10/05/31 第1回職場におけるメンタルヘルス対策検討会議事録 第1回職場におけるメンタルヘルス対策検討会       日時 平成22年5月31日(月) 10:00〜12:00 場所 経済産業省827会議室                      (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                           労働衛生課 古田、永田                         〒100−8916                          東京都千代田区霞が関1−2−2                          TEL 03-5253-1111(内線5181,5505)                          FAX 03-3502-1598 ○永田主任中央労働衛生専門官 本日は大変お忙しい中ご参集いただきまして、誠にありがとうござ います。労働衛生課主任の永田でございます。定刻になりましたので、ただいまより第1回「職場にお けるメンタルヘルス対策検討会」を開催いたします。金子労働基準局長、平野安全衛生部長とも、急 遽、用務が入りましたので、労働衛生課長の鈴木幸雄からご挨拶を申し上げます。 ○鈴木労働衛生課長 労働衛生課長の鈴木でございます。委員の皆様方におかれましては、大変お忙 しい中、「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」にご参集いただきまして、ありがとうございま す。今ほどご説明がありましたとおり、局長挨拶を予定しておりましたけれども、急遽案件が入りま して、代わって局長挨拶を代読させていただきます。  日ごろより労働基準行政の推進にご理解とご協力をいただき、ありがとうございます。我が国全体 の自殺者は、近年3万人を超える状況が続いており、そのうち約2,500人が勤務問題を原因・動機の1 つとして、自殺しております。また、精神障害などによる労災認定件数が増加しており、仕事や職業 生活に関して、強い不安、悩み、ストレスがある労働者の割合も約6割であるなど、職場におけるメン タルヘルス対策の充実は重要な課題となっております。  厚生労働省におきましては、地域職域におけるメンタルヘルス対策の充実などを図ることを目的に、 本年の1月より自殺・うつ病等対策プロジェクトチームにおいて検討し、先週の金曜日(5月28日)、 その結果のとりまとめを行ったところです。その中では、職場におけるメンタルヘルス対策、職場復 帰支援の充実、一人ひとりを大切にする職場作りを進めるが柱の1つとされ、職場におけるメンタルヘ ルス不調者の把握方法、またメンタルヘルス不調者を把握した後、適切に対応するための基盤の整備 の方法などについて検討するとされたところです。また、昨年末に閣議決定された新成長戦略の基本 方針における雇用人材戦略に盛り込むべき事項についても、一般健康診断時におけるメンタルヘルス 不調の把握及び医師の意見に基づく対応など、職場におけるメンタルヘルス対策のあり方を検討し、 必要な対応を行うことが取り上げられています。  本検討会においては、これらの検討課題を中心に、職場におけるメンタルヘルス対策のあり方につ いてご検討をお願いしたいと考えております。今後、集中的にご検討いただき、夏ごろを目途にとり まとめをお願いしたいと考えております。皆様方のご検討により、職場におけるメンタルヘルス対策 の充実、労働者の健康確保対策の充実が図られますよう、お願い申し上げます。 ○永田主任中央労働衛生専門官 次に、出席者の方々をご紹介させていただきます。資料2の名簿の順 にご紹介をさせていただきます。 ○相澤委員 北里大学の医学部長をしております相澤でございます。専門は労働衛生です。よろしく お願いいたします。 ○五十嵐委員 東京工科大学の五十嵐でございます。この3月まで、24年間、産業保健現場で保健師 をしてまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○石井委員 弁護士の石井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○市川委員 連合の市川でございます。安全衛生を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○岡田委員 大阪ガス人事部で産業医をしております岡田でございます。よろしくお願いいたします。 ○生越委員 弁護士の仕事では、主に労働者の側から労災ないしは企業の安全配慮義務に関して、代 理人として活動しています。よろしくお願いします。 ○川上委員 東京大学精神保健学の教授をしています川上です。日本産業衛生学会の理事もさせてい ただいております。よろしくお願いします。 ○北村委員 三菱重工で臨床心理士をしております北村です。よろしくお願いいたします。 ○栗原委員 私は栗原と申します。企業で労働者の健康管理をした後、いま労働衛生機関でメンタル ヘルスの推進に携わっております。よろしくお願いいたします。 ○下光委員 東京医大の公衆衛生学教室におります下光です。よろしくお願いします。 ○椎葉委員 新日鉄ソリューションズの保健師でございます。よろしくお願いいたします。 ○中野委員 ギャラクシィの中野と申します。現場で実際に社員のメンタルヘルスの担当をしており ます。よろしくお願いいたします。 ○三柴委員 近畿大学法学部の三柴と申します。専門は労働法なのですが、メンタルヘルスに強い関 心を持っております。よろしくお願いいたします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 なお、石井正三先生と堀江正知先生は、本日は欠席でございます。 カメラでの撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  本検討会には座長を置くということになっております。座長は、北里大学医学部長の相澤先生にお 願いしております。よろしくお願いいたします。今後の議事進行につきましては、相澤先生にお願い いたします。 ○相澤座長 ご指名でございますので、務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。大変 重要で、かつデリケートな課題ですので、ご専門の先生方の下で迅速に、また実りある議論をしてい ただいて、適切な結論を出していただけるように、よろしくお願いいたします。議事に入る前に、事 務局から資料の確認とともに開催要綱、具体的な検討内容等の説明をお願いいたします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 説明に入らせていただきます。資料は、1枚目の議事次第、2枚目の 資料目次、以下、資料1〜18までを一括して綴じたものをお配りしております。  資料1の説明をいたします。「職場におけるメンタルヘルス対策検討会開催要綱」ということで、趣 旨として、我が国全体の自殺者は近年3万人を超えており、そのうち2,500人が勤務問題を原因・動機 の1つとして自殺している。また、精神障害等による労災認定件数が増加しており、仕事や職業生活に 関して強い不安、悩み、ストレスがある労働者の割合も6割であるなど、職場におけるメンタルヘルス 対策の充実は重要な課題となっている。このような状況に対応するためには、労働者のメンタルヘル ス不調の把握、把握後適切に対応するための専門家の確保などの実施基盤の整備が必要である。また、 これらの対策においては、中小規模事業場に配慮した実施基盤の整備、メンタルヘルス不調とされた 労働者が不利益を被らないための配慮も必要である。このため、厚生労働省労働基準局長の下に有識 者の参集を求め、職場におけるメンタルヘルス対策の充実のための具体的な方法について検討するも のである。  2として、検討項目。「労働者メンタルヘルス不調の把握方法について」、もう1つ「把握後適切に 対応するための実施基盤の整備について」ということです。また、「その他」としております。構成 は、「本検討会は、学識経験者、検討項目に係る関係者をもって構成する」ということで、先ほどご 紹介した参集者になっております。「本検討会には座長を置き、座長は検討会の議事を整理する。ま た、本検討会のメンバーは、必要に応じて、追加することができる」としております。「本検討会は、 参集者以外の者に出席を求めることができる」ということで、ヒアリング等のことがここに書いてあ ります。  4、その他。「本検討会は原則として公開する。ただし、個人情報、企業秘密情報を取り扱うなどの 場合においては非公開とすることができる」ということで、事務は労働衛生課において行うことにし ております。  次に資料5、7頁です。この検討会を開催するに至った1つの経緯として、厚生労働省自殺・うつ病 等対策プロジェクトチームがあります。これは本年1月に長妻厚生労働大臣のご指示により設けられた もので、28日に報告書がまとめられたものです。それについて説明申し上げます。「はじめに」の中 で、我が国の自殺者数が3万人を超えている。また、現政権では「自殺対策100日プラン」を設け、取 組を集中的に行ってきたということ。警察庁から公表された自殺者数は、4月については2,493人とい うことで、前年同期比よりは18.7%減少しているということがありますが、今後とも強い気持ちを持 って「生きる支援」として、自殺対策を推進していくことが必要であるとされております。  また、自殺に至るには平均4つの要因が背景にあると言われ、警察庁の統計でも自殺の原因として健 康問題、経済・生活問題、勤務問題などの割合が高くなっているとされております。自殺対策は、多 重債務者への対応、学校における心の健康づくりなど、内閣府を中心として政府全体として取り組む べきものであるのですが、厚生労働省は医療、福祉、労働、年金など、1人の人間の一生をトータルに 支える責務を有しており、自殺対策を行う上で果たすべき役割は重いということで、本年1月にプロジ ェクトチームを立ち上げ、3回にわたる有識者の方々からのヒアリング、意見交換を含めて、計5回の 会合を行ってきたということです。