08/12/18 第5回介護予防継続的評価分析等検討会議事録 第5回介護予防継続的評価分析等検討会議事録 1.日時・場所 平成20年12月18日(木)14:00〜15:59 九段会館 鳳凰 2.出席委員 石田、岩越、植田、大川、大久保、大渕、坂元、鈴木、          高橋、辻、の各委員(杉山、丹後、津下委員は欠席) 3.議題  (1)介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について  (2)継続的評価分析支援事業データにおける属性等による介護予防効果の    違いに係る分析について ○天本課長補佐 それでは、定刻となりましたので、第5回「介護予防継続的評価分析等検討会」 を開催いたします。  本日の委員の御出席状況でございますが、杉山委員、丹後委員、津下委員から御欠席の御連絡 をいただいております。  それでは、辻座長、議事進行をお願いいたします。 ○辻座長 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○天本課長補佐 かしこまりました。それでは、資料の確認をさせていただきます。  まず、表紙に議事次第がございます。  おめくりいただきまして「資料一覧」がございます。  資料1「継続的評価分析支援事業に係るこれまでの経緯等について」。  資料2「今回の分析と次回(取りまとめ)の分析との関係について」。  資料3「介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について」。  資料4「継続的評価分析支援事業データにおける属性等による介護予防効果の違いに係る分析 について」。  以上になっております。  資料等に不足や落丁等がございましたら、事務局までお願いいたします。 ○辻座長 本日は約半年ぶりの検討会開催となっておりますので、事務局からこれまでの経緯に つきまして、簡単に御確認いただけますでしょうか。お願いいたします。 ○鈴木老人保健課長 老人保健課長でございます。本日は年末にもかかわらず、お忙しいところ を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。  今、座長の方からもございましたけれども、前回が5月28日で、半年以上ということでござ いますので、もう一度、復習を兼ねまして、今までの経緯について私の方から説明をさせていた だきます。座って失礼をいたします。  資料1でございます。介護予防給付と地域支援事業の評価につきましては、介護保険法等の一 部を改正する法律の附則第2条第2項で、施行後3年を目途として、費用対効果等の観点からき ちっと検討をして、所要の措置を講ずるということの宿題を国会からいただいております。  2ページ目をお繰りいただきまして、そのため、私どもでは介護予防の有効性の評価というこ とで、市町村の御協力をいただきまして、データの集積・解析等を行っております。  3ページでございますが、来年の1月ごろに調査を終了して、年度末までにはとりまとめよう ということですが、当初は76市町村に御参画をいただいておりましたけれども、もう少し増え ないのかということもございましたし、さまざまな御意見がありましたので、もう一度お願いを しましたところ、最終的には83市町村に御参画をいただいたということでございます。  4ページ目でございますけれども、これは3月、5月に具体的に予防給付、それから、地域支 援事業で、どの程度、効果があったのかということについて、定性的に加えて定量的な評価をし ていただきました。ただ、これは人数がさまざま、ばらばらですので、1,000人を12か月追い かけた場合ということで、導入前、導入後の比較をさせていただいております。そういうことで、 例えば新予防給付の方ですと、悪化する人数が40%減りますということでございます。  それから、下の方の特定高齢者施策でございますけれども、旧基準と新基準。これは、当初の 特定高齢者の基準では少し厳しいということがございましたので、19年に少し基準を緩和しま したけれども、緩和基準と、その前の基準でどうかということで、旧基準の方で18.8%、新基 準の方では11.4%、悪化する人が減ったということがございます。また、これとは別に統計学的 な有意差の問題がございましたので、それについては引き続き検討するということになっている はずでございます。  今日は、宿題になっておりました費用対効果分析、それから、いわゆる属性と介入の分析、そ れぞれ一部について御議論をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○辻座長 それでは、議題に入ります前に、本日の検討内容につきまして確認をしたいと思いま す。資料2をごらんください。  この資料2でありますが、今回、本日12月18日の検討会と、とりまとめとなる、恐らく来 年の3月を目途としておりますけれども、次回の検討会と、それぞれ左側と右側に書いています が、「属性等による介護予防効果の違いに係る分析」と「費用対効果分析」につきまして、それ ぞれ、各検討会で議論するところを赤でくくっておるわけであります。  そこで後ほど、各議事の中で説明があると思いますけれども、「費用対効果分析」につきまし ては、今回は予防給付について結果を出したいと思っています。特定高齢者施策については、今 回は考え方の整理にとどめる。そして、次回、3月の検討会におきまして、特定高齢者施策の結 果も含めまして、この「費用対効果分析」の最終的な検討結果を御報告したいと考えています。  また「属性等による介護予防効果の違いに係る分析」につきましては、今回は、赤で囲ってお ります「総論 属性等による介護予防効果の違い」、それから、運動器の機能向上について「サ ービス内容による効果の違い」といったところについて、本日、御検討いただきまして、次回で はそれ以外の各論のすべてにつきまして「サービス内容による効果の違い」「属性による効果の 違い」といったところの分析を進めていきたいと考えています。  それでは、議題の「(1)介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について」に入らせていた だきます。5月28日に開催された検討会におきましては、介護予防施策の導入前後での定量的 な介護予防効果が示されたわけであります。その後、前回検討会での議論を踏まえまして、何人 かの本検討会のメンバー等で費用対効果につきまして検討及び分析を行いました。その結果を資 料3にとりまとめましたので、これにつきまして大久保委員から御説明いただきたいと思います。  それでは、よろしくお願いいたします。 ○大久保委員 費用対効果につきまして、私、大久保の方から御説明をさせていただきます。お 手元の資料3の1ページ目をごらんになっていただければと思いますが、今回は今まで分析して きた経過の報告、そして、現状でわかっている範囲内から推測できる結果、そして、今後の方針 の確認という形を考えております。  まず1ページ目であります。これは「費用対効果分析の基本的な考え方について」ということ で、これはおさらいになりますけれども、今回は増分費用効果分析という形式を取っております。  増分効果、増分費用と申しますものは差を取るということでありますが、導入後の効果もしく は費用から導入前の費用もしくは効果を引くといった形にしております。後から前を引く形であ ります。  ここには4つの区分けがありますけれども、右上が、効果がプラスで、費用がマイナスという ところであります。これは効果があって、費用が安くなるということですので、これは費用効果 比を求めるまでもなく、つまり後が前と比べて優れた施策であるということがわかるわけであり ます。  それとちょうど対称側の位置の左下でありますが、これは増分効果がマイナス、そして、費用 がプラスということですので、効果はなく、かつ、費用が上がるということですので、後は全く 有効な施策ではないことが費用効果比を求めるまでもなく判断できるわけであります。  一方、この2つは比較的簡単でありますが、右下、そして、左上ですが、例えば左上でありま して、効果があるけれども、費用も上がる。こういうケースが非常に医学的介入では多いわけで すけれども、こういった場合は費用効果比を出して、例えば1効果単位当たり幾らお金がかかっ ているかで判断をするということであります。これは残念ながら、今のところ、幾らなら妥当な のか、幾らなら妥当ではないのかといったような絶対基準はありませんけれども、費用効果比を 出すことが求められています。  その対称側の位置にあります右下は、費用がマイナスになりますけれども、効果もマイナスと いうことになります。これも費用効果比を出すという考え方もありますが、一般的に比べるべき 介入というものは、前と比べて効果があるということを期待して進めておりますので、こういう ところに入った場合は、基本的には本来の目的であった効果を増やすことが達成できなかったと いうことで、評価はできないものだとも言えるかと思います。  いずれにせよ、今回の介護予防施策、新介護予防と高齢者施策が、この4つの分類のどこに当 てはまるかをまず検証する必要があるわけであります。  それで、もし左上、右下、特に左上になった場合は、一番下に書いてありますが、増分費用効 果比ということで、増分効果を分母にして、増分費用を分子にした形で計算をします。今回は、 効果の指標として、悪化を防ぐ、悪化率の低下を効果の指標としておりますので、この場合は介 護度の悪化を一人防ぐのに幾らのお金を要するかといった計算になるわけであります。これが最 終的な計算の方法となります。  次に、2ページ目をめくっていただければと思います。これは、今、課長の方からも御説明が ありましたけれども、今までのおさらいになるわけですけれども、新予防給付の場合は、前は 389人悪化したところが234人、155人減少したということであります。これは統計的にも有意 な差があったということであります。  一方、特定高齢者施策、新基準と旧基準がありますけれども、旧基準では悪化者が19人減少、 新基準では7人減少ということであります。これは効果があることになりますが、統計学的には 有意な差ではなかったということであります。新予防給付と比べ、特定高齢者施策は効果の割合 が低いということが今まで示されたところであります。  次をめくっていただければと思います。これが今回、今まで効果部分につきましては、大体、 作業が終わっていますので、この半年間は費用についていろいろ検討してきたわけであります。 「費用対効果分析に用いる費用の考え方について」として示したものであります。増分費用とい うものは、繰り返しですが、後の費用から前の費用を引くということであります。  イメージ的に、ここに非常にきれいに示されておりますけれども、要支援1の例を取りますと、 導入前が左側、導入後が右側でありますが、ここにAさんからFさんがいるとします。  Aさんは1年間、特に変化はなかった。Bさんは悪化した人。Cさんは改善した人ということ であります。