観察推定値との間には高い相関が見られたということでありまし て、遺伝子検査法による定量値は妥当なものであると我々の方では考えました。  また、顕微鏡観察によるオーシストの確定判断には、スポロゾイト等のクリプトス ポリジウムに特異的な内部構造を観察する必要があるわけですけれども、先ほどの図 で見ましたように、フィルター上の夾雑物とオーシストの位置や角度によっては、明 確な内部構造を観察できないものがあるということでありまして、確定値が推定値よ りも若干低い値になったということでありました。  次に、実用性の評価でありますが、磁気ビーズ法までは顕微鏡法と同じ操作ですの で、ほぼ問題はなかったということでありますけれども、遺伝子検査法は顕微鏡法に かかる負担がないことから、非常に好ましいのではないかと感じました。  その他の特記事項でありますけれども、遺伝子検査法の特異性については、試験を 行って実績を積みながら検証を続けるべきであると考えました。標的の原虫と近似し た塩基配列を持つ微生物が存在する可能性は否定できませんので、複数の遺伝子検査 法で相互に検証することも有用であるのではないかと考えられました。  以上でございます。 ○遠藤座長  ありがとうございました。コメントあるいは質問等、ございませんでしょうか。  私から質問ですが、最後の方に特記事項として標的の原虫と類似した塩基配列を持 つ微生物がほかにも存在する可能性があり、それによる交差反応で偽陽性を生ずる可 能性が指摘されましたが、今回用いた遺伝子のプライマーを使った場合にどの程度あ るものか、どの程度確認されているのか、情報はありませんか。 ○泉山委員  現在用いている試薬につきましては、少なくともデータベースとのチェックによっ て理論的には偽陽性が出ないように設計がなされており、それにプラス、磁気ビーズ 法を使うことで特異性を上げることが行われているので、基本的に偽陽性は出にくい と考えているのですけれども、万が一ということもありえますので、この辺りは注意 深く見ていきたいと考えています。 ○遠藤座長  ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。 ○遠藤座長  それでは、先に進めさせていただきますが、今度は愛媛県立衛生環境研究所の竹内 さん、お願いいたします。 ○竹内説明員  愛媛県立衛生環境研究所、竹内です。当方では、RT−PCR法を用いて感度試験 と添加回収試験を実施しました。  感度試験の詳細を御説明します。  この検査で用いたのは、市販のキットを用いまして、反応条件はそのキットの仕様 書に従いました。  感度試験におきましては、標準品を6×10−5個までの10段階希釈6点について2 本ずつ反応を行いまして、再現性のある濃度範囲を確認しました。  結果の方は検量線で示したのですが、最も低濃度である6×10−5個では、Ct値が かなり変動しておりまして、クリプトでは検出できたのですが、Ct値がかなりばら つきました。それより高濃度側ではばらつきも少なく、安定した結果が得られていま す。ジアルジアでは、6×10−5個では検出できず、それより高濃度側で安定した結果 が見られました。よって、クリプト、ジアルジア、ともに0.0006個から陽性反応が出 ており、高感度であることが確認できました。  次に、添加回収試験ですけれども、2試料を用いて行いました。  添加位置は、磁気ビーズ法の前と磁気ビーズ法の後の2か所で添加しました。  試料1については、顕微鏡法で陰性を確認しております。資料2は、顕微鏡法と遺 伝子検査法、両方で陰性を確認しています。  添加量としては、最終量50マイクロリットル当たり、クリプトで30個、ジアルジ アで40個程度になるように添加しています。  それで、RT−PCRの結果につきましては、得られたCt値から検量線を用いま してオーシスト、シスト数を定量しまして顕微鏡法との比較を行いました。顕微鏡観 察で使用したフィルターはPTFE、染色はEasyStainを用いました。  検証結果は、そちらに示したとおりです。クリプトスポリジウム、ジアルジアとも に陽性検体からは陽性が出ていますし、陰性検体からは陰性反応が出ており、定性的 な問題はありませんでした。また、定量的にも、顕微鏡法、RT−PCR法ともに同 程度の結果が得られておりますので、問題はないと思われました。また、ビーズ法の 前後で添加しましたが、ビーズ法による回収率の低下というのはそれほど感じられま せんでした。  今回の検証結果に基づいた遺伝子検出法の評価ですけれども、検査法の感度としま しては、クリプトが0.0006個、ジアルジアも0.0006個から陽性反応が得られ、高い 感度が得られました。  また、添加回収試験から得られたように、特異性に問題はなく、陰性対照からは陰 性、陽性対照からは陽性反応が得られました。  再現性につきましても、感度試験では低濃度でCt値の変動は大きくなりましたが、 それより高濃度側での変動は小さく、RT−PCR法では再現性が見られました。ま た、磁気ビーズ法の前と後で添加回収試験を行いましたが、いずれも同程度のオーシ スト、シスト数が定量され、磁気ビーズ法を含む作業範囲内での再現性も確認されま した。  顕微鏡法との比較においても、添加回収試験の結果、定性的にも定量的にも同程度 の結果が得られました。  実用性の評価ですが、当所では精製法に磁気ビーズを用いていますので、その磁気 ビーズ法までは顕微鏡法と同じ操作でありますので、これまでの顕微鏡法との間に操 作性の差は見られませんでしたので、作業に負担は感じませんでした。また、市販の キットを使用するために、遺伝子検査の経験が少なくても感度よく検出ができ、顕微 鏡観察ほどの熟練は必要ないと思われました。なお、私本人のことですが、RT−P CRの経験がほとんどないにもかかわらず、今回のような結果が出ましたので、実用 性は高い方法だと思いました。  