09/07/13 第2回国民健康保険における保健事業等の今後の展開に関する懇談会 第2回国民健康保険における保健事業等の今後の展開に関する懇談会  日  時:平成21年7月13日(月)13:00〜15:00  場  所:合同庁舎第4号館 共用第123会議室  出席委員:伊藤座長、池田委員、内田委員、北委員、河内山委員、冨永委員、       西村委員、前沢委員、松田委員、青沼参考人、丹田参考人 ○事務局(和田)  本日は暑い中、ご苦労さまでございます。定刻となりましたので、ただいまから、第2 回国民健康保険における保健事業等の今後の展開に関する懇談会を開催させていただきま す。  お集まりいただきました皆様方におかれましては、ご多忙にも関わらず当懇談会にご出 席いただきまして、誠にありがとうございます。  まず開会に当たりまして、国民健康保険課長の武田よりご挨拶申し上げます。 ○武田国民健康保険課長  武田でございます。本日はお忙しい中、また大変暑いこの時期に本懇談会にご出席をい ただきまして、ありがとうございます。今日は2回目となりますけれども、この2回目の 懇談会開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。  まず、ご参加をいただいております皆様方に対しましては、本懇談会開催の趣旨をご理 解いただき、ご参加をいただいておりますことに対しまして改めて感謝申し上げます。本 日は市町村からの保健事業の取組について、宮城県涌谷町より青沼先生、福岡県北九州市 より保健師の丹田さんをお招きしておりますけれども、二方より現場の熱心な取組状況に ついて、お伺いをしたいと思います。今日はどうもありがとうございます。  また、懇談会の構成委員であります北海道奈井江町の北町長、高知県梼原町の西村参事 のお2人からもお話がいただけるということで誠にありがとうございます。  さて、国民健康保険では従来から保険給付の確保とともに保健事業の推進に取り組んで まいりました。保健事業は国保事業の重要な柱として制度創設当時から実施されてきたも のであり、これまで地域の実情を踏まえたきめ細かな創意工夫を生かした様々な取組が展 開されてきたというふうに承知をしています。現在、被保健者の高齢化や特定健診・保健 指導の義務化など、保健事業を取り巻く環境変化の中、医療費適正化の観点から保健・医 療・福祉の連携による地域住民の健康の確保が、国民健康保険の重要な課題となってきて いると考えています。とりわけ個々の被保険者ニーズにこたえるとともに、住民全体の意 識改革、いわゆるまちづくりの視点から保健事業を進めていくことが大事ではないかと思 っております。  前回の議論の中でも被保険者のエージェンシーとして、医療のかかり方を地域の中で語 る地域啓発力が国保には重要である。また、地域住民の健康施策を国保がリードしていく ことを期待しているといったご発言、ご意見もいただいたところであります。そのため、 国保の保健事業の今後の展開として新たに何が求められているのか。そうした視点からも ご議論いただければ幸いでございます。また、前回の議論の論点をまとめたものが、今日 の資料の中にも配付をしておりますけれども、幅広いテーマに様々なご意見をお伺いした ところでございまして、その中の主な点を要約をしたものということでご理解をいただけ ればというふうに思います。  さて、本日は4つの市町村の取組をお伺いをいたします。時間の都合上、十分にお話し できないかと思いますが、資料については厚生労働省のホームページにも掲載をさせてい ただき、それぞれの取組状況について、全国で広く発信をしていきたいと私どもとしても 考えているところでございます。皆様方におかれましては、限られた時間ではございます けれども、ぜひ忌憚のないご議論をいただき、今後の国保の保健事業の展開、方向性につ いて、ご意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  第2回目の懇談会開催に当たりまして、私のご挨拶とさせていただきます。どうもあり がとうございました。よろしくお願いします。 ○事務局(和田)  それでは、本日お集まりいただいた皆様方につきましては、お配りしております資料に 懇談会名簿がございますので、ご参照いただきたいと思いますが、今回初めてご出席いた だく方をご紹介申し上げます。  社団法人日本医師会常任理事の内田健夫様でございます。 ○内田委員  よろしくお願いします。 ○事務局(和田)  なお、埼玉県東松山市長の坂本祐之輔様、社団法人国民健康保険中央会理事の田中一哉 様におかれましては、本日ご欠席のご連絡をいただいております。また、山口県柳井市前 市長の河内山哲朗様につきましては、本日は遅れて来られるという連絡をいただいており ます。  続いて、本日お話をしていただきます参考人の方をご紹介させていただきます。  まず、宮城県涌谷町町民医療福祉センター、センター長の青沼孝徳様でございます。 ○青沼参考人  青沼でございます。よろしくお願いします。 ○事務局(和田)  続いて、福岡県北九州市保健福祉局地域支援部健康推進課国保健診係長の丹田智美様で ございます。 ○丹田参考人  丹田です。よろしくお願いいたします。 ○事務局(和田)  それでは、以降の議事進行を伊藤座長にお願いしたいと思いますので、どうぞよろしく お願いします。 ○伊藤座長  それでは、ご指名をいただきましたので、議事進行役を努めさせていただきます。皆様 のご協力をいただきながら円滑に議事を進めていきたいと思っておりますので、よろしく お願いいたします。  本日の議題は、市町村における保健事業の取組の現状及び国保における地域保健活動と 今後の展開でございます。  議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。まずは、事務局から資料の確認等をお 願いいたします。 ○事務局(和田)  それでは、資料のご確認をお願いしたいと思います。座ったままでお話しさせていただ きます。今日は資料が非常に多うございますけれども、お手元にお配りした資料でござい ますが、まず議事次第がありまして、その後に座席表、懇談会開催の概要、参加者名簿の 後に次の資料がございます。  資料1としまして、2枚ものですけれども、前回の議事要旨でございます。それから資 料2でございますが、パワーポイントの横のものですけれども、「涌谷町における地域包 括医療・ケアへの取り組み」でございます。資料3は、縦長のものですけれども、「北九 州市国民健康保険の保健事業について」でございます。また、補足資料でA3のものをお 配りしておると思いますので、お話のときに一緒に見ていただければと思います。  資料4としましては、「ライフサイクルに沿った住民主体の健康的な地域づくりのとり くみ」、パワーポイントの横のものでございます。資料5としましては、「高知県梼原町 の保健医療」、パワーポイントの横長のものでございます。資料6、最後でございますけ れども、「各市町村の保健事業の取組の概要」というものがございます。資料6は国保中 央会様からの資料提供でありまして、詳細版については多うございますので、委員限りの 配付とさせていただきまして、概要版のみを資料とさせていただきたいと思います。  以上が、本日の資料でございます。何か不足や落丁等ございましたら、また事務局にお 申出いただければと思います。  以上でございます。 ○伊藤座長  それでは、議題の1つ目でございます、市町村における保健事業の取組の現状について、 お話をお伺いしたいと思います。  最初に、参考人のお二方にお話をいただき、その後、質問等があればお願いしたいと思 います。  それでは最初に涌谷町の青沼様、お願いいたします。15分程度でお願いいたします。 ○青沼参考人  座ったままで失礼します。私は、限られた時間でございますけれども、15分でご説明申 し上げたいと思います。  資料2をご参考いただければと思います。  「涌谷町における地域包括医療・ケアの取り組み」、これは、涌谷町はご存じの方は多 いかと思いますが、前沢先生が最初に基盤をつくられて、その後私が引き継いで現在に至 っている新しい、できてまだ20年の施設でございます。そこでの20年間の中での取組をご 説明申し上げたいと思います。町の概要は82平方キロメートル、大して大きい町ではござ いません。これは平成の大合併の中でも合併論議はしましたけれども、結局合併をしない ということを選んだ町でございます。それはなぜかと申しますと、自分たちがつくり上げ たこの保健・医療・福祉のシステムを、なかなか広域になると難しいというようなことで 合併を見送ったというような経緯がございます。住民投票までして、合併をしないという ことを決定しました。ある意味、大変、私たちの仕事を評価していただいたと同時に、大 変責任を感じるわけでございます。  涌谷町は人口が大体1万8,000人ぐらいの町でございまして、人口はだんだん減っていま す。多いときは2万4,000人ほどございましたけれども、やっぱり過疎の町でございます。 そして、高齢化率も平成10年に20%を超えてから、毎年1%ぐらいずつ増えておりまして、 現在は26.9%の高齢化率でございます。  次をお開きいただきたいと思います。涌谷町の行政組織でございます。これは少し特徴 がございまして、新しく立ち上げるときに病院単独で組織をつくったわけではなくて、む しろ私たちは行政を取り込まないとなかなか地域への保健・医療・福祉、当時はまだ介護 というのはございませんでしたけれども、そういうものを一体的に提供するには行政との 関わりは非常に重要だということを感じておりました。往々にして行政と病院というのは 割と仲の悪いところもいくつかの市町村で見たり聞いたりしたこともあって、私たちは行 政の保健・医療・福祉の部分を取り込まなくてはいけないという形で、このような組織図 にしました。したがいまして、町役場には保健とか福祉、こういうものを担当する部分は なくて、私たちの医療福祉センターの一つの部門として入っております。そして、そこの 中に病院、これは診療部と書いてありますけれども診療部門として入っており、それから 老人保健施設、訪問看護ステーション、こういった事業部門と、行政である保健福祉課と いうものを一つ屋根の下に置きました。また、社会福祉協議会なども関わってもらってお ります。指定管理者制度をとりまして高齢者のための複合施設、グループホームとか、デ イサービスとか介護老人福祉施設などは、この社会福祉協議会に委託しております。  いろいろな意味で行政部門を動かしていく上で、この医療福祉センターのセンター長、 今私がその役割を担っておりますけれども、町長さんからこの行政部門についても基本的 には事務委任されておりますので、ほとんどの部分すなわち、保健・医療・福祉・介護に 関しては、当センターで決定ができます。したがいまして、私はヘルスアップモデル事業、 ヘルスアップ事業も含めてですけれども、こういった新しい事業を私たちの町が速やかに 組み入れることができたのは、行政と事業部分が一つの組織の中に入っているということ が非常に有利だったという印象を持っております。