09/03/11 第6回高齢者医療制度に関する検討会議事録 平成21年3月11日 高齢者医療制度に関する検討会   第6回議事録 (1)日時    平成21年3月11日(火)16:00〜17:40 (2)場所    厚生労働省 省議室 (3)出席者   岩本委員、川渕委員、権丈委員、        塩川座長、樋口委員、宮武委員        舛添厚生労働大臣        <事務局> 水田保険局長、榮畑審議官、神田総務課長、吉岡保険局高齢者医療課長 武田保険局国民健康保険課長、田河保険局保険課長、佐藤保険局医療課長、 村山保険局調査課長、大西保険局総務課医療費適正化対策推進室長、 (4)議事内容 ○吉岡課長 委員の皆様には、本日は御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。定 刻になりましたので、ただいまより、第6回「高齢者医療制度に関する検討会」を開催いたします。  本日は、岩村委員、大熊委員、山崎委員が御欠席でございます。また、大臣は国会の都合によりまして、 5時過ぎごろに到着する予定でございます。  それでは、議事進行につきましては、塩川座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。 ○塩川座長 どうも本日は御出席いただきまして、ありがとうございました。  今回は、第6回目の検討会となります。本日は、前半部分におきまして、当事者である高齢者の方々を 代表いたしまして、全国老人クラブ連合会の皆様にお越しいただき、御意見を伺うことにいたしております。 後半部分におきましては、前回に引き続き、総括的な議論を行いたいと思っております。  大臣には、5時ごろ到着になるのではないかということですが、到着次第御挨拶いただくことといたしま して、とりあえず、事務局より、お配りしてある資料の大枠につきまして、御説明をお願いいたしたいと存じ ます。  事務当局、よろしくお願いいたします。 (報道関係者退室) ○吉岡課長 お配りしてある資料でございますが、最初に資料1「これまでの意見を踏まえた論点整理」 でございます。本日の後半部分におきまして、この論点整理を基に御議論いただければと考えておりま す。  資料2は、これまで先生方からいただいた意見の概要をまとめたものでございます。この意見の概要を 踏まえまして、資料1の論点整理を行っているということでございます。  資料3は、本日の議題に関する参考資料でございます。1枚おめくりいただきますと、目次がございます。 本日は9つの資料をお配りさせていただいておりますが、この中で本日新たにお配りしている資料は、(1) と(5)でございます。  (1)につきましては、山崎委員から御依頼いただいた、高齢者医療制度に関する最近の世論調査結果の 資料でございます。  (5)につきましても、山崎委員の御指摘を踏まえまして整理した、健康保険組合に対する支援事業等につ いてということで、国からの支援事業あるいは健康保険組合連合会における支援事業を整理している資 料でございます。  資料4は、本日おいでいただいております全国老人クラブ連合会からの意見の資料でございます。  資料5は、各関係団体からこの検討会に対しての意見を頂戴いたしております。この資料にございます ように、日本医師会を始めとする8団体から、それぞれ御意見の提出をいただいたところでございます。  このほか、権丈委員、川渕委員、山崎委員、宮武委員の各委員から、資料の提出をいただいております。 なお、山崎委員、宮武委員からの提出資料につきましては、本日の朝、自民党の医療委員会において両 委員のヒアリングがございましたので、その際の資料を提出いただいているところでございます。  資料については、以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○塩川座長 それでは、ただいまから、御意見を承りたいと存じます。  今日は、全国老人クラブ連合会を代表いたしまして、大阪府老人会の会長でございます越智秋夫さんが お越しでございます。また、全国老人クラブ連合会の常務理事でございます齋藤さんにもお越しいただい ております。15分程度で越智さんから御説明いただき、その後、意見交換を行いたいと思いますので、よ ろしくお願いいたします。  越智秋夫さん、どうぞよろしくお願いいたします。 ○大阪府老人クラブ ただいま御紹介いただきました、大阪府老人クラブ連合会会長の越智秋夫でござ います。本日は、高齢者医療制度に関して、我々高齢者の意見を述べさせていただく機会を設けていた だきましたことに厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。  後期高齢者医療制度につきましては、各都道府県・指定都市老連からいろいろ意見を提出していただき、 全老連でまとめまして、関係方面に昨年の8月から9月にかけて、いろいろ要望書を提出したところでござ います。本日は、提出した要望書の概要をもとに、意見を述べさせていただきたいと思います。  概要は、今、お手元に資料4として配付されました「『高齢者医療制度』に対する意見」にございます。  まず「1.高齢者の『自立』と『尊厳』を守るために」でございます。  後期高齢者医療制度の混乱は、事前の説明・周知不足が引き金となったものでして、年金生活者の中 には、自立した生活が困難な状況が次第に広がっていくのではないかとの懸念が生じました。多くの高齢 者の不安や不満の要因は、ここにあったのではないかと思っております。  2つ目としまして、社会保障制度への不安は、政治への不信を招き、「後期高齢者」「終末期」などの用 語は、高齢者の心情にそぐわず、また高齢者の尊厳を損なう結果となったものと思っております。  また、医療・介護の将来にわたる負担の全体像を示していただき、高齢者が安心して生活できる制度が 構築されるよう望むものでありまして、改革が社会保障制度を後退させるものであってはならないと思って おります。  「2.公平でわかりやすい制度を構築するために」でございます。  (1)が、75歳以上に限定して導入する根拠に乏しい制度を改めることでございます。  後期高齢者診察料(かかりつけ医制度)や終末期相談支援料を75歳以上に限って適用することにつき ましては、見直していただきたいと思っております。  また、健康診査を75歳以上に限って、実施義務から努力義務とすることも、後期高齢者が軽視された のではないかということでございまして、これも見直していただきたいと思います。  (2)が、保険料(均等割)の軽減における「世帯単位」の算定は見直すことでございます。  個人単位で保険料を徴収する原則の中で、均等割の軽減につきましては、世帯単位で計算して、その 金額によって軽減率が決まるということでございますが、個人単位で計算される原則が、軽減の判定では 世帯単位で算定されるのは、ちょっと矛盾しておるのではないかということでございます。  (3)が、被扶養の矛盾は是正していただきたいということでございます。  74歳まではサラリーマン世帯の被扶養の対象者でありますけれども、75歳以上は対象から除外される ということも、制度上矛盾しているのではないかということでございます。  (4)が、70歳〜74歳の一般の高齢者の窓口負担は1割とすることでございます。  75歳以上の高齢者と74歳を比較いたしましても、その生活実態は余り変わらないということで、これは 1割負担に統一していただきたい。  「3.温かみのある低所得者対策を」実施していただきたいということでございます。  (1)が、低所得者の負担を軽減していただきたい。  温かみのある軽減措置を講じていただきたいということで、我々高齢者の中には、少ない年金収入で生 活費を切り詰め、できるだけ保険料等の負担はいたしまして、極力自立に努めております。そういう気構 えでおりますのに、払えなかったら生活保護を受けたらどうかという考えでは、やはり高齢者の尊厳にそぐ わない。保険料や利用料負担によって、自立の道が閉ざされないよう、低所得者への配慮をお願いしたい ということでございます。  (2)が、資格証明書の運用は慎重を期していただきたい。  保険料が未納になりますと、罰則とも言える資格証明書が発行されることに危惧を抱く高齢者は少なく ありません。資格証明書をどのような際に適用するのか、その基準を明らかにしていただくとともに、本人 の生活実態を十分調査していただいて、猶予措置を講じるなど、適用には慎重な対応をお願いしたいと思 っております。  「4.高齢者の意見聴取と十分な説明・周知を」ということでございます。  今回の制度改定が、説明不十分であっために混乱を起こしたという意味で、高齢者をめぐる制度・施策を 創設・改正する際は、今後、高齢者の意見を十分聴取する機会を設けていただきたいということでござい ます。  2つ目としましては、昨今の社会保障制度の改革は目まぐるしく、高齢者の理解が追いつかないのが現 状であるということでございます。高齢者の生活に直結する制度については、基礎的自治体である市町村 の責任において、十分な説明・周知を図っていただきたい。特に我々高齢者は、地域では自治体との関 係が密でありますので、市町村の果たす役割も非常に重要であると思っております。  大体概要は、以上でございます。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。齋藤さん、追加することはありますか。 ○全国老人クラブ 後で質疑の中でお答えいたします。 ○塩川座長 そうですか。  それでは委員の先生方から、随時、御発言をお願いいたします。  川渕委員、どうぞ。 ○川渕委員 貴重な御意見ありがとうございました。私自身、今回の高齢者医療制度の中で、今、御指 摘があったところの問題点は、理解したつもりですが、今日の資料の中に2点御質問したいことがありま す。  今、御説明いただいた「2.