06/08/09 第10回「子どもの心の診療医の養成に関する検討会」議事録 第10回   子どもの心の診療医の養成に関する検討会        日時:平成18年8月9日(水) 15:00〜17:00        場所:厚生労働省9階省議室 1.開会 ○母子保健課長補佐  定刻になりましたので、ただ今から第10回「子どもの心の診療医の養成に関する検 討会」を開催します。先にお手元に配りました資料の確認させていただきます。もしお 手元にない場合はお知らせくださいますようお願いします。まず「座席表」、それから 後ほど差し替えということを説明させていただきます「資料1」、「会議次第」があり ます。この「会議次第」を一枚めくっていただきますと「資料1」そして「資料1の別 紙」、そして「資料2」があります。  「会議次第」の後の「資料1」は、この検討会の開催要綱で、その裏側に印刷されて いるのは(別紙)で検討会の委員名簿です。  また「別紙」として昨年度ご検討いただいた逆三角形の診療医のイメージ図を載せて います。そして最後の「資料2」が「平成18年度のスケジュール案」になっています。  それから、次の資料の綴りで「資料3」として「子どもの心の診療医の養成に関する 検討会」の平成17年度の報告書の概要版と報告書全文があります。報告書全文という のはピンク色の小冊子です。この概要版および報告書全文については、厚生労働省のホ ームページに掲載し、都道府県・関係団体等に広く回答させていただきました。  それから、参考資料として厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)の主 任研究者、裄V座長の「子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究」の 平成17年度の報告書。3年間の研究で、その初年度の平成17年度の報告書が紫色の 表紙で一冊あります。そして、そのポイントをまとめたパワーポイントの資料集があり ます。  そして最後に、もう一つ別綴じで「平成17年度報告書を受けた関係者の取組みの状 況について」というやや厚目の資料がありますが、これには委員の先生方からご提出い ただいている各種資料と、厚生労働省関係課から提出されている資料を綴じております。 また、本日この綴りの厚生労働省提出分として「児童相談所・情緒障害児短期治療施設・ 医療機関等医師専門研修」を追加させていただきました。  平成17年度の第9回「子どもの心の診療医の養成に関する検討会」の議事録は、厚 生労働省のホームページにアップロードしています。資料は以上です。お揃いでしょう か。  次に、今回検討会委員の交代がありましたので報告させていただきます。「議事次第」 の後ろにある「資料1」の裏側の(別紙)の委員名簿をご覧ください。もう1点、この委 員名簿と資料の上の方に置かせていただいた両面コピーの「資料1差し替え」という資 料がありますので、こちらの委員名簿をご覧ください。  まず、日本医師会の理事の改選があり伯井委員が今村委員と交代されましたので、今 村委員から一言お願いいたします。 ○今村委員  日本医師会常任理事の今村定臣です。4月1日から伯井委員と交代しました。母子保 健を担当させていただきます。よろしくお願いします。 ○母子保健課長補佐  ありがとうございました。また、遅れてご到着の予定ですが、昨年度は事務局サポー トチームとしてご協力いただいておりました市川委員、宮本委員にこの度委員にご就任 いただきました。後ほど市川委員がお見えになりましたら一言ちょうだいしたいと思い ます。また宮本委員は本日ご欠席とのことです。本日は委員16名がご出席で、冨田委 員、宮本委員がご欠席です。  また、年度が変わり委員の方々の所属や代表されている組織の役職の変更などがあり ましたのでご紹介させていただきます。資料1の差し替え版の方をご覧ください。  まず、齋藤委員が国立精神・神経センター国府台病院リハビリテーション部長に所属 が変わられました。先ほどお配りした資料が古くなっており大変失礼いたしました。正 しくは、差し替えの方の国府台病院リハビリテーション部長でいらっしゃいます。  それから、別所委員が社団法人日本小児科学会会長になられました。また、保科委員 が社団法人日本小児科医会会長になられました。裄V委員が日本子ども家庭総合研究所 の所長になられました。山内委員が日本精神神経学会監事になられました。吉村委員が 全国医学部長病院長会議の顧問になられました。  ほかにご所属や役職が変わられた委員はおられますでしょうか。ありがとうございま した。  では、今回が本検討会の平成18年度の第1回目ですので、北井雇用均等・児童家庭 局長から一言ごあいさつ申し上げます。 ○北井雇用均等・児童家庭局長  雇用均等・児童家庭局長の北井です。本日はお忙しいところをお集まりいただきあり がとうございます。昨年度の裄V座長をはじめとして、委員の皆さま方には1年間にわ たり活発にご議論いただき、おかげさまで「中間的な検討会報告」を取りまとめていた だきました。誠にありがとうございます。  今年度は、こういう成果も出たわけですから、「子どもの心の診療医」を3段階にま とめた、それぞれの教育研修の到達目標であるとか、養成研修の当面のモデルを関係者 に広くご参考にしていただいて積極的にご活用いただきたいと思っていますので、力を 貸していただきますようよろしくお願いします。  さて、今年度の検討会でお願いしたいことが三つあります。一つは、なじみの深いこ の逆三角形図の一番上の、「一般の小児科医・精神科医」の先生方のグループのための 共通テキストやカリキュラムを作ることです。二つ目の検討テーマは、この逆三角形図 の真ん中「子どもの心の診療を定期的に行っている小児科医・精神科医」の先生方のた めの共通テキストやカリキュラムを作ることです。三つ目は、昨年度はあまり議論を深 めるところまで行かなかったと聞いておりますけれども、三つ目のグループの「子ども の心の診療に専門的に携わる医師」の養成方法を詳細に検討していただくことです。  この三つの検討をお願いできないだろうかと考えていますので、どうぞよろしくお願 い申し上げます。 ○母子保健課長補佐  ただ今、市川委員が到着されましたので、一言お願いいたします。 ○市川委員  遅れまして申し訳ございません。市川です。よろしくお願いします。 ○母子保健課長補佐  それでは、裄V座長、よろしくお願いします。 2.平成18年度の事業計画とスケジュールについて ○裄V座長  裄Vです。昨年度は当検討会において委員の方々の絶大なるご協力・ご指導をいただ き、昨年度の成果としての報告書をまとめることができました。それに続いて、今年度 はさらに実現に向けて大きなステップを踏み出さなければなりません。検討会の委員の 先生方には、ぜひ今年も昨年に変わらずご指導を賜りたいと思いますので、よろしくお 願いいたします。それでは座って議事を進めさせていただきます。  ただ今、北井雇用均等・児童家庭局長から今年度検討すべき内容についてお話があり ました。事務局から平成18年度の検討会の方針とスケジュールについて説明をお願い します。 ○母子保健課長  ご説明申し上げます。「資料2」をご覧になりながら話を聞いていただきたいと思い ます。