なかなか病院部門でこういうものを取 り組みたいとしても、町の行政が動かないというようなことはあるやに聞いております。 そういうことが非常にスムーズにいけたというふうに思っております。  そしてまた、今やリストラで公務員を減らせということで、役場のほうはどんどん人を 減らさざるを得ない状況です。役場は大体今、職員が120名を切っていると思います。ただ、 医療福祉センターはこういうふうに事業を展開をしながら、大体今は370名ほどの職員がお ります。保健・医療・福祉・介護というのは、地域においては大きな人の雇用の場になっ ているという実態がございます。  次をお開きいただきたいと思います。  涌谷町で、保健師さんの育成ということでちょっとお話をということでしたので、ここ に取り上げさせていただきました。私たちの町は現在保健師が12名おりまして、病院部門 の看護部に1人、それから病院の健診センターに1人、それから行政部門である健康福祉 課健康推進班というところに7名、それから、地域包括支援センターに3名を配置してお ります。私たちの保健師さんの育成の考え方というものをここに書いてございます。涌谷 町では従来、保健師の臨床的知識・技術を含めた資質向上のため、採用後2年程度は病院 勤務を経験させております。また、老健施設、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業 所など、介護現場にも配置をしてまいりました。これの目的は、疾病それから患者の実態 や実際の介護現場などを経験することによって、予防の必要性を肌で感じ、効果的な予防 活動に結びつけると。こういうことを期待して、採用の時点で2年間は臨床の場に勤務し ていただくようにしております。  また、2番目としまして、保健師さんに地区担当制を敷くことによって、概ね20世帯に 1人委嘱されている健康推進員、後でご説明申し上げますけれども、この健康推進員さん、 町民の方々ですけれども、この方々や地域との良好なコミュニケーションづくりが目的で す。傾聴や受容を心がけるなど、地域住民とのコミュニケーション能力が向上することに より、住民が保健師の存在を受け入れ、円滑な事業展開に結びついている。この地区担当 制というのも、そういう意味で私たちは大変意味を見出しているところでございます。保 健師という役職は、私たちは、概ね役人というのは割と今の時代なかなか住民の方々に受 け入れられないと申しますか、言っても何か嫌なことを、税の徴収に来たり、割と歓迎さ れないことが多いのでございますけれども、保健師さんというのは本当に自分たちのため になる、自分たちのためにいろいろ仕事をやってくれていると、そういう認識があるせい か、大変住民の方々が保健師さんの言葉には耳を傾けるという現実がございます。したが って、地域の人たちに集まってもらうとか、いろんな集会を開く場合に、保健師さんの人 を集める能力というのは、私は大変評価しなくちゃいかんと思っております。  続きまして、4ページ。これは涌谷町の保健事業、平成21年度の保健事業でございます が、これは多くの市町村で取り組んでいるところだと思います。したがって、これは余り 詳しくはご説明申し上げません。あえて申し上げれば、中学生に骨密度を行っています。 若い時代から骨粗鬆症の問題というのは大変大きな問題だと思います。将来、寝たきりの 原因になりますので、若い時代からの骨粗鬆症の問題ということで、骨密度を測定してい るということが少し特徴があるかなと思います。それ以外は、概ねほかの市町村と余り変 わらないのではないかと思っておりますが、ただ、次のページをお開きいただきます。私 たちが「健康日本21」の中で9領域70項目でしょうか、これについていろいろ目標をつく ったわけですが、その中で私たち涌谷町の「健康日本21」の特徴というのはライフステー ジごとに、北九州市さんのところもこういうふうに考えていらっしゃるようですけれども、 ライフステージごとに目標を少し変えたというところでございます。例えば、たばことい うのは、これはよくない。いつの世代でもよくないですね。これはやめてもらうことが一 番ありがたいことですが、ただ80、90才になりまして、食後のたばこが唯一の楽しみだと おっしゃる方に、たばこを絶対やめろということが大事なことなのか。一方、それと比べ まして、子どもたちに対するたばこの害を協調することの間には、ちょっと強弱があるん じゃないのというようなところでございます。そういうこともありまして、私たちはライ フステージごとに健康づくりの目標を立てました。そして、新生児期、思春期、19歳まで の方々に対しては「夢があり、失敗を恐れず、何にでもチャレンジできる子どもに育つ」 ということを目標にしました。また、青年期、壮年期、20歳から64歳までの方には「家庭 や地域とのふれあいを大切にし、活力あふれる毎日を過ごす」、そして65歳以上の老年期 の方々には「みんなに認められながらも役割を持ち、仲間とともにいつまでも若く朗らか に生きる」と、こういうコンセプトのもとで目標を立てております。  さて、次のページをお開きいただきたいと思います。次は私たちの町の健康づくりの中 で大変大きな役割を果たしている健康推進員制度という点について、ご説明を申し上げた いと思います。  町が実施する保健事業への協力や自主的な活動などを通して、地域における健康づくり の担い手となっていただける組織でございます。保健協力員、それから食生活改善推進員 制度というのは多くの市町村にあろうかと思いますけれども、これまた大体同じような、 割と違わない仕事をしている割には、いい意味で言えば張り合って、ライバル意識を持っ て協力関係がなかなかつくれないというところがございまして、私たちは平成元年にこの 保健協力員と食生活改善推進員制度を発展的に統合、解消しまして、健康推進員制度とい うものをつくりました。これは大体涌谷町の18.5世帯にお1人任命されまして、現在314名 の方がこの役を担っていただいております。この方々の主な活動は地域住民への情報の提 供及び収集、それから高齢者への支援、安否の確認。涌谷町にも現在四百七、八十名ほど の一人暮らしの方の老人がいらっしゃいます。こういう方々に対するきめ細かい安否確認 とか、声がけ、これは大変私たちはありがたいと思っております。  また、地域健康教室の自主開催。これに関しても涌谷町は39の行政地区に分かれており ます。基本的にここで開く健康教室に関しては、私たちが何月何日こういうことを開きま すからお集まりくださいというのではなくて、この健康推進員さんたちが自ら企画立案を して、今回我が地区ではこういう勉強会をしたい、ぜひ医療福祉センターにこういう形の 講習をお願いしたいとか、こういう形で協力をお願いしたいということで、むしろ健康推 進員さんから私たち医療福祉センターに要望される、そういう形での健康教室を主催して おります。ですから、非常に熱心な地区は、ある意味何回も年じゅうやっていますし、余 り活発でないところは場合によっては1回とか2回とか、大変少ない開催になっていると ころでございます。  また、4番目としましては、町の健康づくり事業や健診への支援協力。これも私たちの 町で昨年より始まりました特定健診・保健指導についても、この健康推進員の方々の協力、 それから活動を大変期待しているところでございます。この方々の活動により、受診率の 向上、こういうものを期待しているところでございます。  次のページをお開きください。これが、健康推進員さんたちが地区の集会場に集まりま して、我が地区では今度どんな勉強会をしようかということを、うちの保健師も行って協 議しているところでございます。  次をお開きください。次はそういう健康教室の企画に応じて、医療福祉センターから医 師とかいろんな職種の者が行って、健康教室、勉強会をしております。  次のページをお開きください。これは薬剤師ですけれども、この地区では薬の飲み方と か、薬の管理の仕方について話をしている所です。ですから講師となるのは、必ずしも医 師、看護師とは限りません。いろいろな職種の職員が各地区の健康教室に行って、その時 代、その時に応じた話題についての研修会を開いているところでございます。  次をお開きいただきたいと思います。「データから見た町の健康度」ということでござ います。  次をお開きください。11ページになります。私たちの医療福祉センターができたのは昭 和63年でございます。私は昭和62年に涌谷町に奉職をしました。準備のために1年間、ど ういうセンターにするかということを、町の人たちといろんな形で議論する時間を1年以 上持つことができたということが、ある意味で大変有意義であったと思っております。そ ういう中で、63年に医療福祉センターが始まったわけでございますけれども、比較的病院 が始まったころは患者さんもそう多くはありませんでしたし、比較的ゆとりのある診療が できました。そういう中で私たちは、涌谷町は東北地方にございまして大変脳卒中の多い 地域でございます。脳卒中というのは、大変ある意味つらい病気ですね。がんももちろん 大変ですけれども、脳卒中というのは障害を持ったまま、長い時間、余生を送らなくては いけない。大変つらい疾患でございます。こういうものを何とか減らせないかと考えまし た。そして脳卒中の原因は何だと。高血圧だと。高血圧の原因は何だ。塩だと。東北人は 大変塩辛いものを好みます。お茶のつまに漬け物でというのはよくある話で、塩分をとり ますからお茶も幾らでも飲めますし、そういう意味で大変塩分の多い、摂取量の多いとこ ろでございましたので、私たちは保健師さんたちと一緒になって、とにかくしょっぱいも の、塩辛いものを控えるということに力を入れてまいりました。現在も患者さんが外来に 来て、あなたは血圧が高いねと言うと、私はしょっぱいもの食っていないと、反射的に患 者さんが言うほどになりました。そういう形で非常に塩というものは悪いというイメージ を与えて参りました。これはちょっとやり過ぎだったかもしれませんけれども、塩分を控 えることに大変にエネルギーを注いでまいりました。  そういう中で、見ていきますと、今、皆さんもご存じのとおり、日本人の死因の一番は がんです。その次は心疾患でございます。3番目が脳血管疾患でございます。涌谷町は私 たちが行ったころは、昭和六十二、三年のころは一番多いのはやはりがんか脳卒中ですね。 1番、2番。そして3番目が心疾患、こういう形でございました。それが大体平成10年ぐ らいまでは、一番多いのはやっぱりがん、2番目は脳卒中ということでございましたけれ ども、資料をご覧ください。平成10年ごろから脳卒中で亡くなる方が非常に減ってまいり ました。これは私たちのこういう公衆衛生活動と申しますか、この保健事業が効果を出し てきたというふうに私たちは評価しております。こういった保健事業というのは1年、2 年ではなかなか実を結ぶものではないんだろうというふうに思っております。これが今後 ともずっと涌谷町で脳卒中が少なければ、それなりの私たちの活動というのは意味があっ たのかなと思います。  