その他の特記事項ですが、精製方法が磁気ビーズに限られること、定量法によると 検量線を書く必要があると思いますので、その分、遺伝子検査用試薬を使うことにな りますので、そのコストがかなり高価になるのではないかと感じました。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。委員の方から御質問あるいはコメント、ございませんか。  では、私から質も似たしますが、最後のコメントで、検量線を書く場合には金額が かかさむことが指摘されましたが、検量線を書くための(陽性)試料をどうやって手 に入れるかというのも、また別の大きな問題になるかもしれませんね。この点は改め て検討しなければいけないような問題なのかもしれません。  次の協力者に移りたいと思いますが、よろしゅうございますか。 ○遠藤座長  それでは、神奈川県衛生研究所の黒木委員の方からお願いいたします。 ○黒木委員  資料32ページになりますが、私どもは感度試験と添加回収試験を実施いたしまし た。  まず、感度試験の方ですけれども、ほかの機関と同等の結果になっております。ク リプトスポリジウムだけを検討いたしましたけれども、感度といたしましては0.0007 個相当のクリプトスポリジウムの検出が可能であったということで、非常に高感度な 結果を得ております。  続いて添加回収試験ですけれども、河川水にクリプトスポリジウムを十分検出でき るだけの数ということで添加いたしまして、RT−PCRについて検討いたしました。  34ページの一番上の方を見ていただきたいのですけれども、添加量といたしまして 実際のRT−PCRを実施する場合のチューブ1本あたりのクリプトスポリジウム のオーシスト数ということで、50個相当と5個相当で実施しましたところ、いずれの サンプルも陽性の検体が得られました。勿論加えなかったものは検出されなかったと いうことで、検出されるべきものが検出されて、検出されてならないものは検出され ないという結果が得られました。  続きまして、実用性の評価です。キットが高いということもありますけれども、こ れに続いてRT−PCRを実際に行いましたので、RNAの取り扱いがDNAより少 し煩雑になる、あるいは難しくなるという問題点と、夾雑物の除去の問題、阻害物質 の問題を検討する必要があるのではないかという結果になりました。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。コメントはございませんでしょうか。  最後の方で、実用性の評価のところで御指摘いただいたような問題点、例えばRN Aの取り扱いとか阻害物質をどうするかというのは、皆さんすべての協力者の発表が 終わった後で御討議いただきたいと思います。ありがとうございました。  では、最後の協力者で、東京都の水道局、金見さん、お願いいたします。 ○金見説明員  東京都水道局から報告させていただきます。  東京都水道局では、今まで研究機関等で検討していた方法を、水道事業者でも実施 できるかということを中心に検討を依頼されましたので、そういう趣旨で検討してお ります。今のところ行っていますのが、感度試験と添加回収試験です。  それでは、39ページのまとめに従って説明させていただき、ところどころ戻りまし て説明しようと思います。  まず、検査法の感度についてですけれども、今までの他の機関からのお話にもあり ましたとおり、かなり高感度という結果を得ていまして、クリプトスポリジウムにつ いてはwell当たり0.00012個の陽性反応が得られました。また、ジアルジアにつきま しては0.0009個/wellで、検出感度がかなり高いことが確認されております。  検査法の特異性ということで、添加回収試験を行いました。1ページ戻りまして38 ページ、真ん中の表をご覧ください。2つの河川水試料にクリプトスポリジウムを添 加して検査を行いました。添加のタイミングですけれども、まず原水に直接クリプト スポリジウムを添加するもの、それからろ過・濃縮・剥離の操作の後に添加するもの、 それから免疫磁気ビーズ法の精製が終わった後で添加するもの、この3点でクリプト スポリジウムを添加しました。感染症研からいただいた不活化したクリプトスポリジ ウムを、ほぼ50個になるように一定量を加えています。  添加回収の結果ですけれども、荒川本川の河川水試料への添加につきましては、検 鏡法とRT−PCR法共にほぼ同じような回収率が得られています。ややRT−PC Rの方が高い結果になっております。荒川支川の河川水は畜舎排水等の影響をかなり 受けているところですが、先ほど来の報告とは逆に、検鏡法で不検出だったものがR T−PCRの方では検出されるという結果になっております。まだ1回だけの検討で すので、サンプリングにおけるばらつきの可能性もあり引き続き検討していきたいと 考えているところでございます。  38ページに戻っていただいて、再現性についてです。これまでクリプトスポリジウ ムにつきましては8月から検討を始めまして7回ほど行っていますが、検査キットに 附属の陽性対照を測定した結果、0.6から1.2の範囲におさまっておりまして、良い 再現性が得られています。ジアルジアについても、同じように3回行った陽性対照の 試験で、1.9から2.7/wellという結果が出ておりますので、再現性については良好で す。  また、限られた技術のある者だけが測定できるかということについても検討してお りまして、複数の試験者が行っても結果に特に大きな乖離がないことは確認しており ます。ただ、この確認した者が、ウイルスの試験などでRT−PCRの経験がある者 ですので、今後は全く遺伝子解析関係の経験のない者が試験をしてみて、同じような 結果が出るかを確認していきたいと考えております。  