このAさんからCさんの費用は、トータルで見ますと、この場合、3人ですけれど も、要支援の期間が3人で、12か月足す3か月足す6か月ということで、合計21か月。そして、 悪化した場合、要介護2の状態が9か月、そして、特定高齢者もしくは候補者として改善した6 か月という形です。それぞれの要支援の状態、要介護2の状態、特定高齢者の費用、1人一月当 たりにかかる単価をこれにかければトータルの費用が出るということであります。  右側のDさんからFさんに関しましては、全く同じような考え方になっているわけであります が、右と左でよくごらんになっていただけるとお気づきかと思いますが、左より右の方が悪化期 間が短くなり、改善している期間が増えている形になりますので、これを計算しますと、費用と しては浮いてくる形になることが予想されるわけであります。  こういったような形で、それぞれの介護度の単価に期間をかけて計算したわけであります。  それでは、比較的、話の簡単なといいますか、理解しやすい新予防給付の方について御説明を したいと思います。  4ページ目です。これは先ほど申し上げました効果の結果で、1万2,000人月フォローすると、 155人減少するということであります。  次の5ページ目です。費用の計算でありますが、新予防給付の場合、前のデータは、効果につ きましては、平成16年1月1日から1年間の12月31日までの83市町村のレセプトデータを 使っております。導入後につきましては、19年1月1日から19年12月31日までの1年間の実 際の支援事業で出てきたデータを使っております。  ですから、この期間、費用の方の計算につきましても同じ期間に合わせる必要がありますので、 同じ期間における、前の場合は83市町村のレセプトデータ、そして、後の場合も19年1月1 日から19年12月31日まで、1年間のデータを使っております。費用データに関しましては、 レセプトのデータを使っております。  6ページ目をごらんになっていただきたいと思います。実際のデータがこれから求められます ので、これから費用の計算をしてみようということであります。  少し細かく書いてあるかと思いますが、最初の一番上の「(1)要介護度別の費用単価」をご らんになっていただければと思います。導入後のところには、一般で2万8,700円、特定で2万 8,700円と書いておりますが、実は後ほど御説明しますが、この辺の費用の計算が非常に難しく なっておりますので、まずはここをとりあえずゼロという形でごらんになっていただければと思 います。あと、どうして2万8,700円を入れたかを御説明します。まだ、ここは不明だというこ とにしていただければと思います。  それで、導入前の要支援の方は月3万900円かかっている。要介護1が8万1,800円、要介護 2が14万1,600円、以下、21万4,000円、27万9,900円、33万4,000円という形になってい ます。これはレセプトから取ったデータで、先ほど申し上げた期間における1人一月当たりのレ セプトデータであります。  一方、導入後に関しましては、要支援1が2万8,700円、要支援2が4万8,800円、要介護1 が9万5,300円、以下、13万3,100円、19万700円、23万9,900円、27万9,900円というふ うになってきています。これはレセプトから出てきたデータです。  それで、このデータをそのまま、(2)に書いてありますが、それぞれの1万2,000人月観察 した場合の要支援者の分布というところに、1万2,000人月フォローした場合のそれぞれの介護 度による人月が書いてありますので、ここに単価を当てはめれば計算ができる形であるわけです。  ただ、ここで注意を申し上げたいのは、一般と特定の費用というものは非常に計算がしづらく なっておりますので、ここでは現在では未定の状態ですが、こういう状況の中でも、ある一定の 仮定を置いて分析ができるかと思います。それはどういうことかといいますと、新予防給付の場 合は効果があったわけであります。それで、そのまま計算すると費用も浮くことが予想されるわ けですけれども、ここの前提は、導入後、最も費用がかかった、そして、導入前、最も費用がか からなかったという両極端のケースを想定して計算すると、費用は果たしてどちらなのか。もし、 それでも、今、申し上げた非常に両極端な状況設定の中で、なお費用がマイナスになれば、恐ら く、これは実際の数値を入れてもマイナスになるだろうということで、導入後としては一番不利 なデータをここで当てはめて計算してみようということを行ったわけです。  そうしますと、先ほど申し上げた(1)の単価のところでは、一般と特定の費用はなかなか計 算しづらいわけですけれども、要支援1と同じにかかったとする。これは現実的ではないと思い ますけれども、これほどまでお金がかかったというふうに仮定して、後としては非常に最も不利 な状況を設定しました。  「(2)12,000人月(1,000人を12ヶ月)観察した場合の要支援者(要支援1の者)の分布」 でありますが、これは元データ、つまり、レセプトデータから取ったデータですと、1万2,000 人月当たりに対して要支援1が1万と1。要支援2はありませんので、要介護1が1,743。以下、 164、60、21、12となっております。  ここで、どうして一般と特定がゼロかと申し上げますと、実はレセプトデータを用いているこ とから、よくなった人は把握できないことになってしまいます。これは研究の限界かと思います が、そのためゼロになっているというふうに御理解していただければと思います。  一方、導入後、3つの欄がありますが、それの一番最後のところですが、1万2,000人月をフ ォローすると、一般が148、特定が14、要支援1が1万883、要支援2は571、以下、284、62、 21、12、4というふうになっています。ですから、この元データ、一番上と一番下で計算をし てもよろしいのですけれども、むしろ、今、申し上げたように、元データというものはレセプト データを使っていますので、改善群は把握できない状況になっています。そのため、導入後と同 じ割合で改善群が導入前も発生していたものというふうに設定しました。これはある意味、元デ ータの改善群ゼロと比べると、前に非常に有利なデータ設定になっているわけであります。  この148、14という割合を設定して、残りを案分した結果が真ん中の表ですけれども、一般 が148、特定が14、要支援が9,866、要介護1が1,719、以下、162も59となっていくわけで す。ですから、単価に関しては後が最も有利でない状況に設定し、介護度の変化につきましては 前の方に有利な設定をしたということです。  この計算で求めますと「(3)施策導入に伴う増分費用」というものが、導入前が4億9,000 万円。そして、導入後が3億8,800万円。差額が約1億200万円という結果になります。これは 導入後にとってかなり不利な状態を設定しているにもかかわらず、1億円の費用が浮いたことが わかるわけです。実態で言いますと、これ以上の差が出るのだと思います。  その下の「2.施策導入前後で費用単価が変わらなかったと仮定した場合の増分費用について」 です。  これは、1.の表の、何回も申し上げていますが、一番上の単価をごらんになっていただける と、導入前の単価と導入後の単価を見ますと、要介護1。これは導入前が8万1,800円に対して、 導入後が9万5,300円。ここだけが高くなっていて、それ以外の単価は全部安くなっております。 例えば要支援で見ますと、3万900円から2万8,700円。要介護2で見ますと、14万1,600円 から13万3,100円。以下、後の方がすべて安くなっています。したがって、今、申し上げた1 億円の差額というものは、単価が単に下がっただけによるものではないかということが考えられ るわけであります。したがって、この単価による影響を除外するために、前後で費用を同じに設 定して計算したものであります。  したがって、この2.の下から2つ目の表でありますけれども、導入前の単価は導入前の単価 そのものを入れ、導入後の単価は導入前の単価に固定して、同じ費用にして計算をしてみました。 これによって単価による影響を取り除くということをしたわけです。  そうしますと、前の場合は4億9,000万円に対して、後は4億2,900万円ということで、差額 が6,100万円の差が出たということであります。したがって、単価の影響を除いても費用が6,000 万円安くなったことになりまして、逆に言いますと、新予防給付事業における介護度の悪化を防 いだことが、この費用の差に出てきたということであります。  今、すぐに見て理解していただくのはなかなか難しいかもしれませんが、7ページでごらんに なっていただけると、簡単にまとめます。  「(1)増分効果について」ということで、これは既に半年前の結果ですけれども、増分効果 はプラスであるということです。  (2)で増分費用につきましてまとめますと、施策導入後の費用を過大に評価し、導入前の費 用を過小に評価したということで、後にとって不利な状況を設定したということです。それでも 費用はマイナスになって、少なく見積もっても1億200万円の費用が減少になるだろうというこ とです。  ですので、効果はプラス、費用はマイナスですので、一番最初の表の右上の状況、◎の状況の 位置に、この新予防給付の施策は位置づけられているということがわかるわけです。  繰り返しですけれども、単価を導入前後で同じにしたとしても費用はマイナスだったというこ とで、かなりの確実性を持って費用は浮くのではないかということが予想されるわけであります。  次に、今までは新予防給付でしたが、特定高齢者施策について御説明します。  8ページであります。まず効果のおさらいですけれども、旧基準、新基準、2つありますが、 旧基準では19人の減少、新基準では7人の減少ということであります。  9ページです。同じように費用の計算の考え方を申し上げます。施策導入前はパイロット事業 のデータを使っていますので、平成17年8月1日から18年7月31日ということであります。 導入後は継続的評価分析支援事業データを使っておりまして、旧基準では19年1月1日から4 月30日まで、新基準は5月1日から12月31日までですから、これはずれているわけでありま す。  これに合わせるために費用の計算をするわけですが、新予防給付事業の場合は同じ83市町村 のデータを用いたわけですけれども、そういう考えで申し上げますと、前の方ですが、パイロッ ト事業に参加したのは6市町村ですので、本来ですと6市町村の費用データがここで計算される とベストであるわけですけれども、下の方に書いてありますが、6市町村のデータというものは 非常にばらつきがあって、非常に不安定なデータでありますので、ここではより安定的な、規模 の大きなデータをということで、効果のときの市町村と、費用で用いる市町村が食い違ってしま いますけれども、より安定的なデータを得るために、83市町村の費用データを使うこととしま した。これは研究上の問題はあるかもしれませんが、今、申し上げたような理由でやむを得ない のではないかと考えているところであります。  