次をお開きください。これを客観的に示すデータとしまして、ここに東北大学の坪野教 授と書いてあります。坪野君は私たちのところに、大学を卒業してすぐに研修で来てくれ まして、今は東北大に戻って教授をしていますけれども、彼が彼の研究の中で、1つ大変 おもしろいデータがあるということで、私にこれを紹介してくれました。平成15年で古い んですけれども、日本全国の市町村、まだ市町村合併がそんなに進む前だと思いますけれ ども、日本の市町村を、年齢構成を補正して全国平均を100にすると、統計的にこういう処 置ができるようでございますけれども、こういう形にした場合、脳卒中の多い東北地方に ある宮城県は117と、全国平均より高いんですね。そういう中で涌谷町は70でございました。 その下に書いてある大衡村というところは218でございます。私たちの町とここは20キロぐ らいしか離れておりません。この大衡村というのは今度トヨタ自動車が来るところで、こ れから大変豊かになる可能性のある所で、もう合併しないだろうし、したがらない村でご ざいますけど、ここと私たちは20キロしか離れておりません。私たち涌谷町と大衡村とい うのは嫁に行ったり、婿にきたりと出入りがございます。民族学的には私たちはほとんど 一緒だと思います。違うのは多分生活習慣と申しますか、日々の健康に対する取組が若干 違うのかなと思っております。  次をお開きいただきたいと思います。次はこういう活動を通しまして、私たち涌谷町の 国民健康保険の医療費の1人当たりの数値、経年的な変動を示してございます。私たちが 関わったのは昭和62年からでございますが、センターが始まったのは63年。このころは、 医療費は西高東低とよく言われますけど、宮城県も全国平均よりは医療費は低うございま す。その中で宮城県と涌谷町。宮城県はこの青い色でございます。涌谷町は赤い色でござ いますけれども、涌谷町も宮城県の一部でございますので、大体同じようなこういう傾向 がございます。  63年に始まりまして、私たち平成7年には、厚生省の総合施設健康管理センターとか、 こういうものを補助をいただきまして、私はこれは大変追い風になったと思っております けれども、こういう組織を立ち上げまして、保健事業に力を入れてまいりました。そうい うことを繰り返しやっていきますと、平成10年ごろから少し医療費が下がるんですね。現 在は県の平均から見ますと、大体3万とか4万とか医療費にしまして低い。  ある時期、病院が増えたり医師が増えると医療費が上がるというような考え方があった やに記憶しておりますけれども、私はやり方の問題だろうと思っています。医師や病院が 増えても、必ずしも医療費が増えるというものではございません。私たちの町はそんなに 離島とか僻地ではございませんし、病院に行きにくい場所ではないんですね。仙台市まで は大体1時間ぐらい、近くの病院までも大体30分ぐらいあれば行けます。もちろん私たち の町にも私たちの病院はございます。医療としてのアクセスは決して悪いわけではござい ません。こういう町が大体10年を経まして、こういう保健活動、それからもちろん医療予 防活動に力を入れてまいりますと、医療費の抑制につながるということを強調しておきた いと思います。  最後に、ちょっと時間がオーバーして申しわけありません。地域包括医療、私たち国診 協が目指している医療・ケアの考え方ですが、地域に必要なものは医療だけではなくて、 もちろん医療は必要ですけれども、先に述べた予防活動、保健事業、それから福祉・介護、 こういったものを一体的に提供する地域包括医療・ケアというものを私たちは進めてまい りました。この地域包括医療・ケアの展開が医療費の抑制に大変有効であるということを 強調したいと思います。今後も地域包括医療・ケアを展開する市町村が増えるよう、ぜひ 政策誘導をお願いしたいということが1つ。  それから第2点は健診は保険制度別ではなくて、住民全体を対象とした財政措置をお願 いしたい。地域というのは住民の共同体意識によって成り立っております。したがいまし て、地域住民を保険制度別に区分するわけにはいかない実情がございます。もし、住民全 体を対象とすることが難しいのであれば、せめて国保被保険者と後期高齢者の保健事業は 一体的に提供する体制が必要であるというふうに思っております。費用分担、費用負担の 割合の考え方で、保険者別という考え方はあろうかとは思いますけれども、やはり現場は、 あなたがどの保険かということで健診を受ける、受けられない、受ける日が違うと、これ は大変コミュニティとしては困ったものでございます。地域の住民の方々のこういう利便 性を考えて頂き、ぜひ一体とした、住民全体を対象とした措置をお願いしたいと思ってお ります。  最後に、介護保険と医療保険の一体化を提案したいと思います。高齢者にとって介護保 険の施設でも医療が必要でありますし、医療施設でも介護が必要であります。制度として は私は一体であるほうが、特にこういうコミュニティができているところは、やりやすい のではないか。そしてそこに住んでいる方々にとっても、安心してそういうサービスを受 けられるのではないかと思っております。ちょっと急ぎ足でございましたけれども、私の 発表を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。 ○伊藤座長  それでは、引き続き、北九州市の丹田さんよりお願いいたします。 ○丹田参考人  それでは、私のほうから「北九州市国民健康保険の保健事業について」ということで、 生活習慣病対策について説明したいと思います。  いろいろ書いておりますけど、主に2枚目の特定健診・特定保健指導についてと、特定 保健指導対象者以外の保健指導について、そして衛生部門との連携による保健事業の展開、 この3点を特に重点的に説明していきたいと思います。よろしくお願いします。  まず、1番の北九州市の概要について簡単に説明いたします。北九州市は九州の北部に 位置しまして、かつては工業都市として栄えた市です。人口は97万9,7665人。政令指定都 市です。高齢者人口は23万8,547人で、高齢化率は24.3%、国保被保険者数は約26万7,000 人です。国保保健事業の実施体制ですけれど、平成20年4月に組織改正がございました。 健康づくり、健診も含んでいるんですけれど、健康づくりから介護予防までを一体的に実 施する課として健康推進課ができました。その中には3つ係がありまして、私どもの国保 部門の国保健診係が1つ。それから健康づくり係として、健康づくり、介護予防、栄養、 歯科保健が入っている係。そしてもう一つ、企画係としてがん検診、健康に関する計画な どをする係ということで、この3つの係が1つの課にあります。健康づくりの関係事業を 実施している衛生部門との協力、連携体制ということで、本庁内ももちろん連携をしてい ますし、北九州市には7つの区がありまして、7つの区の中に衛生部門を担当する生活支 援課というところがありますので、そこと連携しながら業務をやっていっているという状 況です。北九州市の保健師の体制ですが、保健師は約130名います。主に地区担当制なんで すけれど、一部業務担当制も入れておりまして、地区担当制と業務担当制を有効に活用し ております。  各計画の位置づけなんですけれど、いろいろ計画がございまして、その中で生活習慣病 対策を位置づけてもらっています。ちょうど平成20年度は計画の作成や改訂版の作成の年 でした。ここにあるんですけど、健康福祉北九州総合計画というのがちょうど改訂されま したのでこの中に、これは保健福祉局の計画なんですけれど、ここにきちんと特定健診や 生活習慣病の予防の対策を入れてもらいましたし、もう一つ、それのさらに健康づくり部 門の計画、これは各ライフステージごとの目標を掲げて計画を書いたものなんですけど、 ここにおいても特定健診とかそれから生活習慣病の予防についても入れております。また、 本家本元の特定健康診査等実施計画は平成20年2月に作成して、それに基づいて実施して いるところです。  それでは、2枚目のほうをお願いします。  北九州市の特定健診・特定保健指導について説明したいと思います。北九州市の特定健 診・特定保健指導は、医師会に委託しております。別紙1、この次の次のページをおあけ いただけますでしょうか。特定健診・特定保健指導ということで、フロー図を書いており ます。北九州市は、かかりつけ医をベースにしておりまして、そこに特徴が(1)から(5)番ま で書いてあるんですけれど、身近な医療機関で自分に合った時間に受診ができ、そしてか かりつけ医が受診勧奨をしていただき、保健指導も継続的に行われ、その結果、健康管理 が継続的に行われるというところで、この北九州モデルということで進めております。健 診の方式は左側の個別方式、市内515機関の医療機関で実施する分と、それから集団方式と いうことで市民センター、区役所等で304カ所。これは土曜、も実施しております。このよ うに個別方式、集団方式で展開しているところです。  元の2枚目のレジュメに戻っていただいて、特徴としましては医師会との連携を円滑に やっているということで、医師会主催の健康推進対策委員会が毎月ありますので、そこに 出席して、特定健診・特定保健指導について、そのほかにもいろんな、がん検診等もあり ますけど、協議や情報交換を密にやっています。また、あと健診の結果返しなんですけれ ど、2週間以内に結果を返して、特定保健指導に効果的につないでいるということで、特 定保健指導実施率も一応45%以上は行きそうな状況です。また、同じ課にいろんな健診を するところがありますので、がん検診、骨粗鬆症検診、若者健診等、同時実施し、チラシ もPRも同時に実施しております。また、隣の係が、がん検診フェアというのを実施して いますが、そこにおいても特定健診を同時実施してもらうように行っております。  課題ですが、受診率が元々低くて、一応今のところ暫定では21.5%です。ただ、平成19 年度受診率よりも少し上がっている状況です。それから、あと医師会のほうに委託してお りますので、精度管理や評価というところが課題です。  受診率向上に向けた取組が今後大切なんですけれど、今年度から健康マイレージ事業と いう事業が始まりました。これは私どもの国保のほうではなくて、隣の健康づくりの係の 事業なんですけれど、健康を後押し、健康推進のための後押しというところで、ポイント を貯めて、ポイントが貯まったら健康グッズの景品、十六穀米等体にいいもの、マイはし 等、そういうものと交換するというのを始めております。これは特定健診、がん検診、そ れから国保以外の健診もなんですけど、あと、ほかの健康事業にも参加してポイントを貯 めて、なおかつ自分で健康づくりの目標をちゃんと立ててポイントを貯めましょうという ことで、健康を後押しするものです。  地域のボランティアである健康づくり推進員さんという方がいらっしゃいまして、元々 健康づくり推進員さんは小学校区にいらっしゃって健康を支援する方たちで、受診勧奨を ずっと行ってもらっていたんですけど、この健康マイレージ事業を、やっていく中で受診 勧奨がどうも進めやすくなったようで、活動が活発化してきたようです。