顕微鏡法との比較ですけれども、先ほどの38ページの表にもありましたとおり、 ほぼ同じか、RT−PCR法の方が若干高目の回収率を示しており、感度がよい試験 なのかなという感触を持っております。  実用性の評価ですけれども、実施した者からは試験方法に戸惑い等は感じないとい う意見を得ており、ほかのRT−PCR法を経験している者にとっては特に問題のな い方法であると言えます。それから、感度や再現性も比較的良好であります。ただ、 磁気ビーズ法による精製までの過程は検鏡法と同じですので、作業時間短縮に関して は、例えば1人が1〜2サンプルはかる程度であれば、時間的には検鏡法の方が短く なります。  当局ですと、検鏡ができる技術者が6〜7人いて、場合によっては同時に複数人で 試験をしますので、RT−PCR法による時間短縮のメリットは得られないと考えま す。ですが、1人で多数のサンプルをはからなければならない機関ですと、時間的な メリットも出てくるのかなと考えております。  それから、添加回収試験で添加するタイミングの違いですけれども、原水添加、磁 気ビーズ前添加、ビーズ後添加と後段に行くに従って回収率が上がっていくという、 当然といえば当然の結果が出ております。  また、検鏡法とRT−PCR法で差が出ている点については、まだ1回だけの試験 なので、これだけでは何とも言えませんけれども、おおむね良好な回収率を示してい ると考えております。  今までの他機関のお話と当局での検討を踏まえて、水道事業者としてどうかという ことですけれども、検査方法自体は今までの検鏡法と測定原理が違うものですので、 サンプルの水質によって多少違いが出るのは当然です。そこをきっちり押さえた上で 測定する分には、水道事業者が実施する方法としても問題ないのかなという感想を持 っています。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。御協力いただきました各研究機関、検査機関の方々には お礼を申し上げます。ありがとうございました。  それでは、今までのお話の中で、検査法としておおむね使えるのではないかという 御評価をいただいたのだろうと思っておりますが、改めて全般にわたりまして御意見 をいただけたらと思います。また、検討に携わっていただいた協力者からも発表で触 れそびれた点やコメントあるいは疑問点などございましたらお伺いしたいと思いま す。いかがでしょうか。どうぞ。 ○片山(和)委員  ちょっと勉強不足かもしれませんけれども、検査法の検出感度というのが各施設の 方から御発表があったと思いますが、この算出方法はどのようにしているのでしょう か。 ○泉山委員  これは、最後のPCRあるいはLAMP反応のチューブ当たりのオーシストあるい はシストの個数に換算して出しているものになります。クリプトスポリジウム、ジア ルジア、1個未満という表記になってしまうのですけれども、それをRT−PCRを 行うことによって非常に感度を上げるということをしていまして、10倍、100倍、1,000 倍と希釈しても反応ができる、最終的な反応チューブの中に0.0006個とか、そういう 小数点以下のものが入った、RNA量としては非常にわずかだけれどもそれでも陽性 反応が出た、という確認作業をしていただいたことになります。 ○片山(和)委員  その希釈というのは、どの段階でされているのですか。核酸抽出して、その原液を 10倍希釈系列に持ち込んで、後から換算しているということですか。 ○泉山委員  そういったものもございますし、あるいはcDNAを作った後に希釈された方もい るかもしれません。検査を検討してくださった方の多くは、抽出された核酸を希釈し て、それを反応にかけていると思います。 ○片山(和)委員  わかりました。ありがとうございました。 ○遠藤座長  それでは、とりあえずご発表いただいた結果が得られたということで、総じて良好 な結果ということだと思います。泉山委員にとりまとめをお願いしてありますので泉 山委員から現状における評価及び今後の取り扱いについて少し御説明をいただいた 上で、もう一回改めてディスカッションをさせていただきたいと思います。よろしく お願いします。 ○泉山委員  協力くださった各機関の先生方、ありがとうございました。おかげさまで遺伝子検 出法の評価を何とか受けることができました。それで、この評価の結果について、資 料3に私の方で今後の取組みとか評価について書いてみましたので、これについて御 説明したいと思います。  1.各協力機関における評価について。  各協力機関におけるクリプトスポリジウム等遺伝子検出法の評価結果は、各機関記 入の評価シート、今ごらんいただいた資料2にあるとおり、いずれの機関においても 使用可能であることを示す内容だと思いました。  各機関における評価内容の概要は以下のとおりでした。  東京都健康安全研究センター及び神奈川県内広域水道企業団は、厚生労働科学研究 (「飲料水の水質リスク管理に関する統合的研究」(松井班))での遺伝子検出法の実 地試験に御協力をいただいてきたところであります。今回の検証においても、引き続 きデータの拡充をお願いしまして、当該2機関においては河川水から得た実試料を用 いてLAMP法を行って、そのLAMP法のみならずRT−PCRの検討にもそれを 使わせていただいて、LAMP法とRT−PCR法の陽性・陰性に関する定性的な結 果がおおむね一致するということを確認しました。PCR法はPCR産物が得られま すので、この塩基配列決定を行いまして、クリプトスポリジウムはクリプトスポリジ ウムの配列が、ジアルジアからはジアルジアの配列が得られるという一連の反応の特 異性に問題がないことを確認いたしました。  国立保健医療科学院ではRT−PCR法を中心に行っておりまして、続いてLAM P法と陰性・陽性に関する定性的な結果を突き合わせるということをしていただいて おりまして、結果として、おおむね一致することが確認されています。