先週の28日、今後、厚生労働省が自殺対策に取り組む指針として、 プロジェクトチームのとりまとめを行うということで、大臣、山井政務官のご出席の下、とりまとめ の会合が行われたということです。  12頁です。そこでまとまった結果として、「今後の対策について」ということになっております。5 本柱となっている中で、柱1が「普及啓発の重点的実施」、柱2が、ゲートキーパー、門番というか、 守り役といった形になりますが、「ゲートキーパー機能の充実と地域連携体制の構築」。柱3が労働基 準関係の所になりますが、「職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実」です。柱4が 「アウトリーチ(訪問支援)の充実」。柱5として「精神保健医療改革の推進」ということで、ここの 全部で5本の柱という形でとりまとめがされたところです。  17頁の柱3で「職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実」として、「一人一人を大 切にする職場づくりを進める」ということで、全部で10項目が掲げられております。詳しい説明は省 略しますが、項目としては「管理職に対する教育の促進」「職場のメンタルヘルス対策に関する情報 提供の充実」、これは厚生労働省のホームページに「こころの耳」というのがあって、それに関する ことです。(3)が今回の検討会に一番関わりのある部分ですが、「職場におけるメンタルヘルス不調者 の把握及び対応」ということで、メンタル不調者を把握する方法について検討するといったこと等に ついてです。ここについては、また後ほどお話申し上げます。  この中でプロジェクトチームでの意見ということで、各項目についていろいろご意見を伺った方の 項目が書いてあります。その中で、いちばん下で、「定期健康診断におけるメンタルヘルス不調の把 握に当たっては、労働者が不利益を被らないようにすることが必要」ということで、第3回のときに生 越先生がご発言いただいた部分が入れられております。  (4)として、「メンタルヘルス不調者に適切に対応できる産業保健スタッフの養成」ということで、 研修等を行っている。(5)「長時間労働の抑制等に向けた働き方の見直しの促進」、(6)「配置転換後 等のハイリスク期における取組の強化」、(7)「職場環境に関するモニタリングの実施」、(8)「労災 申請に対する支給決定手続の迅速化」、(9)「うつ病等による休職者の職場復帰のための支援の実施」、 (10)「地域・職域の連携の推進」ということで、ここの中で地域と職域との連携の強化について検討 するということが入れられております。この点については、第4回の今回ご出席いただいております五 十嵐先生からの「産業保健師と地域保健師が連携して、ハイリスク者へのケアを行うべき」というこ とも入れられております。  23頁にまとめのようなものがあって、「おわりに」となっております。自殺・うつ病等対策プロジ ェクトチームのまとめとして、本来目指すべきは「自殺に追い込まれる人がいない社会」の実現であ るということで、下に目標が書いてありますが、毎年、年間の自殺者数を約1,000人ずつ減少させてい かなければならない。本来はゼロでなければならないところですが、目標としては1,000人ずつ減少さ せていかなければならないとしております。本プロジェクトとしては、厚生労働省を挙げて取組を進 めていく推進力とするため、今回のとりまとめを行ったが、大綱の目標を達成し、「自殺に追い込ま れる人がいない社会」を目指していくためには、「生きる支援」として自殺対策を継続的に行ってい くことが重要である。ひとりでも多くの「いのちを守る」ことができるよう、本とりまとめの対策を 実行していくとともに、今後もその実施状況や効果などを把握しながら、必要な自殺対策について不 断の検討を進めていくということでまとめられております。そのあと、参考としてどの回にどういう 方のご意見があったかなどについて入れております。  続きまして、もう1つの経緯である資料6、26頁です。「雇用・人材戦略」ということで、新成長戦 略に基づいて雇用・人材戦略に盛り込む事項ということです。これについては先般開催された労働政 策審議会、これは公・労・使の三者で構成されている会議ですが、その中の安全衛生分科会において 了承された部分です。その中で、地域雇用創造と「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らし い仕事)」。ディーセント・ワークというのはなかなかなじみのない言葉かと思いますが、ILOでディ ーセント・オブ・ワークという言い方をしておりました。それを日本語でわかりやすく書くと、働き がいのある人間らしい仕事という表現になっているということです。  「ディーセント・ワーク」の実現ということで、その目標の1つに、企業におけるメンタルヘルス対 策の推進ということで、2020年、10年後までに必要な労働者全てがメンタルヘルスケアに関する措置 を受けられる職場にするということがあります。現状としては平成19年、2007年の労働者健康状況調 査という厚生労働省で行っている調査ですが、その中で何らかの対策を講じている企業の割合が33.6 %という現状にあるということで、新しい目標を掲げているということです。精神障害などにおける 労災支給決定件数が増加していること、仕事や職業生活に関して、強い不安、悩み、ストレスを感じ ている労働者の割合が約6割であることなどを踏まえ、一般健康診断時におけるメンタル不調の把握及 び医師の意見に基づく対応など、職場におけるメンタルヘルス対策の在り方を検討し、必要な対応を 行うということとされております。  3頁、資料3です。先ほど柱3と申し上げた部分がメインですが、「検討会における具体的な検討内 容」ということです。1として「労働者のメンタルヘルス不調の把握方法について」ということで、労 働安全衛生法に基づく定期健康診断において、労働者が不利益を被らないよう配慮しつつ、効果的に メンタルヘルス不調者を把握する方法について検討するということ。2番目として、「把握後適切に対 応するための実施基盤の整備について」ということで、メンタルヘルス不調者を把握したあと、事業 者による労働時間の短縮、作業転換、休業、職場復帰などの対応が適切に行われるよう、メンタルヘ ルスの専門家と産業医を有する外部機関の活用、産業医の選任義務のない中小規模事業場における医 師の確保に関する制度などについて検討する。また、外部機関の質を確保するための措置についても 検討する。特にメンタルヘルス不調者の把握及び対応については、実施基盤の整備が必要であること から、これらについて十分な検討を行う。3「その他」として、これは(10)にあったところですが、地 域と職域との連携の強化について検討することとしております。本日は、本検討会の検討事項全般に ついてご議論いただければと考えております。 ○相澤座長 本検討会の検討の具体的な内容、検討会ができた背景についてご説明いただいておりま すが、皆様方から今のご説明に対するご質問がありましたら、よろしくお願いします。 ○川上委員 資料5でいただいた自殺・うつ病等対策プロジェクトチームのご報告は、非常に包括的で 立派なものが出されていると思います。その中で、柱3の職場におけるものに関しては項目がいくつか ありますが、その中でメンタルヘルス不調者の把握と把握の対応の現状を取り出して、ここの検討会 でやるという位置づけをちょっと教えていただけないかと思います。 ○永田主任中央労働衛生専門官 この柱3の中で、検討するとされている部分が(3)と(10)ということ で、そのほかの部分については、厚生労働省の事務方のほうで、従来実施しているもの、今後実施す る予定のあるものなどですので、今回の検討については特に(3)と(10)の所を重点的にご検討いただく ということで、ご参集いただいたということです。 ○川上委員 もう1点、26頁に新成長戦略の基本方針の検討中のものが載っているのですが、企業に おけるメンタルヘルス対策の推進の中で、目標で「2020年までに、必要な労働者全てが措置を受けら れる」という、この「必要な」というのは何を指しているのですか。「全ての労働者がメンタルヘル スを受けられる職場にする」というのが正しいような気がしますが、特別に「必要な」という文言が 入っている意味をちょっと教えていただけたらと思うのですが。 ○永田主任中央労働衛生専門官 これは労働者全てということではあるのです。ただ、メンタルヘル スが必要な方、それを求めておられる方は必ず全員ということの意味で、気持ちとしては労働者全部 ということですが、そうすると本当に全員かという話になるものですから、必要とされる方は全部カ バーしましょうということで、100%、「全て」が達成できるようにそういう表現にしてあるというこ とです。 ○川上委員 個人的には違和感がありますが、説明はわかりました。 ○五十嵐委員 私も、いまの川上先生のご指摘と同じところが気になったのですが、「必要な労働者 全てが」というと、メンタルヘルスの何か問題が起きて健康支援が必要な人というようにどうしても 取られてしまいます。そうではなくて働くこと自体を前提に置いて、いつもメンタルヘルスに配慮で きている職場を対象にするということになりますと、この「必要な」というのは必要ないと思うので すけれども。なので、これはやはり削除すべきだと思います。ここで議論するのでなければ、もうち ょっとあとででもいいと思うのですけれども。 ○永田主任中央労働衛生専門官 そういうご意見があったということは承りました。 ○相澤座長 ご考慮いただいて、メンタルヘルスだけではなくてケアですね。ケアが必要なというこ とです。ほかにはご意見がありますか。 ○下光委員 ここ10数年間、自殺者が継続的に3万人を超えていることの原因についての検討はなさ れたのでしょうか。それまでは例えばオイルショックがあったようなときには、結構急峻に立ち上が って、すぐ元へ戻っていましたよね。