健康づくり推進 員さんから健診に関するいろんな質問が、「どこでやっていますか。」、「ポイントはど う貯めるんですか。」ということで、今までも健康づくり推進員さん受診勧奨してもらっ ていたんですけど、このマイレージ事業でさらに活発化していったというところもあるよ うです。  それから、また受診勧奨の取組としてははがきや、電話勧奨を考えております。北九州 市が7区、区があって、そこでそれぞれまたいろんな受診勧奨の取組をしておりますので、 本庁の国保部門としてはその取組を調査して、またそれをまとめて、区に返したりという ことで、情報の集約と還元ということもやっております。  それからもう一つ特徴的なところが、特定保健指導対象者以外への保健指導ということ で、ちょっと耳慣れないと思います。これは特定保健指導に行かなかった方に対して保健 指導を実施するということです。目的としては生活習慣病予防、生活習慣病などの重症化 予防及び医療費適正化ということです。これは、なぜこのようにするようになったかと言 いますと、ちょっと下の表を見ていただきたいんですけれど、動機づけ支援は12.6%、積 極的支援が4.2%、しかし情報提供の中に受診が必要な方が24%もいらっしゃいました。特 定保健指導に行くより、例えばやせていて血圧が高い方、やせていて血糖が高い方、その 方がたくさんいらっしゃったという現状です。なおかつ、その下の生活習慣病治療中、こ の中にコントロール不良な方が6割いらっしゃいました。結局、治療中なんですけど、薬 をきちんと飲んでなかったりとか、治療を中断していたりとか、それから薬さえ飲んでい たら、塩分をとってもいいと思っていたとか、そういう人もいらっしゃいまして、結局そ ういう治療中にも関わらずコントロール不良な方もたくさんいらっしゃったので、やはり 市はこの現状に応じてまた対応しようということで、衛生部門と連携をしまして検討会を 数回開きまして、ここをフォローしようということにしました。  そのマニュアルの一部を、別紙2と別紙3に付けております。別紙2、「対象者と実施 内容」という、A4の縦ですね。5ページです。  元々こんなふうに50ページぐらいあるマニュアルなんですけれど、その中の今日は抜粋 してきております。「対象者と実施内容」というところで見ていただきたいんですけど、 左側の未受診と書いてあるところは、健診時治療していない方ということです。ここは生 活支援課といって、7区の衛生部門の方が担当するようにしております。右側の治療中と 書いてあるところは健康推進課の国保部門の保健師もしくは栄養士が担当するということ で、一応この中の担当を決めております。A、B、Cと一応決めまして、Aは栄養士、B は地域担当看護職員(保健師)、そしてCは保健師というところで、高血圧治療ガイドラ イン、糖尿病治療ガイド、CKD診療ガイド等も参考にしながら、いろいろこの担当と対 象を、あとマンパワーの問題がありますので、その状況を踏まえ決めていっております。 右側の治療中の国保部門については、一部国保のヘルスアップで昨年度と今年度を挙げさ せていただいております。  一番下のCについては慢性腎臓病対策ということで、生活習慣病に関連してくる慢性腎 臓病のほうを対策をしようというところで対象を絞っております。  その次のページに、フロー図が付いていますが、そのフロー図は衛生部門の生活支援課 がどのように行っていったらいいかというところを、衛生部門にはかなりの者がいますの で、こと細かく、漏れがないようにということで、検討会においてこのフロー図をつくり ました。  それではまた、またレジュメの今度、今度は3ページ目を開いていただきたいんですけ れど、一応そんなふうに特定保健指導対象者以外もフォローするということで、衛生部門 と連携して行うことをしております。  もう一つ、慢性腎臓病対策。これはCKD対策ということで、これも生活習慣病関連の 慢性腎臓病というところに限りまして昨年度より実施しておりまして、これはなぜかとい いますと、人工透析が北九州のほうでは6年で1.4倍になって、すごく多くなってきたとい うところを背景に、やはりこのままだと医療費もどんどん上がるしということで、対策を 進めていこうというところで、先ほど言った家庭訪問したり、教室、アンケート調査、市 民向けの研修会、そしてお手元にはないんですけど、健康手帳のほうにもそういう慢性腎 臓病対策のところの項目も入れて取りかかっているというところでございます。アンケー ト調査をしたところ、かなり腎臓機能が落ちているんですけれど、血圧とか血糖とか、そ ういうものが悪くてという方なんですけど、保健指導を受けたことがない人も数多くいら っしゃいました。この慢性腎臓病対策の場合、医師会との連携というところがとても重要 になってくるんですけれど、医師会のほうにも特定健診の結果、腎臓の機能の悪い方がか なりいらっしゃいましたよということを、医師会の会議のほうに出したところ、医師会の ほうも慢性腎臓病対策を一緒に行政と連携してやりましょうということを言ってくれてお りますし、また、今年の2月には医師会の会員さん向けに慢性腎臓病の研修のほうも医師 会主催で開催しております。  最後、もう一つ重要なところといいますと、6番の衛生部門との連携による保健事業の 展開というところで少し説明したいと思います。お手元に追加の資料でA3の両面の資料 が行っております。すみません。見にくいんですけど、裏から見ていただいてよろしいで しょうか。私どもは国保にいまして、やはり衛生部門のほうからはいろいろ私たちがこう いうことを一緒にやりましょうと言っても、それは国保だからということをよく言われて おりました。それで、私のほうは特定健診データ、医療費データ、人口動態、それから実 態調査をいろんな角度から分析をしました。これは県の国保連の方からこういうふうにま とめていったらいいよというところもアドバイスを受けながら、生活習慣、健診、医療、 介護、死亡、どうつながっていて、どのように北九州市の現状があるかというところをま とめて、区のほうにお示ししました。  そして生活習慣病の方向性として、右側のこれをしゃべると時間がかかるんですけど、 右下に結論として、このデータから北九州市は高血圧と糖尿病対策が柱ですよ。慢性腎臓 病の視点も踏まえた対策をとる必要があって、また、住民の健康管理のためにがん検診、 特定健診の受診率向上に向けての対策も必要であるし、でも、これは40歳からじゃ遅いで すよ。右下に書いておりますけれど、母子保健事業も含めた全ライフステージにおいて生 活習慣病対策が必要でありますよというところもまとめて、区を回って説明をしていった り、それから研修会で言ったりしていきました。母子のデータも、少しまとめたりもしま した。  また衛生部門から方向が見えない、ほかの事業とのすり合わせをきちっとやってほしい 等の意見をいただきました。表のほうに北九州市の健康づくりの概念図というのがあるん ですけれど、各ライフステージ別に保健師が毎年業務計画を立てているんですね。一応、 私のほうでそれを全部見まして、各ライフステージにおいて、市レベル、区レベル、校区 レベル、ポピュレーション、それからハイリスク、どんな事業を、どんなことをやってい るかと1枚のペーパーに落として、現状を整理して、これを本庁内の関係部署と課題を整 理して、業務を洗い出して、一番下の取組重点課題を出しました。これを持って、また各 区を回って、一応またヒアリングもしまして、課題を整理していったというところです。  ここを真ん中の黒枠で囲っていますけど、課題の洗い出しとか分析結果をまとめて、会 議、研修会とか区を回って、とにかく生活習慣病の現状と課題、そして方向性を伝えまし た。そういうことで、区のほうも一緒に今、連携体制がとれているところなんですけど、 課としても方向性を出しまして、生活習慣病予防と介護予防というところで押さえていこ うということで、課長会のほうでも下ろしまして、その方向性で今進んでいるところで、 (2)の衛生部門の施策連動というところで、健康教育、健康相談、食生活相談でもいろ いろ特定健診のフォローの場として位置づけているというところです。  もう一つ、北九州市には市民センターを拠点とした健康づくり事業というのがございま す。これはポピュレーションです。この事業は住民主体の健康づくりで、住民と課題を整 理して、校区の目指すところを決めて、住民と一緒にやっていくんですけれど、私もこの 事業を衛生部門のときにやっていたんですけど、やはりポピュレーションだけやっていて、 ハイリスクのほうが落ちていたなとすごく反省しています。それで、私はこの国保部門に 来ましたので、区のほうと今連携しまして、ハイリスクアプローチとポピュレーションの 連動というところを、、そこの効果的な在り方を検討していく予定にしております。今の ところはポピュレーションで健康意識を高めて受診率向上、そして保健指導終了後の場と してというところなんですけど、そこにハイリスクをどう介入させるかというところを今 年度押さえていく予定にしております。  それからあと、時間もすみません、過ぎましたけど、母子保健活動との連動というとこ ろで、母子保健も視野に入れたもの、それから介護予防健診も事後フォローしていますの で、そのフォローをする人と私どもの特定健診のフォローの対象者がダブるんですよね。 そこをもうちょっと効果的にできないかということで、これも今月末、検討会で効果的な フォローをやっていく予定にしております。  まとめなんですけど、やはりレセプトとかいろんな分析をして、本当に市にとって何が 大切かというところを見極めていく必要があるし、私は国保なので、それを衛生部門に情 報提供して保健事業に生かしてもらうということ、それが必要だと思いますし、ちゃんと 関係部署との課題の共有と連携ということが本当に必要だなと思います。  以上です。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  それでは、お2人の説明を伺いまして、ご質問等があればお願いいたします。  池田さん、どうぞ。 ○池田委員  それでは、最初の涌谷町のほうでのご説明をいただいて、ああ、そうだなと思ったんで すけれども、病院とか介護の現場で予防活動の意識付けをしていらっしゃるということと、 それから住民とのコミュニケーション技術をもっと高めるための地域をまず知るための地 域担当制を導入しているということのお話でしたが、このことは非常に質を高める上で重 要なポイントでありますが、これを、ただこれだけやっただけでは質の向上ってうまくい かないのではないかなと思うのですが補完するために研修プラ*(人材育成計画など)とかそ ういうのは何かあるのですか。 ○青沼参考人  残念ながらございません。研修プランって、保健師さんたちがそういう要望があるとい うふうにも聞いておりませんし、今、先生からご指摘いただいて、やっぱりこれだけじゃ 今、駄目なんだなというのがよく分かりましたので、持ち帰って保健師さんたちをもっと 高めるようにする場をつくってまいりたいと思います。 ○前沢委員  補足で。私がやったときは、なかなかいろんな出来合いの研修会がたくさんあるんです けれども、やはり現場に即していないので、非常に仕事は忙しかったんですけど、毎週金 曜日8時から8時半まで30分、勉強会をつくって、後半5年ぐらいはやっていましたです ね。  以上です。 ○伊藤座長  武田課長。 ○武田国民健康保険課長  私のほうから、青沼先生が最後のページで提示をされている件について、ちょっと一言、 二言コメントをさせていただければと思います。  資料の14ページで3つご提示をいただいております。それぞれ大変貴重な提言として承 りたいと思いますけれども、まず3つ目はちょっと制度論に入りますので、やや今懇談会 のカバーすべき領域を少し超えてしまうのかなというような気がしております。  ちょっと申し上げたいのは第2点のほうなんですけれども、制度としては平成20年4月 から75歳以上の方が別制度になりました。これに伴いまして、私ども国民健康保険の補助 事業といいますのも、基本的には国保の被保険者を対象にする者に絞って補助をする必要 があるというふうに検査院からも指摘を受けておりまして、したがって事業によっては対 象者がはっきりしている者については、国保の被保険者に対するサービスは補助対象にな りますが、75歳を超えますと国保では補助金が出せないというような整理になりまして、 なかなかこれは現場の実態に合わないんじゃないかというご指摘をこれまでもいただいて おります。  75歳以上の方々につきましては、長寿医療制度に移るわけでありますが、それでは長寿 のほうはどういう補助になっているかと言いますと、平成20年7月からですけれども、長 寿医療制度における被保険者の健康づくりのため、実施主体が広域連合ですので、後期高 齢者広域連合が創意工夫により積極的に取り組む事業として、長寿・健康増進事業という のがスタートしております。この事業内容は従来から国保などの保険者で実施されてきた 各種事業に対する支援に加えて、先駆的、先進的な事業も補助対象となるという整理にな ってございます。したがいまして、国保の被保険者のみならず、今日お話がありましたよ うに住民を広く対象にするような場合、国保の被保険者とともに、75歳以上の長寿医療の 被保険者も対象にする保健事業の場合につきましては、私ども国保の補助金に合わせて長 寿・健康増進事業という後期高齢者医療の関係の補助金が活用可能ということになってお りますので、助成対象経費が重複しちゃうと困るんですが、うまく仕分けをしていただけ れば、この両者を活用することは可能だというようなことでございます。  なお、この長寿・健康増進事業といいますのは広域連合が国に申請をするということに なりますので、市町村のほうからこの広域連合とよくよく調整をしていただいて活用いた だければというふうに思いますので、ちょっとその点、一言こちらからコメントさせてい ただきました。  以上でございます。 ○伊藤座長  今、武田課長からのご発言の中身は、この懇談会をつくりました大きな課題の一つであ る、いわゆる医療保険である国保の行政と一般衛生行政をどうやって連携をとって一体と してやっていくか。その具体策について、。まとめの段階で何らかの提言をしていくとい うことは当然、我々としても考えていかなきゃいけないと思います。また、まとめの段階 で具体的にどういうことが可能かというようなことをぜひご議論いただきたいと思います。  ちょっと時間が押しておるんですが、私から北九州市について1点だけよろしいですか。 4ページの特定健診・保健指導の評価のところで、医療機関でやったものの評価と集団健 診機関でやったもの、どの程度、行動変容に結びついたかという評価結果は、非常に興味 があり、まだ恐らくまとまっていないんじゃないかなと思うんですが、結果がまとまりま したら、ぜひ提供していただいて議論をさせていただけたらと思うんですが、お願いいた します。 ○丹田参考人  はい。 ○伊藤座長  まだデータは出ていないですよね。 ○丹田参考人  はい、まだ途中なので。はい、分かりました。 ○伊藤座長  それでは、続きまして、懇談会の構成員のお2人よりお話をいただきたいと思います。 まず、奈井江町でございますが、先般7月4日の日本ヘルスサポート学会より、第2回学 会賞を受賞されたということでございますが、大変おめでとうございます。町の実践活動 の取組が表彰されたということでございますので、それらを含めてご発表いただきたいと 思います。  では、北さん、よろしくお願いします。 ○北委員   どうもありがとうございました。今ほど、お話がございましたように、大変光栄に存じ ておりますと同時に、現場がこれを一生懸命頑張ってくれた成果だと思っております。よ ろしくお願い申し上げます。  それでは、限られた時間でございますから、簡単に申し上げたいと思います。  資料4では、「ライフサイクルに沿った住民主体の健康的な地域づくりのとりくみ」と いうことでございます。まず、3点に重点を置いて報告したいと思います。それは、奈井 江町まちづくり計画と、奈井江すこやかプラン21との関連性について、それから健康づく りと医療連携について、小児期からの生活習慣病予防から高齢者支援、介護予防の取り組 みについての3点であります。  まず、町の紹介ということで、1ページに記載のとおりでありますが、ちょうど札幌と 旭川の中間に位置しており、函館本線、国道12号線と高速道も山手に通っておりますが、 この間に札幌、旭川を入れまして8市ございます。その中で町は奈井江町だけです。小さ な町ということは、お聞き及びかと思いますが、当町を縦貫する国道が一直線で29.2キロ あり、日本一長い直線国道ということで、何もないところですがご紹介させていただきま す。  当町も非常に高齢化率が高くなってまいりまして、かつては石炭産業が盛んで2万人ぐ らい人口がいたときがございます。最近は農業を中心として、誘致企業も頑張っておりま すが、人口が約6,500人、世帯数が約3,000世帯、高齢化率が33.5%となり、前期高齢者よ り後期高齢者のほうが多くなってきております。  年少人口につきましても少子化の影響で、約700人、人口比率で10.7%ですが、合計特殊 出生率では、北海道全体では大変低く、これは札幌市に人口が集中しているため、1人割 るぐらいな状況であり、全道平均が1.18、全国が1.32ですので、奈井江町の場合1.50と、 これだけは少し高くなっております。  そして、介護保険の認定状況ですが、奈井江町は記載のとおり空知中部広域連合という ことで、介護保険を全国で最初に広域連合をつくりやっているところでございます。小さ な町が1つや2つだけではこれはできない。広域を組んでやろうということで、中空知1 市5町で進めることになりましたが、この中に旧産炭地があります。歌志内市は今、高齢 化率が40%を超えている。上砂川町も同じように40%を超えており、このような旧産炭地 と一緒になってやろうということで、大変もめにもめたんです。というのは農業地帯を中 心とした雨竜町や新十津川町、浦臼町は、旧産炭地と一緒になってやるというのは効率が 悪い。あれだけ高齢化率が高いところ、しかもいわゆる生産人口が少ないので大変もめに もめましたが、ただやっぱり、頭から高齢化率が高いからどうのこうのということだけで 断念するということは大変危険なこと。むしろ旧産炭地それだけに一生懸命になりました。 そして、1市5町で今日までもう10年ぐらい、広域連合が続いておりますが、これは大変 よかったなと、こういうふうに思いますし、いろいろな面で一体的にやれると、人口減少 状況の中、高齢化率が高い中で、こういうことができると言えるかと思います。  そういう中で、介護保険認定状況でございますが、北海道の場合、認定率がどちらかと いうと高いんです。19年度で見ても、65歳以上に対する認定者の割合は奈井江町は15.9% ですが、全道的には17%、全国は16.5%と、北海道は高いほうなんです。そういう状況も ございまして、認定者は増えています。そして、介護保険の標準保険料では、北海道は比 較的高いところが多いんですが、広域連合で平均しますと3,900円です。4,000円以下とい うことは、大変地域としては、高齢化率や疾病率が高く、さらに加えて言えば旧産炭地で 肺の痛んだ方が非常に多いという中で、平均金額がこれだけでやれるということは、みん なやはり協力し合った結果でないかと思うわけでございます。  さて、これから奈井江町の各ライフサイクルに沿った住民主体の健康的な地域づくりの 仕組みについて説明申し上げます。先ほどライフステージごとに健康づくりの目標を立て てということで、涌谷町の例の話がありました。  奈井江町の健康づくり活動についても、ライフサイクル別に1次、2次、3次予防と、 常に予防の視点に立って実施しております。また、奈井江町の振興計画、まちづくり計画 との関連性を基に、町の施策のどの視点と目的につながっている保健事業なのか分かるよ うに整理しております。これは、まちづくりは健康づくりである、地域づくりである、こ ういうことを頭から位置付けております。そういうこともあり、奈井江すこやかプラン21 の策定の際には、住民主体、住民のための施策の視点を忘れず、町民委員会や推進委員会、 地域医療連携運営委員会と連携、協力体制の下、策定し、現在も推進の体制をとっている ところです。  次に、「健康づくりと医療連携のあり方」についてですが、医師会とのつながりや連携、 協力体制については、奈井江町は行政連携でやっておりますが、ただ古い歴史の中で培わ れており、いろんな面で協力関係にあります。様々な健康づくり活動の際に常に相談し、 信頼関係、連携体制の下に実施しております。特定健診実施の際にも医師会の意見を十分 取り入れ、まちぐるみでやろう。町立国保病院だけでなく、開業医の先生方もみんな含め て、特定健診懇談会の中で議論を今重ねているところでございまして、これを含めて行政 と医療の間の課題を検討しながら、未受診者対策や健康対策、保健指導体制を進めている ところでございます。  奈井江町の病院の関係では、ご存じかと思いますが、オープンシステムになっておりま して、町立国保病院の全面改築に合わせて、病診連携開放型共同利用病院の導入をしてお ります。平成6年からこれは始まっておりますが、96床のうち12床を町内の開業医の先生 に開放しております。病院ばかりではございません。老人保健施設「健寿苑」、老人総合 福祉施設「やすらぎの家」にもこれを導入いたしまして、一貫して開業医の先生方と一体 的に医療、福祉、保健も含めてやっております。そういうことから、いわゆる今回の特定 健診についても開業医の先生も積極的にこれに協力していくという状況にあるということ です。  次に、小児期からの生活習慣病予防事業について説明申し上げます。