また、クリプ トスポリジウムの計数に関する定量的な検討結果をお示しいただいておりまして、検 鏡法の検出に基づく推定値がありましたけれども、これが遺伝子検出法の定量の値と おおむね一致したということで、グラフを出されていました。  別機関で行っていただいた添加回収試験がありましたけれども、その中で添加数と 遺伝子検出数の定量値がおおむね一致する結果が得られていましたから、(総合して) RT−PCRによる定量が可能であるということが示されたのだと考えております。  財団法人岐阜県公衆衛生検査センターは、LAMP法、それから株式会社環境科学 研究所はLAMP法とRT−PCR法、愛媛県立衛生環境研究所、神奈川県衛生研究 所、東京都水道局は、RT−PCR法の添加回収試験を行っておりまして、遺伝子検 出法において所定の検出が得られる、それから添加数に対応して遺伝子の検出の定量 値が得られる、ということが確認されました。  2.検証で得られた成果について。  遺伝子検出法をこのように検証していただく過程で、成果として幾つか改善点が見 つかってきております。  免疫磁気ビーズ(とクリプトスポリジウム・ジアルジアと結合した状態の)試料を そのまま核酸抽出することを初期に行っていました。この方法では核酸が免疫磁気ビ ーズに吸着されてしまって、定量PCRで定量ができなくなることがわかってきまし た。(説明を繰り返すと、)免疫磁気ビーズではクリプトスポリジウムを精製するわけ ですけれども、そのときに手順を短縮して、免疫磁気ビーズとクリプトスポリジウム が結合した状態のまま核酸抽出を行うことを最初行っておりまして、そういうことを 行った場合は、検証作業の結果、定量が困難という結果が得られてしまいました。  一方で、免疫磁気ビーズからクリプトスポリジウムを塩酸を使った解離を行って、 クリプトだけを集めてから定量PCRを行ったという機関では、定量が可能であった ということに途中で気が付きました。このために、免疫磁気ビーズ法による精製は塩 酸解離を行う方法としまして、遺伝子検出法の手順に反映させることが適当ではない かと考えております。当初は、塩酸を使わない方法をお示ししていましたが、成果の 一つとして、こういう手順を反映させていく、プロトコルを改善していくことが適当 ではないかと考えています。  LAMP法については、陰性・陽性に関する定性的な試験としての活用を想定して いるのですけれども、定量推定値を今後示していくためには、できれば免疫磁気ビー ズ法による精製のときに塩酸解離を行うことを標準的な方法としてほしいというこ とは考えています。一方でなるべく手順を省いて定性的に結果を見たいという考え方 もあるかと思います。その辺りをどのように改善あるいは解決していくかということ は、今後検討の必要があるだろうと考えています。  次の話になりますけれども、阻害物質の影響がいろいろと見えてきました。これを 低減するために、反応に持ち込む試料を減らすことを機関の方から御提案いただいて、 それを反映させることを考えています。一般に遺伝子検出法では、1ないし5マイク ロリットル程度の試料を用いて、20マイクロリットルの試薬と混合して25マイクロ リットルの反応液中で増幅反応を行うという手技が一般的かと思います。このときに 試料を多く入れれば入れるほど検出感度は向上するのですけれども、一方で夾雑物も 多く混入してきますから、増幅反応が阻害されるおそれが出てきます。  今回の検証では、当初は5マイクロリットルを想定していたのですけれども、反応 が遅れたり、夾雑物により阻害されたりということが認められました。その一方で、 1マイクロリットルに減らしたら陽性率が上がるという話をいただいたことから試 料の添加量を少なくして、1から2マイクロリットル程度が適当ではないと考えてい る次第です。  このようにして、遺伝子検出法に幾つかの製品を使ったり、御自身で設計していた だいたものを使ったりということをして、いずれの方法でも検出が可能なことが示さ れました。クリプトスポリジウム、ジアルジアの添加回収実験と、河川水中から得ら れました試料の試験の両方で、クリプトスポリジウム等の陰性陽性に関する定性的な 検討の結果、それぞれの試薬の特異性に問題がないことを複数の試薬間でもって相互 に確認しております。  更に、PCR産物から塩基配列決定を行いまして、クリプトからはクリプト、ジア ルジアからはジアルジアの配列が得られて、一連の反応の特異性に問題がないことを 確認しました。検討課題となっていましたRT−PCR法の定量性については先行的 な結果が得られまして、河川の実試料での顕微鏡検出法に基づく推定値が遺伝子検出 の定量値と対応したという結果となっております。  3.今後の取組みについてです。  各機関におけるクリプトスポリジウム等の遺伝子検出法に基づく評価結果は、おお むね良好であったと理解しております。検証過程において、このように改善点が明ら かになってきましたことから、この点を踏まえて、遺伝子検出法の手順に関するマニ ュアルを検討し反映させていくことが必要と考えております。  添加回収試験、実試料を用いた試験で所定の成果が得られて問題がないことが示さ れました。偽陽性、偽陰性などが生じないか、今後も積み重ねをしていくことが大切 と考えております。  遺伝子検出法は、これまで水道事業体において利用されていなかった方法だと思い ますが、これを新たな検査法として導入していくには何らかの問題・課題が生じるか もしれません。一方、衛生研究所や水道法に基づく登録水質検査機関においては、医 療・食品分野等の検査を既に実施されて、遺伝子の検出法に習熟している機関も存在 するかと思います。  