今、北井雇用均等・児童家庭局長が話をしましたので重複するところもあるかと 思いますが、先ほどの逆三角形の図で言いますと、一番面積の広い(1)と呼ばれるところ と真ん中に相当する(2)、この第1番目と第2番目の医師については、先ほど話をしまし たように共通のテキストやカリキュラム作りという宿題が残っているだろうと思います。 そういうことを考えますと、その「資料2」にもありますように、あまり検討会を開い てこの場で細かくご議論いただくというよりは、テキストやカリキュラムの作成という ことになりますと、いわば宿題的にご検討いただき取りまとめていただくのかなと考え ました。そこで事前に裄V座長とも相談したのですが、それぞれのテキスト・カリキュ ラムごとに数名の委員にお集まりいただき、その方に取りまとめ役をお願いして数名の チームでテキストをお作りいただこうかと考えています。  先ほど局長の話にもありました三角形の尖った部分、特に高度で専門的な医師のグル ープについては、まだテキストとかカリキュラム作りという話ではないと思いますので、 もう少し養成の方法についてディスカッションしていただく必要があるだろうと思いま す。これについても「たたき台」が必要だと思いますので、これもテキストやカリキュ ラムと同様に、取りまとめ役の委員の方をご指名いただき、その方が中心になってまと めていただくという形式にしてはどうかと考えています。  そういうことですから、昨年に比べれば頻度はもう少し少なくてもいいと思います。 さしあたり3回ぐらいで進める。もちろん進行の状況によっては4回、5回と開いてい ただくことがあり得るかもしれませんが、3回ぐらいでやるという気持ちで取り組んで いただければと思います。  第1回が今日、8月9日ということですが、ここは会議次第とも重複しますので省略 しますけれども、11月ごろには進捗状況を確認していただく。2月はおおよそプロダ クトができあがっていると思いますから、そのプロダクトを持ち寄っていただいて、全 員でディスカッションしていただくという感じだと思います。  また並行して、先ほどから何度も言いますが、三角形の一番先端の高度・専門的な医 師の養成については、レジデントというような話もありましたけれども、長期の研修の ようなものもあり得るのか否かといったことも並行してご議論いただくことになるかと 思います。  それから、今、今年の全体の進め方とかスケジュールの話をしましたけれども、少し 別の話として、厚生労働科学研究の動きについて説明します。昨年度も何度かご紹介し ましたが、厚生労働科学研究、いわゆる「子ども家庭総合研究事業」の中で、言うなら ばこの検討会と表裏一体と申しますか、黒子の役割を果たすような意味合いで研究を進 めていただいています。その中でも現状把握というところにポイントを置いてご議論い ただいております。これまでの検討会でも問題になりましたように、そもそもどのくら いの患者と言いますか、子どもの側にどのくらいのニーズがあるのか。その子どものニ ーズを満たすためにはどの程度のレベルの専門家がどのくらい要るのかといった話があ ったと記憶しています。そういうことで、研究班は今年がちょうど2年目ですので、こ の2年目ぐらいには、そうした基礎データを基に、需要と供給という辺りの大雑把なデ ータのご提示をいただけるのではないかと思います。いずれにしましても、この検討会 の黒子の役割として並行して進んでいる研究の動きについても、主任研究者を務める 澤座長から、時間をいただいてご説明いただくことにしています。以上です。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。ただ今、母子保健課長から今年度の進め方について 説明がありました。その中にありましたように、あらかじめテキスト・カリキュラム作 りについてご相談申し上げ、取りまとめ役と、それと共にグループを作っていただく委 員をこちらで考えさせていただきました。  そのお名前を申し上げたいと思います。第1の医師グループ、逆三角形の一番底辺の グループで「一般の小児科医・精神科医」のレベルアップというところを担うグループ ですが、これについては私がまとめ役を務めさせていただき、それに日本小児科学会の 別所委員、日本精神神経学会の山内委員、日本小児科医会の保科委員、日本精神科病院 協会の森委員、それに今度新しく委員に加わっていただいた宮本委員と相談しながら原 案作りを進めたいと考えております。このように考えていますので、もし何かご意見な どありましたら伺いたいのですが、よろしいでしょうか。  続いて、第2の医師グループ、「子どもの心の診療を定期的に行っている小児科医・ 精神科医」ということで、ある程度の専門性を持った医師ですが、この第2の医師グル ープについては、六つの関連学会の連絡会を作り、その下にワーキンググループが組織 されて、そこが実際の具体的な検討を進めようということでやっております。その連絡 会の中心となって進めているというか、事務局をなさっている奧山委員に取りまとめ役 を務めていただき、そこには分科会の代表のような立場で委員に加わっている桃井委員、 牛島委員、冨田委員、星加委員、そして今度新しく委員に加わった市川委員にグループ を構成していただき、相談しながら進めていただければと思います。  この第2の医師グループ用の研修については、主として今申し上げたような関連学会 が共同で進めていただくことになりますけれども、既に一つの案として、来年の3月1 7日土曜日に国立成育医療センターで「モデル研修」を行うという話が進められていま す。この「モデル研修」の評価などもテキスト・カリキュラムの作成に反映させていた だきたいと思います。奧山委員よろしいでしょうか。 ○奧山委員  はい。 ○裄V座長  それでは、この第2グループについてはそのようなことでお願いしたいと思います。 第3の医師グループは、高度の専門性を持った医師の養成ということになるわけですが、 先ほど北井雇用均等・児童家庭局長、母子保健課長からのご説明にもありましたように、 このグループについては、従来あまり突っ込んだ議論がされておりません。そこで、養 成研修のあり方をより具体的に提言する必要がありますので、議論の「たたき台」作り については齋藤委員に取りまとめ役を務めていただきたい。そこには、レジデント研修 を含めた高度専門家の養成を担う施設ということで、西田委員、杉山委員、また奥山委 員にも加わっていただいて進めてはどうでしょうか。そこでの議論を基に、次回の検討 会で議論を行っていきたいと思います。そのようなことで、齋藤委員いかがでしょうか。 ○齋藤委員  基本的にはそれで結構です。ただ、全国児童青年精神科医療施設協議会と子ども病院 の連合体、この二つが中心になると思いますので、市川委員にも加わっていただいて話 を進めていければと思っています。 3.厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究)「子どもの心の診療に携わる専門的人材の 育成に関する研究」(主任研究者:裄V正義)報告について ○裄V座長  今、名前が出ましたが、これは明確に区分されるものではないので、ぜひお互いに協 力し、相互乗り入れしながら話を進めていくというか、検討していく必要もあると思い ます。むしろそのようにしていただいた方がよろしいと思います。  こういったことで、三つのグループに分かれて平成18年度内にテキスト・カリキュ ラムの作成を行っていくわけですが、9月には委員の皆さまを通じて原稿の執筆の依頼 ということまで進め、年度末には取りまとめるというスケジュールを考えています。