それがこの10数年間はずっと3万人を超えているということの 要因についての検討というのでしょうか。そういうものはしっかりなされているのでしょうか。それ がないと、対策もしっかりできないと思うのです。自殺者が3万人をずっと超えている、その社会的な 背景とか、そういったことはプロジェクトチームで検討されたのか。 ○永田主任中央労働衛生専門官 9頁から10頁までに状況をいろいろ分析したところがあります。つ まり、「自殺の実態等」ということで、例えば地域や時期によって、自殺者の数や属性が大きく異な っているとか、無職男性の自殺死亡率が極めて高いとか、近年、有職者全般、特に一部の業種や職種 において自殺死亡率が高まっており、農林漁業職・サービス職では以前から高かったけれども、平成 10年代にさらに上昇しており、また専門・技術職、管理職では平成10年代に入り急激に上昇といった こと。それから、配偶者と離別した無職者の自殺死亡率が多いとか、月別に見ると、3月の自殺が最も 多いと。ということで、今年3月に政府として自殺対策に取り組んだということもありますが、そうい ったこと。生活保護受給者の自殺死亡率が、全体の自殺死亡率よりも高いとか、職業の属性によって 自殺に至る経路、要因は異なるということ等がありました。  そういったことを踏まえて、例えば生活保護を受けておられる方、またハローワークに行っておら れる方といった、そういう自殺の要因の多い所に対して、特にいろいろ対策を講じようということで、 5本柱が作られてきたということです。先ほどもちょっと説明した中に、今年の4月の死亡率は、昨年 と比べて非常に減っていると。実は昨年の9月以降、対前年比がずっと低いままで推移してきておりま す。それについては、先般28日の会議で、大臣のほうからもなぜ減ったかということもちゃんと調べ て、分析するようにということも出ておりますので、今後それについても分析を行っていくというこ とになろうかと思っております。 ○生越委員 資料10に、いままで厚生労働省のほうで職場のメンタルヘルス対策ということで、いろ いろ通達等を出されていると思うのです。特に平成21年3月の「当面のメンタルヘルス対策の具体的 推進について」の中で、かなり面接指導、「メンタルヘルス不調者の早期発見と適切な対応の実施」 という項目を設けて、長時間労働の話であるとかを謳っていらっしゃると思うのですね。  実務上、労働者の立場からやっていて何が問題かと申しますと、結局守れていないからこそ、そう いう労災の事故が起こる場合が多いのです。ですから、大企業の場合はシステムとして入っているけ れども、自主性に任せていて労働時間は実態を反映していなくて、きれいに残業時間が45時間に揃っ てしまっているとか、中小のお金がない所は、そういうシステム自体を入れられていないわけです。 ですから、過去に特にメンタルヘルス関係で打ち出された通達なりが、どういう原因で守られていな いのか。守られていないとすると、労働者の側に問題があるのか、それとも使用者の側に問題がある のか、それは規模に応じてどういう変動があるのかというところの分析をしっかりしないと、いつま で経っても通達ばかり出す形になって、具体的な効果が上がっていかないと思うのですね。ですから、 その点について、厚生労働省のほうでどのような把握をされているのか。特にこの平成21年3月の分 で、過去の分でもそうですが、労災事故が起こったときに原因を徹底的に究明する、解明すると。そ れで、行政指導を行うということを謳っていらっしゃるので、具体的に厚生労働省にどういう知見が 蓄積されているのかというのは、一度議論する上で重要な資料になると思いますので、そういうもの があれば、そういうものを踏まえた上でこれからどのように不調者を把握して、把握したあとどうす るかで議論したほうが建設的になるのではないかと思います。 ○永田主任中央労働衛生専門官 ご意見を承りました。いま先生がお話になったのは、資料でいうと 71頁から付けてあります。資料については、全部細かくではないのですが、後ほどまた説明はさせて いただきます。また、生越先生からお話があった点について、どういう資料が出せるかというのもあ りますので、ご用意できないかもしれませんが、ご意見があったということは承っておきます。 ○相澤座長 よろしいですか。ほかに資料もありますので、この検討会における検討事項全般につい てご議論いただく前に、事務局からメンタルヘルス対策の現状等について、資料のご説明をお願いし たいと思います。 ○永田主任中央労働衛生専門官 資料について説明をいたします。資料4、4頁になります。ここでメ ンタル不調の把握及び把握後の対応ということで説明をいたします。「労働者のメンタルヘルスの状 況」ということで、労働者健康状況調査を行っております。これは厚生労働省で実施している調査で す。その中で、「仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者」の割合は 58%。ここは後ろをご参照いただきながらということで、43頁の右上の所に計58.0とあります。そこ がいま申し上げた「58%に上っており」というところです。「過去1年間にメンタルヘルス上の理由に より連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業場」の割合は8%であり、ということは、42頁 の左下に「7.6%」とある部分です。さらに、神経症があるとする労働者も0.6%と5年間で3倍に増 加しているという所については、41頁の下の「持病があるとする労働者の割合」の下に0.2%、0.6% とあるのが5年ごとの集計ですので、そこの数字です。これらの状況は、広範な業種において、事業場 規模にかかわらず見られるということで、これについて42頁で産業別に挙がっております。また、43 頁にも産業別で出ておりますが、どういう業種でも見られるということです。  次に、精神障害などによる労災支給決定件数は、平成16年度130人から平成20年度の269人と、最 近の5年間で倍増しているということです。これについては、41頁の真ん中に「精神障害等の労災補 償状況」ということで、平成16年度が130、平成20年度が269という数字になっております。また、 我が国全体の自殺者数は、近年3万人を超えており、そのうち2,500人が勤務問題を原因・動機の1つ として自殺しているというところです。これは40頁、資料17のいちばん最初の中で、警察庁がまとめ ている自殺の関係の統計ですが、上から2つ目の四角、「原因・動機別自殺者数」で、総数として3万 2,845人ということです。その中で、原因・動機がわかっている方が約3分の2ぐらいおられます。も う1つ下の「原因・動機特定者の原因・動機別」という表の中の真ん中辺りの枠で「勤務問題」と書い てある所で、2,528人が統計として表れているということです。  2「一般定期健康診断におけるメンタルヘルス不調の把握等の現状」です。「既往歴の調査」及び 「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」については、常時使用する全労働者を対象にした労働安全衛 生法第66条第1項に基づく一般定期健康診断には、「既往歴の調査」「自覚症状及び他覚症状の有無 の検査」などの項目があり、メンタルヘルス不調から生じる症状も含む場合がある「自覚症状及び他 覚症状の有無の検査」の具体的な手法は、医師の判断に委ねられているというところです。これは33 頁、資料12で「健康診断の『自覚症状及び他覚症状の有無の検査』について」ということで、真ん中 辺りにアンダーラインが引いてあります。かなり前の通達ではありますが、昭和47年の通達において、 そのようなことが示されているということです。  ※で「労働者の心の健康の保持増進のための指針においては」と書いてあります。これについては 70頁に指針の項目があり、[8]において「定義」という形で示されているということですので説明いた しました。また、既往歴の調査は、メンタルヘルス関係の既往歴を調査対象から除外はしていないと いうところです。  「メンタルヘルス不調者を把握した場合の措置」ですが、これは健康診断の項目に異常の所見があ ると診断された労働者については、労働安全衛生法においては、法66条の4で医師が就業上の措置に ついて意見を述べ、次に法66条の5において事業者は当該意見を勘案し、その必要があると認めると きは当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じ るとされているところです。  また、健康診断の結果に基づき、事業者が講ずべき措置に関する指針については、59頁からになり ます。「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が59頁にあります。その中で、 事業者は異常所見に関して意見を述べる医師に対して、就業上の措置の必要性の有無、講ずべき措置 の内容などについて意見を求めること。59頁の右側の一番下、2の(3)がそれに該当しております。  その際、健康診断の結果のみでは労働者の身体的又は精神的状態を判断するための情報が十分でな い場合は、労働者との面接の機会を提供することが適当であるということです。これは60頁のロの 「医師等に対する情報の提供」の中の真ん中辺りに書いてあります。  [2]ですが、事業者が医師の意見に基づき就業上の措置を決定する場合は、あらかじめ労働者の意見 を聴き、十分な話合いを通じてその労働者の了解が得られるよう努めることとされており、これは60 頁の(4)のイに記載されております。  「衛生委員会等への医師等の意見の報告」ということで、61頁の左の一番上に書かれております。 ウですが、さらに労働安全衛生法66条の7においては、事業者は健康診断の結果、特に健康の保持に 努める必要があると認める労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を行うよう努めるとされ ております。