公平でわかりやすい制度を構築するために」の(2)に、「保険料の軽減におけ る世帯単位の算定を見直すこと」とあります。これに関連して、(3)に「被扶養者の矛盾は是正すること」と あります。  ちょっととんちんかんなことを聞いて失礼なんですけれども、本検討会でも75歳で線を引いたことの是非 が、結構問われたと思います。75歳で線を引いたことで、よく出てくる議論としては、ここに書いてござい ますように、保険料の均等割と所得割があります。これまで我が国の医療保険制度は、世帯単位をベー スにやってきた所に一部個人単位という要素が入りました。私としましては、ここがわからないんですが、 これからお年寄りが増えていって、いわゆる単独世帯が増えてくると、ある部分は個人単位の保険料でい いのかなという一方で、いかんせん、どうしても世帯単位で考えなくてはいけない部分もあるかと思うので す。  先般、長寿医療制度が導入されて、保険料が以前の国保の時に比べてどれぐらい増えたかという質問 にも、7割ぐらいの世帯が減ったということです。結局「個人」ではなくて「世帯」単位の話なのです。恐らく、 この議論は尽きることはないのですが、老人クラブの皆様方は個人単位をベースに考えていけばいいの か、あるいは世帯でいいのかどう思われますか。よく言われる絆社会という中で現行制度をどういうふうに 思っておられるのかということです。  もう一つ聞きたいことは、(3)の扶養者についてです。これまでサラリーマン世帯の扶養者については、あ る意味では保険料負担がなかったのが、突然出てきたという話だと思います。これもいろいろ御議論や御 批判があるかと思いますが、制度上の矛盾と書いてあるのは、一体どんな矛盾なのか。できれば、どう是 正したらいいのか辺りのことをお聞きできたらなと思います。  以上でございます。 ○塩川座長 どなたかお願いします。  では、齋藤さんお願いします。 ○全国老人クラブ 2点の御質問があったわけですが、1点目の個人単位の保険の徴収ということについ ては、一定の高齢者、少なくとも私どもの中では理解されていると思っております。  従来の介護保険のときからそうでありますけれども、高齢者もやはりこの時代にあって、自分の能力に 応じて負担をするというのは、私どもの中で繰り返し確認されてきておりまして、そこに対しての強い反対 意見というのはない。むしろ、それぞれが負担していくという考え方については、理解が進んでいると思っ ております。  そういう考え方で整理をしたときに、軽減のところだけ世帯の話が出てくるものですから、非常にわかり にくいということと、更には、今、社会現象とまでは言いませんけれども、世帯分離のようなことで、こうや れば得をするとかという話が出てまいりますと、制度が生んだ矛盾といいますか、そういう話が広がってい くということは不幸ではないか。将来的には、やはり個人の能力に応じて個人単位の徴収が広がっていく ということが原則ではないかと考えております。  2つ目のサラリーマンの被扶養の関係でございますが、これは従来、負担をしていない人たちが負担す るということで、非常にショッキングな話ではあったと思います。ただ、私どもの中でも、独り暮らしの高齢 者は保険料を納めていた。しかし、同じ所得であっても、扶養になると負担がなかった。そこに従来から矛 盾がありまして、それが今回是正されるということは、同世代の公平という観点からすると、一定の理解が できる話だと思っております。  ただ、75歳になると、いや応なしに扶養から引き離されて、この度の制度に加入するわけですが、74歳 までは、依然としてサラリーマンの被扶養の対象にある。むしろ一般論で考えると、75歳になると扶養の 対象になって、それ以前の人たちがそうではないという話ならわかりますが、ここに制度が生んだ1つの矛 盾点があるのではないかということです。こういう逆転したような話が高齢者にとって一般的には理解し難 い話なので、整理をさせていただいたということであります。 ○塩川座長 川渕委員、よろしいですか。 ○川渕委員 はい。 ○塩川座長 では、岩本先生、どうぞ。 ○岩本委員 まずお伺いしたい点は、後期高齢者医療制度は75歳で区分けされて、それこそ家族の中 で75歳以上の者が分かれるという状態になったんですけれども、そのこと自体への意見がこの紙の中に はなかったようなので、それはどのようにお考えなのかということをお伺いしたいと思います。よろしくお願 いいたします。 ○塩川座長 齋藤さん、どうぞ。 ○全国老人クラブ 75歳での区分は、大変根源的な問題でありまして、公平でわかりやすい制度構築の (1)のところに、75歳以上に限定した制度導入というのは、理解し難いということを書かせていただいており ます。特に新しい制度が、高齢者にとって何か魅力的なものがあるのであれば、恐らくネーミングの問題 も含めて異論がない。かつて、医療費無料化の時代がありましたが、そのときに仮に「後期高齢者」という 言葉を遣ったにしても、高齢者にとっては負担の少ない制度として理解ができたのでありましょうけれども、 新しい制度が高齢者のためだというんですが、高齢者がどこでそれを評価できるのか。そこが非常に難し かった。例えばかかりつけ医制度の問題などは、私どもは医療の正しい受け方として、かかりつけ医とい うものを持とうということを強く長く主張し、医師会の先生たちとも協働しながら、取り組みを進めてきた立 場からしますと、そのこと自体、考え方としては立派な制度だと思いますが、そこに包括払いという仕組み が入ってくるものですから、果たして高齢者はそれで十分な医療が受けられるのかどうかという不安が大 きかったんだろうと思います。  かかりつけ医制度がいい制度であれば、何も75歳以上に限定して導入する必要はないわけでありまし て、終末期医療も、名前の問題は別にしても、若くてもそういう事態を招くこともあるわけでありますから、 年齢に関わらず、そういう考え方を入れるというのは、1つの考え方として理解はできるわけであります。 75歳以上のところに区切って導入するということは、非常に誤解を受けやすいといいますか、皆さんの説 明だけでは、十分に納得し得ないものがある。そういう意味では、75歳の線引きというのは、妥当性を持 たないといいますか、理解をする上では無理があるのではないかと認識いたしております。 ○塩川座長 宮武先生、どうぞ。 ○宮武委員 被扶養者の扱いでございますけれども、74歳までは被扶養の対象で、75歳からは外される。 まさに逆ですね。  今の被扶養者の扱いで、年収が180万円未満という基準を下げていくことで、独り暮らしの方で所得が 乏しい場合でも、保険料を払っている方との整合性を図るという考え方は、当事者としてあり得るのかどう かということが、1つお聞きしたい点です。  もう一つは、今日配付された本日の議題に関する資料の中に、最近の世論調査によりますと、現行制度 をそのまま続けるとか、多少手直ししたうえ骨格そのものは守れという意見がほぼ半数を占めていて、な おかつ、70歳以上の方では、想定的に支持者が多いという世論調査の結果が一部で出ているわけです が、それは制度発足時と今とでは、何か変わったからこんなふうに大分反発が和らいできたのか。あるい はそうではないのか。老人クラブ加盟の方たちも御意見が変わっているのかどうか。その辺をお聞きでき ればと存じます。 ○塩川座長 齋藤さん、どうぞ。 ○全国老人クラブ まず1点目の件でありますが、これは逆転の矛盾があるということを申し上げたので、 ではどうあればいいかという答えを私どもが持っているわけではございません。  ただ、こういう制度が1つできる。そこにどうしてもおかしな矛盾がある。それは公平の観点からいうと理 解し難いものです。したがって、74歳の人も同じ扱いにしろということを申し上げているのではなくて、それ がお互いにとって理解できるような仕組みをつくっていただきたいという期待を込めての話でございます。  2つ目の話は、制度発足時の混乱から1年近くなるわけでありますから、理解の仕方というものも変わっ てくるということは、あり得るとは思います。ただ、私どもの範囲の中では、今まで介護保険、その他さまざ まな高齢者に関わる制度が変わってまいりましたときに、大体大きな山場を過ぎると鎮静化するということ が一般的にはあったわけであります。しかし、今日も市町村や地域の高齢者から、医療制度は今どこまで 進んでいるんだろう、どういうふうになるんだろうという問い合わせが、多いということは、今でも関心は非 常に高いと思っておりますし、一部調査にあるようなことと実態とは少し違うのではないかと思っておりま す。  せっかく時間をお借りしましたので、これも今のお答えに関する理解の助けにしていただきたいと思いま す。  平成18年6月にこの法案が通って、それから2年が経過いたしました。実は、18年という年は、4月に 介護保険が第3期を向かえた時期で、保険料でいうと、全国平均3,300円が4,100円ぐらいになって、 24%ぐらい上がりました。高齢者にとって、社会保障に対する関心が非常に高い時期でございました。マ スコミ報道では、この新しい制度が実施されると、大体全国平均1人6,000円ぐらいの保険料負担になる のではないかという発表がありまして、合算しますと1万円程度の負担になるのではないかということでし た。私どもも、高齢者の皆様がどんなお考えを持っているのか伺ってみたいと思い、内部の調査でありま すが、たまたまブロックごとの全国の研修会が各地で開かれていましたので、その参加者にアンケート調 査をいたしました。回答数は665でございました。 アンケートでは、介護と医療のことについて尋ねております。  本当は、今日皆様にお配りすればよかったんですが、実は介護保険について、この年の10月から施設 サービスにおける居住費、食費は自己負担という問題が出てまいりました。これに対して賛否を伺ったとこ ろ、賛成が反対を上回っておりまして、比率でいうと32.6%が賛成、31.4%が反対。