ス ケジュール的になかなか大変ではありますけれども、ご協力をよろしくお願いします。 そういったことで、11月あるいは12月に予定されている次回の検討会では、各グル ープの作業の進捗状況の確認を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  そこで、今日は少し時間をいただいて、先ほど母子保健課長からお話がありました厚 生労働科学研究の平成17年度の報告をしたいと思います。「子どもの心の診療に携わ る専門的人材の育成に関する研究」平成17年度総括・分担研究報告書がお手元に配ら れていると思います。また今日の報告・発表については、その研究成果を要約したパワ ーポイントをプリントした資料がお手元に配られていると思いますので、それに沿って 説明をさせていただきます。全体の発表といいますか報告を40分程度で予定しており ますので、大変駆け足のご報告になるかと思います。このパワーポイントの資料と、そ れから、もっと詳しいことに関しては、この報告書自体を参照しながら聞いていただけ ればと思います。  「子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究」の平成17年度の研究 成果、今、お話ししたパワーポイントのスライドを2つずつプリントしたものを見てい ただくと、一番上は表題ですけれども、その下に研究組織と分担研究課題が書いてあり ます。この研究班は、平成17年度から3年間の予定で、この検討会とある意味並行す るような形で、あるいはまた表裏一体となって走って参りました大型の研究班で、主任 研究者のほか、9名の分担研究者によって構成されております。一部の分担研究者が、 本検討会の委員とも重なっておりますことは、ご覧になっていただければすぐにわかる と思います。  めくっていただきますと、色付きの模式図があります。これは3年間の研究の全体の 流れを模式的に示したものです。この研究班の目的はここに示しましたように、子ども の心の診療の必要性を明確化する。子どもの心の診療に関する望ましい医療システムの 提案を行う。子どもの心の診療を担う医師およびその他の医療者の人材育成に関する提 案を行う。子どもの心の診療に必要な、医療・保健・福祉・教育・警察・司法といった さまざまな機関の連携のあり方の提案を行う。こういったことを最終的な目的として、 17年度、18年度、19年度の3か年の研究が計画され、平成17年度の研究につい ては成果が一応まとめられています。  平成17年度につきましては、子どもの心の診療の需要と供給の実態調査を行ったの が、主な研究内容となっております。平成18年度にはより詳細な分析を進めるととも に、カリキュラム・ガイドラインの作成を行いたい。さらに平成19年度はモデル研修 などを行って、作成したガイドライン等の評価を行うという計画になっております。そ ういったことでこの3年間の研究を通じて目指す成果は、それも下にまとめてあります けれども、どのようなニーズがあるかを把握し、それに対し現時点での医療提供はどの ような問題があるかを把握する。どのような人材が必要とされるかを把握する。どのよ うな研修システムが必要とされているかの把握を行う。人材のトレーニングシステムの 提案。それに必要なカリキュラム・ガイドラインの作成といったことがプロダクトとし て出てくると考えております。平成17年度にしましても、各分担研究者が非常に多岐 にわたる調査を行っております。本日の報告はごくかいつまんだものになります。詳し くは配布した総括・分担研究報告書をご覧いただきたいと存じます。  その下に目次を示してありますけれども、この目次に書いた順序に従ってそれぞれの 研究の概略を報告したいと思います。最初は「子どものこころの健康支援に関する研究 (全国保育園・小中学校との連携に関する調査の中間報告)」という表題になっていま すけれども、ニーズに関する調査です。これについてはこの後、奥山委員からご報告い ただき、その後のテーマは全体として、医療提供側の実態調査になるわけですが、私が まとめて報告しようと思います。それではニーズに関する調査を奥山委員から説明して いただきます。 ○奥山委員  大きく1枚刷りになっている「子どもの精神的な問題に関するニーズ調査」というパ ワーポイントの資料を開けていただきたいと思います。まず簡単に、方法ですけれども、 全国の公立の小学校・中学校と全国保育園協議会加盟の保育園を対象としました。これ は文部科学省、厚生労働省の保育課および全国保育園協議会の方々にご協力をいただき ました。それぞれ全部の20%を無作為抽出しました。対象の期間ですけれども、1年 間の研究でしたので、その年度に回答を出すためということもあり、平成17年4月か ら18年1月までに把握できた問題を2月に調査させていただきました。郵送の調査を し、回収率は保育園38.2%、小学校45.5%、中学校49.2%でした。  次のページをめくっていただいて、精神的問題がどのくらいあったか。この精神的問 題の程度としましては、「何らかの対応が必要となる程度の精神的問題」という書き方 でピックアップしていただいております。精神的問題への対応を経験したことがある学 校は、保育園・小学校辺りですと77〜79%、約80%です。中学校になると約90% ということになります。対応を要した子どもの比率ですけれども、これは各学校の在籍 人数、あるいは保育園の在籍人数がわかりますので、それを全部合わせて何らかの対応 が必要となる程度の精神的問題を持った子どもの数との比率を出してみますと、保育園 では約4.43%の子どもに何らかの対応が必要となる程度の精神的問題があった。小 学校では2.65%、中学校では3.99%という結果になっております。  その次をめくっていただきますと、どんな問題がどんな年齢に多いのか。これは恐ら く子どもの心の問題を扱っている先生方にとっては当たり前のことだと思いますけれど も、発達の遅れで何らかの対応が必要だった子どもは保育園に多く、段々と減っていく 傾向がございます。恐らく小学校くらいになると対応が決まっていって、中学校になる とそれほど新たな対応が必要ではなくなるということが言えるのではないかと思います。 それに反して、やはり不登園・不登校、それから心の問題が原因の身体症状といったよ うな問題に関しましては、大きくなるに従って問題が増えて参ります。特に不登園・不 登校に関しては中学校で圧倒的に増えていることがおわかりになるかと思います。その ほかに数は少ないのですけれども、21ページを開いていただきますと非行の問題など も少し出ています。それもやはり大きな学年で多くなっていると言えると思います。そ のほかにここに挙げてありますように行動の問題、こだわりの問題などは逆に小学校の 時代に多いという形になっております。  次は保育園や学校がどのような連携をされているのかについて伺いましたが、保育園 や学校のみで対応したというのは保育園の方が低く中学校の方が高くなります。つまり 年齢が低いほど何らかの形で自分の所だけではなくてほかと連携をしていたという形に なっております。医療機関との連携がどれくらいあったのかに関しましては保育園では 22%、小学校では20%、中学校では16%程度です。中学校がやや低いですけれど も、おおむね2割の子どもに関して医療機関との連携がなされていたことになります。 