また、一般定期健康診断において、健康診断を行う医師に、労働者がメンタルヘルス不 調の自覚症状があることを申し出た場合、また労働者には明確にメンタルヘルス不調の認識はないが、 自覚症状などを記入する調査票により、メンタルヘルス不調及びその疑いがあると判断される場合な どメンタルヘルス不調を把握する場合があり、その際の労働安全衛生法に基づく事後措置の徹底を通 達により指導しているということです。これは先ほど生越先生からお話がありました71頁からの「当 面のメンタルヘルス対策の具体的推進について」の73頁の5の(3)に記載されております。  次に、「健康診断以外におけるメンタルヘルス不調の把握と対応」ということで、「労働者の心の 健康の保持増進のための指針」においては、職場におけるメンタルヘルス不調への気づきを促進する ため、労働者による自発的な相談とセルフチェック、管理監督者、事業場内産業保健スタッフなどに よる相談対応、労働者の家族による気づきなど、このための支援などを図るとしているということで す。これについては、「労働者の心の健康保持増進のための指針」を63頁に資料として付けておりま すが、その中の67頁の(3)のアとイとエに書いてあります。ウについては、ストレスチェックなどを利 用して、労働者個人のメンタルヘルス不調を早期に発見しようとする場合、専門的知識を有する者に よる面談を実施するなど、適切な評価ができる方法によること。事後措置の内容の判断には、医師の 指導の下、問題を抱える者に対して事後措置を適切に実施できる体制が存在していることなどを前提 として実施することが重要であるとされているということです。メンタルヘルス不調の把握及び把握 後の対応の現状ということで、こういったことが示されているということです。  資料5、資料6は先ほど説明いたしました。資料7から簡単に申し上げたいと思います。「職場にお けるメンタルヘルス対策の推進」です。これについては、現在こういうことをやっているということ で、事業場における基本的取組事項が「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で、衛生委員会 での調査審議、事業場内体制の整備、教育研修の実施、職場環境等の把握と改善、不調者の早期発見 ・適切な対応、職場復帰支援といったことを基本的取組事項としております。平成22年度ということ では、労働局、監督署における指導の実施。また、「メンタルヘルス対策支援センター」、これは後 ほど資料がありますので、そちらで説明します。これによる事業場の取組の支援。それから、その他 メンタルヘルス対策の実施ということで、精神科医、産業医の方に対する研修等、ストレス対処法の 検討、「こころの耳」を通じた情報提供、資料の配布などを行っているということです。  資料8ですが、「労働者の心の健康の保持増進のための指針(概要)」となっております。指針その ものは、先ほど申し上げた63頁から本体全部を入れておりますが、概要ということで説明いたします。 「趣旨」としては法の69条1項の措置の適切かつ有効な実施を図るということで、メンタルヘルスケ アの原則的な実施方法について定めているということです。「メンタルヘルスケアの基本的考え方」 ということで、事業場で十分調査審議を行い、「心の健康づくり計画」を策定し、その実施に当たっ ては教育研修・情報提供、「4つのケア」を効果的に推進するといったことを考え方として示している ということです。3、4、5については、いま申し上げたことについて定めているということです。  6は「メンタルヘルスケアの具体的進め方」ということです。最初に教育研修・情報提供を行ってい ただく。職場環境の把握と改善に取り組んでいただく。メンタルヘルス不調への気づきと対応という ことで、ここでは特に個人情報の保護に十分留意しつつ、労働者、管理監督者、家族などからの相談 に対して、適切に対応できる体制を整備するということとしております。また、職場復帰における支 援ということで、メンタルヘルス不調により休業した労働者が円滑に職場復帰し、就業を継続できる ようにするため、事業者はその労働者に対する支援を適切に行うものとするとしております。  7に「メンタルヘルスに関する個人情報の保護への配慮」ということで特に項目を設けており、メン タルヘルスケアを進めるに当たっては、健康情報を含む労働者の個人情報の保護に配慮することが極 めて重要である。事業者は、健康情報を含む労働者の個人情報の保護に関し、個人情報の保護に関す る法律及び関連する指針などを遵守し、労働者の健康情報の適切な取扱いを図るものとする。  8として「小規模事業場におけるメンタルヘルスケアの取組みの留意事項」ということで、地域産業 保健センターなど、これは国からの委託事業ですが、各都道府県ごとに設置をし、相談窓口等は各地 域ごとといいますか、各労働基準監督署のエリアごとになるように設置をしております。そういった 地産保等の事業場外資源の提供する支援を、積極的に活用していただきたいということです。  資料9ですが、メンタルヘルス対策支援センターです。これについては、各都道府県ごとに設置して いるもので、メンタル不調の予防から復職支援までの職場のメンタルヘルス対策を総合的に支援する という目的です。事業内容としては、事業者、産業保健スタッフの方々からの相談に対応する。それ から、そういった方々に対して助言も行う。さらに、相談機関を登録・公表して、事業場への紹介等 を行っている。さらに、事業者や産業医、主治医、相談機関、行政機関等のネットワークを構築する。 新しい事業として、職場の管理職の方々に対して、通常は集まっていただいてということですが、こ れに関しては事業場に講師が赴いて、事業場の方々に対してそういう教育を実施することを今年度か ら行っているということです。  資料10の中で、「職場のメンタルヘルス対策に関する動き」ということです。通達、また委託事業 ということで、リーフレットを作成したもの等々についても入れてありますが、まず上から3つ目、 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」ということで、平成16年に策定して 平成21年3月に改訂をしております。職場復帰支援については、そのようなものをお示ししていると いうことです。それから、平成18年3月に、指針という形で「労働者の心の健康保持増進のための指 針」を公示しております。これは先ほどから再三触れておりますが、63頁に資料として添付していま す。  政府全体の動きもいろいろありますが、平成20年4月、先ほど申し上げたメンタルヘルス対策支援 センターを設置しているということです。先ほど生越先生からも言及をいただきました、平成21年3 月の当面のメンタルヘルス対策の具体的推進についてということで、71頁に資料を添付しております。 平成21年10月に、職場のメンタルヘルス・ポータルサイトということで、厚生労働省のホームページ に、労働者の方、家族の方、事業場の方、産業保健スタッフの方等に対する情報提供といいますか、 例えば労働者の方ご自身に対しては、緊急で相談できる窓口がわかりやすいようにいちばん最初に出 てくるような形をしていたり、いろいろ工夫して設けているということです。  資料11です。「現行の一般健康診断の流れ」ということで、特にご参集者の方々、先生方のご専門 でもありますので、あまり詳しく説明するのも何ですが、一般健康診断ということで、労働安全衛生 規則の第44条の中に項目が示されております。その中に、「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」と いう項目があります。それから、労働安全衛生法66条の4ということで、「異常と診断された者に対 する医師の意見」ということで、指針の中で、診断結果のみでは労働者の身体的又は精神的状態を判 断するための情報が十分でない場合は、労働者との面接の機会を提供することが適当というようにし ております。その後、就業上の措置が講じられるということです。また、健康診断の結果、「保健指 導」「治療」等から、「医師の意見」というほうにも流れが作られているということです。  資料12ですが、一般健康診断におけるメンタル不調者の把握について、従来どういった形で解釈を 示していたかということで、資料として出しております。「健康診断の『自覚症状及び他覚症状の有 無の検査』について」は、労働安全衛生規則43条の健康診断について、昭和47年の通達の中で、その 検査項目の選定は、当該労働者の性、年齢、既往歴、問視診等を通じての所見なども合わせて、医師 の判断に委ねられるものとしているということがあります。下の「一般健康診断における問診につい て」ということで、心身両面の健康状態のチェックが重視されるということで、精神面も重要である ことが書かれているということです。  次に資料13「長時間労働者に対する面接指導制度」で、どういう流れになっているか示しています。 長時間労働者については、労働者側で月100時間を超える時間外・休日労働の場合、申出をして面接指 導を受ける、月80時間を超える労働者について、申出により面接指導を受けるという流れです。申出 を事業者に対して行ったあと、実施の依頼を事業者が医師に対して行う、それによって医師は面接指 導を労働者に対して行う、また、その意見を事業者に対して述べる、その意見に基づいて事業者は事 後措置を実施するという流れになっています。  資料14は、長時間労働者への面接指導の際に、どういったもので実施していただいているかを出し ています。平成20年8月に示したものですが、チェックリストとして「この2週間以上、毎日のよう に、ほとんど1日中ずっと憂うつであったり沈んだ気持ちでいましたか」とか「ほとんどのことに興味 がなくなっていたり、大抵いつもなら楽しめていたことが楽しめなくなっていましたか」といったよ うなことを聞くことになっております。  資料15で「職業性ストレス簡易調査票」というのがあります。