これは伊藤先生が 座長さんにおられますが、モデル事業ということで、厚生労働省と国保中央会から指定を 受けまして、幾度か伊藤先生にもお越しいただきまして、ご指導いただいたところでござ いますが、これは子どもの健康危機を切り口に、家族、地域への広がりを持った活動がで き、健康レベルの底上げができるという視点から、学校医である地元医師、教育委員会、 学校の協力で実施することとなりました。これに至ります経過については、前の会議でも ちょっとお話しましたが、大分学校ともめたところでございます。学校医の仕事がとられ てしまうんじゃないか。そうではないんだよという説明をいたしまして、皆さんご理解い ただいたところです。そして最終的に協力をしていただき、採血を含めた健康診断を学校 で実施いたしました。児童・生徒の現状としての様々な課題が見えてきました。例えば、 肥満傾向、高脂血症の傾向、尿酸、貧血などが挙げられました。これらの課題は地元医師 と様々な検討を重ねながら事後指導体制をがっちりと組んでいるところです。1つとして は、結果説明会では親子で面接いたします。保健指導を徹底するということです。  2つ目といたしましては、いわゆるフードモデル等で媒体をつくって栄養指導をする。 また、母子手帳に続けて、健康の記録表としてオリジナルの『すこやか手帳』を地元医師 会や学校関係者とともに作成しました。これは非常に好評で、効果がありまして大変大き な反響を呼んだところです。また、保護者や学校関係者、地域に向けた講演会等を実施し ました。食育の取り組みとしてクッキング教室を開催し、食育カルタを普及させ、それか ら運動不足解消のためにキッズビクスという教室を開催しました。それから事業評価のた めに学校保健懇談会で総評を知りたいとのことで、学校側も全面協力を最終的にしていた だいたということであります。やはり困難を避けたら駄目だと。やはり正面からぶつかっ ていくということが非常に大事だなと、職員も体で分かったという話をしながら、この事 後の効果につきましては、子どもや家庭の実態が分かったとともに、地域の課題が分かり ました。それを地元医師と何度も検討したことで体制づくりが円滑にできたと思います。 家族や地域全体が生活を振り返って、健康について考えるよい機会となっております。  詳しい効果については資料にも書いてありますが、学校や児童・生徒に関わる住民の組 織がとても増えております。子どもを切り口に家庭、地域の健康レベルの底上げになった ということが言えるかと思います。身近なことで言いますと、子どもたちの健康チェック をして、血液検査をして、自分の子どもに将来の糖尿病のリスクがある、今からそういう 状況ですよということが、親が分かりますと、特に母親でございますが、やはり家族ぐる みでこれを治そうと、食事から何から自らつくられると。これがやはり地域全体に広がっ てきたということが、むしろ子どもの健康調査が家庭に入り、地域全体に広がりつつある ということが大変大きな成果であると思います。今、保健師たちもやはり子どもの健康づ くりは医師とやらなきゃならないな、そういうことで広がりができているなという話をし ております。  次に、高齢者の支援体制について、資料でポイントをお伝えしておりますが、支援体制 の全体像については、23、24ページの形で体制を組んでおりますが、特に介護予防事業を 紹介いたしますが、奈井江町は保健指導医が町立国保病院の院長ということでございまし て、保健事業の実施に大変協力的な体制となっております。町内の医師会にも入っており まして、一生懸命保健指導という立場から頑張っておられます。例えば糖尿病が進んでき ても治療は当然しなきゃいけない。併せて大切なことは保健指導といいますか、大変です がもう少しこうしたらいいんじゃないですかというふうな生活指導だとかを含めてお医者 さんが言ってくれると何よりもききます。これはもう実証済みですが、そういうことを含 めて、私どもは院長先生が保健事業に大変協力的であります。  それから、13年度に全国に先駆けて、高齢者のトレーニング機器を使った体力づくり教 室を実施しておりまして、教室終了後は一度付いた筋力や体力が落ちないように、筋トレ サークルやチェアビクス、ストックウォーキングサークルで活動いただいております。特 に、冬があるものですから、滑ったり、転んだりしますからストックウォーキングという のは大変重要で、皆さんに広がっております。 また、健康づくりフロア事業では、住民個々の必要性に応じて、かかりつけ医から運動指 導票をつくっていただき、体力づくりの目的、注意事項その他お勧め運動内容を記載して もらっております。  その他、栄養バランスを考えたい方、仲間をつくりたい方、ボランティア活動に興味が ある方への活動の機会を設けまして、住民とともに高齢者支援対策を実施しております。 奈井江町の健康づくりキーワードは、住民主役でございます。住民と常に課題の検討を重 ねながら、すこやかなまちづくりに取り組む。これをこれからも続けていきたいと、こう いうふうに考えております。  実はこういう取り組みに対して、前沢先生たちが協力してくれるものですから、病診連 携を含めて、隣町の砂川と東京から、お医者さんがぎりぎりだったんですけど、幸いにし て若手のお医者さんが手を挙げて来てくれています。4月からは新たなお医者さんに来て いただきました。町民もびっくりしています。そういうこともありまして、やはり医療ば かりでなく、福祉そして保健活動で、健康で長寿を保とうという活動をしなきゃいけない と、なおさらそう思っています。実は3年間のモデル事業をやりましたが、町というのは、 モデル事業のときはどこでもやるんですよ。その後が大事だということで、この3年間、 大変前向きに取り組んでおりますから、よろしくまたご指導のほどお願いします。  以上、まだしゃべりたいことはたくさんありますが、時間が迫ってまいりました。オー バーしましたので、どうもありがとうございました。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  では質疑は、次の西村委員のお話を伺った後、させていただきたいと思います。  では、西村委員、ひとつお願いいたします。 ○西村委員  高知県から参りました西村です。どうぞよろしくお願いいたします。  梼原町は、実は涌谷町の青沼先生から今日報告がありましたけれども、涌谷町に病院を つくるときに学びに行きまして、お手本にさせていただいた経緯がございまして、重複し ていることもありますので、少し省きながらお話をさせていただきたいと思います。  梼原町は、四国のチベットと言われて、四万十川の源流地域にあります。標高が410メー トル、南国土佐といえども積雪もあります。人口は平成17年の国勢調査で4,600、高齢化率 は36%でございましたが、既に高齢化率40%は過ぎてしまいました。また、山林が90%以 上を占めています。雲が町の下に見えることもありまして、雲の上の町と言っております。 振興計画では森と水の文化構想では「健康」「環境」「教育」と3本柱を立てておりまし て、そのひとつに健康の里づくりというのを掲げて、笑顔あふれる健康のまちづくり、生 きがいの和を広げる福祉のまちづくりとして、健康のことについては以前から非常に大事 にしてきた町でございます。  これには、(3ページでございますが、)歴史がございまして、昭和46年に町にひとり もお医者さんがいないという無医地区を経験し、町民が非常に不安な思いをいたしており ます。安定的な医療確保の必要性、また病気にならない健康づくりの必要性を町民ともど も感じているところでございました。また、この2つにつきましては、歴代の首長の大き な課題でありました。その中の特徴的な1つに健康文化の里づくり推進員という制度がご ざいます。これは涌谷町の青沼先生からもお話がありましたが、20世帯に1人という推進 員を地域から推薦いただき、皆さんとともに健康づくりを進めているところでございます。 また、医師の確保につきましても非常に苦労してきたのですが、昭和57年に自治医大の卒 業生に当町に赴任をいただきまして、それから以来、徐々に比較安定した医師の確保がで きております。高知県にはへき地医療協議会というのがございまして、へき地に対します 医師の確保、医師の給与とかいう待遇面について安定的な、先生方にとっても、また自治 体にとっても安定的な制度がございまして、医師の確保ができている状態です。  それから平成5年ぐらいは福祉サービスが市町村のほうに移譲をされた時期でございま すけれども、保健・医療・福祉を一体化した地域包括ケアシステムの必要性を感じまして、 涌谷町あるいは御調町へ視察に行かせていただきました。そして、梼原町の地域包括ケア を検討し、この梼原病院、保健福祉支援センターの建設を行ったものでございます。  「住民参加の健康づくり」、「地域包括ケア体制整備」、この2つの大きなことがあり ますが、まず、1つに「住民参加の健康づくり」でございますけれども、昭和52年からこ の名前は保健衛生推進員と言っておりましたけれども、健康のことを考えていただく地域 の役員で、基本的には再任をしないということで、研修それから地域の活動をしてまいり ましたので、これまで合計1,188人の方が研修を受けられ、地域で活動をしていただきまし た。地域に健康に対する意識づくりができ、健康文化として定着してきていると考えてお ります。昭和52年の最初は健診中心、それから平成元年からは高齢化が進んでまいりまし たのでふれあいを一緒にやろうということで、名前も変えて活動も変えております。また、 平成9年からは健康文化の里づくりということで、これに加え、特に二次予防だけではな くて、一次予防、ゼロ次予防を大事にやろうではないかと、時代によって名称や活動方針 を変えながらも、基本を健康におき進めております。  それから、資料5ページでございますけれども、これが平成7年、8年につくりました 保健福祉支援センターと梼原病院です。左半分が保健福祉支援センターで、本当に先ほど 報告のありました涌谷町と同じように、行政の機関になっております。役場の本庁のほう にはこの保健福祉医療に関するものにつきましては窓口業務だけで、この保健福祉支援セ ンターのほうで主な事務を担っているところでございます。  それから機構図でございますけれども、やはりこれも涌谷町を縮小したようですが、保 健・医療・福祉を一体的に提供する体制として病院長がジェネラルマネジャー、それから センター長、病院長、病院の事務長を兼ねているものでございます。私はここの保健福祉 支援センターのほうを統括するような立場にある者でございます。  一緒になりまして、次のページでございますが、同じ屋根の下になりまして、予想以上 に効果があったなと思っているところです。最近ではこれが当たり前になりまして、改め てこうして報告する機会を与えていただいて、昔を思い浮かべながら、職員は距離がなく なり、町民の方も一度に手続きが済み、それから医療のことも、福祉のことも、介護のこ とも一度に相談ができるということで、本当に喜んでいただいているところです。この図 にありますように、いろんな事業もともにやっているところなんですけれども、一番のメ リットは、何よりも情報交換が日々できるということがあります。