連携をしなかった理由としては、相談に行くほどではないと判断されたということ。そ れから相談に行くのを本人や家族が嫌がったということが挙げられております。  最後のページですけれども、医療機関との連携をされた場合にどのような利点・問題 点があったかになります。利点としては的確な診断がなされた、あるいは家族への支援 がなされた、対応方針の示唆が受けられたというようなことが多く挙げられておりまし た。問題点としては2割ですのでそれほど多くはないですけれども、本人または家族に 勧めにくかった、あるいは予約が取れずに受診までに時間がかかったというのが見られ ました。また、全体として今精神的な問題を持った子どもに関して困っていることはど ういうことかということでお選びいただいたのですけれども、一番多かったのは家族へ の対応に非常に困っている。そういう保育園・学校が6割5分ほどありました。また病 気かどうか迷うというのも5割弱ある。ということは、これはやはり医療機関との連携 がかなり求められていると見てもいいのではないかと思いました。以上、「ニーズおよ び連携に関しての調査」に関して簡単に説明させていただきました。 ○裄V座長  大変膨大なデータの分析を非常にコンパクトに報告していただいたわけですが、詳し くはこの報告書の10ページから30ページにわたって記されておりますので、それを 見ていただければと存じます。ただ今の報告に関して委員の方々の中から何か質問はご ざいますか。もしあれば、一人二人承りたいと思います。はい、どうぞ。 ○森委員  今の報告について、少し簡単な疑問なのですけれども、教えてください。「精神的問 題の年齢ごとの割合」というグラフがあります。この縦軸はパーセントですか。 ○奥山委員  そうです。これは絶対数ではなくて、パーセントです。問題がある中でどのくらいの パーセントがどういうものだったかということです。 ○森委員  少し気になったことがありまして、不登校がどんどん増えていくのはよくわかるので すが、一般的に不登校になるものには、身体症状が合併したりいろいろしますよね。そ ういうものは区別されるのですか。 ○奥山委員  主としてどのような問題かで入れていただいているので、不登園・不登校に入ってし まうと恐らく身体症状の方には入れていないと思います。 ○森委員  そうですよね。そうでないと、身体症状がどんどん減少していることになってしまう。 ○奥山委員  人数を数えたかったので、主たる問題1つをあげていただく形をとりました。 ○森委員  例えばコミュニケーションの障害が非常に強い、強いけれども不登校にはなっていな い場合はコミュニケーション障害になると思います。が、コミュニケーション障害が強 いけれども不登校も起こしていたらどちらになるのですか。 ○奥山委員  それは学校の判断でどちらが主たる問題かというデータです。 ○森委員  わかりました。ありがとうございます。 ○裄V座長  よろしいでしょうか。はい、どうぞ。 ○山内委員  学校の連携が求められているというお話に関連してですが、質問8に学校医などどう いう所に連携を求めたかが問われています。回答の内容として、学校医はこの場合には かなり役割を果たしているのでしょうか。 ○奥山委員  学校医。質問の9番ですね。 ○山内委員  つまり、おっしゃるように病気かどうか迷ったりいろいろなことで、今後どういうと ころと連携をとればいいのかと考えたときに、学校医は役割を果たしているのかどうか 知りたいのです。 ○奥山委員  すみません。これは中間報告なので、必要なところだけピックアップして最初にデー タを出してしまったものです。この先もう少し細かく分析していきたいと思います。 ○山内委員  またわかったら教えてください。 ○裄V座長  今お話ししたように中間報告ですので、もっと細かいさまざまな分析が必要になって くるのだろうと思います。  それでは時間もございませんので、今度は医療提供側のさまざまな調査を、私の方か らかいつまんで報告いたします。先ほどのパワーポイントの配布資料を1枚めくってい ただくと、3ページの上のところからになるわけですが、個別の研究結果の前に、班全 体で行った調査の流れを示しております。  この研究班においては小児科・精神科の比較対照も大変興味があるところですので、 それを比較対照できるように共通の様式、また特に共通の病名で調査できるように調査 票を工夫してあります。そういうものを用いてほぼ同一の様式で施設に対してのアンケ ート調査を行っています。病院の小児科、これは大学病院、小児科専門医の研修指定病 院、また小児病院をいわゆる「病院 小児科」としてまとめてありますけれども、65 4か所にアンケートを郵送して448か所から回収された。回収率が68.5%。病院 の精神科に関しては大学病院の精神科、また国立病院・県立病院の精神科、そしてまた 精神科単科の病院も含まれていると思いますけれども、288か所に発送して115か 所から返答が得られ、回収率は40%程度。そのアンケートの内容は、病院特性、そし てここに調査項目として書いたようなことを調査いたしました。個別のことはまた後ほ ど出て参りますのでその際に申し上げます。こういった調査を行って、その調査票の流 れと内容が下の模式図に書いてあります。  小児科、精神科それぞれに対して、子どもの心の問題に対応する外来があるかという 質問についてイエスと答えた施設とノーと答えた施設に分かれ、イエスと答えた小児科、 精神科それぞれについて調査をしております。さらに当該コメディカル・スタッフがい るかという質問に対して「いる」と答えたところに関してはコメディカルについての個 別的な業務の内容を調査しております。そして子どもの心の問題に対応する外来がない と答えた施設については、そういった所に心の問題を持った子どもたちが受診した場合 にどのように紹介するかという調査をしております。これが全体の調査の流れです。  この後、個別の調査結果についてごく簡単に申し上げていきますけれども、最初に大 学病院、総合病院の小児科における子どもの心の診療に関する研修の実態という調査が なされております。個々のデータ、調査内容などは報告書を見ていただくこととして、 結論だけを申し上げますと、心の問題に関連した研修は、専門研修、いわゆる後期研修 の中に組み入れる必要がある。逆に言いますと卒前教育や卒後の初期臨床研修での充実 についてはかなり困難があるのではないかという考察になっております。後期・専門研 修の中では、一般小児科医の初期対応の診療水準を上げるということが研修の目的にな りますけれども、そのためには心の問題の研修を指導できる小児科医の育成が必要だと いうことと、またこの後期・専門研修のために多彩な選択肢が必要になるということが この最初の調査の結論として挙げられております。  次に「児童・思春期の心の問題に関する全国精神科医療機関に対する調査」という表 題が付いておりますけれども、これは今の病院小児科に対応して病院精神科に対する調 査という位置付けになるかと思います。これも報告書にはたくさんのグラフを用いて詳 しいデータが示されております。それを見ていただくとして、結論としては児童・思春 期の問題への特別外来を有するのは約半数に過ぎない。児童・思春期の問題に対する精 神科的な特別外来の基本骨格として、ここに五つ挙げたようなことが求められる。さら に入院機能等を有する場合はここに書いたようなことが求められるという結論になって おります。