一方、導入後につきましては、そのまま、この事業に参加している83市町村のデータ、地域 支援事業交付金事業実績報告などを使って計算するということであります。  一応、計算の形は整理ができたわけですが、次の10ページをごらんになっていただければと 思います。実は、さあ、これで計算を始めようとして始めたわけですが、色々な問題にぶち当た って、多少、ここは言い訳がましいことを申し上げることになるかもしれませんが、お許しいた だければと思います。  この10ページですけれども、これは特定高齢者施策の増分費用を検討するに当たりまして、 基礎的な事項について確認させていただくものであります。市町村が要介護、または要支援状態 になることを予防するために導入された介護予防事業の説明をおさらいしたいと思います。  現在行われている介護予防事業は、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチに分 かれていて、更にハイリスクアプローチの対象者を選定するためにスクリーニングが行われてい るわけであります。ポピュレーションアプローチに相当するのは、介護予防一般高齢者施策。そ して、ハイリスクアプローチに相当するのが、介護予防特定高齢者施策。スクリーニングに相当 するのは、生活機能評価も含めた特定高齢者把握事業というふうになります。それらの事業につ きましては、行政が事業別に人数や金額を把握していることから、各アプローチごとの人数及び 金額の把握が可能な状態になっております。ですから、この部分は比較的計算しようと思うと可 能であるわけですが、次の11ページをごらんになっていただければと思います。  一方、平成17年度まで介護予防事業に相当する事業として、介護予防・地域支え合い事業に おける介護予防等事業が実施されてきたところであります。この事業は、色々な理由があるので すけれども、多種多様な事業の中から市町村が好きな事業を自由に選択するというメニュー事業 であること。また、詳細な事業要綱まで示していないこと。同じ事業であっても、市町村が違え ば事業の形態は一様でなくさまざまになるということ。そして、同一事業の中に性格の異なる事 業が複数含まれていたり、参加人数や費用が当該複数の事業の下、合算して把握されていること から、現在残っている情報から、どの事業がポピュレーションアプローチで、どの事業がハイリ スクアプローチで、そして、スクリーニングに該当するかというのは非常に困難な状況になって います。  前のページでは、それが比較的わかりやすいというお話をしましたが、こちらの事業について は、それを区別することが非常に困難な状態になっているわけです。したがって、各アプローチ ごと、つまり、ポピュレーションアプローチ、ハイリスクアプローチ、スクリーニングといった ような人数及び費用の同定ができない、困難な状態になっています。  次の12ページですけれども、今まで申し上げたことを簡単に図式化したものです。増分費用 を算出するには、本来は制度導入前後でハイリスクアプローチのサービスを受けた人1人当たり にかかる費用単価を計算し、その単価を用いて導入前後の費用を比較するのがふさわしい、適切 な方法であります。  導入後においてハイリスクアプローチのサービスを受ける者は、スクリーニングをして、更に ポピュレーションアプローチのサービスについても受けているわけであります。したがって、導 入後におけるサービスを受ける1人当たりの単価は、ここのα2円、β2円、γ2円を積み上げた ものになるわけです。α2円というものは単価ではありませんけれども、一番上の長細いものは、 トータルでα2円であれば、ここで受けた人数を割って単価を求め、βのところの費用を使った 人の単価で割り、γで使った人の単価を割り、それぞれの単価をα、β、γの順に積み上げるこ とが必要になってくるわけです。導入後については、何がポピュレーションアプローチで、何が ハイリスクアプローチかということが比較的わかりやすい形になっているので、計算ができるわ けです。  一方、導入前につきましては、前のページで申し上げましたように、各アプローチごとの人数 と費用を把握することが非常に困難な状態から、残念ながら計算ができない状況になっています。  そこで、この右側はこれで計算し、それでは、左側はどうするのかということになりますので、 お互い比較できるような形で導入するためには、高齢者1人当たりの費用を算出して比較するこ とが考えられるわけであります。この方法ですが、介護予防に係る事業の総費用と高齢者総数が わかっていれば、制度前後で、前も後も計算できる形になります。  ただし、ハイリスクアプローチのサービスを受けた者の人数ではなく、高齢者全体で費用を割 って費用単価を算出することになることから、非常に実際より低い単価になることが予想されま す。これは増分費用を求めるわけですので、正確な値が出ることは勿論、それに越したことはあ りませんが、実は重要なのは、その差がしっかり把握できることが増分費用の場合には大切です ので、お互いイーブンに低くなっていれば、その差が妥当な範囲で把握できれば、結果には増分 費用効果比には変な影響を与えないのではないかということが予想されるわけであります。必ず しも真実の値がなくても、その差が真実の値に近ければ、増分費用効果比は分析可能だと考えて いるところであります。  長々と御説明しましたけれども、なかなか理解しづらいところかもしれませんが、次の13ペ ージ目で今まで申し上げたことをまとめます。  新予防給付は比較的わかりやすい事例ですけれども、特定高齢者施策の費用がわかっていない 現状におきまして、後に不利な状況、前に有利な状況を設定したにもかかわらず、増分費用がマ イナスと表されました。勿論、効果もプラスでしたので、これは優れたものということがかなり の確度を持って言えるかと思います。  そして、特定高齢者施策の費用対効果分析につきましては、サービスを受けた者1人当たりに かかる費用単価が算出できないことから、高齢者1人当たりにかかる単価を用いて計算してはど うかということを今日は御提言といいますか、御意見を賜りたいと思っているところであります。  次のページです。少し説明が長くなりましたけれども、これは簡単に済ませたいと思いますが、 新予防給付の費用対効果のうち、要支援2について非常に簡単に御説明します。  要支援2。この場合は参考として申し上げているのはなぜかといいますと、導入前の要介護1 と、導入後の要支援2は必ずしも同一のものではないので、完全なコントロールになっているわ けではないという意味で注意が必要でありますけれども、これをある意味、それらをのみ込んで、 今までと同じような計算をしていくと、結果だけを申し上げますが、15ページをごらんになっ ていただければと思います。  前に有利な状況、後に不利な状況を設定しても、ちょうど真ん中の赤いところの数字ですが、 4億3,500万円の費用が浮くということです。  そして、一番下の赤いところは、後の単価を前に合わせたとしても8,000万円の費用が浮くと いう形になっています。これは、先ほどの新予防給付のときの要支援1の試算と全く同じ方法を 取ったものであります。  以上、少し散漫な説明でしたけれども、私からはここで説明を終わらせていただきます。あり がとうございました。 ○辻座長 大久保先生、どうもありがとうございました。  それでは、ただいまの説明につきまして、委員の先生方から御意見・御質問をいただきたいと 思います。どうぞ、よろしくお願いします。  どなたかございませんでしょうか。  それでは、高橋先生、お願いします。 ○高橋委員 済みません、これから授業があるので早目に退席いたしますので、コメントです。  いいデータが出て、御苦労をおかけして、大変成果が上がったのかなという印象でございます が、これを受け取る側といいますか、多分、今日、ここにも新聞の方がいらしていると思うんで すが、やはり、このデータの代表性といいますか、これを全国ベースに伸ばしたらどうなるのか という議論が必ず出てくるんだと思います。そうしますと、今度、介護予防を取り組んでいただ いたところの代表性をどう考えるか。  やはり、非常に熱心だから効果が出たんだという推論も多分出てくるでしょうし、いや、これ は平均的だと考えられるのか。そこら辺のことをやはりどこかリファーはしておいていただける と、多分、これは早い話で言えば47都道府県で人口でそれを倍にして、全国でこれだけの効果 が上がったみたいな、これはある種の短絡的な議論になることは承知の上でも、そういう議論を やはりしたくなるといいますか、また、それを求められている側面もありますので、そこら辺の 留意事項を相当きちんと出される必要があるのかなということ。  それから、特定高齢者施策の方の感想なんですが、まだ、これはやはり安定した比較の可能な 状況ではないということで言えば、これも本当に最大限努力されたんだということで大変敬意を 表したいんですが、やや、これは最近、私の思っていることで、この議論とは直接関係ありませ んが、どうも、やはり介護予防というものは個々のプログラムと同時に地域社会の文化と深く関 わって、例のモチベーションの話で、そうすると、そこら辺のことを、これは非常にエビデンス で、統計的に議論するという話ですが、かなり質的な問題に深く関わる。  その地域社会の在り方というもので、これは時間がないので余り申し上げられないんですが、 ある限界集落で、その地域の1人当たりの平均給付費が3分の2という地域を発見しまして、今、 データを集めてもらっているので、そういう意味で、そこは地域づくりで全国的に大変有名なと ころで、お年寄りをとにかく徹底的に働かせるところなんですが、多分、御存じの方がいらっし ゃるかどうか、柳谷(やねだん)という鹿児島の300人の集落なんですが、そこで実は特養入所 者がゼロなんです。老健が1人で、300人の40%ですから、それで、今、介護保険のデータを 取ってもらって、これは明らかに、その地域社会のモチベーションは高める方向で文化があると 非常に効果があるらしい。  これはここの範囲ではないのですが、やはり、ある程度、どこかでそういう視野を、要するに、 それは専門的な介護予防専門家がやるということだけではなくて、介護予防は地域づくりとずっ と言われ続けていましたから、そこの議論との接続を開かれたような形で介護予防を位置づける ことを広くいろんな方に理解をしていただくことが、このエビデンスの実証と同時に大事だとい う感想を思ったものですから、やや時間をちょうだいして申し上げさせていただきました。 ○辻座長 ありがとうございました。  大久保先生、何かございますか。 ○大久保委員 コメントありがとうございます。介護予防は、今回、量的な分析をしましたけれ ども、実際は更に質的な分析まで加えた総合的な評価が必要ではないかというのは、私も全くそ のとおりだと思います。  