例えば、外来に来られ まして、介護保険のことが必要になったら、ちょっと外来に来てくれないかと先生から内 線電話がかかりまして、一緒に様子をお伺いしまして、その足で介護認定の申請をしてい ただくというようなことがありますし、それから病院への希望や苦情なども言いやすいと いうこともありまして、保健福祉支援センターのスタッフ、特に包括支援センターなどに あります町民からの医療に対する要望などを先生方にもお話をしまして、治療に反映させ ていただき、そのために新たな病気の発見があったという事例など、町民の満足につなが っているか思っているところです。  少し病院の話をしたいと思います。8ページです。梼原病院が自治体病院として地域の 医療を担う上で重視していることでございますけれども、まず、良質なプライマリケア、 それから2番目に1.5次救急医療、3番目に保健予防活動でございます。  9ページをご覧いただきたいと思います。外来における町内医療機関の占有率です。実 は梼原町には、国保の梼原病院、それから内科中心ですけれども、診療所が直営で2つ、 それから、直営で歯科診療所が1つあります。医療機関とすると、この4つでございます ので、そこの占有率ということは町内でどのぐらいの方が町内の医療期間にかかっている かということを示すことになります。これは国保のレセプトから集計したものでございま すけれども、最近、長期投与のこともありまして、少し減ってはおりますが、大体60%ぐ らいで町内の医療機関をかかっておられます。  また、入院における梼原病院の占有率です。梼原病院は30床の小さな病院で、手術とか はできませんので、約30%を占めております。  また、救急搬送の状況ですが、11ページです。救急は、町内だけではないんですけれど も、この付近の町村から来られているのも含めますけれども、救急の出動は171件ありまし て、その中の163件が梼原病院に関与しているものでございます。救急、あるいは診療の状 況などについて高い占有率を確保していますので、比較的町民の健康状況が分かるという 状況の中で、私たちも確かな情報の中で保健予防の仕事ができるということになっており ます。  12ページでございます。これは基本健康診査というような書き方をしておりますけれど も、平成20年からは特定健診が始まりました。これは先ほどの健康文化の里づくり推進員 さんたちの活動の成果でございます。実はこの生活習慣病に係る健診は18歳以上を対象に しておりまして、こういうような状況になっております。18年、19年の特定健診というの は国保の被保険者を対象者として推計したものでございますので、その辺は考慮いただき ご参照ください。平成20年度は80%を、平成24年度は100%を目指しています。  続きまして、それでは国保の医療費はどうかというところでございますが、14ページを ご覧ください。赤いところが国保の老人医療の方です。それから青いところが退職の方で す。それから緑が一般の方です。県と比較しておりますけれども、老人につきましてはか なり低位で推移しておりますし、ほかの者についても若干低いところで進んでおります。 20年につきましてはもう老人がなくなりましたので、記載をしておりません。  檮原の健康の現状ですけれども、これはちょっと雑駁なまとめ方をしております。全国 と比較した指標は大変いいものです。全死亡は全国よりも低位でして、標準化死亡比が85、 約1歳長寿でございます。メタボ関連の死亡は全国と比較すると低位でございまして、心 疾患の標準化死亡比は65でございます。しかし経年変化で見ますと悪化の一途をたどって おりまして、国保のレセプトでは糖尿病の患者さんの増加、心筋梗塞の死亡の増加、糖尿 病及び腎性腎臓病による人工透析の増加などがあります。健診受診者の肥満者の割合が3 割で県よりも高い、また、運動している人の割合が県よりも低いという状況です。野菜を 食べる割合が年齢を下がるごとに低下をしているということがあります。  16ページでございますが、健診における生活習慣病予防の発生率ですが、若干ずつ高く なっているのが分かるかと思います。  また、17ページでございますが、梼原町の原因別の死亡数の推移を単年度で見ますとな かなか分かりにくいんでございますけれども、1974年から83年までの10年間と、1995年か ら2004年までの10年間を比較しますと、生活習慣病の変化によりますかと思われます死亡 の原因が、変化してきております。  18ページでございますけれども、これまで梼原町の国民健康保険の調整交付金などをい ただきながら行いました事業につきまして、少しお話をしたいと思います。涌谷町、ある いは北海道の北町長さんのほうからもお話がありましたけれども、この国保の生活習慣改 善モデル事業、平成13年度から平成16年度まで活用させていただきまして、保健事業の本 格的な評価をさせていただきました。健康長寿な町の要因が明確になりました。よい自然 環境、健康な食事と生活習慣、人と人のつながりがあること、これまでの保健医療活動と いうことが明確になってまいりまして、また、脳出血が多い、働き盛りの男性が早死をす る、人と人のつながりが薄れている、優れた生活習慣が若い世代に引き継がれていない、 というような課題も明確になりまして、健康長寿の里づくり計画も立てました。ライフス テージごとの目指す姿を明示いたしまして、実現をしようという計画にしております。  その実行でございますが、今回は小児のところと、それから働き盛りのところにつきま して少しお話をさせていただきたいと思います。小児生活習慣病予防健診をやっておりま す。梼原町ではすこやか健診と言っておりまして、北町長さんのところと同じように血液 検査もやっておりますが、その結果をもって、健康相談それから健康教育などをやってお るわけでございますけれども、肥満者がだんだん減りました。またこの生活習慣の中では、 朝食に野菜をとろうということを具体的な目標にしております。だんだんと肥満の子ども さんが少なくなってきております。  それから、これまでの取組といたしまして、2番目ですが、先ほどの生活習慣病の課題 がはっきりしてきましたので、平成16年度から平成18年度まで国保のヘルスアップモデル 事業を導入させていただき、メタボリック症候群などに対します生活習慣の改善を目指し て行いました。目的といたしましては、糖尿病に対する効果的な個別健康支援プログラム の開発と、職員の資質の向上、2番目に糖尿病の罹患、予備群にある者の進行を防ぐこと。 3番目に事業対象者を核とした生活習慣病予防活動を地域単位で展開し、住民に拡がるこ とという3つの目的を持って行いました。  86人の国保の被保険者を対象に、個別、集団指導を行いました。効果といたしましては モデル的なプログラムが開発できまして、まず「どういうことが大事なのか、どういうと ころにアプローチをすると効果があるのか」ということが職員の身に付いてきたかなと思 います。また、生活習慣の参加者でございますけれども、体重や血液検査値の改善が見ら れました。また、自主的に運動しようとするグループがあらわれ、各地域に拡大していま す。今年になりまして、町内全区でこの運動のグループができまして、昼に1週間に1回、 あるいは2回ぐらいずつ、集まって運動をしようとする動きが自主的に行われるようにな りました。  23ページでございますが、国民健康保険制度と地域保健。これは青沼先生とちょっとか ぶるところもあるんですけれども、被用者保険で健康を害した人たちが退職して国保に加 入をされています。梼原町は先ほど申し上げましたように、若い方の早死という課題があ ります。ただ、退職までお元気で生き続けますと、そこからは長く生きられるというよう な構造になっておりまして、退職して国保に加入されますが、退職者の方のほうが医療費 も高いという現状があります。本町には、中小企業ばかりです。産業医も50人以上の事業 所ではありますけれども、健康管理体制が整っておりませんし、保健予防に対しまして何 かもどかしさを感じているところでございます。職域保健も含めて、町全体として、保健 予防を健診データなど確かな数字の上で保健指導、評価が「地域保健」としてできないか と感じているところでございます。  24ページでございますが、これまで国保で保健福祉支援センターの設置、それから運営、 国保病院の充実、先進的な事業、(先ほどの2つを今挙げさせていただきましたけれど も、)取組を行いました。国保の診療施設は保険があっても医療なしという不公平を是正 する目的でつくられております。日本の皆保険制度を支える国保制度でございますので、 国保の被保険者だけではなくて地域へ還元、そうすることで国民健康保険制度の健全化に もつながるのではないかと考えているところでございます。  以上でございます。ありがとうございました。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  それでは、まず最初に奈井江町とそれから梼原町のお2人の発表に対しまして、ご質問 等があれば、ご発言いただきたいと思います。  河内山委員。 ○河内山委員  北町長と西村さんのお話を聞きながら、子どもたちの問題を取り上げられておられるの で、非常に関心も持ち、またいいことだなと思いながらお伺いしました。何年か前から子 どもたちの学力低下問題の非常に大きな話題になりましたが、実はお気付きだと思います けど、体力低下問題というのはもっと深刻というか、非常にいろんな事象があらわれてく るというふうに伺っています。しかも、いい生活習慣とかいい食生活をやっているお子さ んと、非常にそうでないところの、あまり好きな言葉じゃないですけど、格差問題みたい なのが生じて、これはやっぱり非常に国家的な大問題になるような予兆がございます。そ ういう中で、子どもたちを対象にしまして、それで大人の行動変容とか、先ほど町長もお 話がありましたように、お父さんやお母さんの例えば食生活だとか、そこまで影響を与え るという意味では、非常にアプローチの仕方からすると、日本人の健康問題のアプローチ としては子どもを対象にしていくと、環境問題もそうなんですけれども、お子さんたちが 本気になるというか、気付くと大人まで行動変容するような可能性もありまして、非常に いいなと思いながらお伺いしました。  それはよしとして、北町長、ざっくり言って、あれはどれぐらい費用がかかるんですか。 また、お年寄りのほうの健康の問題というのはいろいろ財源があるんですけど、お子さん のほうは私も経験で言うと、なかなかあるようでないんですが、町長は非常に熱心に取り 組まれておりますが、これから先、言ってみればお金もかかる問題なんで、その辺ちょっ とお教えいただければと思います。 ○北委員  実はモデル事業でやったものですから、大雑把になってしまうと思いますが、特にこれ だけかかるとか、特別、突出してかかるものはないと思います。  この事業は、逆に医師の協力はもちろんでございますけれども、やはり父母の協力、そ れから学校の協力、これで大変苦労いたしました。