つまり、施設における 居住費、食費というものは、やはりやむを得ないものではないかと答える方々が、この時期は多数でござ いました。  次に、介護保険料の改定はどうかとお尋ねしましたところ、さすがにここは負担増はやめてほしいという 声が約53%ございました。しかし、これもやむを得ないのではないかという答えが38%ございました。この 種の調査をして、介護保険料が24%上がったにもかかわらず、38%の方がやむを得ないという認識を示 しておられるというのは、社会保障に対する高齢者の認識というものは、非常に高いものがあると思ってお ります。  更に今日の医療の問題でありますが、70歳以上で現役並みの所得がある人の負担を2割から3割にす るということ。これについても、反対が多くて43%ですが、賛成が35.3%あるんです。これも意外な結果だ と思いました。もっと反対があるのではないかと思っておりましたが、所得のある人たちは、もう少し頑張っ ていこうではないかという結果です。  次に、同じ居住費、食費の問題でも、療養病床の入院患者の方々に対してのことを聞きましたところ、こ れは介護の施設系とは全く逆でありまして、反対が46.6%、賛成が24.5%ということで、医療に必要なも のは自己負担を取るべきではない、治療の一環として食事もあるのではないかという考え方を示した方が 多数いたというのは、同じ、居住費、食費でありましても、医療系と介護系では違う反応を示したということ は、興味深く受け止めました。  更に、75歳以上のすべての人を対象とした新たな高齢者医療保険制度の創設についてお尋ねいたしま した。この当時は「後期」だとか「終末期」という言葉は一切ございませんでしたので、そういう用語は使っ ておりません。それにもかかわらず、反対が64.4%、賛成はわずか11%でした。これは同じときの調査な のです。  また、70〜74歳の窓口負担を1割から2割にすることについてどう思うか。これも反対が約6割の58.9%、 賛成が15.3%ということで、やはり窓口負担は、前期と言われる世代からも余り取ってはいかんと。つまり、 所得のある人たちが応分の負担をすることはやむを得ないけれども、しかし、この度の制度の骨格を成す 部分については、2年前から大変強い反対の意思表明がなされているわけです。  最後に、保険料は介護保険と医療保険を合わせてどれぐらいが限度だと思いますかという質問に対して、 1万円までは何とか我慢できるという人が84%。それ以上は耐えられないと言っております。  つまり、今回の4月スタート時の混乱は、これを全く裏づけておりまして、頑張って保険料を負担する、自 分たちも社会保障を担うという気持ちは非常に強いのでありますが、しかし、負担に耐え切れなくなるので はないかという思いが、年金生活者の中からふつふつと浮かび上がったのではないでしょうか。  そういう意味では、宮武委員からお話がありましたように、やや何か鎮静化したというムードがあるという のは、決してそうではなく、非常に根深いものを高齢者は感じ取っている。それは社会保障全体や将来に 対する不安というものに、実は応えていないということの証ではないかと理解いたしております。  以上でございます。 ○塩川座長 よろしいですか。  樋口先生、どうぞ。 ○樋口委員 ありがとうございました。今、おっしゃいましたことには賛成でございます。  後期高齢者医療制度が始まりましたときに、反発は2つあって、1つはなぜ75歳で線引きするか。これ はこれから一定の回答をしていかなければならないテーマでございます。  もう一つ、保険料の納付方法で天引きというものかございました。これに関しては、その後の行政上の 手直しなどが大分加えられましたけれども、この点については、今回の要望書には触れておられませんが、 会員さんの御反応はいかがでございましょうか。  もう一点ございまして、鎮静化したのは2つ理由があると思います。  1つは、少し高い負担になる人、あるいは新たに個人負担が入った人は、老人クラブの方がおっしゃいま したように、高齢者が社会保障というものに自分も加入して、国民クラブの会費は払っていくんだという認 識が広がったのだと思います。、これはみんな我慢して、でも納得しているので、お金の面はそういう点が あると思います。  あとは、かかりつけ医とか、本当はここが制度のメリットになるべきなのに問題山積みなのですけれども、 実は進展していないからあまり不満も出ないということではないかと思います。大阪地方の身の周りだけ で結構でございますから、かかりつけ医とか診療医とかがどの程度進んでいらっしゃるのか。あるいは老 人クラブの会員さんの中から、利用してみてどんなお声があるかございましたら、恐れ入りますがお願いし ます。 ○塩川座長 では、越智さん、どうぞ。 ○大阪府老人クラブ かかりつけ医につきましては、高齢者には足の不自由な方が多いわけでございま して、通院するのに不便だということで、車で送迎していただけることもあるということを、非常にありがたい と思っているわけでございます。  私は大阪府寝屋川市というところに住んでおりますが、地域の医師会が各中学別に図面をつくりまして、 あなたの近くにはこういう科のこういうお医者さんがおるからということで、自分たちで選択できるような資 料をいただいております。かかりつけ医制度というものが、地域と医療とが非常に結び付いてきたような感 じがしております。 ○樋口委員 ありがとうございました。 ○塩川座長 よろしいですか。  齋藤さん、どうぞ。 ○全国老人クラブ 1点、年金の徴収方法のことについてのお尋ねがございました。途中で口座振替も可 能だということになり、選択肢があるということで、おおむねの高齢者の皆様は理解が進んだと思います。  これは私どもの中でたびたび議論のあるところでありますが、天引きをするということについて、大変強い 抵抗感を持っている方々は少なくないと思っております。ただ、よく介護保険と話が比較され、どうせ納め るものだから、簡便法で年金から天引きするのも同じことだよと、合理的に考える方々も勿論いらっしゃる わけでありますが、権利と義務の関係から言えば、ちょうだいするものは確かにちょうだいする。そして、納 付するものは納付する。これはやはり考え方の原則論でありまして、私どもは介護保険制度の導入の際 も、本人の了解を得ずして天引きするような方式というのはいかがなものかということを申し上げました。そ の意味では、選択性の導入というのは、常識的な話であろうと思っております。  ただ、恐らく結果論からすると、そのまま年金天引きを選択される方々も多数いらっしゃると思いますが、 その数をもってこうだから年金天引きでいいんだということは、考え方としては安易な考え方で、選択でき るかどうかということは重要な点だと思っております。  現に、私どもの身近な者に聞きましても、入ってくる年金が幾ら、そして納付をしたものが幾ら。それがき っちりと自分の手元に記録として残っていくことを好まれる方々はいらっしゃるということでありますから、こ れは本来の形として望ましい姿に整理していただいたのではないかなと思います。  もう一点、かかりつけ医の話でございますが、かかりつけ医が大事だということは我々の組織の中でも 繰り返し勉強を重ねてまいりましたので、その趣旨のことを越智会長は申し上げたのだと思います。果た して制度としてこれが進んでいるか否かというお尋ねの件で申し上げますと、調査はいたしておりません が、私どものメンバーの中の話で、4月から何か医療を受ける際に変化がありますかと聞くと、何ら変化は ないと言っておりますから、かかりつけ医が選択されて広まっているという印象は、少なくとも現段階では ございません。  以上でございます。 ○塩川座長 権丈先生、どうぞ。 ○権丈委員 どうもいろいろと勉強させていただきました。ありがとうございます。  先ほどの宮武先生の質問2のところと関連といいますか、その後に続く質問です。  今日配付されております資料3を見ますと、その中に日本経済新聞社と日本医療政策機構の世論調査 が入っております。これは70歳以上になりますと、過半数が見直しを含めて存続と両方とも答えているん です。そういう調査がどうも実態と違うということの御指摘は、先ほど理解できました。ですけれども、何ゆ えにこの調査では実態と違う現象が出てくるのかというところが詰められないと、我々としても一体何を根 拠に議論していけばいいのかなということがあります。  例えば6ページです。日本医療政策機構で「現行制度への支持は70代以上でもっとも高い」という形で、 質問項目が書いてあります。この質問項目だと、一体どうしてよろしくないのか、実態が反映できないの かということのアドバイスがありましたらば、我々としてもひとつ先に進んだ議論ができるかなという気がい たします。よろしくお願いいたします。 ○塩川座長 齋藤さん、どうぞ。 ○全国老人クラブ 私どもは調査に対してけちをつける気持ちはさらさらないわけで、これはこれで立派な 調査をされたんだろうと理解いたします。  ただ質問で、ではどうしたらいいのかということについては、やはり多くの高齢者は思いつかないのだろ うと思います。一般的な話からいうと、保険料もそんなに大きく変化はなかった。それから、医療を受ける 立場からして、医療機関に行っても、それほど大きな変化はなかった。  そういう意味でいうと、騒いだ割には変化がなかったのかなということで、受容したという側面はあるかと 思います。しかし、それは根源的な話とはやや違って、医療機関の受診行為の中で余り違っていないとい う印象を受けた。それがこういう結果になっているということはあり得るのかなと思います。  ただ、多くの高齢者が不安に思っていることの1つに、例えば現在保険料の1割の負担も、今後人口構 造が変わってまいりますと、少しずつ高くなっていく。