それと、この83市町村が代表的なデータかどうかというのはいろいろ議論があるかと思いま すが、もし仮に、この83市町村を単純に引き伸ばすと、これは手計算なので、まだちゃんとし たデータを公表できる段階ではありませんが、要支援1の方ですと大体320億円ぐらいで、先ほ ど1,000人追うと1万2,000人月で1億円ほどの費用が浮くという御説明をしましたけれども、 これを単純に伸ばしますと320億円ぐらいになるのではないか。これは手計算で、まだ余り公表 できないのですけれども、そんな感じを持っております。 ○辻座長 要支援2はどうですか。 ○大久保委員 要支援2ですと、大体1,500億円ぐらいという感じになるかと思います。 ○高橋委員 大変な数字ですね。 ○大久保委員 全体の介護予防費の3%弱ぐらいではないかという意味です。 ○鈴木老人保健課長 今、高橋先生からございました代表性ということでございますけれども、 資料1をもう一度おめくりいただいて、3ページ目ですけれども、これはもともと76市町村に 参加いただいておりまして、実はもう少し増やそうというときに、76市町村がどういう特性が あるのかというのを一度分析いたしました。  ここにピンク色で書いてありますけれども、これは76市町村の特性の逆、つまり、例えば(1) であると基本チェックリストの実施率が高い市町村を優先的に選んだということは、76市町村 を全国的に見ると、実はチェック率が低かったということがございますので、これは現在、76 市町村の分析をして、少し市町村を足して83になっていますが、先生がおっしゃるように、常 に、この83市町村が全国と比べてどういう特性を持っているのかということは、きちっと分析 して踏まえた上でやっていく必要はあると思います。  ただし、もともと、当初、申し上げたと思いますけれども、この83の一つひとつの市町村は、 実は非常に御負担をおかけしていますので、本当は例えば任意で選んで、ここをお願いしますと 言ってちゃんと受けていただければいいんですが、そういうわけにはいかなくて、やはり手を挙 げていただくという性格上、若干、全国の平均よりも少しぶれることはありますけれども、一番 大事なのは、そのぶれがどういう程度なのか、どちらの方向を向いているのかを常に意識してい るということではないかと思います。 ○辻座長 ありがとうございました。ほかにどなたかございますか  鈴木先生、お願いします。 ○鈴木委員 今回の費用対効果分析、本当に非常にしっかりやっていただいたということで、ま ずは敬意を表します。  それで2点コメントがありますけれども、新予防給付でかなりいろいろなケースを想定してい ます。一つは普通に、あるデータをあるがままに分布させて計算した場合、それから、次に一般 と特定が導入前にはなかったけれども、仮にそれが導入後と同じ割合で、導入前も改善した場合 という想定で計算をして、それでも、なおかつ、費用対効果でプラスの増分が出てくるというこ とで、非常にしっかりしたデータだと思います。実際には、施策の導入前に要支援の方が、その 後、非該当になったり、あるいは元気を取り戻してサービスから抜けていくケースは、東京都な どのデータを見ると非常に少ないですから、そういう意味では最大のセーフティーネットを取っ た分析なのかなと思っております。現実には、導入前においてこれほど要支援の方が施策導入後 と同じ割合で改善することはありえないけれども、安全を見越して分析をしている。つまり、何 重にもセーフティーネットをかけて、非常に悪いシナリオでもプラスに出てくるということです ので、そういう意味では大変よかったのかなと思います。  それから、特定高齢者の問題ですが、非常に御苦労をされておられますけれども、どうしても 根本的な問題として、やはりコントロールが設定されていないことで、そこで尽きてしまう議論 だと思うんです。今後、すでに施策は導入していますけれども、その中で何かコントロールと施 策介入が非常にうまく抽出できるような、そういった補助的な比較というようなことも、この1 年でできるかどうかはわかりませんけれども、やはり今後の一つの課題なのかなと感じておりま す。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。  まさに特定高齢者につきましては、本当に比較対象となる制度導入前のデータは、実はないわ けです。ですから、いつも議論になってしまうわけです。それに対しまして要支援1などは、給 付実態調査等の数字から、お金の動きから何からすべてわかっていて、そういったデータがある からこそ、今回、費用対効果も含めまして、かなり信頼性の高い、あるいは批判にたえるような データを、出すことができたと胸を張っているのですが、いかんせん、特定高齢者については、 制度導入以前のデータがない以上、適切に比べることができない。  そこで今回も、本来ならばサービス利用者ごとに単価を積み上げていくべきですけれども、そ れはできないので人口当たりにせざるを得ないのではないか。そういった提案をさせていただい たわけですけれども、そういった意味で、この検討会だけで特定高齢者施策の効果や費用対効果 について予防給付と同程度の妥当性を持って結論を出すことは非常に難しいのではないかと思 います。ただ、それにできるだけ近づけていくことと、もう一つは、これからも評価を続けて、 きっちりとサービスを提供している地域と、それが少ない地域との間で効果を比較していくなど、 いろんな形でオン・ゴーイングに評価していくこと、あるいは将来に向けてデータを蓄積してい くことは非常に重要だと思っています。  その辺で、この特定高齢者の費用の把握としては人口当たりでやらざるを得ないけれども、い かがでしょうかということが今回の大久保先生の御提案でありますけれども、それも含めまして、 ほかに何か御意見・御質問はないでしょうか。  今、大久保先生の方から、今回のデータを少なくとも、要支援1・要支援2についてだけであ りますけれども、それを全国の現状に敷衍すると、大体1,800億円ぐらいの費用減少になってい て、これが介護保険の現在の財政規模で言いますと、大体3%ぐらいの減少幅になっているとい うような、あくまでも現時点での大ざっぱな推定ではあるがというお話をされていました。それ につきましても、市町村の方々から何かございませんでしょうか。  それでは、岩越先生、どうぞ。 ○岩越委員 今回分析いただいたデータで、量的な評価という辺りは確認させていただいたとこ ろなんですけれども、先ほど高橋先生がおっしゃったところもありますけれども、御本人様のモ チベーションというのか、意欲という辺りを、私どもも関わらせていただいている中でも、もと もと、ある方で、それから、単にサービスを利用したいだけという方もおられる中で言いますと、 そこの辺りで、今、おっしゃっていただいた効果、改善というところにつながる差が結構出てい るのではないかというところは実感しているところです。 ○辻座長 ありがとうございました。ほかにどなたか御発言はございますか。  坂元先生、どうぞ。 ○坂元委員 川崎市では、以前も言いましたが、65歳以上の高齢者全員に送付して参加を呼び かける意味で、まだ年度途中ですが、1年間で18万通を発送する予定です。今のところ、8万 ぐらいの発送がやっと終わったんですけれども、大体50%ぐらい返事が返ってきている。  ただ、返事が返ってきた人に本当は全員アプローチをすればいいんですけれども、個人情報と の関係で、返事に電話をしてアプローチしてもいいかの承諾を取る必要があるだろうとのことで、 その一文を入れたら、電話をしてアプローチしてもいいと答えた人が、その返事があった人の約 50%になってしまったんです。実は来年からこれをやめて、返事があった人全員に電話をしよう との意見も出ております。その電話OKの人に全員に電話をかけて、いわゆる受診勧奨をしてい るということです。その専任の職員を15人ほど雇って、朝から夕方まで電話をかけて受診して くださいというふうに電話をかけているんですけれども、予想外に、そこから先の受診がなかな か思うようにはいかないのです。  しかし、実際にサービスを受けた人の色々な意見を聞くと、自分で明らかにQuality Of Life が上がっていることを実感している人が多くて、もう一回受けたい人がかなり出てきているとい うことのも分かりました。実は当市にはそんなにキャパシティーがないので、なるべく、一旦受 けた人がもう一度受けたいという人をむしろ断っているというのが現状です。まだ統計値は取っ ていないんですけれども、好評であることと、実際、今回の費用対効果の中に入っていないかな と思うんですけれども、そういう人たちの意見の中には、医者に行く回数がに減ったというもの もあり、今回は介護保険の費用削減効果のみの算出なんですけれども、恐らく医療費用を計算す ればさらに効果が上乗せされる可能性もあると思います。  まだ残り10万通を発送し、年度が終わったら統計値を取ってみて、今後、どういうふうな施 策展開をやっていくかということをちょうど考えているところです。ですから、結論から言えば サービスそのもは好評であるのは事実だと思います。 ○辻座長 ありがとうございました。  石田先生、何かありますか。 ○石田委員 費用の件で、わかれば是非教えていただきたいんですけれども、私の感覚ですと、 地域支援事業費のうちの介護予防事業費というものは給付費に依存しているので、総費用を人口 当たりで割るとすると、高齢者の数と給付費との関係も少し考慮しなければならないのではない か。要するに介護予防にかける費用全体というものは、自治体だと給付費の費用の一定割合を介 護費用として予算的に振り分けるルールになっているので、その点については全体を丸めて使っ て、本当にその費用として正しい数字が出るかどうかについては工夫する必要があるのではない かと思います。  それから、今回、ポピュレーションアプローチの費用やスクリーニング費用というものも合わ せて、合計で見ようというふうに設計しているようですが、ある意味では、それは事務費に当た るのではないか。いわゆる、我々自治体からすると、やはりハイリスクアプローチにかかる費用 というものに関心があるのかなと思っています。  あと、特定高齢者と一般高齢者を一緒に総額として分析することになるんでしょうか。この点 を御質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○大久保委員 一番最後の方ですが、私の理解では資料3の12ページに書いてありますが、高 齢者1人当たりというふうになっていますので、今、そういうことを考えているのですが、この 辺もいろいろ議論があるかと思いますので、また先生ともお話をしていろいろと詰めていきたい と思います。今は高齢者1人当たりという形で計算しようとしています。 ○坂元委員 追加でよろしいですか。  今、おっしゃったことは、うちでもそうですが、介護保険の3%で、ただ、自治体によって、 その3%をどういうふうに振り分けているかというのは色々だと思います。例えば包括支援セン ターの維持費にかなり使ってしまっているとか、実際の介護予防事業に余り使っていないとか、 そこは実際、その費用をどういうふうにやって振り分けているかというのは聞かないと、かなり 自治体によって様々だと思いますので、確かに一括してやったときに、それが本当の効果を反映 しているかというのはかなり難しい部分もあるかなということを付け加えさせていただきます。 ○辻座長 ありがとうございました。ほかにどなたかございますか。  それでは、この費用対効果につきましては、大久保先生の御説明どおり、この要支援1・要支 援2については、これがかなり妥当な数字ではないかというように皆さんからも御意見をいただ きましたし、また、これからの特定高齢者施策につきましては、次善の策でありますけれども、 高齢者1人当たりの費用を人口割にせざるを得ないだろうということで一定の御理解をいただ いた。そして、その細部につきましては、今後、また検討会の先生方の御意見も伺いながら、市 町村の実情にできるだけ即したような形で積み上げていくということで進めていただきたいと いうことで、全体としてはよろしいでしょうか。 (「はい」と声あり) ○辻座長 ありがとうございます。  それでは、次の議題の「(2)継続的評価分析支援事業データにおける属性等による介護予防 効果の違いに係る分析について」に移らせていただきます。この結果につきまして、資料4に基 づきまして、私の方から御説明したいと思います。資料4をごらんください。  まず、1ページを開けていただきますと、これまでの結果のまとめであります。  その次のページをごらんください。「はじめに −分析に当たって−」で「今回の分析イメー ジについて」というところがあります。  今回の分析イメージですが、最も重要なことは、この一番下に書いてあります。「サービスを 受ける者の属性等の違いによって、介護予防効果がどれくらい違うのかを分析」ということであ ります。ですから、具体的には、どのような人が、どのようなサービスを受ければ、どのような 効果が出てくるのか。そういったことを出していきたいと考えております。  具体的には、脳血管疾患の既往歴のある人、ない人。あるいは認知症疑いのある人、ない人。 あるいは同居者がいる人、いない人。そういったさまざまな属性につきまして、一応、12か月 後を目途にいたしまして、例えば要介護度とか、生活の質、基本チェックリストなど、さまざま な指標について、維持改善したか、悪化したかということを見ていく。そして、それぞれのオッ ズ比を出していくことを考えております。  それによりまして、このサービスを受ける人の属性等の違いによって、介護予防効果がどれぐ らい違うのかということを今回明らかにします。そういったことが分かってきますと、各市町村 とか事業所等が、より効果的、効率的に対象者を選定できる。そして、介護予防効果が更に増し ていくのではないか。そういったことを期待しているのでございます。  3ページをごらんください。今回のデータベースの対象者についての御説明であります。  今回は、平成19年1月1日から20年7月31日までに登録した分について、データ解析を行 っておりますが、最終的には21年1月末までに登録した者全員について3月目途に御報告した いと思っておりますけれども、現時点で登録された方々は、全国で1万8,181名いらっしゃいま す。  そのうち、幾つか除外基準がありまして、例えば年齢のところで40歳未満、あるいは106歳 以上という記載があった方につきましては、そもそも、40歳未満は対象になりませんので、そ ういった分を含めて少し信用できないということで、この32名は除外。それから、要介護認定 等の状況、要支援1・要支援2、あるいは特定高齢者、それに関する回答がなかったケース315 名は分析のしようがありませんので除外となります。  それから、更にサービス開始後3か月以上経ってから調査開始した8,953名を除外と書いてい ますが、これは要するに、本来、我々はサービス開始時点、初回アセスメントのときの情報を基 にどれくらい予測できるかということを知りたいわけでありますけれども、それに対して、半年 以上前とか相当前からサービスを受けている方もたくさん含まれているわけですが、そうします と、予後に与える影響というものは当然変わってきますので、今回はその部分は削除。それから、 経過観察のデータがない。まだ1回しかデータがないという方が1,245名いらっしゃいまして、 その方々を削除いたしますと、最終的には7,636名の方が分析の対象になります。  この方々について、観察期間の内訳を見ていきますと、12か月以上にわたって観察されてい る方が、この一番下の表の2,463名。わずか32%しかいないのです。残りは3か月、つまり、 データとしては2回分のデータだけが入っている方が2,260名。6か月、3回分のデータが入っ ている方が1,855名。9か月、4回分のデータが集まっている方が1,058名であります。  それぞれの内訳でありますけれども、約3分の1の方が、このサービスを終了または中断とい うふうになっております。サービスを終了または中断とは、例えばその状態が改善して、特定高 齢者でなくなった、あるいは要支援でなくなった、非該当になったという方々では、中止になる わけであります。逆に悪化してしまった方々、要支援だった方が何らかの理由で要介護になって しまった場合は対象から外れるわけです。特定高齢者についても同様です。そういった状態の変 化によってサービスが終了・中断となった方、あるいは御本人の希望その他によって終了・中断 した方が2,566名いらっしゃいました。  それから、サービス継続中の方というのは、今もまだサービスを利用中でありまして、また調 査の時期が来れば調査回数が増えるといった方々であります。  このような全部で7,636名のうち、本当に完全にデータがそろっているのは、その3分の1、 2,463名しかいなくて、それでは、残りの方々をどのように扱うかということについて、4ペー ジをごらんください。  サービスを終了または中断した者、あるいは解析データの登録終了時点にサービス継続中の 方々の扱いをどうするかということですが、私どもの方針は「対象者のうち、12ヶ月後までに 一般高齢者に改善したり、要介護状態に悪化する等により終了または中断し、その時点以降のデ ータが入手できなかった者については、除外しないこととし、終了または中断した時点と同じ状 態のまま12ヶ月後まで推移するとみなす」。  2つ目として「対象者のうち、解析データの登録終了時点(平成20年7月31日)にサービ ス継続中の者については、除外しないこととし、解析データの登録終了時点と同じ状態のまま 12ヶ月後まで推移するとみなす」という、仮定のもとで解析をしたいと思っております。  どうして、そういった仮定をするのかということですが、5ページをごらんください。  サービスを終了または中断した人の扱いでありますが、黄色い四角の中に「(1)サービスを受け る期間により対象者の基本特性が大きく異なっている」ということがあります。  それが下の表に書いてあるわけですけれども、例えばこれの特定高齢者のところをごらんくだ さい。そこで下から2行目の「年齢(平均年齢(SD))」をごらんいただきたいんですが、3か 月しか追跡できていない方々の平均年齢は78.0、6か月間追跡できている方の平均年齢が77.9 で、80.4、81.2。つまり、追跡期間が長い方々ほど年齢の高い人たちが多いわけです。  また「基本チェックリスト得点(平均点(SD))」も、8.4、8.3、10.0、10.5と、高い人が多 いわけです。そうしますと、長くフォローできている人ほど平均年齢が高く、基本チェックリス ト得点が高いということは、要するに、維持・改善の可能性が低い人たちが多くなっているとい うことです。ですから、追跡期間が長かった方だけに限定しますと、もともと予後不良因子を多 く抱えている方々に偏ってしまうというバイアスが生じてしまいます。  逆に、今度は要支援2をごらんいただきますと、平均年齢が81.3、81.5、81.3、80.7と、追 跡期間が長くなるほど、むしろ平均年齢が低くなっている。また、基本チェックリスト点数は 12.3、11.9、11.8、11.5と低くなっています。つまり、年齢、基本チェックリストという観点か らしまして、予後が良好な人ほど長く追跡されている。この特定高齢者と要支援と全く逆の方向 性になっているわけですが、この要支援者につきまして、12か月以上追跡できている方だけに 分析を限定いたしますと、予後のいい方々だけに偏っていくというバイアスが来るわけです。  ですから、どちらの方向であっても、そういったバイアスは避けたい。したがって、できるだ け全員を残したいと思うわけです。  それでは、終了・中断した人たちが本当にその状態を維持していると考えていいのだろうかと いうことですが、私どもは実際にデータを目で確認してみたわけです。サービスを終了・中断し た2,087人のうち、どれくらいがサービスを再開したか。つまり、特定だった人が特定を終えて、 また特定に戻ってくる人が何人いたか。あるいは要支援1になった方が一度抜けて、また要支援 1に戻ってくる方がどれくらいいらっしゃったかを全部目で見てみたのですが、わずか8名でし た。つまり、2,087名のうち、わずか8名だけがサービスを再開した、0.4%です。そうしますと、 残る99.6%の方が終了または中断した時点の状態を恐らく維持していたというふうに考えて無 理はなかろうと思ったわけでございます。  それから、解析データの登録終了時点にサービス継続中の方々につきましては、このような形 でいいのではないかと思ったわけです。  次の6ページをごらんください。そういった形で書いてありますけれども、このような形で推 移を見ましたということであります。  それから、7ページをごらんいただきたいのですが、統計の講義をしているようで大変恐縮で すけれども、利用しているサービスの種類といったものを説明変数とはしないということをして おります。説明変数としないということはどういうことかといいますと、つまり、あるサービス を利用した人としなかった人の間で予後を比べることは余り適切ではないということを言って いるわけであります。  それはどうしてかといいますと、次の8ページに書いてありますけれども、そもそも、このサ ービスを利用する人としない人というのは、基本的な属性が全く異なっているわけです。  具体的には、介護予防の通所介護、通所リハ、訪問介護を利用している要支援者の方々5,438 名と、左側のサービスを全く利用していないという284名の方で比べてみますと、黄色で塗って いるところは、頻度として有意差がある、有意な群間差があるものでありますけれども、認知症 の頻度は利用者で多い。それから、GDS15が11点以上、つまり、抑うつ状態の方々のパーセ ンテージは、実はサービスを利用していない方で多い。長谷川式の点数が20点以下、認知症の 疑いのある方は当然、左側に多い。普段の過ごし方で役割のないという方は、右側の方で多い。 同居者がないという方は、左側で多い。  そういった形で、背景要因がかなり異なっております。これは多変量解析で補正は一応できる わけでありますけれども、それ以外に把握し切れていない属性の違いが、未知の属性も含めまし て、恐らくたくさんあるわけです。