その一方で、このクリプトスポリジウムの試験というのは、従来の試験とは異なっ ていて、数十リットルの多量な試料中にわずか1オーシスト、シストの存在を、定性 的あるいは定量的に検査しようという難しい検査をしていますので、これはなかなか 容易ではなくて、注意深く試験を行うことが求められているのだろうと思います。  平成19年の水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針において、水道原水の 検査を求められておりまして、検査機関による検証結果から、原水の試料の実施には 問題なく利用することが可能であり、多検体処理の点から遺伝子検出法の活用が有効 と考えております。その一方で、浄水の検査においては、大量の浄水の中から1オー シスト、シストの存在を確認することについては、注意深く試験を行うことが求めら れ、当面、遺伝子検出法で検出された場合に、同じ試料を顕微鏡検出法で結果を確認 することが適当ではないかと考えております。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。お伺いしたとりまとめの方向について御了解いただける のかということについてご意見をいただきたいと存じます。また、協力機関の発表へ のコメント等もお願いいたします。いかがでしょうか。はい。 ○国包委員  国包ですが、一通りいろいろ御報告を聞かせていただきまして、全般としては非常 にいい検査方法だという感想を持ちました。LAMP法とリアルタイムPCR法を余 り明確に区別しないまま、少し感想みたいなことをお話をしたいと思います。  もう少し具体的に申し上げますと、例えば特異性とか再現性、感度といった面では、 まずまず合格点ではないかなと思っております。ただいまの泉山委員のお話にもあり ましたけれども、阻害要因あるいはプラスの場合、マイナスの場合、両方の誤差要因 を考えてみますと、幾つかあると思います。  1つは、塩酸解離をすることによって、ある程度解消できるだろうというお話があ りました。それから、試料の添加量を少なくすることによって、これもプラスといい ますか、効果が期待できるだろうというお話がありましたが、私がちょっと気になり ましたのは、それ以外の原水中の、例えば畜舎排水とか、あと各委員の方からお話が あったと思いますけれども、類似の微生物。これは可能性として私はよくわかりませ んけれども、可能性がないとは言えないと思います、あるいはそれ以外のフミン酸の 妨害を防ぐためにということをたしか泉山委員がおっしゃったと思います。そういっ たものがもし阻害要因になるのであれば、原水中の阻害要因について少しきちんと検 討することができればなと思いました。  もう一点は、これは将来的なことを考えますと、単なる研究ではなくて、行政上の 試験方法としてどうかということだと思いますので、そういったことを考えますと、 この方法はいいとして、今度、現行の試験方法とどうやって使い分けるのかという問 題といいますか、そこのところをきちんと考える必要があると思います。  それはまだ先走った話かもしれないと思っているのですが、少なくとも今の時点で すぐに現行の試験方法にかえて、これにということにはならないと思いますし、これ は私の全く個人的な意見なのですけれども、この辺りの方法をどういう形で使うのか ということも考慮に入れながら、当面の到達目標みたいなものを整理してかかるとい いのではないかと思いました。  早い話、例えば定性だけできれば、もうそれでいいのだとか、いや、そうではなく て、この辺りまでの精度で定量しなければいけないと考えるとか、その辺のことも少 し頭に置きながら、更に検証を続けるということを考えていけばいいのではないかと 思います。  以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。非常に重要なキーポイントを御指摘いただいたと思いま す。  ほかにフロアからの御発言、いただけませんでしょうか。はい。 ○福井委員  福井です。確認させていただきたいのですけれども、例えば今回御提示いただいて いるプロトタイプの試験法ですと、試験水を20リットルろ過して、それで核酸抽出 をファイナルで20マイクロリットルで、そのうちの1マイクロリットルをPCRに 使うということで、最終的に各試験機関の皆さん方の結果を総合すると、試験水1リ ットル当たりにクリプトスポリジウムやジアルジアが何細胞検出できるのかという ところを教えていただきたいのと、それは顕微鏡法と比べるとどのぐらい感度が高い のか、あるいは精度がまずまずのものなのかという見通しを教えていただけるとあり がたい。 ○泉山委員  要点としては、1個のクリプトスポリジウム、ジアルジアがきちっと検出できるの かということなのだろうと思います。  従来のDNA検査でこれをやろうとすると非常に難しい、多分無理だったのではな いかと考えているのですけれども、RTを行うことによって非常に高感度な試験に到 達することができて、小数点以下のクリプトやジアルジアに相当するものから、一部 の試料からだけで検査できるようになっていて、検討を実際にしていただいていると、 顕微鏡法とほぼ同等、あるいは遺伝子検出の方が若干陽性率が高いという結果が出て いるところを見ますと、顕微鏡法と同等以上の検出感度に到達できたのだろうと考え ているところです。  恐らく1個が入ってきても、実用上問題なく検出できるのではないかと期待してお ります。 ○福井委員  1個というのは、1ml当たり1個ですか。 ○泉山委員  10リットル中に顕微鏡法と同等の検出感度ということを考えております。 ○福井委員  そうすると十分だと。どうもありがとうございました。 ○片山(和)委員  今の御質問と少しかぶるのですけれども、0.00幾つという感度の表記の仕方がござ いますね。これが感覚としてわかりづらいのです。ですから、例えば微生物ですから 1個2個と数えていきます。