そこに不安を抱いている方々が多うございまして、2 年後に同じような答えが出てくるかどうかというのは、そこは少し懐疑的な感じもいたしておりまして、一定 の慣れということは当然あるだろうと思いますが、これまでとあまり大きな変化がなかったということでの理 解ではないか受け止めております。 ○権丈委員 私たちがこういう制度を判断するときに非常に難しいのは、昔から「新税は悪税」ということ わざがあるんですね。どんなにいい税であろうが、新しく変化が起こったならば、まず批判されるのです。 そこをどう見極めていかなければいけないかというのが、当事者でない我々第三者の人間として非常に重 要になってくるので、我々としては、こういう調査に依存せざるを得なくなってくるんです。  だから、そういうところで、どういう形でもう少し精緻な調査をやった方が実態が現れるとかいうアドバイス とか、あるいはいろんなことがありましたらば、これから先もいろいろお願いしたいと思いますので、よろしく お願いします。 ○塩川座長 齋藤さん、どうぞ。 ○全国老人クラブ 私どもも含めて、なかなか制度というのは複雑なものですから、おっしゃられる方の御 意見を聞くとそうだなと思うことがよくございます。これは高齢者の皆様も、やはりそういうことがあろうかと 思います。  比較ができるものがあるということが大事だと思います。絶対的な形で見ると、それがいいのかどうかと いうのは、自分ではなかなか判断しかねる。ですから、こういう場合はこうだ、こういう場合はこうだという 選択肢があるということが、どの制度にありましてもあってほしい部分だと思います。  今回の混乱の原因の最たるものは、大きく制度が変わるにもかかわらず、一体何が起こっているのか、 実はよくわからなかった。そして、今、国民の医療費の問題、更に高齢者にかかる医療の問題の中にどう いう課題があって、どういう方向でいこうとしているのか、そういうことが見えないまま制度がいきなり出て くるものですから、理解が追いつかないというのが正直なところだと思います。  それから、10年議論してきたとよく説明があり、そのとおりだと思いますが、それは専門的なお立場の 方が10年議論してきたわけでありまして、高齢者のみならず、一般の国民の方々がその議論について理 解してきていたかというと、そこは国民不在とは言いませんが、蚊帳の外にいたような感があって、突然見 たような印象を強く受けているのではないでしょうか。  そういう意味では、先生たちの御努力もいただきながら、今後あらゆる制度で、こういう場合はこうだとい うことが国民レベルでわかりやすくしていただくように、この機会を借りて、特段のお願いを申し上げたいと 思います。 ○塩川座長 川渕先生、どうぞ。 ○川渕委員 この検討会は、あと1回で終わるので、せっかくですから、もう一点聞きます。1回目の検討 会のときに、何故長寿医療制度はこんなに騒がれて、介護保険は何となくソフトランディングしたのかなと いう問題提起をいたしました。  先ほどから介護保険の話が出ていますが、担当部署が違いますのでここでは余り介護保険のことは議 論してはいけないという具合になっています。しかし、私は、要介護・要医療は、75歳を超えてくるとなか なか線引きは難しいのかなという持論を持っています。介護保険料も長寿医療制度の保険料も、最終的 には結局年金天引きというスキームは変わっていませんので、保険料負担は合計で1万円ぐらいかなと 思います。これに対して天引き元の年金が大体22万円だとすると、そのうちの5%が保険料。これに先ほ どおっしゃったように、介護サービス施設に入れば、ホテル代、食事代が1〜3割負担で、国の資料を見て も大体7.6〜14.2万円となっています。結構お金がかかるんですよ。そうすると、介護制度の持続可能性 も危ういと言わざるをえません。  さらに、療養病床の話を先ほどされましたが、介護療養は今なくならんとしているんですが、どうでしょう か。介護保険もこの先、問題山積ですが、それに比して何故、長寿医療制度はこんなにたたかれたのか をお聞きしたいと思います。 ○塩川座長 齋藤さん、どうぞ。 ○全国老人クラブ 私どもは、介護保険に当初から関わる立場におりましたが、本当に介護保険がうまく いくのかということは、いろんなお立場の方がそれぞれ不安に思ってスタートいたしました。それが今、ソフ トランディングしたという評価がされているわけであります。  これは、笑い話なのですが、昔、地方におりましたときに、高齢者の会話の中で、今度は息子や嫁とけ んかしてもいい。介護保険が始まれば安心だと。今までは息子の世話にならなければいかんと思ってい たので、やや遠慮がちだったけれども、今度自分が保険料を払って介護保険がスタートするから、介護は 安心だと思っておられた方々は少なくないんですね。そういう方々にとってみれば、介護というものは非常 に切実な問題として、自分の将来に重い負担があったものが、保険が始まるということで、将来に夢を描く ことができたというのが、介護保険が支持された1つの背景ではないかと理解いたしております。  一方、医療保険は、急に高齢者になったわけではございませんので、若いときから医療保険をかけなが ら、お互い制度というものを維持してきた立場でございます。それがみんなで医療制度をそれぞれの立場 で支え合おうという、言わば病気がある人は、そうではない人が支えようと言っているときに、今度は病気 がちになった世代だけが切り離されたという印象を強くした。この制度を十分に説明し切れなかった。いい 点もいっぱいあるというお話の中で、確かに運営する側のよさというのはあるんでしょうが、利用する側の よさというものは余り実感できなかった。これが正直なところではないかと思います。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。先生方、ほかに御質問の追加はございませんか。  権丈さん、いいですか。 ○権丈委員 はい。 ○塩川座長 それでは、これで予定の時間が大体過ぎてまいりましたので、次の議題に移りたいと思って おります。  御足労いただきました越智さん、齋藤さん、本当に御苦労様でございました。ありがたく御礼申し上げま す。  それでは、どうぞお引き取りください。 (大阪府老人クラブ・全国老人クラブ関係者退室) ○塩川座長 それでは、前回に引き続き、総括的な議論を行いたいと思います。  なお、高齢者医療制度に関する各団体から、高齢者医療制度の見直しに関する意見を提出いただいて おりますので、今後の議題の参考にしていただきたいと存じます。  それでは、時間もまいりましたので、議論を進めていきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  川渕先生、どうぞ。 ○川渕委員 本日は各委員から膨大な資料が提出されておりますが、先般、厚労省の高齢者医療制度 に関するQ&Aを見つけました。今日、事務局の方にお願いして付けていただきました。  今、お2人の老人クラブの方からお話がありましたが、Q&Aを見てもわかるように、やはりこの制度を変 えるのは非常に大変です。本法、政省令、通知、告示に対して疑義解釈が来ています。お手元にあるの は1月分だけです。  これを全部説明してくださいというと、事務局の方から説明するだけでも大変だということで、絶対質問を しないでくださいと言われました。読んでいただければわかりますように、例えばP.1にこれは1月分で、 今後逐次箇条修正を行う予定とあります。これから毎月こういった質問が出てきて、当局が回答していく のです。  何を言いたいかというと、制度改変リスク・コストは高いので、一旦制度をつくってしまいますと、なかな か変えづらいということです。ただ、今、御案内のとおり、医療保険と介護保険は、ある意味では払う側か ら見ると、どちらも年金天引きです。そこでセーフティネットとして、高額介護合算療養費制度がスタートし ましたが、関連質問だけで11問もあります。今、老人クラブの方から御案内のあったように問2には、擬 制世帯主という言葉が出てきます。P.9の別紙には世帯分離・世帯合併したケースが図解されていますが、 複雑怪奇と言わざるをえません。  ですから、先ほど話があったように、総論賛成でも、各論は反対というか、いろいろ疑義が出てくるので はないかなと思います。  私も全部説明し切れないんですけれども、恐らく先ほど御案内があったように、やはり原点に戻るとすれ ば、75歳で線を引いたことによる是非がここに出てきているのかなと思います。それから、繰り返しますけ れども、長寿医療制度はいわゆる個人単位をベースにしていますが、一方で、世帯単位で所得を把握しな くてはいけない部分も多々あります。先ほど74歳から75歳になったときの話がありましたが、一つ年をと るだけで負担が大きく変わるとどうしても損得論に走ります。  したがって、厚労省の方の御苦労は多々あると思うんですけれども、制度が始まってまだ1年ですが、こ れだけの質問がきています。さらに、この4月から、先ほど御案内があったように、年金天引き以外に、口 座振込みも出てきます。選択肢が広がったのでいいのかなと思うと今日の配布資料の中に例えば市町村 の方からは、「そんな選択肢を設けてもらったら、事務的に大変だ」という御批判がありました。今からそう いう細かなところをるる詰めていく必要はあるかと思います。  ただ、この検討会では、これからもっと大きな話がされると思いますが、制度不信はつまる所こうした細 かな制度改変に伴うものばかりです。  健診についても、先ほど75歳以上はなぜ努力義務なのかという質問もありましたが、その辺はP.17〜 18ページに御回答いただいております。まだ詰めていないところもいっぱいあるようですので、その辺も今 後、御尽力のほどをよろしくお願いします。  以上でございます。 ○塩川座長 権丈先生、どうぞ。 ○権丈委員 では、私も提出資料を説明させていただきます。  