そうしますと、サービスを利用している人としていない人た ちの間で予後に何らかの差があったとしても、それが、このサービスの効果、通所リハビリテー ションとか、通所介護とか、そういった介護予防サービスの効果による予後の違いなのか、ある いはもともとの属性、背景要因の違いなのかが判別できないというわけです。ですから、これに ついては余り深く入らないことにしようと思ったわけであります。  以上の留意点の下で「基本的な集計結果について」をお聞きいただきたいと思います。  9ページです。「対象者の基本的属性について」で、先ほども高橋委員から御質問がありまし て、事務局からも説明をいただきましたけれども、まず、全国の集計です。介護予防事業報告、 あるいは介護給付費実態調査といったもののデータを基に、この全国集計を行いまして、それと、 今回の対象者と基本的属性を比べてみましたところ、性・年齢構成はほとんど同じでありました。 例えば特定高齢者の合計で見ますと、65〜69歳の方が7.7%、70〜74歳が18.2%、75〜79歳 が26.6%、80〜84歳が28.8%、85歳以上が18.7%となっておりますが、その数字は下の方の 特定高齢者の合計8.3%、17.6%、26.3%、27.1%、20.6%と、ほとんど同様になるということ で、性・年齢構成についてはほとんど変わらない。  その一方、特定高齢者で利用しているサービスの内訳を見ますと、通所型の介護予防事業(特 定高齢者)では、栄養改善の割合がやや低いということが全国集計と比べてあるということです。 特定高齢者の訪問型では、運動器の機能向上、口腔機能の向上の利用割合が高く、栄養改善の利 用割合が低い。そういった差がある。それから、予防給付につきましては、栄養改善及び口腔機 能の向上の利用割合が調査対象者の方で高かったということで、下に書いていますが、13%、 18%に対して、全国集計とはかなり違った状況になっております。  10ページをごらんください。主要指標の推移ということで、基本チェックリストと身体的Q OL、精神的QOLが書いてあります。この身体的QOL、精神的QOLとは、SF8という質 問票がありまして、これは世界中で使われている、生活の質に関する8項目の質問票でありまし て、この回答を基に、身体面と精神面で、100点満点でサマリースコアを計算するものです。そ の際、一応、50点が、その人々が属する国の平均値になるように設計されているんです。そう いったことを御留意ください。  例えば特定高齢者で見ていきますと、基本チェックリストの平均点が開始時は9.3でした。そ れで、身体的サマリースコアが44.7で、精神的サマリースコアが50.4ということですので、精 神面のQOLは平均とほぼ同じ。そして、身体的なQOLが若干低いと男性では位置づけること ができます。  12か月後にどうなったかといいますと、基本チェックリスト得点が9.3から8.5へということ で、黄色といいますか、茶色といいますか、色かけがしてあります。この色は有意に改善したと いう意味です。  そして、身体的サマリースコアは44.7から43.8と下がって、ブルーで網かけされています。 青で塗られているものは、統計学的に有意に悪化したということであります。  それで、精神的サマリースコアは50.4から51.3へ、有意に改善ということですが、300とか 相当な対象者数になりますと、これくらいの少しの変化であっても有意になってしまうので、統 計学的には有意であっても、実際的にはそれほど大きな変化として見るべきではないと考えてお ります。  女性でも同様に、基本チェックリストと精神的サマリースコアで若干上がって、身体的サマリ ースコアで若干下がる。要支援者でも同様であります。  11ページをごらんください。プログラム別の主要指標の推移について、維持・改善、悪化の パーセンテージを要介護度、主観的健康度、それから、基本チェックリストの3項目につきまし て、6事業ごとに比べております。  運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上では、要介護度では90%以上の方が維持・改 善しておられる。それに対して閉じこもり予防・支援では、そのパーセンテージが68.1%とか なり低い。それから、認知症予防、うつ予防でも87.9%、84.4%ということで、両者の間ぐらい であるということですが、主観的健康度でも、基本チェックリストでも、ほぼ同様の動きになっ ていて、一貫性があるわけです。  それでは、閉じこもり予防・支援の効果が低いのではないかと言えるかといいますと、必ずし もそうではない。どうしてかといいますと、全員がすべてのサービスを使っているのなら別です が、使う人がプログラムごとに違うわけです。ですから、例えば閉じこもりの予防支援を利用し た方は、ほかのサービスを利用した方に比べて、そもそも心身、社会的、あるいは生活機能に問 題が多くて予後の悪い方が多かったのかもしれない。ですので、この差が本当にプログラムの効 果の差として見ることができるのか、あるいは単に対象者の背景の差として見るべきなのか、こ れはもう少しデータを見ていかなければわからないので、判断は保留にしたいと思います。  要支援につきましても、ほぼ同様の結果ですが、1つごらんいただきたいのは、特定高齢者と 要支援者で維持・改善のパーセンテージがかなり違っているということです。例えば要介護度で 見ますと、運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上で見ますと、特定高齢者の方では95% 前後で、それに対して要支援者では75%前後ということで、大体20ポイントぐらいの差がある というような違いがあります。主観的健康度でも大体5ポイントぐらいの差で、基本チェックリ ストでもほぼ同等です。ですから、維持・改善のパーセンテージは要支援者よりも特定高齢者で 高いということがわかったわけであります。  12ページを見ていただきますと、この運動器の機能向上についての指標の推移ということで、 まずは青が多いか、黄色が多いかということで見ますと、1つ違いがあるのは、特定高齢者です が、訪問型では青が多いです。通所型ではほとんどの項目で改善しているということですが、こ れも先ほどから言っていますように、通所型を利用する方と訪問型を利用する人のそもそもの属 性の違いがございますので、軽々には何か言うべきではない。むしろ、こういったデータは一応、 お出ししなければということでお出ししているわけですけれども、これについて意味づけをする のは難しいと考えております。  次のページをごらんください。属性ごとに予後との関連を見てみたわけです。13ページでは 「分析方法について」ということで、要介護度とか日常生活自立度といったものの維持・改善の 定義が書いてございます。これは後でごらんください。  時間が押してきましたので、急ぎますが、14ページをごらんいただきますと、年齢は若年で あるほど維持・改善しやすいということであります。例えば年齢で、要支援者の要介護度を見ま すと、オッズ比が0.99と書いてあります。これはどういうことかといいますと、年齢が1歳上 がるごとに維持・改善のオッズが0.99倍になる。つまり、1%下がるということです。1歳年 を取るごとに維持・改善の可能性、オッズが1%ずつ下がっていくということです。  オッズ比が1未満の場合は、こういった属性を持っている方では維持・改善が少ない。1を超 せば維持・改善しやすいということになるわけですけれども、基本的には年齢ではブルーが多く、 有意に下がっている。つまり、年齢が高いほど維持・改善のオッズは有意に下がる。有意ではな かったとしても、ほとんどのもので1を割っていますので、高齢であるほど維持・改善し難い。 逆に言いますと、若年であるほど維持・改善しやすいということになります。  性別で見ますと、女性の方が維持・改善しやすいということで、基本チェックリストを要支援 者で見ますと、1.24と書いてありますが、つまり、男性に比べて女性の方が、基本チェックリ ストで維持・改善するオッズが24%も高いことになるわけです。  同居者で見ますと、独居者、単身で暮らしている方で要介護度が維持・改善しやすいというデ ータであります。いろいろな解釈が可能かと思うのですが、1つは同居している方がいますと依 存的になるのではないかという考えもありますし、同じような機能レベルであっても、単身で生 活できるというのはそれだけの何か、御本人の生活意欲、生きるスキル、サポートなどがあるこ とを示しているのではないか、いろんな解釈があろうかと思います。  それから、日常生活の中で何か役割を持って暮らしていると答えた方では、ないと答えた方に 比べて、維持・改善のオッズが要介護度、高齢者の日常生活自立度の辺りで有意に改善していま す。ですから、普段の生活に役割を持っていただくということが改善を促す要因として考えるわ けです。  15ページをごらんください。基本チェックリスト得点は、介護予防効果に影響がある。これ は当然でありまして、0.94とか0.95ということで1を下回るものが多くなっています。つまり 基本チェックリストが高い人ほど維持・改善の可能性が低い。逆に言いますと、基本チェックリ ストの点数が低い人ほど、軽症の人ほど維持・改善の可能性は高い。  認知症につきましては、認知症の疑いがない方で維持・改善しやすい。長谷川式のスケールで 言いますと、21点以上をもって認知症の疑いなし、20点以下ですと認知症の疑いありというこ とになるわけなんですが、要介護度で見ますと、認知症の疑いあり、20点以下の方に比べて、 疑いのない方、21点以上の方では要介護度が維持・改善するオッズが1.6倍に上がってくる。  それから、うつに関しましては、GDS15というものがうつの質問票でありますけれども、 これは11点以上をもってうつの疑い、抑うつ状態で、10点以下をもって抑うつなしとするわけ ですけれども、資料は見出しが間違っておりまして、GDS10点以下、抑うつのない方で基本 チェックリストの維持・改善のオッズが有意に下がっているわけです。  ですから、逆に言いますと、抑うつ状態のある方では基本チェックリストの点数が、維持・改 善する確率が高いことになるわけです。それはどうしてかというと、私なりの考えですけれども 地域包括支援センターの方々も事業所の方々も、最初に基本チェックリストをごらんになって、 この利用者の方は抑うつ状態の方だということがわかっているので、そういった方にサポーティ ブな対応、心理的なアプローチも含めてやってくださっているのではないか、その効果が現れて いるのではないかと思っております。  基本チェックリスト25項目のうち5項目がうつに関わる質問票ですので、そこが改善すると 総得点も相当改善します。そのような可能性が考えられます。  したがいまして、この15ページの上の赤線を引いているところの2つ目の○で「うつ傾向の 低い者は」というところは削除していただきたいと思います。  それから、認知的活動量の高い方は、維持・改善しやすいということです。