これは厚生労働省からの委託により 今回ご出席の下光先生に作成していただいたものですが、「あなたのストレスの程度をチェックして みましょう」という形で、各人がセルフチェックもできるし、またその結果に基づいて評価もできる というものでA、B、C、Dに分かれています。仕事について伺いますということで、例えば、「非常に たくさんの仕事をしなければならない」について「そうだ」とか「ちがう」ということをチェックす るとか、4番「かなり注意を集中する必要がある」とか、8番「自分のペースで仕事ができる」とか、 13の「私の部署と他の部署ではうまが合わない」とか、16の「仕事の内容は自分にあっている」とか、 17の「働きがいのある仕事だ」というような、仕事に関して自分がどう思っているかをチェックをす る項目です。  Bは、どちらかというと、生活一般に関することになりますが、2の「元気がいっぱいだ」とか、5 の「内心腹立たしい」、8の「へとへとだ」、13の「ゆううつだ」といったことで、1か月間の自分自 身の状態について、どれが当てはまるかという項目です。  Cは、周りの方々と良い関係があるかということで、上司・同僚・友人などと気軽に話ができるか。 また困ったとき誰が頼りになるか。相談をしたときにどのぐらい聞いてくれますかといった項目があ ります。満足度については、仕事と家庭について満足しているか、不満足かといったことをチェック します。  38頁に簡易調査をした結果があり、これはあくまでも例ですが、項目によって、高いというほうに 出た場合にストレスがあるという場合と、低いと出た場合にストレスがある場合とありますので、そ のハッチングが変わっていますが、そのようなことでストレスの状況が把握できるというものです。 これについては、いろいろな健診機関でメンタルヘルスの状況を、健康診断の際に既に取り入れてい る所もあるようです。  資料16は安全衛生管理組織ということで、業種によって若干状況が違いますので、わかりやすいよ うに表にまとめております。50人以上と50人未満で産業医とか衛生管理者の義務があるかないかとい う違いもあります。  資料17から関係統計ですが、40頁がいわゆる警察庁による統計になっています。あとは健康状況調 査とか、そういった調査の中で、こういう結果が出ているということですので、今後ご検討いただく 際に参考になるようなものということで、資料として付けております。  資料18からは関係法令ですが、労働安全衛生法、労働安全衛生規則については、健康診断に関係す る部分を抜き出しております。個人票が付いている58頁までがそれに関する部分です。あとは通達と か指針があって、59頁からは「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」となって おり、2枚あります。63頁は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で、4枚あります。最後の 71頁に「当面のメンタルヘルス対策の具体的推進について」ということで2枚付けています。資料に ついては以上です。 ○相澤座長 膨大な資料をご丁寧にご説明いただきましたが、これについて委員の間から何かご質問 はありますか。 ○五十嵐委員 私は内閣府の「自殺対策推進会議」の委員ですので、今のに少し補足させていただき たいと思います。そもそも資料1の1頁のこの会の趣旨ですが、冒頭のご挨拶にもありましたが、自殺 者数が3万人を超えている状況が12年間続いて、異常な事態です。そのうち2,500人が勤務問題を自 殺の原因動機の1つとしているとありますが、資料の40頁を見ますと、これは警察庁の資料なので、 その後またさらに詳しい分析がされていると思います。上から3つ目の表で勤務問題に2,500人という ところを冒頭のご挨拶で挙げていらっしゃるのだと思いますが、問題は左から2つ目の健康問題で、健 康問題のほとんどがメンタルヘルス疾患ではないかと言われています。つまり、勤務での問題であっ ても、うつ病になっての自殺であれば、ここに入ります。  さらに資料の10頁ですが、職業の属性によっては自殺に至る経路の要因は異なるということで、例 えば「被雇用者・勤め人」は配置転換や転職などによる「職場環境の変化」が複合的にメンタルヘル スの疾患に及び、自殺になっているということで、内閣府の自殺対策推進会議では、勤務問題で挙げ られている2,500人以上に、職場環境の問題から、まず失業して生活苦から多重債務、うつ病、自殺と いったところがかなり多いのではないかということです。  40頁のいちばん上の図は職業別の自殺者ですが、被雇用者・勤め人9,159人とあり、その右の無職 者1万8,722人の多くが、仕事をしていたにもかかわらず、何らかの問題で失業して自殺に至っている というところも議論されています。ですから、今回のこの検討会は2,500人に対してではなくて、その 背景として多くの勤労者の自殺があることを補足させていただきたいと思います。  冒頭に川上先生と私の両方が質問いたしましたが、メンタルヘルスが必要な労働者とか、何か病気 があってケアするというのは、表面上は本当に一角に見えるのですが、一次予防から含めて、かなり その背景には働く人たちの自殺があり、メンタルヘルスの問題があることを、是非理解していただき たいと思います。以上です。 ○岡田委員 今回の検討会の目的は自殺も重要な課題ですが、メンタルヘルスの不調者を未然に予防 する、発見するということで、定期健康診断に何らかのチェック機能を入れることが大きな目的では ないかと思います。  私どもの会社でも、既に定期健康診断時に、職業性ストレス簡易調査票を用いて、ストレス度と心 身の反応を、いまはWeb上で全員に入力することを必須にしております。当初は個人情報の問題があっ て選択制にしておりましたが、3年前からは、労組と人事部と私たち産業医が意見を出し合って必須項 目として、全員がこれを入力するという形にしています。母体企業だけではなく、50人未満の関係会 社もありますので、関係会社の従業員については当日センターにおいてWebで全部入力してもらうよう にしています。それは事業主には見せないで、産業医だけが見るという形で、一定の基準を設けて、 産業医がそれで面談をする。そして、ある一定の基準で、産業医で決めた評価があるのですが、それ を下回った場合には産業保健スタッフが約30分、別途私どもが作ったチェックシートに基づいて面談 をする。そして産業スタッフと私どもが相談をして精神科医に相談するかどうかというシステムを作 りました。  それに際しては、管理職に対する教育・研修がまず必要です。何故ならば健康診断時にメンタルヘ ルス不調者を未然に見つけた場合には、特に本人の了解を得た上で、職場の上司と産業医が面談をす ることが望ましいからです。その結果、この3年間で不調者が減ってきました。そして健保組合の傷病 手当金の支給額もかなり減ってきておりますので、確かに健康診断時にこういうチェックを入れるこ とで未然に把握ができるのだろうと思います。  もう1つは、過重労働の面接です。本来は本人に対してやるべきですが、産業医が面接する場合は、 面接対象者が働いている職場の状況というのを必ず聞いておく必要があります。「いや、みんな疲れ ていますよ」と言った場合には、産業医は職場の過重労働環境に対する対応をきっちりしておかない と、次にまた出てくる可能性があります。したがって、過重労働についてもメンタルヘルスについて も、産業医の仕事というのはまず予防ですから、そういったところにきっちり対応するようなシステ ムを作らなければいけません。  今回、健康診断時にこういったシステムを入れるとなりますと、私どもでも約10年ぐらいかかって おりまして、システムの構築、個人情報のプライバシーの問題に対してどう処理するのかとか、労働 組合との調整、弁護士との相談など、いろいろなことを踏まえて、かなり時間がかかりました。関係 会社については、事業主に健康診断の結果を返さなければいけないというノルマもあるのですが、そ こをどのようにして事業主に理解してもらうかということも含めて、検討しない限りは非常に難しい のです。  もう1つのポイントは、昨今のいろいろな論文を見ていますと、生活習慣とうつ病の関連を指摘した 論文がみられます。例えば、魚介類摂取量の多い国は、産後うつ病が少ないとか、運動量が少ない人 は、ハーバード大学の結果によりますと、自殺、うつ病が多いというデータが出ています。この点か らのアプローチも必要だと思います。  私どもも業務用車両を運転する人に対して、そして現在はすべての対象者にエプワースのスコアを 使って睡眠時無呼吸症候群のチェックをしておりますが、そういった項目と合わせて、メンタルヘル チェックも可能です。さらに私ども健康診断のときに、その人の異動先と言いましょうか、どこで働 いているかというのが、表示されますので、異動と健康状況の変化を把握することが可能となります。  そうすると健康診断が極めて膨大な時間が必要となってきます。今までみたいに定時に終わらなく なってしまいますが、果たしてこれが今後、健康診断時に実施できるのかどうか。私どものようなた くさんの産業医がいて、それからスキルを持った産業医、精神科の先生のバックアップがあればでき ますが、例えば外部の医療機関、健診機関で、果たしてこれができるのかどうかは極めて大きな課題 です。  そういったものを含めて、今後実践的で実際的で、なおかつコスト・ベネフィットを考えた対策を 講じない限りは、結果としては実践はできないことになりますので是非、現場で活かされるような施 策を、ここで議論していただけたらありがたいと思います。 ○相澤座長 本題に入っておりますが、資料についてのご意見、ご質問はいかがでしょうか。それで は、資料についてのご説明とご質疑をいただきましたので、具体的に資料3の「検討会における具体的 な検討内容」について議論したいと思います。  まず、いまも岡田先生からお話がありましたが、1の労働者のメンタルヘルス不調の把握方法につい て、ご議論いただければと思います。いかかでしょうか。実際に岡田先生の所ではやっておられて、 規模も大変大きいし、時間もかかるということもあります。 ○川上委員 先に情報提供について、私のほうの立場からお話させてください。まず、厚生労働科学 研究費の健康科学の研究事業で、昨年度地方公務員を対象に、うつ病に関するスクリーニングを受け たいかどうかという意識調査をいたしました。いま結果が上がってきたところですが、労働者の中で、 「受けたい」という方は50%ぐらいで、「いいえ」が2割弱、「どちらとも言えない」が3割という 状況で、半数ぐらいの労働者はうつ病スクリーニングに好意的に言うかもしれませんが、それ以外の 方はどのように考えるかというのは大きな問題だと思います。  また同時に「スクリーニングを受けるときに何を大事と考えますか」というお尋ねをしたところ、 ご想像どおりだと思いますが、「結果が医師や看護職以外に見られないこと」が6割、「二次スクリー ニングで面接をされる場合には、専門家に診てほしい」が6割、「ストレス対処などの勉強をも同時に させていただきたい」が6割あります。  このようなことを見ますと、スクリーニングを行うときに事業者がその結果を見られる現在の定期 健康診断の体制では、少し難しいという印象があります。岡田先生の所では産業医が代行されている ので、よろしいのですが、通常の所では健康診断の結果は、現在の法制度では事業者が結果を見るこ とができますので、この辺りをどのように体制づくりをするか。心の健康づくり指針も、十分な体制 がないと行えないようだと、かなり慎重な論調のものを、用意していただいた指針の中にも書き込ん でありますので、中小規模事業場などでどのようにするかというのは、すごく大きな課題だと思いま す。  2番目は、スクリーニングだけをやって、予後が良くなるという研究については、あまり高いレベル の科学的根拠がありません。唯一フィリップ・ワンというアメリカの方が2007年に『JAMA』という雑 誌に出された無作為化した介入研究では、スクリーニングをして、そのあとにいろいろなケアをして 予後が良くなったと報告しているのですが、スクリーニングをされた方の90%に対して、何らかのサ ービスをして、ケアマネージャーが十分なフォローをした上での成果ですので、スクリーニングをし たあとの十分なケアがなければそれほど有効な施策にならないのではないかという危惧があります。  3番目は、スクリーニングというのは、一般的にスクリーニングでポジティブの人に会うと、すぐに うつ病者に会えるような印象がありますが、決してそうではなくて、一般集団中に1%のうつ病者がい て、いまやっているスクリーニングをやりますと、例えば1,000人の事業者だと100人ぐらいがポジテ ィブに出てきて、その中にうつ病の方が2%いるかいないかという状況で、2%の方を見つけるために 100人に面談をするというのは、非常に効率の悪い状況が実際にも発生しています。  その中で、強制的にというか、スクリーニングを型どおりにやってしまうと、うつ病ではない方も 病院に行きなさいということが出てきて、そういう無駄な受診、治療が必要ではない方も受診させて しまう可能性もありますので、こういう点も少し考慮しなければいけないかと思っているところです。 情報提供までに申し上げました。 ○相澤座長 大変貴重な情報をいただきました。 ○三柴委員 川上委員のお話をお聞きしていて、非常に的確なご意見であるため、言いたいことが混 乱してしまいましたが、あえて申し上げたいと思います。私自身、法学の観点からこの問題に焦点を 合わせていろいろと調べてきていたのですが、実は、これまでの制度でも、面接指導の制度や定期健 診を含めた法定健診の制度の中で、いま事務局の方からご説明もあったように、他覚症状、自覚症状 に対するアプローチというのは、かなり行われるような仕組みになっています。ですから、今回、改 めて定期健診でメンタルヘルスに関する項目を入れるということがあったとしても、現行制度をよく 解釈していくと、既に現時点で、かなりそれに近いところまで、近づいて来ていると申し上げること ができると思います。  それから民事の裁判例を見ても、例えば、面談の機会に上司に対して自覚症状を述べなかったこと が損害賠償額の算定の際に過失相殺の根拠として認められている例があります。これはJFEスチー ル事件の判例ですが、同様の認定判断の例は他にも挙げることができます。法律論としては、確かに プライバシーの問題はあるのですが、ある種パターナリズムといいますか、本人のための問題として、 今回導入が検討されている考え方に、既にかなり接近が図られてきている前提はあるということを申 し上げなければいけません。  ただその上で、労働者に必要な情報提供を求めるのであれば、その前提条件づくりが極めて重要で、 有形・無形の不利益を課さない。安心と信頼の関係をきちんとその前提にするような多角的な措置を 考案しなければいけません。実際に不利益取扱いを抑制するための実効的な措置のあり方については、 私なりにもずっと考えてきているのですが、以上のような法情報については、議論の前提として申し 上げなければいけないかなと思っています。 ○相澤座長 ほかにはいかがでしょうか。 ○中野委員 いままで皆様方のご意見を伺っていて、ごもっともかなとは思うのです。小規模の企業 で考えますと、健康診断の結果をどこまで個人情報として把握できるのか。例えばそれに携わる人間 をどの程度小規模の企業で、企業の中でも外でも置いておけるか。これは現実の問題で、小規模企業 ですと、産業医の契約もしていない所がほとんどかなと考えます。  となると、特に事業主では、社員の健康管理を第一に考えるとなれば、当然ある程度個人情報の把 握をしたいというのが出てくるのが実態です。管理職まで行かないにしても事業主(使用者側)は絶 対にそこを求めています。その辺の実現可能なところを、今後は実際には検討すべきではないかと思 います。産業医がいて、保健のスタッフがいて、ちゃんとできるならば別に問題がないのですが、小 規模企業では、それは非常に不可能だと考えています。 ○相澤座長 ほかにはいかがでしょうか。 ○栗原委員 私どもは労働衛生機関として、メンタルヘルスチェックサービスをご希望の事業所では 提供させていただいております。ただいまご発言がありましたように、メンタルヘルスチェックで不 調者を見つけて面接を、という丸投げスタイルの話が出てきます。それでは、その方を面接するには、 それなりの周辺の理解が必要になってきます。特にプライバシーが守れないという問題につながって きます。現実のところは、そこの辺りが非常に大きなネックになっており、ご本人の希望があって、 休んだり、時間外に時間を取って秘密裏に実施することを、ご本人が受け入れる場合はそうしたプロ グラムを実施しておりますが、一人ひとりがメンタルヘルスに対する認識を十分持っていないため、 「データではこう出たよ。だから私はうつ病なの。違うよな」と本人は思うというところがあります。 「健康診断時にメンタルヘルスチェックを」となれば、個人情報をどう扱って、事後措置の主体をど こに置き、誰が実施するのかが問題となってきます。  もし、先ほど川上先生がおっしゃったような精度の高いもので事後措置をしていくというのは、先 ほど岡田先生もおっしゃいましたが、相当時間のかかる話だと思います。当然私たち労働衛生機関の ほうからすればコストにも跳ね返ってくる問題です。そういうことを本当に事業場が受け入れること ができるかどうかです。  それと私どものような機関も含めて、そうした対応のできる専門家がどれだけいるのかという辺り が大きな課題になってくるところではないかという認識をしています。  私がある事業場で働いているときに、心の健康に関心を持つには「心の健康診断」で心の健康状態 を知ることが大切だと考え、25年前にメンタルヘルスチェックを導入しました。そのときも会社側と してやったものですから、受診者が主体的に相談に行ける場面を用意しておく。それから産業医、産 業看護職の方々に、そういう相談を受け入れて必要に応じて専門機関と提携して進めましょうという 格好でやってきました。そういう受け皿をちゃんと準備できるのかどうかという話も大きな課題にな ってくるのではないかという気がします。 ○岡田委員 産業医を呼び出すことはできないのですね。労働時間というのは管理下に置かれていま すので、勤務時間内に、例えば二次健康診断をするのは、会社の了解がないとできないのです。生活 習慣病に対しては、基本的に会社の人事部が決めれば再検・精検については特別の時間を割いて、会 社が検査時間を与えることは可能ですが、この問題に関しては、産業医が二次で呼び出すとなると管 理職の了解をもらわなければ有休の処理になってしまったり、職場離脱になってしまいます。この辺 が非常に難しいのです。  そうすると、私たちは結果として時間外で相談すると。いま精神科の先生は、時間内に診療する先 生と時間外に診療する先生と2人来ていただいていますが、本人に選択してもらわなければいけません。 ここで拒否される労働者が増えてくるというところの体制整備を考えておかなければ、極めて難しい 問題だろうと思います。 ○相澤座長 ほかにいかがですか。スクリーニングというか、不調者の発見についてのご議論はよろ しいですか。 ○三柴委員 先ほど、本人のためになる、といういわゆるパターナリズムについてお話をしました。 他方、今現在は使用者に対して、労働契約法で、つまり民事ではありますが、法律上安全配慮義務が 明記されているわけです。そうすると、例えば、個人情報保護法上も、「法令に基づく場合」として、 実は個人情報の受け渡しが可能な前提があるという解釈もできる。昔、労働省時代に出された行動指 針という、かなりプライバシーの考え方を踏まえた行政解釈というか、微妙な位置づけのルールが示 されているのですが、そこでは労働者の医療情報に対して、使用者は、基本的には踏み込んではいけ ない、本人の同意があればいいけれども、聴くこと自体も慎重でなければいけないというような書き 方をしていました。けれども、そのような強い制限は、もう外れているというか、むしろ適正化を図 るべき段階にきているのだと思います。