先ほど述べた小児科での調査と精神科での調査、両方の調査を対照すると、 この比較対照は今年度詳細に行う予定になっているわけですが、特別な外来を有するの は共に約半数だということが出てくると思います。そこで診療に従事する医師は共に1 〜2名という所が大部分を占めている。患者の内容としては、小児科では不登校や軽度 発達障害、不定愁訴、神経性食思不振症などが割合として多い一方で、精神科はこれら も多いわけですが、このほかに神経症性障害、気分障害、統合失調症など、より精神疾 患と位置付けられる病気を持った子どもたちの受診が多いという、ある意味では当然の 結果が出ていると思います。  どんどんめくっていただいて、次は「小児病院における子どもの心の診療を行う人材 育成とチーム医療や連携に関する研究」という表題で、これは全く予備的な調査の段階 ですが、小児総合医療施設いわゆる小児病院は現在26ある中で、専門医師が存在する 施設は19施設、73%である。携わる医師数はそこに書いてありますように1人、2 人、3−4人といったところが多い。研修システムを有する施設は4施設。それからレ ジデント・研修医等の実績がある施設が6施設。外部に向けて研修講座等の実績がある かどうか。また精神科の病棟を有する施設が2施設でそのうち専用の病棟を有するのは 1施設にすぎないということで、これは、本年度はやはり、より詳細な調査を行わなけ ればいけないと思っております。  その次は全国児童青年精神科医療施設協議会。これは小児精神疾患の入院病棟を有す る施設だと思います。重症な患者の入院治療ができて、ここで長期のレジデント研修が 可能な施設と思われます。そういうことで第3のグループの研修などを担う施設がここ に含まれているわけですが、そこでの研修の現状というのは幾つかのグラフに示した通 りで、現在研修医のいる施設はそのうちの12である。その中でまた小児科医は非常に 限られた数でしかない。基本研修期間としては不定というのもありますけれども2年、 3年といったところが多い。研修可能な精神障害としては不登校から始まってそこに書 いてあるようなものが多くの施設で研修可能だと出ておりますけれども、10番目の「そ の他」はチックやてんかんや精神発達遅滞、それから身体疾患に伴う精神的な問題とい うようなもので、これらについての研修が十分できていない。さらに虐待の症例経験が 十分できないということはあるのではないかと思います。  このような施設で想定される研修の基本骨格が、その次に個条書きでまとめられてお ります。一桁前半の研修医を対象としている。2〜3年を基本研修期間としている。外来 主治医と入院主治医を基本セットとする研修。症例検討会を基本として個人スーパーバ イズ・診察の陪席・講義を組み合わせた指導をする。偏りなく精神障害全体を網羅する ことを研修の目標とする。精神保健指定医資格の取得を推奨する。このようなことが、 こういった施設での研修のあり方としてまとめられております。  その次はまた別の分担研究者による研究ですが、大学病院の精神科における「子ども のこころの診療」のあり方と人材育成に関する研究で、九州大学病院で2005年に「こ ころと発達外来」という専門の外来をスタートさせました。そこでの前方視的な検討の 現在進行形の研究の中間報告がなされております。「こころの発達外来」の枠組み、機 能、ネットワークを示す模式図がありまして、そこでの経験が下のようにまとめられて おります。  大変駆け足で申し訳ありませんけれども、また少し話が変わります。日本児童青年精 神医学会では認定医制度をスタートさせていらっしゃいます。現在113名の認定医が いるとのことですけれども、その人たちご自身の研修経験、また望まれる研修について のアンケートを行っております。こういう形で認定医になっておられる先生はほとんど が精神科医で、スタート間もない制度でこの資格を取られた先生は、このグラフで見る ようにかなり長い経験を積んでいらっしゃる医師が多いようです。下のグラフで示しま すように10個の項目について、「充分に研修経験が得られたと回答した人数」を多い 順に示しております。虐待事例の経験を積むことは難しいことがわかります。  この調査の結論として、研修施設に求められるものとして、指導、研修については、 複数の指導者、認定医の存在、充分なスーパーバイズなど、ここに書いてあるようなこ とが求められる。また連携について、それから病院、症例について、このようなことが 研修施設として求められるとしております。  以上はむしろ2番目、3番目のグループの医師の養成に関連した実態調査ですが、こ の後は一般小児科医・一般精神科医の子どもの心の診療の一面について行った調査にな ります。  まず平成11年度から日本小児科医会が行っている「子どもの心研修会」受講者への アンケート調査が、12ページの下のところから出ております。この研修会では、受講 者中希望者を「子どもの心相談医」として登録しております。現在までに1,160名 の「子どもの心相談医」の登録があるということです。その中で、平成17年度後期の 研修会の受講者に対して、「子どもの心の診療」についての受講前後のアンケートによ る意識調査を行っています。受講者数は360名で、受講前に300名から、受講後に 277名から回答が寄せられています。例えば平成17年度には前期の研修会と後期の 研修会があり、その後期の研修会の前後で調査をされたということです。これも多岐に わたるアンケート調査が行われていますけれども、幾つかピックアップした結果をグラ フに示しております。今後、心の問題に対応できそうかという質問に対して、受講前は 「記載なし」というのが多いのですが、受講後は「何とか対応できそう」というのと、 「対応は大変そう」というのが共に増えています。「子どもの心の相談医となられます か」という質問に対しては、受講前は「受講だけでは心配」という返事が多いようです が、受講後は「少しは相談されてもよい」という返事が多くなっています。  次のページに、これは受講後だけの質問ですけれども、「ある程度は対応できても」 という質問に対して、「それ以上は精神科」に紹介するという返事が多いわけですが、 「送る場所がない」あるいは「送る場所はあるけれども受診までに数か月かかる」とい う返事がかなりあるというようなことも問題かと思います。これはいわば一般小児科医 についての「子どもの心の診療」に関する意識調査ですが、その次は精神科の開業医に ついての調査です。  これは全国の精神科診療所の悉皆調査という点で非常に重要だと思います。アンケー トの送付数は4,248で、有効回答の割合はその約1/4に当たります。この調査を された先生方のまとめたものを幾つかのスライドに示しております。回答施設について のまとめとしては、精神科診療所が平成に入って飛躍的に増えている。一つの診療所の 精神科医は常勤1名と非常勤0.7名で、そのうち小児精神を専門にしていると言って おられるのは1割程度です。1か月の受診患者は400名程度なのですが、そのうち子 どもの患者は23名(5.5%)ということで、年齢的な内訳としては高校生が多く、病 気としては神経症と発達障害が多い。入院の必要があった子どもは稀であるということ です。  その下のグラフは、1か月間の子どもの受診数を病名と年齢区分で分けてグラフに示 しております。当然のことながら年齢区分によって疾患が大きく異なっています。