私は、ときどき否定するために試算を要求するとか、そういう案はおかしいねということを言うために試算 を要求したりとか、いろんなことをやりますし、私の発言もときどき誤解を受けることがあって、前回のとき には「言葉とは難しいですね」ということを2回ぐらい言ったので、今日は絵を描いてきました。  私の配付資料は「2009年3月11日第6回『高齢者医療制度に関する検討会』提出資料(これまでの発 言から寄って立つ位置)」でございます。  私は、一体何を考えながら質問したりとか発言したりしているのかということを明確にしておこうということ がありまして、ここに今までの意見の概要があります。初めのところに「今の制度は改革以前と比べて悪 いところばかりではなく、評価に値する点もある。制度は、直線的に進化するものでもないから、失敗した ところ、読み間違えたところは直し、良いところは伸ばす方向に議論を重ねていけばいい」と書いておりま す。これは一番初めに発言していることです。  そして、2ページにも書いておりますように、昨年からの1つの社会実験といいますか、制度改革の中で、 75歳で切るということは、やはり無理があるねということを我々は経験したのではないかと思っております。 だから、日医案というのは、ちょっと無理があるということがわかった。  もう一つは、財政調査について強く抵抗しておけば、国庫負担が増えて、自分たちの負担が軽くなると 思った組合健保側の動きというのも、やはり壁にぶつかったという経験をしたのではないかと思います。  そしてもう一つ、5ページにありますように、韓国の一元化ということもやはり議論に出てきたので、全国 知事会とか、国保の人たちがずっと掲げてきている一元化というのも無理があるねということとか、いろん なことがこの1年間でわかってきたのではないかというのが私の問題意識の根っこにあります。  次に、私の配付資料の2ページのところに入りたいと思います。まずこの国の医療費というのは、何とか して増やしていかないと、医療そのものがもうもたない状況になっている。医療費をどういうふうにすれば 増やしていくことができるだろうかということを考えていくときに、やはり低所得者層、負担が弱いところに 相当の負担がかかるような制度をつくっておくと、なかなか保険料率を上げることができない。やはり均一 拠出・均一給付という、要するにベヴァリッジ型の保険制度、年金にしろ、医療にしろ、そういう均一拠出 の保険制度が機能しなくなっていく原因は、やはり低所得層に規定されて負担が決まってしまうというとこ ろにあるわけでして、保険料を上に上げられなくなってくる。だから給付水準も低位に留まってしまう。そう いう、低所得者が負担水準の低さを規定し、低い負担水準が給付水準の低さを規定するという状況を何と か緩和できる方法はないかということが、ここに書いております目的です。  ですから、組合健保の保険料率は最高9.62%、最低3.12%である。65歳以上の高齢者にかかる医療 費の財政調整部分だけでも被用者保険に応能負担原則を導入することにより、組合健保の解散を回避し、 組合健保のメリットをより多くの国民に享受してもらう。  私は、組合健保というのは非常に価値があり、非常にいいことをやっていると思っております。ですから、 なるべくこの組合健保というものを利用できる人たちを増やすためにはどうすればいいかということをやは り考えていかなければいけないというのが、目的の中に1つ入っております。  それとともに、ドイツ被用者保険の医療保険料率は14.6%、フランス13.85%であり、日本の今後の医 療保険料率引き上げをスムーズに行うことができるように、負担力の弱い層に過重な負担が及ばない準 備をしておくということが、私の遠い目標としてもあります。そういう目的意識といいますか問題意識に立っ て、この会議の当初からずっと言っておりましたのが、年金受給開始年齢65歳以上の人たちを対象とし た高齢者医療制度に要する医療費というのは、国保と被用者保険の間では均等割で分けて、被用者保 険負担分は総報酬で割って、応能負担の保険料率を算定する。その試算を第2回会議でお願いして、第 3回目の資料として配付していただいた。試算によれば、被用者保険では保険料率3.3%を高齢者医療 制度向けの保険料として負担すれば、この制度は動いていくことになる。  そうなると、先ほども言いました最高9.62%という保険料率を随分下げることができて、川渕先生もこの 間テレビでおっしゃられていたように、組合健保の中に数多くの人たちを残すことができるようになる。そし て、組合健保というメリットを享受できる国民の数を増やすことができるということがあるので、そういう考え 方があっていいのではないか。65歳で切るというのは年金受給開始年齢とリンクさせ、65歳以上の高齢 者医療制度に入ることで何らかのメリットがほしいと先ほどもおっしゃられていましたけれども、私は65歳 以上は自己負担1割とすればいいではないかとずっと思っているわけです。  高所得者からは保険料をいただくけれども、病気になったときの自己負担率は1割でいいではないかと いうことをもう第1回目からずっと言っておりまして、下の方にあります国保というのは県単位で考えていく という京都府の知事もおっしゃられていた形で進んでいいのではないかと考えておりまして、できれば国 庫負担を投入するということであるのならば、この国保に直接国庫負担を投入して、可能な限り低所得者 の負担を軽減するような仕組みで国庫負担を投入していくという方が優先順位が高くなってくる。この前の ように高齢者制度の前期のところに国庫負担2.4兆円を入れるということは将来あるとしても、優先順位は かなり低い話ではなかろうかと思っております。  私が考えていることは、いろいろと負担力の弱い層に過重な負担が及ばないというところで、やはり自己 負担は弱い層にかかっていくので、65歳未満のところは自己負担2割という形でもいいのではないかと思 います。  そこの部分というのは国民がたとえば0.7%ぐらいの消費税を払えば、あるいはそのくらいの負担をす ればみんな実現できますという問いかけの中で、いろいろと財源調達と制度設計とか、給付体系というこ とも考えていきながら議論することができればいいと思いますし、先ほども被扶養者でない独立型にしたこ とが後期高齢者の良いところという話があったんですが、その部分に関しては一番下に書いております被 用者保険の65歳以上の被扶養者に関しては、割増保険料率というものを設けて、家族で被扶養者として 親を被扶養者にいたしますというときには、協会健保だったら1.0%の割増保険料率を追加する。そうでな い家族の場合には自分たちで保険料を払うという形で、そこの公平さということを堅持できるような制度も 考えられるのではないかということが、第2回目から第3回目ぐらいで話していたことになります。  ですから、私のイメージしていることの全体像というのは配付資料の通し番号2頁のポンチ絵でありまし て、それに続くスライドは、2頁のポンチ絵に書き込んでおります数値の根拠と言いますか、今まで出して お願いしてきた資料とか、私が自分でつくったポンチ絵とかがありますので、ごらんになっていただければ と思います。どうもありがとうございました。 ○塩川座長 では、あとはどなたかいらっしゃいますか。  樋口先生、どうぞ。 ○樋口委員 世論調査の読み方でございますけれども、恐らくこういう結果が出ましたのは、2年目を迎え て初動の事務のミスなどが変わったこと、納付に関しての選択が普及してきて、その辺は沈静化したこと だと思います。  この2種類の世論調査と今日、老人クラブの現場の高齢者の方々との意見には、やはりかなり乖離が ございまして、調査の回答で何が一番多数派かと言うと、細かな点を修正し現行制度の骨格を維持という ところです。質問にはで何が細かなところかが記されていない。  例えば75歳で線を引くことをどう思いますかと。線引きの問題というのは一番骨格だからと言ってしま えばそれまでなんですけれども、もしかしたら答えた人たちは、75歳という「細かな」ことは直して、後期高 齢者で医療にお金がかかるというから、一定程度の応分の負担をするという骨格はいいですと思っている のかもしれません。この辺りの細かな点とか、現行の制度の骨格というのが一体何かということが質問に 指示されていないから、このような結果になったのではないかと理解しております。  逆に言えば、後期高齢者医療制度による変化というのが、保険料の取り方ぐらいにしか現実には表れ てきていない。今のお話のように、かかりつけ医に関しても部分的には送迎が付いたりしてよくなっている ところもあるかもしれません。御承知のように、かかりつけ医を1件も登録していない県もいまだにあるわけ でございまして、後期高齢者医療制度はお金を取る方だけ指導しているけれども、実質の診療制度にお いては全く作動していない。この回答者たちが言っている現行制度というのは、もしかしたら後期高齢者 医療制度が発足したにもかかわらず、今、自分を取り巻いている医療環境が現状維持になっていることの あらわれかもしれないと理解いたしました。  そこで申し上げたかったことは、これから勿論みんな元へ戻せなどという答えをこの検討会ができるはず はございません。できるだけ現場の声を踏まえながら、よりよい手直しの方向性を示していくことだと思い ますけれども、権丈委員もおっしゃいましたように、私は75歳で線を引くことはやはり無理のあった制度だ と思います。  でも、世論調査でも手直しでいいと出ているから、75歳は残すんだという結論を仮に出すとした場合、こ こに国民に納得のいくような、なぜここを変えないかという説明責任を検討会としても果たすような書きぶり にしていただきたいと思っております。 ○塩川座長 宮武先生、どうぞ。 ○宮武委員 今日の朝、自民党の社会保障制度調査会医療委員会に、なぜか私と山崎さんが指名され て出てまいりました。そこで話したことはここでも言っていることでございますけれども、一応ほかに行った ら違うことを言っているわけではありませんので、若干補強をさせていただきます。  