具体的に0.00幾つというのは10リットル当たりに最低 限何個いたら、この値になるのですよという検出感度と個数の相関関係みたいなもの が示されると、とてもわかりやすくなる。例えば1個当たりRNAが何コピーぐらい あることを想定しているので、1コピーのRNAをとらえられる検査系であれば、幾 つ入っていれば見えるのでしょうということです。 ○泉山委員  おっしゃるとおりで、なるべくその辺り、きちっと整理してわかりやすいように表 記したいと思います。簡単に言ってしまいますと、例えば1個が10リットルにあっ たとしても、それを最終的には50マイクロないし100マイクロリットルの核酸抽出 液としてつくっていかなければならないということだと思います。100マイクロリッ トルに1個から1マイクロリットルだけ取り出すと0.01個相当、抽出した後の核酸の 量としましては、その程度のものを使って検出できるかどうかということが求められ ているのだろうと思います。  あるいは、1つの細胞の中にリボソームRNA、RNAのコピー数としてどのくら い持っているのか。これは、今回の検証の結果には示されていないのですけれども、 国立保健医療科学院の岸田さんが実際に論文で用意された内容としましては、数千か ら数万コピーのRNAの量があるということがわかっていますので、例えば100マイ クロリットル中に数万コピーがあって、それを薄めて、恐らく数百コピーからでもき ちっと検出できるということが書けるのではないかと考えております。 ○遠藤座長  どうぞ。 ○黒木委員  少し細かい話なのですけれども、今、感度の話で、10リットル中1個あった場合に 検出できるというお話ですが、これは余り正確な話ではなくて、ビーズで捕捉したと きに1個捕捉できれば、それで検出ができるということになりますので、必ず濃縮の 操作が入っていて、最終的にビーズまで持っていって、そのときにビーズ法で1個の オーシストが捕捉できれば、それをLAMP法なりPCR法で検出が可能だというこ とになります。細かい話ではありますけれども、そこは少し訂正した方がいいのでは ないか。 ○遠藤座長  片山委員、今の説明でおわかりいただけましたでしょうか。最終濃縮物の中にクリ プトが1個入っていれば、RNAの量としては十分検出できるようになるよというこ とですが、よろしゅうございますか。 ○片山(和)委員  ええ。今後のクオリティーコントロールと恐らく結び付いてくると思います。だか ら、標準物質のあり方も恐らく検討されていかないといけないと思いますし、標準物 質をどういうふうに配って、施設間変動とラボ間変動を補正していくのかということ も考えていかないといけないと思うので、検出感度の表記の仕方と理解の仕方を統一 しておく必要があるのではないかと思ったので、ちょっと伺いました。ありがとうご ざいました。 ○遠藤座長  ありがとうございました。  では、西村先生。 ○西村委員  今、御説明していただいたところで、この方法は非常に実用的で、ある意味ではO Kだろうと私は感じさせていただきました。ただ、阻害物質等の混入があり得る可能 性がありますので、その辺は少し詰めていただければいいのかなと思います。  その点で、この免疫磁気ビーズ法でその阻害物質等をなかなか除去できない可能性 があるということだろうと思いますけれども、私、実際やっていないのでわからない のですけれども、洗いをきつくするとか、回収に関しては、塩酸解離すれば非常にい いということなのですけれども、こういうところにトランスファーRNAを添加する ということで、吸着等で回収率を上げるとか、イーストですと多分クロスしないと思 うので、何かこの辺の工夫がちょっとあれば改善できるのかなと思いますけれども、 ちょっと検討していただければこの方法自身は非常にいい方法を示していただけた のかなと思っています。  感想ですけれども、以上です。 ○遠藤座長  ありがとうございました。どうぞ。 ○黒木委員  先ほど泉山委員からお話がありました今後の方針等について、全くこれについては 問題ないと思いますので、それでやっていただければと思います。  それで、この中にあります陽性・陰性、偽陽性・偽陰性の問題ですが、猪又先生か ら示していただいたデータの中に少し気になるところがあります。結果が顕微鏡法と PCR法あるいはLAMP法で不一致なものが幾つかあるということなのか、顕微鏡 法で10個以下の検出であったものについては、これはそのサンプル中にあるとかな いということで、これは確率の問題なので仕方がないのですが。  気になるところはどういうところかというと、顕微鏡法で例えば50個検出されて いる、あるいは100個検出されているところで、遺伝子法でマイナスのものがある。 そういったことをどこまでやったらいいか。どうやって解決するか、あるいは原因が 何であるか。これは導入を進めながらでも検討しておく必要はあると思います。  もう一つ逆に、これはこういうデータがあるどうかを検討しなければいけないので すが、遺伝子検出法で定量法でやったときに定量値が高いにもかかわらず、顕微鏡法 でマイナスであったものがあるかどうか。全く逆のものがあるか。この辺のところは、 少し検討しなければいけないのではないかと思います。 ○遠藤座長  何かコメントありますか。 ○泉山委員  今、黒木委員からおっしゃっていただいたとおり、数が多いにもかかわらず、クリ プトが検出されていないサンプルが実際あるのですけれども、これは恐らく畜産排水 から検査された場合だろうと思います。 ○黒木委員  そうではないのが表流水でありますね。 ○泉山委員  表流水で7個あるときに。 ○黒木委員  いや、そうではなくて、隣のページの。 ○泉山委員  55個というところですね。これもたしか畜産排水だと思います。 ○猪又説明員  畜産排水が上流に入っていて、その下流の河川水のサンプルになります。 ○泉山委員  ということで、阻害があるということがわかっているので、これについては、おっ しゃるとおり、なるべく阻害に対処した方法を用意したいと思います。今、西村先生 がおっしゃったように、例えばトランスファーRNAを加えて、RNA核酸を安定さ せるとか、例えばカラム精製を行って、もっと徹底的にRNAを洗うとか、そういう 方法できちんと阻害に対応する。試料の種類によっては、とにかく阻害対策を徹底す るというプロトコルをつくることも必要ではないかと考えております。  あとは、遺伝子検査法でプラスが大きくて顕微鏡で出てこない場合もあり、資料2 の26ページを見ていただきますと、サンプルHがTaqMan PCRで9.6個あるいは ABC-PCRで8.8個で、10個近い数が出ているのですけれども、顕微鏡観察では数え られていない。  こういうことについては、一体何が起きているのかということを確認していく必要 があるだろうと思っております。例えばシーケンスをとるとか、あるいは顕微鏡で何 か見落としが生じてしまうような理由があるとか、そういうことを探してみたいと思 います。 ○遠藤座長  そのほかございませんか。どうぞ。 ○西村委員  簡単に。今お示しいただいたLAMP法ですけれども、この方法自身は非常にいい 方法だと認識しています。お話も伺って、それを確信しました。  ちょっと伺いたいのですけれども、幾つかのところでLAMP法をやられたときに、 ポジティブコントロールで時間の経過と共にアブソーブが下がってくる傾向がある のですけれども、これは何かそういう原因はあるのですか。例えばRT−PCRは、 それがなくても並行になっているのでいいと思いますけれども、LAMPは何か所か ポジティブコントロールが下がっている傾向がある。これは本質的なところではない のですけれども。 ○泉山委員  今、西村先生がおっしゃったのは、LAMP法のプロットを見たときに濁度が上がっ たのに、その後下がってくるグラフがあるということなのですけれども、LAMP法の 原理上、(陽性反応は)濁度が生じて、その後沈降します。センサーの位置、チュー ブの真横から高さ数ミリメートル上の部分を検知するので、沈降した結果として、む しろ濁度が下がってくる。上の方が澄んできて濁度が下がるということが生じるよう です。それで、そういうサンプルでも結果については問題ないと解釈できます。 ○西村委員  結果はそれでよろしいですね。よくわかりました。ありがとうございました。 ○遠藤座長  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○船坂委員  今後の方向性というか、このLAMP法とPCR法をまだ同列で検討していくので すか。というのは、最終的に定量する必要がありますね。そうすると、今の方法でい くと、LAMP法で陽性になった場合に顕微鏡法をやる必要が出てきますね。そうし ますと、LAMP法はもうスクリーニングということで、もっと簡単にして、そこで 引っかかったものをPCRでやるとか、もう少し方向性を絞り込んでいった方がいい のではないかという気がするのですけれども。 ○泉山委員  ありがとうございます。今おっしゃっていただいたことについては、非常に重要な 問題だととらえていまして、LAMP法は定性的なスクリーニングに用いる(数は別 の方法で求める。)その一方で、顕微鏡法がどこまで正確に定量できているか考える 必要があります。これは国立保健医療科学院の秋葉先生のところで出していただいた データになるのですけれども、要するに微分干渉顕微鏡を使った数が遺伝子検査とは 対応せず、蛍光顕微鏡で見ただけ、蛍光で光ったかどうか、クリプト、ジアルジアの 抗体と反応したかだけで評価している方が、むしろPCRの結果とよく対応している という結果が出ています。  これがほかの施設でもそうなるのか検討の必要があると思いますけれども、現在の 顕微鏡法がそこまで定量の精度を持っているのかということになってきますと、これ は議論の余地があるのかなという気がしています。クリプトスポリジウム、ジアルジ アの汚染というものをどうとらえるか。これは私の私見になると思いますけれども、 汚染があるかないかをきちんと見ることができるというのが最初の段階だろうと思 います。それがわかったならば、その上で定量ができたら、それはなおいいというこ とになるかと思います。  それで、最初の定量ができるかどうかということについては、顕微鏡とLAMP法 はひょっとすると(定性という意味で)同じぐらいの検査能力かもしれないという気 がしています。  一方で、定量PCRをやっていくためには、標準試料の提供あるいは準備というも のが重要になってくるのですけれども、私の方でそれを営利目的を含む検査向けに提 供できるかといったら、残念ながらそれは困難で、今後それをどういう供給をしてい くかということが非常に大きな課題になってくるかと思います。今すぐに定量法をど こでもできるかと聞かれると、それはわからないとしか言いようがない状況です。  話がいろいろ混乱してくるのですけれども、現状ではLAMP法に限らず定性試験 ができれば、汚染のおそれ、あるいは直接的にクリプト、ジアルジアの汚染の有無を 評価できると私は捉えております。 ○遠藤座長  船坂委員の御指摘はそのとおりでございまして、LAMP法で定量するとなると、 少し経済的な問題が発生するかもしれませが、例えばMPN法とかを組み合わせをす ることでそれなりの定量性は得られなくはありません。そんな便法も含めて、定量性 に向けた方針というものを出していかなければいけないだろうと思っております。ど うぞ。 ○片山(浩)委員  東大の片山ですけれども、定量性に関連してです。  