テレビを見るとか、 ラジオを聞くとか、新聞を読むとか、雑誌を読む。そういった頻度の多い人ほど、非常にきれい に維持・改善のオッズが上がってきている。例えば要介護度で見ますと、特定高齢者ですと点数 が高いほど、1.84、2.04ということがありまして、非常に認知活動がアクティブな方ですと、要 介護度の維持・改善のオッズが2倍に上がるというところがあるわけです。ですから認知的な活 動というものを活発に行っていただくことが非常に重要ではないか。そういったサポートをして いかなければいけないということがわかったわけです。  16ページをごらんください。疾患の既往歴で見ますと、脳血管疾患は非常にきいているとか、 認知症、あるいは高齢による衰弱といったものがかなりきいていることがわかりました。  17ページ以降は運動器の機能向上プログラムを利用した方に限定いたしまして、このサービ ス内容と介護予防効果との違いを見たものであります。  17ページは、アウトカム指標としては要介護度、基本チェックリスト、主観的健康度の維持・ 改善という総論的なアウトカムを見ているわけですけれども、実施方法で見ますと、有意に改善 しておりますのは基本チェックリストの、マシンによる筋力増強訓練、マシンによらない筋力増 強訓練、それから、持久性訓練の3つであります。そして、この基本チェックリストを見ますと、 レクリエーション・ゲームを受けた方では0.63ということで、この維持・改善のオッズが有意 に低下していることがわかるわけです。  更に要介護度で見ますと、有意ではありませんが、マシンによらない筋力増強訓練は1.50と いうことで、かなりオッズを高めて、1を上回っているのですが、有意ではありません。  主観的健康度になりますと、持久性訓練を受けた方で、有意に維持・改善。マシンによらない 筋力増強訓練では、有意ではありませんが、1.35ということで、p値も0.10ですから、かなり 有意に近い段階であります。  それから、要支援でも同様の結果でありまして、一言で言いますと、上に書いていますように、 マシンによる、あるいはマシンによらない筋力増強訓練及び持久性訓練で維持・改善がしやすい ということと、レクリエーション・ゲームでは維持・改善しにくいことが見えてきたということ であります。  18ページをごらんいただきますと、今度は運動器の機能向上プログラムですので、運動機能 に係る指標4項目を測定していただいておりますので、それとの関係を見ております。  TUGとは、いすに座った状態から立ち上がりまして、3m前に歩きまして、そこでくるっと 1回転して戻ってきまして、またいすに座る。それに要する時間を見ているわけです。さらに、 通常歩行と最大歩行の時間を見ているわけです。  有意に改善したものが、マシンによらない筋力増強訓練のTUGと最大歩行時間で、持久性訓 練の通常歩行時間と最大歩行時間、日常生活活動の片足立ち時間。それから、有意ではないけれ ども上がっているものは、マシンによる筋力増強訓練では片足立ち時間とかTUG。あるいは日 常生活訓練でも最大歩行時間とかそういったものが上がっているということですが、どうも、レ クリエーション・ゲームでは1を上回るものが少ないのではないかというところがございます。  また、要支援者では余り大きく有意に改善するものはなく、むしろ持久性訓練を受けた方々で TUGの維持・改善のオッズが有意に1を下回っていたということで、この辺の意味づけを私も まだ悩んでおりまして、今日は大渕先生が途中で退席されましたので、もう少し、その辺の事情 を調べてみたいと考えております。  最後の19ページで「まとめ」が書いてございます。赤で書いているところだけ申し上げます と、普段の生活に役割を持たせるということ。あるいは認知的な活動を活発に行う。これは恐ら く、特定高齢者になる前からも重要だと思うんですが、常に、若いころからも大事だと思うので すけれども、そういったようなことが重要である。  また、訓練としては筋力増強訓練、持久性訓練、あるいは日常生活活動に関わる訓練を受けた 方で維持・改善しやすいことがわかってきましたので、この辺がもしかすると効果的なのか。そ の一方、運動器の機能向上としてはレクリエーション・ゲームというものは余り維持・改善には 貢献していないのではないかということを思った次第であります。  以上であります。  これを受けまして、先生方から御意見・御質問をいただきたいと思います。どうぞ、よろしく お願いします。  どうぞ。 ○鈴木委員 大変に精密に分析していただいて、本当によい面、それから、問題のある点がクリ アーになってきたかなと思います。  総じて私の印象なんですけれども、先ほどの費用対効果等の分析では、新予防給付の方ではデ ータセットもきちんとしていることから非常にクリアーになっていたけれども、特定高齢者では なかなか難しいという一つの結論で、今後、総枠で分析するということの御説明がありました。 しかし、こういう個別のデータを見ていると、むしろ特定高齢者の方が要支援者よりもこういっ たプログラムによる改善傾向は大きいのではないかと思います。  勿論、個別のデータのところで、辻先生も解釈で少し難しいというところも確かにおありです けれども、総じて、やはり特定高齢者の方が新予防給付対象者よりも効果は大きい。特に11ペ ージの「プログラム別の主要指標の推移について」というところで御説明がありましたけれども、 特定高齢者の方がおおむね維持・改善の割合が高い。まさにこういうことだろうと思うんです。 それが一つの印象、コメントです。  もう一つは後半の方で、属性等の違いによる結果の分析の中で、マシンによる筋力増強訓練が 18ページで、特定高齢者、あるいは要支援者において、介護予防効果の中でも特に運動機能の 実測値がいずれも有意には変わっていない。一方マシンによらない筋力増強訓練が有意に、よい 方に効果が出ているという分析がございますけれども、これは2つ意味があって、1つはマシン によらない筋力増強訓練というものは、やはり基本中の基本なんだろう。だから、これは効果が きちんと出るということでもありますから、やはり、今後も基盤に据えておくべきだろうという のが1つ。  もう一つ、マシンによる場合は、むしろ、その前のページで、特定高齢者でマシンによる筋力 増強訓練対象者に関して、基本チェックリストについては比較的大きなオッズ比で、有意に有効 になっていますので、多分、これはマシンというものを使う方のまさに属性があるのかなと思い ます。一般に私が理解しているところでは、マシンを使う方はより虚弱で、より高齢の方です。 その方々を、安全に生活機能を改善するためにマシンが使われていますので、ある意味ではそう いう方々に使いますと、基本チェックリストに含まれるADLは上がるけれども、実測値ではな かなか上がってこない。だけれども、これは上がらないから意味がないということではなくて、 やはり上がらなくても、高齢・虚弱の方々が、生活機能のADLの部分などを改善する意味では 大きな効果があるのかなと推定させていただきました。  以上、コメントです ○辻座長 ありがとうございました。ほかにどなたかおられますか。  坂元先生、どうぞ。 ○坂元委員 うつのところの評価なんですけれども、このGDSでいきますと、うつ傾向がある 人は改善しやすいということ、例えば心理的サポートがあるということなのか。GDSで見た場 合、軽うつ程度だと、例えばうつ傾向の人は性格的に非常に几帳面な人が多いので、プログラム の指導どおり忠実にフォローするという性格傾向的なものもあると思います。  例えば脳血管疾患の後遺症のうつの場合と、そうでないうつの場合とはやはり改善傾向賀が違 ってくると思いますので、このうつの評価というものは、いわゆるメランコリータイプのうつ傾 向である場合、そういう人は非常にきちょうめんで、真面目で、すべてのプログラムをきっちり こなすので、多分そういう人はそうでない人に比べて改善していくんでしょうけれども、脳血管 後遺症的なうつの場合だと改善が悪いので、このうつの評価というものはやはり、ある一定の慎 重さが必要かなという気がします。 ○辻座長 ありがとうございます。  当初は、うつ状態の方は改善が低いのかなと思っていたのですが、これをごらんいただくとお わかりのように、必ずしもそうではないのです。特に要支援ではかなり一貫して1前後ですので、 少なくとも要支援者に関する限りは、このGDSの10点以上、10点以下ということと、要する にGDSで見た抑うつのあり、なしということと、予後あるいは効果との間にはほとんど関係な いということです。  ただ、そういった中でも、今、先生がおっしゃったみたいに、同じ方々について定期的にGD Sを調査し続けておりますので、恐らく次回の検討会のときでは、GDSが改善してくる方はど ういうサービスを受けていたのか、あるいはもともとどういった背景を持っていたのかというこ とを出していきたいと考えています。 ○鈴木委員 非常に興味あるところだと思います。 ○辻座長 ほかに、どなたかございますでしょうか。  どうぞ。 ○植田委員 大久保先生、辻先生、本当に詳細なデータをありがとうございます。  先ほど辻先生の方からいただいた「プログラム別の主要指標の推移について」という辺りも拝 見いたしますと、口腔機能向上もそれなりに多少お役に立たせてもらっているようなデータが出 ているということで、ある意味、少しほっとさせてもらった次第です。自分はこういうデータは もとより、現場でもって、この介護予防の普及啓発に努めるというような立場で立ち居振る舞っ ているような状況であります。  実際、この数にある程度、裏打ちされているような状況なのですが、特に地域支援事業などに 関しましては、先ほど坂元先生からもコメントされましたが、特に今年度、平成20年度に入っ てからというもの、参加者が軒並み増える状況がありまして、せんだっても長野県の方などでも、 特に地域支援事業の参加者が本当に増えまして、本来でしたら行政が、特に健康保険課が補う、 対応すべきところが、一般高齢者が増え過ぎてしまって、健康保険課だけでは対応し切れない状 況なので、この特定高齢者に関しましては介護保険課に委託している、お願いしているというよ うな状況にまで陥っているということです。  今まで色々なイベントを企画しましたけれども、こんな殺到するような状況はかつてなかった ということもおっしゃっておりましたし、ある意味、先ほどSF8の中で精神的QOLというよ うなことがありましたが、そういった意味での地域の活性化という部分ではかなり貢献している のだというような印象を強く持っています。昨年、平成19年度の調査事業で、特に予防給付の 中で栄養と口腔の利用率が低調であるといったようなところの結果が出ているのですが、20年 度に入ってから、また普及啓発が一段と進んで、その辺りのところはまた少し様変わりしたのか なという気がしております。  最後に、辻先生のおまとめの中で、運動器以外のプログラムについて、より期待できるサービ ス内容について更に分析していきたいといったようなことでまとめていらっしゃいましたが、ま さに、この辺り、多分、口腔にまつわる、あるいは栄養も含めてですが、介護予防の、特に予防 給付を受けたりとかというような世界においては、まだポテンシャルとしてあって、ただ、その ポテンシャルを発揮できるだけのいわゆる人材なり制度なりというものが追い付いていないと いった部分が現場としては印象としてございます。