権丈さんほど上手なポンチ絵が描けないのですが、下手なポンチ絵を描いてございまして、国民皆保険 というのは、基本的には市町村の国民健康保険という地域保険があることによって成り立っている。被用 者つまり勤め人の制度は協会健保も健保組合も共済組合も、言わば大地のところに建っているビル群み たいなものでありまして、お勤めしている間は、このビルの中に入って、そこで安心して医療サービスを受 けることができる。しかし、定年を迎えるとビルから退散をして、自分の住んでいる住所つまり地面に戻っ て、市町村の国民健康保険に入るわけです。  これからの超高齢社会というのは、定年退職をしてビルから出て行かざるを得ない人がどんどん増えてく るわけです。矢印が大きいのはそういう意味で描いてございます。それだけではなく、今のような不況の 時期になりますと、リストラや倒産によって失業者がどんどん増えてきて、要するに、ビルから途中で追い 出されて、地面に戻らなければいけない人がまた増えてくる。一方通行の形で、市町村の国民健康保険 にどんどん加入者が増えてくるという時代がこれから必然的にやってくるということだと思います。  そうしますと、この大地上のところが安定しなければ被用者保険というビル群もぐらぐら揺れ動くわけです。 もし、大地がなければ、組合健保、協会健保は、みんな自前で自分たちのOB、OGをずっと生涯面倒をみ なければいけないということになるわけであります。ここを大事にしなければいけない。  ところが、今回の高齢者医療制度の発足というのは、この地面のところを年齢だけで区分して75歳以上 という地域保険と、74歳以下が加入することになった市町村国民健康保険に分断してしまった。この前も 申し上げましたけれども、同じ地域、同じ県内に2つの地域保険があることの是非というのを問わなければ いけない。  何が言いたいかというと、私どもがここで議論している一番の基本は、地域保険の近未来像というものを 描きながら、高齢者医療制度はどうあるべきかを考えるべきだと何度も申し上げているんですが、この論 点整理の基本的な考え方・進め方については、そのことが全く載っておりませんので、是非それをつけ加 えてほしいということがお願いです。  途中は全部省きますけれども、最後の方に県単位の国民健康保険というものをもし再編成したときにど んな案があるかについては、勿論それに反対の方もおいでになる。むしろ市町村単位でやるべきだという 方もおいでになりますけれども、県単位の国民健康保険にしたときに一番単純なのは、75歳以上の方と それ以下の方たちにとって保険者は同じだったのだから同じ制度の中で今の負担区分をそのままにして そっくり同じ保険の中にいる、同じ仲間で支え合っているという構図にしていく。これだけやりますと、前期 高齢者のところの負担については、健保組合を中心にして猛烈な反発が起こるでしょう。  逆に、権丈さんの要請に応じて厚生労働省側ではじいてくださったように、前期高齢者の財政負担の割 合を後期高齢者と同じようにしてしまう。保険料は2割でありますけれども、公費は5割ということになりま すと、公費の追加投入で1兆5,000億円もかかる。しかもそれほど国保が助かるわけではないということ でした。  そうすると、この2つの案が一番極端な案でありまして、その間にいろんな折衷案が出てくる。例えば公 費が1割でもいい、2割でもいいから投入しろという意見もあるかと思います。それと同時に、権丈さんのよ うに健保組合の保険料について応能負担を強めて、そのことによって不公平さを正し、財源を集められる ではないかという御意見もある。  実現は非常に難しいので例えば保険料の上限の賦課限度額というのは、今59万円ですか。それを引 き上げることによって、高額所得の方が応分の負担をしていく形に持っていく対応もあると思います。  また、健保組合が今、調整保険料ということで、給付に使う以外の保険料を0.122%徴収しておりますけ れども、そのうちの0.1%については、高額医療費の共同事業、言わば再保険のために0.1%の保険料を かけていて、あとの残りの0.02%のみが財政窮迫組合に対する支援金として保険料を取っている。  この0.02%は余りにも少ないわけで、自分たちの仲間が非常に困って解散に追い込まれるということを 防ぐのであれば、この0.02%をもっと引き上げて、仲間内を解散に追い込まないような助け合いとか連帯 をやっていくという方法もあるかと思います。ですから、この2つ案の間にいろんな意見があって、それはこ の会議ではとてもまとまり切れないので、さまざまな選択肢を示すのが、この会の趣旨に合っているので はないかと思っております。  以上であります。 ○塩川座長 ありがとうございました。それでは、岩本先生、お願いします。 ○岩本委員 私は今日、資料1で配られております論点整理のペーパーのまとめ方について違和感を持 っているところもありますので、その点を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、1ページ目の2つ目の○なんですけれども、冒頭に抜本的に見直すべきと考えられる事項につい ては、多額の財源を必要とする課題であるという形で結び付けられておりますけれども、抜本的に見直す べき事項というのは本当にそれだけなのかというのに疑問を感じます。  かなり時間をかけて検討をしてきたのは、権丈先生が出されました前期高齢者の方に公費負担を入れ るという案ですけれども、それは私もシリアスな選択肢にならないと思いますし、この場ではそういう形で の、ある意味意見の一致があるのではないかと思いますが、中で見るとそれがひとつシリアスな案として 議論に値するような形で書かれているということで、ここでの議論とこの論点整理のまとめ方というのは、 少しずれが生じているのではないかという気がしております。  制度をいじっていきますと、公費負担というのがそれによって変わってきますし、あるいは公費負担を能 動的に変えろという考え方もあり得ると思うんですが、そこをどう整理するかという基本的な考え方が大事 だと思います。  これは権丈先生が発言されたことに近いことだと思うんですけれども、最後に医療費にかかったものを払 わなければいけないので、そこはかかってしまえば最後は保険料を上げてでも払うというのが原則ではな いかと考えております。  公費負担の方で税金が幾らでも入ってくれば、保険料をもっと引き下げるとかで保険の経営自体は楽に なるんでしょうけれども、そんなうまい話が転がってはいないという前提の下で、公費負担の額というもの を前提にして、そこでどうやりくりしてみんなで保険料を払って、国民皆保険を維持しながら、これから高齢 化に伴って増えてくる医療費を払っていくのかというのが基本的な考え方ではないかと思います。  そういうことで腹をくくれば、公費負担はどうなるのかという課題が例えば2ページ目の65歳のところで も出てくるのですが、課題だけ提示されていて、これは大変ですねと終わっているのですけれども、もう少 しそこの先まで踏み込んで考えることができるのではないかと思っております。公費負担の割合というの は、そんな課題ということではないのではないかというのが私のとらえ方であります。勿論、御意見が委員 の中で割れるようでありましたら、また議論をしていただければと思います。  あと大事な点と言いますのは、3ページです。年齢で区分せずに、全年齢で財政調整を行うという考え 方についての課題ということで、課題というのはこういうのがあるからなかなかできませんねということで書 かれていると思うんです。  まず最初、所得形態・所得捕捉が異なる制度の間をどのように負担調整をするのかという問題です。こ れが常につきまとっているわけでして、所得捕捉ができるということであれば、これは所得に応じて応能負 担の1本でやっていくということでいけるのです。すっきり割り切れるのですけれども、それができないとい う前提で権丈先生も提案されていますし、私もここで発言しましたが、まず高齢者の費用負担は被用者と 国保の間で人数の頭割でいくということです。そこで考えていこうということにはなっているのですけれども、 それが実は全体の足かせにはなっているわけなので、モメンタムとしましては、所得捕捉の問題は税制 の課題ということではあるのでしょうけれども、そこのところを変えていくことは是非とも必要なわけでして、 そこは落としてしまって、これを前提にして、もうそういうことはできませんということで進むという形でとらえ てしまう印象を与えるようなペーパーになっていると思うんですが、そういうことではいけないのではないか と思います。  それに関連して、次のIVにも関わる話ですけれども、要するに所得捕捉が違っていれば一元化はなか なか難しいですねということが出ましたが、これは現在の国保にそのままかぶってくるのではないでしょう かということをここで言っておきたいと思います。  すなわち、現在の国保というのは、その中で所得形態・所得捕捉が異なる人たちが混じっている制度に なっています。昔のとらえ方は、被用者保険はサラリーマンでガラス張り、国民健康保険は自営業者でク ロヨンのよく捕捉されていないというここで線引きされていたわけなのですが、現在の国保の中には無業、 失職した人もいますし、また、そういう制度は財政調整がありますから少し違いますけれども、非正規の労 働者、低賃金の人もいるということになっていて、むしろ自営業者というのは、数は大きいので全くマイナリ ティーとは言いませんけれども、必ずしもドミナントな存在ではない。そういったものを今、一元化していると いうことになっていますから、ここにこう書けば、それはそのまま国保の改革に待ったなしだということに結 び付くのではないかと思います。場合によっては、国保を2つに割って、自営業とそれ以外に分けるという ところまで踏み込んでいくということは、ここから導かれるのではないかということを言っておきたいと思い ます。  