先ほど組織的なことをちょっと言って 申しわけなかったんですけれども、やはり学校医の仕事が奪われるんでないかなとか、こ ういう懸念、心配がありまして、私のところに北海道の組織の方が何しに来たのかなと思 ったらこの話をされて、大分言われましたけれども、しかしじっくりとお話をし、体力の 問題、教育の問題を含めて、これがやはり一番大切なことだよと。むしろ皆さん方がこれ を奨励して取り組んでもらわなきゃいけないということで説得した経緯があります。  それで目の色を変えるのは、お母さん方なんだということになります。私はよく話しを するものですから、私どもの保健師まであちこちの講演でしゃべっているらしいんですけ ど、旦那さんがお酒を飲んで体を壊すだとかというよりも、子どもがやはり病気になりが ちだとか、あるいは肥満だとか貧血だとか、高脂血症だとか、こういうデータが出てきて、 これを個人毎に先生から指導していただきます。そうなりますと、そこの家庭は必死にな って、これを食生活につなげます。先ほどお話がございましたように、朝は野菜をちゃん と食べさせるとか、そういうことを含めて、コンビニへ行って買い食いするだとか、そう いうこともしっかり指導していかなければいけません。家庭の奥さん方は子どものことと なると一生懸命になります。こういうことで、特別なこれだけかかるということではない ということであります。 ○河内山委員  ありがとうございました。 ○伊藤座長  今の点は、実は奈井江町や梼原町のような、そういう取組をする場合に、現行の制度な り予算の制度で、どういうところにその問題点があるのかということを少しきちっと課題 を抽出して、そしてこの懇談会として何か具体的な提言ができるかというような形で今後 進めていったらどうかなと思います。  内田先生、どうぞ。 ○内田委員  今日の4例のお話、大変興味深く、いい話を聞かせていただいたと思います。幾つかキ ーワードがあると思うんですけど、今のお話で言いますと、私は実は学校保健も担当して おりまして、地域専門家総合連携事業というのが文科省の予算で、年間1億2,000万ぐらい 付いています。これは従来はモデル事業だったんですけど、今はモデル事業じゃなくて本 事業になりました。100%の文科省の予算ということで、都道府県割になっていますから、 1県当たり215万ぐらいしか付かないということです。医師の派遣であるとか、健康教育と か、いろんな形で使われている。元は精神科、整形外科、それから皮膚科、産婦人科の先 生方を学校に派遣して、お話を聞いたり健診をやってもらおうというところからスタート しているんですが、非常に微々たる予算で、もっと増やしてくれということを言っていま す。  ただ100%国が付ける予算というのはモデル事業的なものだから、全都道府県に均等に付 けることはできないということで、また来年、マイナスシーリングになりそうだというこ とで非常に危惧しております。これはぜひ自治体のほうから強力に働きかけていただけれ ばというふうに思っています。ですから、むしろ総務省のほうに予算化を持っていったほ うがいいのかなというふうに思っています。  子どものころからの生活習慣病指導あるいは疾病対策保健指導という点から言いますと、 特に学童期に関してはやはり教育委員会と学校医というのが結構縦割りで、話が通じない というところがあります。やはり、これぐらいの規模の市町村で取り組んでいただくとい うのが一番動きやすくて、連携がとれていいんですね。大きい町、大きい市やなんかに行 きますと、これが特に教育委員会がかたくて、予算もなくて、全然対応できないという大 きな問題があるんで、確かに国保とその辺のところの連携で取り組むというのが非常に大 きなパワーになる可能性があるし、また、将来をにらんだ上での重大な施策になるという ふうに思っていますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  私は昨日、がん検診の話を医師会の担当者に集まってもらってやったんですけれども、 まず、受診率の把握が非常に難しいです。これは厚労省のほうでは二次、三次産業の従事 者を除いた母数で健診受診者を割って受診率を出せと指針を今回出したんですけれども、 それは全く正確な数が出てこない。それから被扶養者がどこかに抜け落ちてしまうという 話もございました。今日お聞きして非常に感激したのは、やはり住民全体を対象として、 あまねく平等なサービスを提供するという視点がこういううまくやっている事業を展開さ れているところでは徹底しているということをすごく強く感じました。これも、地域から 発信して、こういう全国展開をぜひやってもらえればというふうに思っています。  今日は伊藤委員長が最初におっしゃいました、衛生行政と国保の連携をどう進めるかと いうところでの、非常に大きな事業展開になると思いますので、ぜひよろしくお願いした いと思います。ありがとうございました。 ○伊藤座長  ご質問というよりは、今後の在り方についてのいろいろなディスカッションになってき ておりますが、若干まだ時間が残っておりますので、ご質問のほかに国保における地域保 健活動と今後の展開という視点で、またご発言いただきたいと思います。その点で、お手 元の資料1に前回の議事要旨でございますが、ここに幾つか論点を整理していただいてお ります。例えば、住民の健康増進・幸せづくりのためにとか、市町村国保とポピュレーシ ョンアプローチ、2枚目では保健師の問題と、また在宅医療・在宅ケアとの関係がござい ますが、この辺のところも少しお目通しいただきまして、今後の展開という視点でご意見 等があれば承りたいと思います。  いかがでしょうか。冨永先生、どうぞ。 ○冨永委員  大きなところでも、北九州市のようにうまくやっていらっしゃるところもあるんですが、 今、内田委員が言われましたように、を梼原町や涌谷町や北町長さんの奈井江町のように、 国保直診があるところからお話いただきました。7,000人、1万人、涌谷町は1万8,000人 ぐらいですが、そういう規模のところであるときめ細かいサービスができるということで す。大きい市でも、北九州市のように7つの区に分けているというお話でしたが、プライ マリケアを含めて、保健・医療・福祉サービスを提供する単位を小さいコミュニティに分 けて、小規模な町村のようなきめ細やかなサービスをいかにして提供していくかというこ とが、これから日本にとって必要と考えます。。  と言いますのは、涌谷町でも保健・医療・福祉サービスの質を維持するために合併しな かったとおっしゃったわけですね。ですから、本来は合併して、全部のところでそうある べきなんですね。私はいつも申し上げることですが、市町村合併で国保直診の比較的よく やっていらっしゃったところが、合併後にやりにくくなったとおっしゃることがかなりあ ります。それは今まで町内の役場の人が国保直診と密接に関わられておったのが、合併後 中央のほうへ行かれて、支所には役所の人が少なくなり、国保直診はそこにあるけれども 保健・医療・福祉の連携がやりにくくになったということで、かえってサービスが低下し たということを聞いています。それを避けるために、青沼先生のところなんかは合併され なかったということなんでしょうけども、本来は先ほど言いましたように、合併して全部 の地域で質の高いサービスが提供されるようにやっていくことが、これから日本にとって は必要だと思います。それによって医療費の適正化も実現できるでしょうし、あるいは健 康長寿を達成できると思いますので、これをどのようにして推進するかということが重要 です。いろんなモデルがあります。国保の診療施設があるところはどちらかというと田舎 に多いものですから、そういうところで一生懸命やっていた地域包括医療が市町村合併に よってかえって崩れたということは国にとってもマイナスなので地域包括医療を推進して いくように政策誘導をしていただけたらと、強く思っております。 ○伊藤座長  ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。  もう時間が押しているんですが、私から1点。前沢先生、よろしいでしょうか。先ほど 北町長さんから、若い医者が来てくれるようになったと。そのことを、実は今議論になっ ております総合医の養成ですね。そういう医師の養成に結びつくような具体的な今後の取 組というようなことが、保健と医療と介護なり、プライマリケアを総合的に上げる、そう いう場所をつくって、そこの教育プログラムを提示していくというようなことは一つの今 後の課題じゃないかなと思うんですが、前沢先生、いかがですか。 ○前沢委員  医師を育てるということはいろんな要素がありますけれども、私自身はやはり住民の方 と十分コミュニケーションをとれるような規模の町村で学生時代から勉強をしたり、研修 医のときも地域医療研修ということで、そういう体験していただくということは大変大事 なことなんじゃないかなと思っております。  それで、やはりそこでの仕事は何か縦割りの専門を持ってやる仕事というよりは、やは り患者さんも総合的に相談にのれる、そして自分のできることとできないことの区別をし て専門医をうまく活用していく、そしてそれよりも大事なことは、やっぱり予防的な活動 のおもしろさのようなものを若い時代に知ってほしいなということで、今取り組んでおり まして、北大で成果が上がったかと言われるとなかなか難しいところがありますけども、 実は今度新しく内閣府から補助をいただいて、後志という町村の首長さんにお願いをして、 そこで学生実習、研修医の研修を受けてもらう。そして、指導する医師や保健師さんたち にも一生懸命勉強してもらって、さらに住民の方にも医療の本来の在り方、それから予防 の責任の持ち方、そういうのを勉強していただくような仕組みをつくりまして、それを再 委託していただきまして、少し日本の新しいモデルにしたいなと思っております。そんな ことで、やはり地域の中で医者を育てるという視点をみんなが理解して持っていくという ことが大変大事なことなんではないかと思っております。 ○伊藤座長  今後、その辺のところも一つ論点としてご議論いただけたらと思っております。  それでは、時間が来ておりますので、本日の議論はこの辺で終了させていただきたいと 思います。  事務局から何かございますか。 ○事務局(和田)  伊藤座長、どうもありがとうございました。  また、参考人の青沼様、丹田様におかれましては、非常にご多忙な中、お話をいただき まして、本当にありがとうございました。  次回の懇談会でございますけれども、疾病の予防と治療の一体的な取組について、国保 直診施設の報告を中心に開催できればというふうに考えております。目途としては10月を 予定をしております。また、後ほど事務局から調整をさせていただければと思っておりま すので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、ご多忙にも関わらずご出席いただきまして、誠にありがとうございました。以 上でございます。(了) 照会先:厚生労働省保険局国民健康保険課施設係            (代)03−5253−1111(内線)3263