病名 の方はICD−10のコードで示しておりますが、F2は統合失調症、F3は気分障害、 F4は神経症性障害、F6は人格障害、F7は知的障害、F8は発達障害、F9は行為 障害、行動の障害で、多動性障害はF9に入っています。最後のG40はてんかんです。 これで見ると、統合失調症、気分障害、神経症性障害といったところは年齢が長じるに つれて多くなっています。一方で、知的障害、発達障害、多動性障害といったところは 就学前や小学生に比較的多いというようなことがグラフに示されています。  この調査の中で、各診療所で最も子どもの診療を行うことの多い精神科医の診療活動 について群分けを行っております。「専門的診療群」というのは子どもの診療に専門的 にかかわっている。「積極的診療群」は子どもの診療は積極的に行っている分野の一つ である。「他年齢と同様群」というのは子どもも大人も老人も年齢によって区別なく同 様に診療している。「他機関紹介群」は子どもの診療は最初からできるだけ他の医療機 関へ紹介している。このように分けますと、「専門的診療群」と「積極的診療群」を合 わせたものが、全体のちょうど1/4となっています。そして、他の年齢と区別してい ないというのが1/4、また、子どもが来院しても他機関に紹介するというのが1/4 となっています。「他年齢と同様群」と「他機関紹介群」を合わせると半数以上を占め ることになります。  そこでのまとめは、子どもを他の年齢層と同様に診療している医師が最も多い。専門 的・積極的に診療を行っていない医師は、軽度発達障害の診断を行っていない医師が多 い。精神科の診療所は、学校などからの相談を受けていることが多い。専門的・積極的 に子どもを診療している医師への相談が学校などから多いわけですが、そうではない医 師にも相談がかなりきている。専門的・積極的に子どもを診療している医師は、他の機 関と連携を取ったり、顧問医などとして訪れることが多いが、そうではない医師は関わ りが少ない。そういったことが結論として挙げられています。  続きまして、「小児科と精神科の連携及びその有効な育成のあり方に関する研究」と いう表題になっていますけれども、最初にご説明した班全体としての調査で、うちの施 設では子どもの心の問題に対応する外来はないという返事をした施設について、別個の 調査をしております。それは196施設で、小児科が164、精神科が32を占めてい ます。しかし実際にはその95%、ほとんどの施設に、心の問題を持った子どもが来院 しているということが示されております。  そのような場合に、その患者を他科あるいは他施設に紹介するわけですが、半数以上 の施設で紹介に際して困ったことがあり、その内容は複数回答で、「長期の待機期間」、 受診まで非常に長く待たされるということ、また「紹介先が分からない」というのが非 常に多くの施設から述べられています。一部に「紹介先から断られた」とか「短期間だ けの受け入れ」ということで受け入れられたということもあるようです。  この調査のまとめとして、子どもの心の専門診療体制を持たない小児科・精神科でも、 ほとんどが、中学生までの子どもの心の診療を経験し、初期対応と紹介先への受診待機 中の関わりをしていた。結論的には一般小児科・精神科が子どもの心の診療に既にかな りの割合で関与しており、これらの医療機関の診療技能向上のための研修体制を作るこ とが、心の診療体制充実のための現実的な方法論となる。一般病院における神経性無食 欲症に対する診療技術を向上させることは、小児科、精神科の双方への紹介患児を減少 させることにつながる。地域において紹介できる専門機関の情報を簡便に得ることがで きるシステム構築が必要である。このようなことが結論として出ております。  その後にはコメディカル・スタッフの実態調査もやっておりますが、これについては 話を省略させていただきます。  以上、非常に多岐にわたる調査を駆け足でご紹介しました。それぞれの調査について は、分担研究者の名前をそれぞれのスライドの右下に小さく記載してあります。ここに も分担研究者の先生方がいらっしゃいますので、何か追加する点やご質問がありました らお願いしたいと存じます。何かございますでしょうか。  それでは、分担研究者に限らずどなたでも、何かご質問があれば承りたいと思います。 最初に課長からありましたように、研究班は子どもの心の問題に関してのニードを把握 するとともに、医療提供者については、ある程度の専門性を持った医師の現状と必要数 の差がどのくらいか、また高度の専門性を持った医師が現状でどのくらいか、ニードを 満たすためにはどのくらい必要か、そのためにはこれからどれくらい養成していかなけ ればならないか、そういったことが研究班に求められている。また、検討会でもそうい うことを検討していかなければならないわけです。ご報告した調査の中で、そういった ことを把握していく上である程度役に立つ調査結果も得られているのではないかと思い ます。それを全体としてまとめ、結論として申し上げることに関して、もう少し作業が 必要だと私は受け取っております。  奥山委員、齋藤委員、何か付け加えることがございますか。あるいはそのほかの先生 方も。 ○牛島委員  一般の小児科医・精神科医にどのような形で接近していくかということ、それから専 門的ないわゆる全国児童青年精神科医療施設に所属するような方々の研修といったこと は大体見えてきたのですが、真ん中の部分がはっきりしないという印象は少し受けまし た。ちょうど私どもの担当の部分ですので、もう少ししっかりしなければならないとい う気はしております。 ○裄V座長  そこの人数の把握というか、必要性の把握というのは一番難しいところだと思います。 ○桃井委員  おっしゃる通り全体的なニーズを出すということは、今後、診療体制・診療報酬等を 考える上でも規模を考えるのは極めて重要なことだと思います。大変膨大な研究成果を 拝見して、精神科からあるいは小児科の立場からいろいろなデータが出てきていますけ れども、ざっと拝見して、特に発達障害に関しては、小児神経のような神経外来で診て いる。かなり大きなニーズが抜け落ちやすい構造になっていないかと思います。どうし ても神経といいますとなかなか心と結びつきにくいという一般的なイメージがあります。 2回目でしたか、その名称はさまざまですが小児神経外来で発達障害に従事し、多数の 患者を見ておられる方々が、専門医1,000人以上の中のほとんどですので、そのニ ーズの漏れないような調査をしていただきたいと思います。 ○裄V座長  今、桃井委員がおっしゃったことは全くその通りだと思いますし、これからの検討に 際してその点はきちんと留意していかなければいけないと思います。そして、第2の医 師グループの研修・テキスト・カリキュラムあるいはガイドラインといった作成にかか わるグループには、関連学会として小児神経学会も加わっていただいておりますので、 そこでは十分に反映されるだろうと思います。 ○奥山委員  報告書の36ページを見ていただきますと、小児科に関しては「心身症や軽度発達障 害に対応できる外来」という聞き方をしており、いわゆる心身症外来とか精神保健外来 という名前を付けずに尋ねております。神経外来も回答に入ってきていると思います。 ただ、これをした印象としては、たぶん星加委員に詳しくまとめていただいたのだと思 いますけれども、かなり多くの病院がそういう専門外来を持っておられるのですが、医 師が1人、多くて2人なのです。