たしかに、スクリーニングの現実的な実効性の問題というの は、いま議論があったところですが、個人情報保護について、そういう前提は踏まえてもいいのでは ないか、と思います。 ○五十嵐委員 スクリーニングに関してですが、私が前に勤めていた会社も、早くから健康診断の中 にメンタルヘルスチェックを診るような問診票を入れていたのですが、そこから異常者を見つけるこ とはほとんどなかったように思います。  いろいろチェックが多い人たちを呼び出して話をしても、そのときの気分で付けていたり、そのと きの状況で書いていたりすることもありまして、あくまでも健康診断というのは1年のうちの1日の様 子にすぎない。そうなると、病気というか、不調者を見つけるためには、何かあったときに気軽に相 談して、これが病気なのかどうなのかとか、いまの気持ちを聞いてほしいといった窓口があってこそ、 初めてケアができる。そこには医療職がいることが大事だろうと思います。  私が勤めていたのは、常勤産業医ではなくて、非常勤の産業医がいたので、ほとんど保健師が中心 になって非常勤の産業医や非常勤の精神科医と連携をとるような形で主軸は保健師にありました。保 健師は社員の気持ちや体調をキャッチする窓口的な、ファーストプロフェッショナルというか、ゲー トキーパーの役割があります。常勤産業医と非常勤産業医との事業規模では、窓口的にかかわる職種 が違うということです。  もう1つは、先ほど岡田先生もおっしゃいましたが、メンタルヘルス不調者を見つける、いわゆる二 次予防ですが、そういう人たちが次々と出るような職場は、職場の在り方に問題があります。その場 合は一次予防としての職場の管理者のマネージメントや組織の在り方などにまで踏み込まないとメン タルヘルスの根本的な解決には結び付かないわけです。  ですから、今回のミッションのメンタル不調者の把握というのは、単に病気の人をスクリーニング するだけではなく、何か潜在的な問題がありそうな所に、いかに職場改善をしていって、メンタルヘ ルス不調者を出さないかというところにまで踏み込まないと、単にモグラ叩きに終わってしまいます。 メンタルヘルススクリーニングを定期健康診断に安易に位置づけてしまうと、いまの過重労働対策と 同じように、制度は作ったが、あまり運用できていないということも危惧されますので、全体のデザ インをよくよく考えなければいけないかと思います。 ○生越委員 私は医学的なことは全く素人ですが、先ほど医師の立場からのご意見があって、なかな かスクリーニングに引っ掛からないという話がありました。仮に健康診断で何らかのスクリーニング を新たに付けるとするならば、その前に予備のスクリーニングというか、もう少し前の段階で止める システムを作る必要があると私は思います。  メンタルヘルスの不調者、職場のと言ってもいいのですが、それは業務に起因する話なのか、業務 に起因しない話なのかは非常に大きいと思うのです。行政の方の言葉かもしれませんが、脆弱性を持 っていて、業務以外のことで精神疾患を発症したという方については、さすがにそこまで事業主に細 かく押さえろというのは、かなり実効的ではないですし、コストがかかっていくと思います。  ただ、業務に関しては、平成20年も出しましたし、前は平成16年だったと思いますが、たしか夏目 先生が職場のストレス度ということで順位を作っています。今の労災の精神疾患の判断指針というの はライフイベント方式で、あのライフイベント方式は、もともとああいう調査で、どういう職場のラ イフイベントが問題なのかということを参考にしてできていたはずです。ですから、例えば配置転換 がありました、給料は減りました、退職勧奨をした場合はどうかと思いますが、いろいろなイベント ごとに、何か事前に潜在的な予備のストレスの状況にいる方を、予めライフイベントごとに区切るこ とができれば、かなり効率的な、そのあとの医学的なスクリーニングが効いてくる。現段階よりは効 くのではないかと個人的には考えます。ただ、それが医学的、ないしはコスト的に実行できるかどう かは私はわかりません。 ○岡田委員 産業医が常勤ですと、例えば、何々部はこの時期は決算があって忙しいとか、営業は10 月はイベントがあって忙しいというのは全部把握しているわけです。そのあとに過重労働の面接が当 然入ってくるということは予測しているわけですから、その時期に不調を訴えた場合には、過重労働 によるものだというのは大体わかるのです。  業務外については、例えば、若い人は、お子さんがいじめられたり、不登校の問題で悩んで、中高 年の人達はご両親の介護の問題などで悩んで心を病んでいる方も多いので、どちらかというと社会的 に大きな流れの中で社員が業務外で悩んでいて、心の不調を来している方も多いのです。そういうこ とを私たちはうまく見ながら、コントロールしなければいけない立場にあると思います。  産業医としては常勤医であれば、企業全体を専任でやりますから、どの事業場の事業部がどの時期 に忙しいとか、異動がどのぐらいあったかをちゃんと把握しておけば、ある程度の問題点は把握でき るのではないかと思います。 ○生越委員 かなり先進的な取組をされているということですよね。少なくとも私は、かなり先進的 なお話だなと聞かせていただいたのです。  ○川上委員 先ほどの五十嵐委員のご発言のつながりですが、今回のメンタルヘルス不調の把握方法 についてということで、この検討会自体はスタートしていますが、実際に企業はこの資料にあるよう な0.6%みたいなものではなくて、2〜3%以上のメンタルヘルス不調の方が出ている所もありますので、 正直なところ、メンタルヘルス不調の二次スクリーニングでは間に合わないのではないかという印象 を持っている企業もかなり多いと思います。  そういう所では働かせ方とか、職場のマネージメントなどへ介入していかないと、メンタルヘルス 不調の事前防止ができないので、そこのところは非常にイタチごっこ、徒労感が漂うような事業にな ってしまうのではないかと大変心配をするところです。  今回の検討会の範囲には入っていないのですが、親委員会の資料の中には、例えば職場の社会心理 的環境をモニタリングしましょうという言葉が入っていますので、そういうところも同時にかなり推 し進めていただかないといけないと思います。もし可能なら、メンタルヘルスのチェックと、そのよ うなものを合わせてするということも、1つの考え方ではないかと思います。  別のことですが、今日いただいた資料ですと、医師の判断に定期健康診断の問診内容が委ねられま すので、医師の判断によって実施は可能ですが、ここの医師の判断の中で把握を進めるのか、それと もこれをとって必須項目として入れるのかというのは、かなり大きな変化だと思います。日本産業衛 生学会の理事としては、広く学会の意見などは是非聞いていただきたいと要望いたします。 ○三柴委員 今回論題に上っているメンタルヘルス情報に関わる問題というものを、私なりに調べて よく考えて来たところ、実は、これをうまく活用する、例えばそれに関する項目を定期健診項目に入 れるなりして、収集するということ自体、また得られた情報をうまく活かすということは、実は一次 予防につながるということが、私なりの調査の中でわかってきています。  というのは、先ほど申し上げたように、ある種の担保を置かない限り、プライバシーに、それもセ ンシティブなプライバシーに関わるような情報を制度として授受するということはできないわけで、 そういう前提を確保するためには、結局、一次予防を十全にしていかざるを得なくなるわけです。  加えて申し上げますに、先ほど信頼と安心と言いましたが、私なりの認識では、メンタルヘルスの 問題というのは、実は経営の問題そのものという側面があるのだろうと理解しています。例えば、個 々の人間関係における繊細さであったり、配慮であったり、昔は日本の企業に往々にしてあったはず のものが失われてきていたり、さまざまな要因があるでしょうが、これは本来、労使が対立するよう な問題ではなくて、それを止揚できるような問題なのだろうと思います。例えば情報の授受にしても、 本来は当たり前に行われていたようなものが、なぜこれほど不信感に見舞われて、過剰に防衛的にな ってしまったのか。確かにアメリカからプライバシーの考え方を導入したとか、ME化が進んだとか、 さまざまな背景があるのですが、必要な情報の適正な取扱いは、実は一次予防につながる問題なのだ という認識はあってもいいと思います。ちょっと法律学者らしくない話ですが。 ○川上委員 1点だけ反論させていただくと、心の健康づくりの活動を実施している事業場が33%とい う現状に鑑みて、それはかなり楽観的な視点ではないかと思います。 ○栗原委員 私自身がそういうサービスを事業場でやらせていただいているのは、いまご発言のあっ たような一次予防へ軸足を持っていっています。と申しますのは、メンタルヘルス対策というのは、 はっきり言って、いま事業場の実態を見れば、労務管理がメンタルヘルス対策なのだと。先ほど五十 嵐先生からもご発言があったように、そういう意味で全従業員がカバーされなければならない。全労 働者がカバーされなければならないエリアの問題なのです。  正直なところ、いま私どもが個人の健康という意味でサポートできるのは、法律に基づいた中で本 当に限られた部分しかできません。なおかつ、健診機関としてのリスクをマネージメントできるのは、 本当に限られた主体的に来られる方のサポートです。具体的にカウンセラーの派遣なども行っており ますので、そういうカウンセラーが労務問題等のカウンセリングをするときにメンタルへルスチェッ クの結果を、裏で確認をしておくというような使い方しかできないのが現状です。ただ、そういう意 識を持っていないと、二次予防、三次予防に結びつかないという認識を強く持っております。 ○相澤座長 まだご意見があると思いますが、2番目の把握後適切に対応するための実施基盤の整備に ついて、ご議論いただきたいと思います。今までのご議論の中にも入ってまいりましたが、スクリー ニングをしたあとの整備をしないと、いろいろな難しい問題があるということをご指摘いただいてお ります。これについてはいかがでしょうか。 ○五十嵐委員 今日出ている産業医や産業看護職は大企業の人が多いのです。栗原先生や中野先生は 小さい事業場をご存じです。いまの産業構造からいくと日本の場合は、大多数が産業医もいないよう な中小零細企業です。そういう所にこそメンタルヘルスの問題が多いので、そこをどうするかという ことを考えないと、いまの労働安全衛生法は、産業医や衛生管理者が中心になっていますが、それで は網羅し切れないということになってくると思います。ですから、もしやるとすれば、対応をする人 材も、いま専門職がいない所でどうしていくのかということを考えなければいけないのだろうと思い ます。 ○岡田委員 中小企業のメンタルヘルスというのは、大阪産保センターで相談員をずっとやっていま すが、いろいろな問題点があります。最近では社労士が事業主の相談相手として、特にメンタルにつ いては休業補償も含めて、いろいろな相談にのっています。私どもの所長、副所長のご好意で労働保 険に入っていない企業であっても、社労士の相談を何人か受けるようになっています。  よく聞きますと、事業主は弁護士とかドクターに相談すると高いので、契約している社労士は月に 何万円で何度相談してもその契約料で話ができるのでということで、社労士からまた私どもへ相談が 非常に増えているのが現状です。また事業主からは非常に助かっているという話を聞きます。そうい った社会的基盤の構築というか、相談相手等も含めて作ってあげれば、さらにもっといい解決、ソリ ューションが見出せるのではないかと思います。 ○相澤座長 椎葉委員、実際にやっておられていかがですか。 ○椎葉委員 先生方のご意見を参考にさせていただいております。私は今の会社で10年間やっており ますが、私どももチェックリストは使っております。それの対応としては、健康診断の事後面談とい うことで、保健師は衛生管理者でもありますが、全員必ず30分時間を取って、健康診断のほか、業務 の状況、面談の状況、家族の状況も含めて把握をさせてもらい、職場の状況、事業の状況を常日ごろ から把握した上で、何かあったら、岡田先生の所と同様の形で保健師が把握するような体制にしてお ります。  ただ、これまでずっと取り組んできた私どもの結論としては、専門職、医療職ではなく、主体は職 場であろうと、プライベートな問題であろうが職場の問題であろうが、最初に気づいているのは大体 職場です。本来気づくべきポジションは上司であろうと思います。そこが気づくか気づかないかが大 きな問題で、そこが気づくようにするために我々はサポートすることを意識して、常日ごろやってお ります。  そうした中で、メンタルヘルスチェックというよりは、人事と現場の上司と私どもと三位一体でや ってきて、3〜5年ぐらい経って、新規発生がゼロになってきている事業部がいくつか出ております。 それは東京都下ですが、私どもは地方にもあって、小さな規模もあります。そこになると体制が全然 整っていません。ただ、衛生管理者は必ず置くようにしています。労働安全衛生法には衛生管理者が 前線で対応するとなっておりますが、最近の施策においては衛生管理者という文字があまり出てきて ないのが、ちょっと気になるところです。衛生管理者が軸になって、例えばメンタルヘルスチェック をやったとしても、医療職ではなくても「何かあったのか」という質問はできるかと思いますので、 そこで状況を把握して、必要な対応は打っていけるだろうとは思っています。 ○相澤座長 今日は労働組合側から市川さんがおられますので、いかがでしょうか。 ○市川委員 1番の問題もそうですが、中小の所でこれをやるということは、皆さんからいろいろなご 意見が出たように、非常に難しいのではないかと思っております。いま岡田先生から、社労士の方た ちが中小の相談に乗っているというご意見が出ました。社会的な基盤が必要だということには賛同で すが、社労士の方々がそういう所で労働法を非常に無視した対応をされて、労働組合としては非常に ひどい目に遭っています。  この問題ではなく、揚げ足をとるつもりはありませんが、私が言いたいのはメンタルヘルスという 問題について、社労士などではなくて、それなりの専門の方がやるべきではないか。そのための中小 の基盤が必要だということは同じ意見ですが、それにはそれなりのものをきちんとすべきです。  私も中小の事業場で働いておりまして、経験から言っても、普通の定期健康診断を年1回やるのでも いいほうだと思っていますし、さらにその内容も外部の診断機関でどうやってメンタルのチェックを するのだろうなと。しかもそうなったときに、例えば血圧が高いとか、コレステロールがどうのとい う話ですと、把握したあとも医者に行って、「運動をしなさい」などというので済むのですが、メン タルヘルス不調に対する事後対応は中小企業などの場合は非常に難しい。というのは休ませるにして も人員がいないわけです。大規模事業場でしたら、その人を少し休ませるとか、労働時間と人員の割 り振りができる。中小だと人員配置も非常にタイトなので、結局は「仕方ない」で、不調の人も仕事 をやっているという例も実際にはある。小規模の事業場に対しては非常に丁寧な対応が必要なのかな と思います。何の対案もないのですが、そういう感じがしました。 ○栗原委員 私どもは労働衛生機関ですから、いま言われたような中小の事業場の健康診断をやらせ ていただいているケースは結構あります。そこの事業場の事業者がメンタルも心配だからということ で、今日の資料に付いている簡易ストレス調査票を用いて健康診断時に一緒に、問診票に代わるもの としてやっていただくような格好で参加していただきますと、かなり抵抗なく加わっていただけます。  そういう事業場の産業医を私どもの健診機関の医師が兼ねていると、その産業医と私どものスタッ フでその結果を見て、健康診断の事後措置としての中に織り込んでサポートをすることは、ある程度 は可能なのかなと。1つの形としてはそんな形はあるのかなというのが、おぼろ気にですが見えていま す。  ただ、これをやっていきますと、コストの問題等が絡んでまいりますので、もし本当にそういうこ とをやってみて、できるのかどうかを検証していこうとすれば、ある程度のモデルを作って、そこに ある程度助成をしながらやってみて、できるかどうかを確認してやっていかないと、結構難しいとこ ろはあるのだろうという思いで、今回参加しております。 ○石井妙子委員 先ほど三柴先生がおっしゃったことと同じになるかもしれませんが、個人情報の問 題を整理していただかないと、企業としてはやりようがないところがあると思います。先ほどおっし ゃったように、12条のガイドラインのほかにも従業員の健康情報について中間報告という形で、結局 結論が出ないで終わっているのがあったと思います。結論が出ないものもかなり厳しいのは、上司に 病名を告げるなと。例えば、働かせすぎないようにというところだけを告げれば足りるのではないか ということだったのですが、それではメンタルヘルスの対応策、事後の適切な対応にはつなげられな いのだと思います。  そういうのが出たあと、さらに個人情報保護法もできましたし、どこまで踏み込んでいいのかとい う悩みがどうしてもありまして、この辺りの整理もしていただかないと、例えば健康診断のときに不 利益を被らないようにというのも、そこにつながるのかもしれませんが、不利益とは具体的にどうい うことなのか、どこまでできるのかを示していただきたいと思います。 ○相澤座長 大変重要なご指摘をいただきました。3の「その他」ですが、地域との連携ということが あったと思います。これについては特別にご発言はありますか。これはもう少し煮詰まってからでも いいかと思います。何か最後にどうしても言っておきたいことがありましたらお願いします。 ○生越委員 自殺のうつ病対策プロジェクトチームで、労働者が不利益にならないようにという話を 私がしました。いま石井妙子先生からもお話がありましたが、中小企業の話をさせていただきます。 中小企業の案件は私も多くて、究極の不利益は解雇です。簡単に言いますが、私はいま中小企業で業 務起因性があるのもないのも含めて、わかった途端に現実の中小企業の方は解雇します。ですから、 当然労働者側の弁護士としては仮処分をするわけですが、そういうことを現に事件で抱えているだけ でも3件ぐらいありますし、相談などは山ほど来るわけです。究極の不利益はそこだということです。 大企業へ行けば、それなりの体制がありますから、配置転換で合わない仕事に回されてしまったとか、 病気が治ったのに戻してもらえないとかという議論になりますが、不利益とは具体的にはそういうこ とではないかと思います。 ○三柴委員 メンタルヘルス情報の取扱いに関わるプライバシーの問題については、今現在、私なり に整理をしております。先ほどの石井先生から中間とりまとめについてお話がありましたが、そのあ とには検討会報告書が出ているということ、それから、不調者に対する不利益措置については、解雇 に限らず、多段階、さまざまあって、企業規模を問わず、大企業でもいろいろ問題が起きてはいると いうことは申し上げることができると思います。繰り返しになりますが、メンタルヘルス情報の取扱 いについての法律論については、私なりに整理はしていますので、ご用命があれば、いつでも提出さ せていただきます。 ○相澤座長 大変貴重なご意見をいただきまして、必要であるということは確かですが、現状では、 そのあとの体制をきちんとしなければいけないということ。あるいはまた一次予防にこれをつなげる ような機構が必要であるということなど、大変貴重なご意見をいただきました。今日は皆さんのご意 見をいただいて、次回からこれをまとめて、また焦点を絞りながら進めたいと考えております。次回 の予定について、事務局からお願いします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 第2回検討会は6月7日(月曜日)の10時から12時に開催したいと 考えております。正式な開催案内は別途送付いたしますので、よろしくお願いいたします。 ○相澤座長 本日はお忙しい中、大変貴重なご意見ありがとうございました。これで終了いたします。