今後は更に、これだけ地域支援事業の中で爆 発的な普及がなされたので、その部分、やはり予防給付の方にもそういったポテンシャルを発揮 できるだけの制度づくりなり人材づくりが一層求められるかなと改めて感じているところです。 ○辻座長 ありがとうございました。ほかにどなたかございますか。  石田先生、どうぞ。 ○石田委員 これを見ますと、レクリエーション・ゲームなどがなかなか効果が表れていない。 最近、介護予防事業にどうやって利用者を参加させるかという、非常に現場では課題になってい て、単に筋力向上トレーニングをやりましょうと言ってもなかなかお客さんは集まらない。そう いったことから、踊りなど、あるいはゲームなどを取り入れて、参加者の興味を引くような工夫 を現場では考えつつあるところなのですけれども、その中で、ゲームだけではなかなか効果がな いというデータが出てきたということがありますので、ある意味では、それをどのように調和さ せて利用者の興味を引くかということがやはり一つ課題になるのかなと思いました。  併せて、体力的・肉体的な向上と、それから、主観的健康感との関係もやはりよく見てみたい と思います。現場の感覚では、給付も非常に重要だと思いますけれども、市町村が地域特性に応 じた事業、いわゆる特定高齢者に係る介護予防事業で地域の資源を使ってやるという工夫が非常 に重要だと思いますので、そういった意味では、介護予防事業に対する効果がより鮮明に見える ような研究を是非続けていただけるとありがたいと思います。 ○辻座長 ありがとうございました。特に今日の御報告させていただいた17〜18ページの実施 方法といいますものは、一つひとつやっているのです。マシンによる筋力増強訓練を受けた人と 受けなかった人で比べる。それで一つの統計解析をして、それが終わったら、次はマシンによら ない筋力増強訓練を受けた人と受けなかった人で比べる。それを順次やっている。つまり、単品 で比べているだけです。ですから、石田委員がおっしゃるように、その組み合わせというものが これから大事になってくると思います。そういった意味で、どういった組み合わせが一番効果が 高いのか、これから見ていきたいと思います。どうもありがとうございます。  どうぞ。 ○坂元委員 先ほど鈴木先生の方から、マシンによらない、マシンによるということについての 結果について貴重なコメントをいただいたんですけれども、この結果だけが独り歩きしてしまう と、自治体の方は、このパワーリハというものはかなり予算的に苦労して推進してきたものがあ って、例えばこの結果を見られてしまうと、マシンが余り意味がないというようなことが独り歩 きしてしまう危険性があります。十分、結果が分析されないまま、仮に今日来られているマスコ ミの方に記事にされる前に、まだこれは十分、内容分析が済んでいないということを認識してい ただきたいと思います。  以上です。 ○辻座長 それについて、鈴木先生から何か、もう少し追加のコメントとかはありますか。 ○鈴木委員 おっしゃるとおりだと思うんです。ですから、例えば18ページのオッズ比で有意 性がないということがイコールだめなんだということとは全然違う。それは先ほど申し上げたと おりです。恐らく、マシンを使われる方の属性というものも当然、背景としてあるわけですから、 これで実際の測定値が上がらなかったから無効なんだということではない。それよりも、例えば 基本チェックリストが上がるとか、健康度自己評価やSF―8も含めた「生活の質」(QOL)、そ ういったようなものがどう変わっていくかとか、やはり包括的に、総合的に見ていくべきだろう ということが1つ。  それから、私は石田委員がおっしゃられたことは全くそのとおりで、やはり組み合わせを今後 どうやっていくのかという、いろんな組み合わせと対象者ご本人のチョイスがこれから大事にな っていくのかなと思います。 ○辻座長 ありがとうございます。ほかにどなたかございますか。  大川先生はいかがですか。 ○大川委員 今、御議論されていますように、どういう介護予防のケアマネジメントがなされて いるのかというところが実は一番大事なところではないかと思うのですが、その効果を検証して いくのはなかなか難しくて、例えば調査票では、実はかなり膨大な内容がありますが、まだごく 一部の分析です。勿論、ポイントとなるところ、それから、皆さんが注目しているところを優先 して分析していただいているということだと思います。ですから、実はこれは宝の山でして、ケ アマネジメントとしてどうかという観点をもっと留意しながら見ていくことが次には必要にな ってくるのではないかと思います。費用対効果とか、優先的にやらなければいけないことはある でしょうけれども、内容的には非常に分析すべきところがあるのではないかと思います。  辻先生がプレゼンしていただきました内容に関して、途中で中止をしていらっしゃる方がかな りいらっしゃること自体も、マネジメントも含めまして、かなり関心があるところです。3割強 の方がいらっしゃって、これはなぜ中止かという調査項目は、たしか、かなり細かくあったと思 うので、そこのところの分析も必要なのではないかと思います。かなり早い期間ですごく効果が 上がって、こんなものは1人でできると思っておやめになったかもしれませんし、むしろ短期間 で終了できたら、それが一番いいのではないかとも思いますし、そういう分析もできるのではな いか。また、不満を持ってやめていたという項目もたしかあったように記憶しています。  属性として見るのかというところで、属性だけではなくて、実は効果として見てもいいものが 含まれているのではないかと思います。今回、かなり大事な項目ではないかと思いましたのは、 普段の生活の役割という社会的なレベルのことが出ていて、これは一応、今回はスタートのとき の属性ということで分析していらっしゃいますけれども、これも変化としても見ることができる と思います。家庭の中での役割とか、社会的な役割ももっと広げるように、例えばケアマネジメ ントとか、具体的なサービス事業者でも提供することは必要な項目ですし、介護予防サービス・ 支援計画書の右下の方の総合的方針というものはそういう内容でしょう。そういう社会的なこと をもっと調査していたわけで、例えば1日の中でどの程度動いていたのかとか、生活の場所がど こが主体であったのか、家の中だけなのが、もっと外に出ていたのかとか、そういうこともたし か調査項目がありましたので、そういう社会的な役割、それから、日常の一般的な活動性を上げ るのが廃用症候群の予防においては非常に大事なことですから、そういう観点でも、分析をして いただければと思いました。  それから、いろいろと御意見が出たところに関係することなんですけれども、例えば筋力トレ ーニングにしましても、筋力トレーニングの効果というのか、その筋力トレーニングをした人の 状況の変化と見るのかと、その辺を少し厳密に使う必要があるのかなと思っています。  また、例えば疾患の既往歴があるという人はなかなか効果が上がらないのではないかと最初か ら思い込んでいるところもあると思うんです。ですから、今回は意外と疾患の既往歴があったに しても、それほど悪くはないという読み方ができるのではないか。それから、例えば脳卒中の既 往歴がある人は改善しにくいとかは、逆にそういうものを持っているところにちゃんと効果を出 せるのが本当の介護予防ではないかとも思えるわけです。ただ、これにしましても、いつの時点 で脳卒中になったのかとか、病気を持ったのかということも調査しているわけですから、非常に 以前なのか、ごく最近なのかによっても違ってくるでしょう。そういうふうに、実は宝の山で、 見るべきところはたくさんある。  病気を持っている人に対してどういうふうにやるべきなのかというところは、かなり大事なこ とではないかと思います。もう一つは、いかに生活の活動性を上げるのかというところも大事な ことですので、そういう観点でも分析をしていただければと思いました。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。  岩越委員、どうでしょうか。 ○岩越委員 辻先生の方から御説明いただいた、この結果ですけれども、実際、私どもがやって いる現場の状況とほとんどぴったり実態に合っているという状況はたくさんございます。その中 でも、やはり今の特定高齢者とかでも、そういうメニューに関して、この効果云々というところ があるんですけれども、実際には一定期間、そこの中に利用されている期間が終われば、次に、 そこを維持するための方法とか、場所とか、そこに生活がどういうふうに変わっていくのかとい う辺りまでがやはりつなげられないというのが市町村の実態であります。  それと、市町村によっては、やはり特定高齢者の施策という、事業の内容がかなり対象者を本 当にごく絞って、うんと大きいもので言いますと5項目にかなり近いような方に対してマシン筋 力トレーニングというものをやっている市町村もあれば、まあまあ3項目よりも、ひょっとした ら2.5とか2に近いような方でもマシン筋力トレーニングをやっているところもありますので、 市町村によって、かなりその差が大きい。  そういうことの中でも、何とか体力とか筋力を改善したいという思いを持っておられる方が、 いずれにしても、虚弱であろうが、多少元気であろうが、マシン筋力トレーニング辺りは、そう いうところに関心の高い方が来られているという実態もありますので、やはり、そこに来られな い大半の方、5項目でもひっかかっておられても、実際には在宅でおられる方、そういう方々に 対しての介護予防という辺りがやはり市町村は見出せていない状況があるので、そこのところが かなり気にかかっている状況ではあります。 ○辻座長 ありがとうございました。  ほかに、全体として何か、最後にお一人かお二人、いらっしゃいますか。よろしいでしょうか。  それでは、大体、時間になりましたので、こちらの説明についても以上とさせていただきます。 今、先生方からいただいた御意見を基にまとめまして、更に解析の案をつくりまして、各プログ ラムごとに解析を深めまして、次回、3月の検討会では、また更によい報告をしたいと思ってい ますので、どうぞよろしくお願いいたします。  以上をもちまして、本日の議題はすべて終了となりますけれども、その他で何かございますで しょうか。よろしいでしょうか。 (「はい」と声あり) ○辻座長 次回ですが、一応、年度末に開催いたしまして、それをもって最終回ということでよ ろしいでしょうか。 (「はい」と声あり) ○辻座長 進行を事務局にお返しいたします。 ○天本課長補佐 それでは、これをもちまして、第5回「介護予防継続的評価分析等検討会」を 終了いたします。本日は誠にありがとうございました。 <照会先>  厚生労働省老健局老人保健課 介護予防係   電話:03(5253)1111 内線3946