ですからその先生が辞めると無くなってしまいそうな、 非常に不安定な外来の形態が多かったというのが一番大きなポイントだったのではない かと思ったのですが、星加委員いかがでしょうか。 ○星加委員  その通りです。 ○裄V座長  ほかにございませんでしょうか。 ○森委員  基本的なことなのですけれども、これは心の診療に携わるということですから医療の 話です。私は子どもの専門家ではないですけれども、県の虐待対応精神科医というのを 6年以上やっておりまして、その時一番問題になるのは、その中には発達障害などいろ いろ混ざっており、医療に乗せるか乗せないかという問題なのです。そういう隠れた問 題がたくさんあって、医療に乗せようと思っても、どこに行っても何時間も待たされる けれどここなら何とかなるというのを、こねくり回してやっているのが実情です。これ は医療にかかった場合はこうだということなのですが、もう一つ前の段階がとても大事 だと思っています。小児科として、小児科の連携はもちろん大事ですけれども、それ以 上に福祉とかいろいろな公的機関と医療との連携というものがこの中に何か入ってくる ような要素はないかということをお尋ねしたいです。 ○裄V座長  この研究班の研究に関しては、医療ということに焦点を絞っていると考えてよろしい かと思います。ただ、実際にやっていく上ではこの研究の目的のところにも保健・医療・ 福祉・教育あるいは司法といったところとの連携のあり方というところまで、最終的な 提言としてはもっていきたいということはあるわけですが、特に今回の平成17年度の 実態調査では、医療提供側の調査に関しては今の医療体制というところに絞っています。 ○杉山委員  今、森委員が指摘されたことというのは、実は非常に重要な点だと思います。私は名 古屋市の乳幼児検診のピックアップ率から、だいたい人口15万人当たりに1人の児童 精神科医くらいかということを、十何年前くらいに試算をしたことがあるのですが、そ の後どうなったかといいますと、罹病率の方が上がってきたのです。つまり診察が可能 な医者が増えるとカバーできる患者の数が増え、結果、患者を発掘するという状況が生 まれている。多分これは、例えば児童精神科医が1人もいない県というのはありますの で、そういう地域はそれ以外のことで対応ができているというか、対応してしまってい るのだと思います。結局そういった埋もれた数をどうやって把握するのかというのは、 本当に大事なことだと思います。 ○裄V座長  その辺の調査は、最初に奥山委員が発表された幼稚園・小中学校を対象とした調査の 方に出ているのではないかと思いますけれども。 ○奥山委員  問題を持っている子どもの比率が、4.43%、2.65%、3.99%と意外に多 いようには感じるのですけれども、恐らく学校で把握していない問題は、さらにこれに プラスされるだろうと思います。家庭での問題、特に夜驚や夜尿といった睡眠障害は抜 け落ちてしまうのです。ですからこの数は学校で把握している最低限の数と考えていた だいてもよろしいのではないか。何らかの精神的な問題を持っているということで言え ば、もう少し多くなると考えていただいてよろしいのではないかと思います。 ○裄V座長  それとともに今出てきた数も、その中で医療につなげたというのはそのうちの2割く らいでしかない。もっと教育と医療との間の連携が、実際に学校側から見て求められて いるということも、調査の中に出ているのではないかと思います。 ○奥山委員  今回はまだ特別支援教育が整っていないだろうということで、いろいろ検討した結果、 調査内容には加えなかったのですけれど、この先また特別支援教育などが始まった段階 で医療との連携がどうなっていくかは、注視していく必要があるのではないかと思いま す。 4.平成17年度報告書を受けた関係者の取組みの状況について ○裄V座長  ありがとうございました。まだいろいろ議論があり、ご質問があろうかと思いますけ れども、今日の検討会も時間が限られておりますので次に進みたいと存じます。  次は、平成17年度検討会の報告書ですけれども、昨年度のプロダクトとしてこの報 告書がまとめられました。それを受けて、その後各関係者がどのような取組みを行って きたのかといったことを、今日お集まりの中でご報告をお願いしたいと思います。検討 会の委員が代表されている団体などのさまざまな取組み、また、今後のアクションプラ ンといったことに関して資料をご提出いただいております。限られた時間で恐縮ではあ りますが、これについて短時間にそれぞれご報告いただければありがたく存じます。こ の提出資料の全部を詳しくご紹介いただく時間があるかどうか心配ですけれども、日本 医師会の取組みについて今村委員からお願いできますでしょうか。 ○今村委員  日本医師会といたしましては、平成17年度の報告を受けて以降、研修会等の具体的 な取組みを行うにはまだ至っておりません。しかしながら、子どもの心の診療医の養成 というのは子どもたちの健全な育成のためにも重要な課題であると認識しております。 資料としてお配りしておりますけれども、日本医師会といたしましては少子化対策の一 環として5月16日に子ども支援日本医師会宣言を行っております。宣言の内容は、最 後のページに掲げておりますように8項目からなっております。具体的な取組みを2〜 3ページに記しております。8番目の「政府等関係各方面への協力と働きかけ」の2番 目に、「子どもの心の診療医を養成するための施策の推進」をうたっております。また 平成19年度の予算概算要求に対する要望書の中でも、3ページの11「少子化対策推 進」の中で、(9)子どもの心の診療医を育成・確保するための研修会等の補助という ことで要望いたしております。7月19日に、自民党・公明党の関係議員の方々に日本 医師会としての要望書を手渡しまして、説明を行っております。また、7月21日には 厚生労働大臣にお会いして要望させていただきました。  日本医師会といたしましては、今後、乳幼児保健講習会のテーマとして講習会を実施 する、あるいは日本医師会雑誌の特集として子どもの心の問題を取り上げ、一般の小児 科医や精神科医の先生方が子どもの心の問題に対応できるよう、子どもの心の診療医を 育成するための研修を行って参りたいと思っております。以上です。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。医師会として大変心強い取組みをしてくださってい ると受け取りました。次は、日本児童青年精神医学会です。 ○牛島委員  資料としては、第45回ないし46回総会の教育講演と症例検討の大まかなところを 出しているにすぎませんが、日本児童青年精神医学会としては、第45回総会には教育 講演が11講演、第46回総会には12講演ございまして、齋藤委員を総会会長にして 予定・準備を進めていますが、今年11月に予定しています第47回総会では、15講 演いただくことになっています。ちょうど手ごろですのでこれを単行本化して毎年出し ていきたいと今考えています。そうすれば、一般の小児科・精神科の方々にも大変役に 立つのではないかと思っています。  それから2番目に認定医制度。これは先ほどご報告いただきました厚生労働科学研究 を通じて、認定医制度をもう少し幅広いところで充実させ、皆さんが認定医を取るよう な方向で働きかけていきたいということです。  