PCRのデータを環境試料に対して適応して、定量値として海外の論文等に出すと、 そんなものは定量値ではないという査読意見がここのところ大体返ってくるので、イ ンターナルコントロールとか、何らかの阻害がなくてきちんと定量できましたという 遺伝子配列を、しかるべき機関というのは泉山さんのことなのですけれども、しかる べき機関が準備してくださると、定量値として外に出すときに非常に説得力のあるプ ロコトルとして仕上がっていくのではないかという気はするのですが、その辺は御検 討いただけないものでしょうか。 ○遠藤座長  私も似たような質問があるのですが、遺伝子検査法が実行された場合、その確認手 段としてPCR産物の塩基配列確認が考えられますが、全ての陽性反応産物について 確認を行う必要があるのでしょうか。あるいは、定期的に配列を見ていくのか、それ はどこの機関がやるのか、有償か無償かという問題もあわせてあるのではないかと思 っています。 ○泉山委員  私の方からは、研究目的に共同研究という形でもってクリプトスポリジウム、ジア ルジアの標準サンプルをお出しするのはやぶさかではないと考えております。一方で、 営利目的等で検査をする機関対象になりますと、それについては将来の課題として考 えさせていただければと思います。 ○遠藤座長  重要な検討課題だろうと思います。  あわせて、もう一つ私の方から質問させていただきたいのですが、先ほど国包先生 から、例えば水源に畜舎排水とかがあった場合に阻害が起きやすいのではないかとい った御指摘があったと思います。  その解決方法として幾つか考えられると思いますが、どなたかの報告にあったと思 いますが、試料量を5マイクロから1ないし2マイクロに減量することで解決できる とされていりました。このような観点を含め、すべての反応は1ないし2マイクロで 行う劇なのでしょうか。あるいは1から5マイクロという幅を残しておく方がいいの でしょうか、テンプレート量についてご意見をお聞かせ下さい ○泉山委員  現時点で1から5という数字に特にこだわりがあるわけではありませんので、それ については経験的に決めていければと考えております。液量が少なければ少ないほど、 当然阻害は少ないでしょうし、一方で検出感度のことを考えてまいりますと、コピー 数が多いほど定量あるいは定性がより正確になっていきますので、それは兼ね合いだ と思います。その辺りについては、今後の経験、結果を踏まえてと考えています。 ○福井委員  今の点に関してなのですけれども、私たちの研究室の研究の経験から言うと、鉱山 とか湖沼の中に生息している微生物から直接RNAを回収して、メンブレンハイブリ ダイとかリアルタイムPCRで定量しているのですけれども、どうしてもハイブリダ イゼーションとかPCRに阻害するのはフミン酸が中心でして、そのときには手間が かかるのですけれども、ハイドロキシアパタイトで処理しています。  ただ、そのときに回収率が落ちたりするものですから、実際の定量のときには精度 が落ちるということと手間暇がかかる。そうした問題を現場の皆さんがどう解決でき るか、簡便化できるかということは、また技術開発が必要になってくるかなという感 想です。 ○遠藤座長  ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますか。  もう一つ確認させていただきたいのは、今回の御発表いただいた研究の中で、顕微 鏡法と遺伝子検査法の不一致の例が有り、多くの報告者からは検査試料中のオーシス トが少ないときには、検査試料を2分する際にどうしても不均衡が生じてしまうのだ と説明されておりました。このような説明でご了解いただけるのでしょうか。あるい はそこのところはもうちょっと方法論的に検討しなければいけない問題があるでし ょうか。この点について何かコメントいただけたらと思いますけれども、いかがでし ょうか。  現実的には技術的に非常に難しい問題だと思うので、個人的にはこのような解釈に 妥当性があるのだろうと思っておりますが、何かしら解決方法等、考えられるところ があればコメントをいただけたらと思いますが、片山先生、何かありませんか。 ○片山(浩)委員  原理的にも経験的にも、この結果は妥当だと思います。こういうふうになるのは予 想されることの範囲内だと思います。 ○遠藤座長  それでは、よろしいでしょうか。 ○遠藤座長  それでは、本日の討議を踏まえまして、今後の別の検査機関におけるバリデーショ ン等の作業も進めつつ、遺伝子検査法のマニュアル案の検討をあわせて進めていきた いと思います。今後とも、またよろしくお願いいたします。  引き続きまして、その他として事務局の方から何か御説明がありましたらお願いし たいと思います。 ○松本管理官  本日の長時間にわたっての御審議、ありがとうございました。  本日の議事要旨と議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開する ことになりますので、よろしくお願いいたします。  次回の検討会につきましては、粉体ろ過法のバリデーションの結果が出るころを考 えております。本日とあわせまして、引き続き御指導のほどよろしくお願いしたいと 考えております。  それから、クリプト対策の一環として、今、行政的に求めております原水中の嫌気 性芽胞菌の検査についてでございますが、検査で必要となる培地の製造が中止される 状況となっております。このため、本日その取り扱いを御議論いただくことを考えて いたのでございますが、現在、複数のメーカーにおいて同等の性状を有する培地の試 験が行われている状況にございます。本検討会には、その結果がまとまった段階で改 めて御報告いたしまして御議論いただくことを考えておりますので、よろしくお願い したいと考えております。  事務局の方からは以上でございます。 ○遠藤座長  ありがとうございました。以上で本日の審議を終わりたいと思います。御協力いた だきました8機関の方には改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。 1