高齢者医療制度は直接関係ないと言えばそうなのですけれども、結局は所得捕捉の問題を解決してい くことが大事なんだという点に絡めて、そのことを言っておきたいと思います。  更に課題の2つ目ですけれども、65歳未満は被用者保険に加入者が偏っているために、65歳未満につ いて財政調整を行うと、国保が被用者保険に納付金を支払うことになることをどう考えるのかと書かれてお ります。これはもうリスク構造調整をやることの理念を無視して、全く違った角度というか、しかも意味がな い角度からとらえていると言わざるを得ません。いちゃもんに近いような話だと思います。  こういうことがなぜ起こるのかというと、65歳ぐらいまでの現役世代と子どもの医療費を全体で支えましょ うということで、高齢者も含めて支えましょうということであれば、こういう形になるのでしょうけれども、昔の 老健、現在の後期高齢者医療制度というのは、高齢者の偏在を若い人で支えましょうということで考えた んですが、逆を考える人は全然いないでしょう。そういうことは別に問題はないわけですから、現役世代の 医療費は現役世代で払っていれば、基本的には問題はないわけなので、こういうところをこういう形でとら えるというのは、それはこういう形で見ればそういうことが起こっているという現象でとらえることができるん ですが、それをもってこの制度がおかしいとかということにならないと私は考えております。  更に言いますと、なぜこういうことをやらなければいけないか。現在では余り重要な課題になっていない かもしれませんけれども、結局は権丈先生がポンチ絵で示されたような制度なんですが、これをみんなで 納得して進めるためには、健保連、健康保険組合がそれに納得してちゃんとお金を拠出していただくとい うことがないとそもそも成り立たないわけでありまして、それがいろいろと問題になっているので老健も結 局廃止の憂き目に遭って、更に現在の制度設計に関してもお金を出す側の意見をいろいろと聞いていたこ とから、老人が切り離されていってしまった面もあるのではないかと思っております。  大事なのは理屈なんです。いかにして現役世代、特に健康保険組合が高齢者の方に気持ちよくと言っ たらちょっと違うかもしれませんけれども、納得してお金を出すかという理屈が一番大事であって、我々は その理屈をここで議論することはかなり大事だと思ってやっているんだろうと思います。  これは例えば医療保険部会とかに行きますと、利害関係者の方もたくさん入っていまして、まずは自分 たちの個別のところの利益で発言することになって、そこではなかなかまとまらないわけです。それはまと める方も大変でして、その辺りは事務局と言いますか、厚生労働省の役所の方がいろんな意見を聞いて まとめていくということなのです。  医療保険部会に改革のときにずっといたのですけれども、政治家の方は、大臣は忙しいのでいつもとい うわけにはいかないですが、大臣、副大臣、政務官とお見えにならないわけです。  その中で、政治家は大事だと思います。各団体、利害関係者がそれぞれ意見を述べるんですけれども、 そこで何をとって、あるところには我慢してもらうかというところの決断をしていかなければいけない問題が ありまして、それはやはり選択の問題であって、十分考えた上できちんとした理屈をとった上で、そこは政 治家にきっちり判断していただきたいと思います。  その重荷を役所の方が背負わされていると、役所の役人は選挙で選ばれたわけではないですから、ど れかの意見をとってどれかを退けるという形にはいかないことになると思いますので、これは大臣がリーダ ーシップをとって始められた検討会であるということであれば、ここで議論を尽くしたものに関していろいろ ありますので、これは受け入れるけれども、これは捨てるということは判断していただいてもいいんですが、 是非この先は、政治家がしっかりリーダーシップをとって、特定の利害関係の意見がある意味横暴な形で 通ることがないような形で進めていただきたいということを次回の会議は大学の所用で出席できませんの で、遺言として残させていただきたいと思います。  あと、長くなって申し訳ないのですが、少し文言のことです。3ページのIIIの最初の○にあります。先ほ どの最初に頭数で割るという話なのですが「すべきである」というところは、私の意見で述べたところをまと めてもらってリーズナブルであると書いているのですが、これはやむなしと言いますか、理想としては全体 を通して応能負担でいくのが理想形なのですけれども、現状そこまでいけないということであればやむなし ということで言ったつもりですので、リーズナブルよりもむしろ少し強いと言いますか、すべきになるともう相 当かけ離れたという印象を持ったということであります。  以上、こちらの論点ペーパーについての基本的なスタンスに関して意見を申し上げました。  以上でございます。 ○塩川座長 では、権丈先生、ちょっと待ってください。大臣が来ましたので、大臣から発言をいたします ので、どうぞ。 ○舛添厚生労働大臣 どうも済みません。今日は参議院の予算委員会と衆議院の厚生労働委員会のダ ブルヘッダーで対応していたもので遅くなりました。総括的な議論は2回目ということでありますし、今日は 全国老人クラブの皆さん方のヒアリングも行ったということでございます。また、党の医療委員会でも山崎 先生、宮武先生が今日ヒアリングを受けておられます。  是非、選択肢を示し、最終的には今おっしゃられたように、政治的な決断ということになると思いますけ れども、更に今後とも国民的な議論になる基をつくっていただければと思います。  以上です。 ○塩川座長 では、権丈先生、どうぞ。 ○権丈委員 岩本先生が次回いらっしゃらなくて非常に残念で、私はほとんどというか全く同じ考えでして、 せっかくこれだけ研究者と言いますか、利害関係者でない人たちが集められているわけですから、第三者 としていろんな人たちがこの制度の動きとかを見ていくための評価軸というもの、理屈というものを提示し ていけばいいではないか。  その理屈ということしか言わない我々だから力を持っていないんですけれども、力によって理屈がどれ だけゆがめられていくのかという軸を我々が出すことができれば、もうそれでいいではないか。それが我々 の仕事だろうというのが私の根っこの部分にあります。  そういう意味で、先ほどの岩本先生の話は、ここの図のところで65歳以上と書いておりますけれども、 同じような仕組みを全年齢に適用するというのが実は理屈の上ではベストだというのがあります。その中 で、同時に国保の中の被用者を限りなくこの被用者保険に入れるというようなことも含めて、岩本先生と私 は同じ考えです。  ただ、余りにも急激な変化というものがよろしくないというのであれば、激変緩和措置として65歳以上と いう形で岩本先生の言うリーズナブル、私の言うセカンドベスト、この前は組合健保にとっての逃げ口と表 現したのですけれども、この辺りに置いておけばいいのではないかというところであって、私としてはこの 会のまとめ方として理屈でいくというのだったら、岩本先生の全年齢というものを前面に出すべきだと思い ます。  そして、第2のリーズナブルなラインという形でこの辺りに納めておくというぐらいがいいのではないかと 思っておりますし、パート労働の厚生年金適用みたいなところも、我々研究者レベルでは、理屈で言えば 答えはみんな一致します。研究者レベルでの答えは全然意見が分かれない。だけれども、最終的な法案 になって政策になっていくときにはずれが出てくるわけなのですが、それは力が動かしたと我々は国民に 評価していただきたい。そのための軸というものを我々が提示することができれば、このかよわい研究者 グループと言いますか、何のバックも持っていないような人たちが集まってやっている仕事というのは、1 つの意義があるのではないかと思っております。 ○塩川座長 どうもありがとうございます。  次は川渕先生、お願いします。 ○川渕委員 私もかよわい学者ですけれども、各団体の意見を全部読んだわけではないんですが、例え ば権丈先生の65歳説は、私も納得する所があります。なぜ65歳で線を引くかという根拠は、年金受給開 始年齢が65歳だとか、介護保険も原則65歳から給付スタートだからという所で説明がつくと思います。な ぜ75歳で線を引くかという根拠は、日本医師会のグランドデザイン2009中にも書いてありますが、差の 検定で、私も昔、日医総研で苦労しました。  だとすると、65歳説を今1つあるべき論として書くのは賛成ですし、本日、何人かの委員が御欠席です けれども、恐らくそんなに本検討会の中でも意見は割れていなかったのかと思います。  問題は、65〜75歳未満のところをどうするかですが、これは先ほど宮武委員がおっしゃったように一つ 間違うと流血惨事になる可能性もあると思います。そこで岩本委員が言うように、公費の投入を考えてもよ いのではないでしょうか。勿論権丈委員は公費に値しない人もいるとおっしゃるのですけれども、そこはい ろんな団体の意見を聞いてはどうでしょうか。65歳説は結構皆さんおっしゃっているわけで、主張していな いのは、日医と市長会。私が1回目の検討会で保険者の一元化と言ったら、そんなのはもう理想だと言わ れました。韓国とか、ドイツを見ろということです。  しかし、まだわかりませんけれども、恐らく65歳説は、これから医療保険部会に行っても、応援者もいる のかと思いますし、根拠も75歳説よりはあるのではないかと思うんです。  ただ、私も本検討会の1回目に言いましたけれども、75歳をもってしてわが国ではお年寄りというような イメージになってくる時代もあるかと思います。故手塚治虫は次のように20年前に予言しています。「日本 人は、来世紀には平均年齢が90歳を超え、80歳までは働くようになり、また、働かざるを得ないでしょう。 若者の数が極端に減って、老人大国になるからです。医療は進みますからほとんどの病気はなくなります が、脳の老化現象はやはり避けられず、精神障害や老人ぼけの人たちは、綿密な予防処置にもかかわら ず増え続けるでしょう。(ガラスの地球を救え(手塚治虫著))から引用」。それぐらいにすさまじい未曾有の 少子高齢社会がくるのは間違いないです。ただ、学者がどれだけ言ってみても、国民にはなかなか届きま せん。やはり公費についても、岩本委員がおっしゃるように、余りタブー視することはないのではないかと 思います。  以上になります。 ○塩川座長 樋口先生、どうぞ。 ○樋口委員 今、いろいろお話に出てきましたように、ここで議論した大まかなことと両論併記のものは是 非両論を書いていただきたいと思っております。  何度かここでも出てきたように、10年議論をしたのだから、もうこれでというような切り上げ方はしないで いただきたい。老人クラブの方も今日おっしゃっていましたように、専門家は10年議論してきたかもしれな いけれども、国民的にはおよそ広がらなかった。介護保険との違いは、何よりも国民的な論議に広がった かどうかということが大きかったと思います。  ですけれども、今こうして議論の機会を得たわけですから、今いろいろ御意見も出てまいりました上で考 えたいと思います。私は少し前に75歳で線を引いている国はほかにもございません、申し上げましたけれ ども、もしかしたら日本だけ引いてもいいのかもしれないのです。  なぜかというと、日本は特殊な国になってしまっている、何しろもう22%近い高齢比率で、それが右肩 上がりになっていっている国は日本ぐらいでございまして、あとの国は子どもがもう少し生まれているもの ですから、ほとんど横ばいになってしまっている。  勿論、子育て支援というのは本当にお金を入れてやらなければいけないと思うんですけれども、子ども が大人になるまでは20〜25年かかりますから、その間やはり高齢者の医療費をどうするかということは 考えざるを得ません。日本は特別高齢者が多い国ですから、高齢者の医療費が増えるんですよということ だったら、その数値を出して、だからみんなで負担しましょうという提言は、この機会にしてもいいだろうと 思っております。  その辺りは大胆に、これは社会保障国民会議でもシミュレーションしていたと思いますけれども、75歳 以上がこれだけ増えていく国において、医療費はこれだけ要るのだからみんなで負担しようということは言 っていただいてよろしいのではないでしょうか。老人クラブの方も、高齢者自身が負担する気持ちというの は今、本当に成熟してきているというお話でございました。  21世紀はやはり医療の問題ばかりではなくて、人生の受け皿として地域というものの意味がこれから 過激なほど大きくなってくると思いますので、宮武先生がおっしゃいましたように、地域の医療の在り方と いうビジョンを明確に示すことも是非入れていただきたいと思っております。 ○塩川座長 今の樋口先生の意見に何か対案がありますか。まだ若干時間がありますから、御意見があ りましたら、どうぞ。  それでは、岩本先生、お願いします。 ○岩本委員 資料1の論点整理について、今度は細かいことに関しての要望です。  私としては、まずIの最後に書いてある○の名称の見直し、変更を最初に持ってきていただきたいとい う思いがあります。  要するに、高齢者のためになる制度をつくりたいという気持ちで参加していてやっているつもりなんです けれども、こうやってまとめてくると役所の文章的な形になる。これを高齢者が直接読んでも、伝わらない 部分が大きいと考えております。  この最後の○が最初ですと、その1つ前にあります導かれる理念が宙に浮きますので、それをこれとま とめて最後の○が冒頭でもいいんですけれども、やはり名前の変更はしっかりやらなければいけないし、 これで与野党がもめることもないように思いますし、法律で名前を変えればいいだけと言っては簡単過ぎ かもしれませんけれども、そんなに大変なことではないだろうと思います。  これに関連して、もし今後この議論が医療保険部会で進められるとしますと、医療保険部会に私は関わ っていたので、そこの経験から言えることなんですが、なぜ後期高齢者医療制度という名前について医療 保険部会で特に議論にもならなかったのかということの私のとらえ方は、この制度改革の実質的な議論と いうのは、厚生労働省案ができる直前までされて、厚生労働省案ができて、法律ができてという以降のこ とは、実質的には医療保険部会では議論されておりませんでした。  厚生労働省案ができる前までは、新しい高齢者医療制度をつくるということで話していたんですけれども、 何もないものですからどういうものをつくるのかというところが議論の中心になって、名前までは全然みん なの頭がいっていないというか、とりあえず仮の名前として後期高齢者のための制度ということで、後期高 齢者医療制度という名前で呼んでいたぐらいのつもりでした。これは同時に、政管健保の改革もあったの ですが、政管健保は全く新しい今の全国健康保険協会に変わったのですけれども、そちらも名前が全然 ついていないまま議論をしていたわけです。  ですから、その感じで全然名前の議論はなかったわけでして、もし名前を付けるならば最後だろうという ことでいったわけです。では、名前はどこで決まったのかというと、その後の医療保険部会の場を離れたと ころで、厚生労働省さんの中で決まったのかという気がします。  あと制度が始まる前でも、事前の周知も足りずに、幾つかのシステムの整備の過程も遅れ遅れになって ということで、最初に保険証が届かなかったりとかといった、いろんな手続上の不手際なことが起こったん ですけれども、それに関しても医療保険部会では、部会もそんなに開かれなかったので、別にウォッチも 何もしていない、全部厚生労働省の実務の方に任せっきりという形で進んでいたということです。  要するに、医療保険部会で何か議論をしても、その後が非常に大事だということがあるかと思いますの で、これは国民に関わることですから、できれば最後までしっかり周りで見ていくことが大事ではないかと いうことをつけ加えたいと思います。  以上でございます。 ○塩川座長 ありがとうございました。ほかに御意見はございませんか。  樋口委員、どうぞ。 ○樋口委員 最後のVIの医療サービスについてですけれども、何だかこれではすごいそっけない感じが するんです。後期高齢者医療制度の言葉は気に入りませんけれども、要するに加齢とともにいや応なく必 要になっていく医療を地域でどういうふうに提供していくかということについて、結構この中で議論が出てき たと思いますので、やはり地域でこのようにきめ細やかな医療が提供されていきますというビジョンが見え るようなことをもう少しここで書いていただけないでしょうか。  そもそものこの制度というのは、1つは財源調達の話だったと思うし、もう一つは高齢者にふさわしい医 療を提供するという、良心的に言うのならばそういう後者の目標があったはずです。特に加齢とともに健康 が衰えていく人の自立をどう支えていくか、自分らしい生活をしながら医療が受けられるかということを、先 ほど老人クラブの方のお話しで、介護保険には夢と希望があったと聞いて思わず同感して笑ってしまった んですけれども、もう本当にそうだったと思うんです。  この医療制度に関しましても、夢と希望までとは言わないけれども、幾らか希望の持てるような、特に6 のところで高齢者にふさわしいこういう医療を日本社会は提供しますよということがどこかで言えるところが あってほしいと思っております。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。では、これで大体よろしゅうございますか。  どうぞ。 ○権丈委員 岩本先生がいらっしゃるときに最後に言っておきたいんですけれども、とにかくここでの報告 書は理詰めでまとめることができるような方向でお願いしたいと思います。理詰めで我々としてはこういう ことを考えている、専門家がみんなで考えればこういうふうになるというようなところ。パート労働の厚生年 金適用と同じように、報告書と違うような政治状況が出来ると我々は怒る、反発する。今までは味方をして いたけれども、それはないだろうという形で怒らせていただきますので、そこら辺のところは御了解いただ ければと思います。 ○塩川座長 宮武委員、どうぞ。 ○宮武委員 私が今日、自民党の方で説明をいたしました資料の5ページの下から3行目のところで「2 次医療圏」と書いてあるのは「3次医療圏」の間違いですので、大変恥ずかしい間違いをしておりました。 訂正してください。  以上です。 ○塩川座長 それでは、大方時間がまいりましたので、この辺で終わりたいと思っております。  そこで、本検討会のまとめについてでありますけれども、本日までにヒアリングを交えまして、6回にわ たって公正なお立場から熱心に御議論をしていただきました。さまざまな検討項目にわたって、議論もあ る程度尽くされたものと考えておりますので、次回にはこれまでの議論を整理し、とりまとめを行いたいと 考えております。  高齢者医療制度の見直しに当たりましては、本日、御意見をお伺いした全国老人クラブ連合会以外にも いろいろな団体の御意見が寄せられておりますので、調整いたしたいと思っています。  したがいまして、本検討会といたしましては、各論にわたって各委員それぞれの御意見に沿って、制度 の見直しの選択肢をしっかりと示し、今後の国民的な議論に供することが適当ではないかと考えておりま す。  次回は、こうした観点からとりまとめを行いたいと思いますので、引き続き御協力のほどをお願い申し上 げます。次回は、3月17日午後6時からの予定となっております。  本日は、お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。お礼を申し上げます。  では、これで閉会としたいと存じます。 照会先 保険局高齢者医療課 企画法令係     (代)03−5253−1111(内線)3199