3番目は後で話が出ると思いますが、今6学会の連携の下で企画・予定されておりま す研修会・講習会に、松本英夫東海大教授が本学会を代表して参画していますので、協 力できるのではないかということです。  それから最後に、同じく日本精神神経学会に対しても、齋藤委員が我々の学会の代表 理事として長年協力してきております。こういう形で協力していけるのではと思ってい ます。以上です。 ○裄V座長  どうもありがとうございます。この後たくさんありますけれども時間が非常に限られ ています。奥山委員の国立成育医療センター、それから齋藤委員の国立精神・神経セン ターは、それぞれナショナルセンターにおけるレジデント研修についてのことが多いと 思いますので、飛ばしてよろしいでしょうか。杉山委員、日本小児総合医療施設協議会 としての全体的な取組みがありますか。 ○齋藤委員  一つだけレジデントとは違う部分を報告させていただきます。速やかに終わります。  国立精神・神経センターは、今回独自に初めて児童思春期精神医学研修を行います。 医学研修というのはずっとセンターの中で精神保健研究所がやっているのですが、その うちの新規企画として児童思春期精神医学研修をこの検討会の結果をふまえて開始する ことになりました。本年11月に3日間の予定で講義と事例検討と国府台病院児童精神 科の見学という3本の柱で実施することになっています。以上です。 ○裄V座長  ありがとうございました。 ○奥山委員  私の方ももう一つ、やはり11月に短期研修を行います。もともと成育医療研修は国 立病院のドクターを対象にしていたのですが、昨年度から対象が広がり、国立病院以外 のドクターにもホームページで参加いただけるようになりました。  去年までは座講が中心でしたが今年からはコースを決めて実習オンリーでいくことを 考えていまして、その中のこころの診療部で心の診療に関する研修をしていただくコー スも設けたいと考えています。 ○裄V座長  やはり飛ばすと具合が悪いですね。 ○杉山委員  最初の方は日本小児総合医療施設協議会ではなくて日本小児精神神経学会の認定研修 施設です。1年間にわたって日本小児精神神経学会の認定された研修医療施設の検討を 行ってきまして、第1次認定施設として次のページの18施設が認定されました。これ は総会の決議をすでに通過しておりまして、最新の学会誌にこれが報告されます。どの ような形の研修が可能かということが一覧に示されています。  その次は一つのモデルになることを意識しながら作ったものですが、あいち・こころ の診療医研究会ということです。あいち小児保健医療総合センターの医療連携の先生方 にニード調査を行ったところ、100名以上から高いニードが提出されました。これを 自前研修でやると、自分たちが休みの日に講義をやって何の報酬もない、多分長続きし ないと思ったものですから、明治製菓製薬のスポンサーを得まして、愛知県の小児科医 会とか愛知県の医師会、小児科医の会の協力を得てこういう新しい研究会を作ってしま いました。  8月20日に最初の講演を一つやりまして、その後10名から20名くらい、中に臨 床陪席が入り、全日程参加が義務付けられていますので、おのずから参加可能な方は限 られてくるのですが、講義とビデオとディスカッションを中心とした研修会が4日、そ れから臨床陪席 初診10題再診20題を義務付けるという形でワンセットでやってい きます。もしすごく希望が多かった場合には10名から20名が限度になっていますの で、少し選考しなくてはいけません。まず第1回目という形でこういう形でしています。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。日本小児心身医学会から冨田委員が今日ご欠席です が、これまでの子どもの心の専門医養成研修と将来計画ということで詳しく資料が提供 されていますのでこれは見ていただきたいと思います。次は日本小児科学会としての取 組みを別所委員からお願いします。 ○別所委員  日本小児科学会としては資料にあることだけなのですが、来年行われる学術集会にお いてシンポジウムを行います。セミナーという形でもう少し具体的な問題を取り上げよ うかと思ったのですが、これがすでに企画されておりましたので、今回はこのシンポジ ウムだけを行う形になっております。  それから4月に1回、関連の分科会の先生方にお集まりいただいて今後の方向をいろ いろ検討したのですが、その中でそれぞれの分科会が出されたマニュアルのようなもの を出していただきました。それを見ると私のような素人でも読むには非常にわかりやす いのですが、実際の診療上のことを考えると、それでも少し難しいと感じるところがあ りまして、三角形の1番底の1番上の線に当たるようなところを対象にしたガイドライ ンが必要なのではないか。具体的にどういう子どもが来たときに、その場合には一般的 な検査をやって異常がなかったと帰してしまうのではなくて、そのときにどんなことを 考えなければいけないのかという、非常に初歩的なことから始めたガイドラインを作る 必要があるのではないか。そういう方向でガイドラインの作成ということを作っていき たいということと、それでもって何とか少し心の問題を取り上げる必要がありそうだと なったときに、どういうところに相談したらいいのか、専門医というか、相談できる先 のリストを作るというようなことを一応考えています。以上です。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。その次は日本小児科医会として何かありますか。資 料は出ていませんけれども。 ○保科委員  資料を出し損ねたのですが、一応、子どもの心研修会を行いました。今年は前期が2 80人で後期が400人。申し込みが480人あり、会場の都合で80人越えたので、 これに対して来年から少しそれをすくうような形で、秋にもう一つ会を開かなければい けないかということです。以上です。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。星加委員の日本小児精神神経学会に関しては、先ほ ど杉山委員から言われたのですが。 ○星加委員  杉山委員からお話のあった研修施設と、それから今年の10月に大阪で開催される第 96回日本小児精神神経学会では、以前行っていた企画委員会のプログラムにかわるも のとして、企画委員会研修という形で時間を取っています。今回は、軽度発達障害のペ アレントトレーニングを立正大学の心理学部の中田先生が担当されて、ペアレントトレ ーニングを現在されている、あるいはこれからやろうとする専門家の先生、カウンセリ ングの指導にペアレントトレーニングの考え方や仕事を役立てたいと考えている先生方 に対するレベルの高い研修を実施する予定です。 ○裄V座長  どうもありがとうございます。それではその次は日本小児神経学会の桃井委員。 ○桃井委員  資料にありますように大きく分けて、「その1 小児神経科専門医制度の充実」、次 のページの「その2 心の診療に関する研修医認定等」です。  まず小児神経科専門医制度の充実、これは専門医と名乗るからにはその専門医を取得 している医師が基準レベル以上の特定の診療領域に関して診療能力を有さなければいけ ないのは当然ですし、国民にわかりやすく質を担保する、保証するということが専門医 の責務です。小児神経科専門医制度としてそのための努力を数年来していることの流れ ですが、到達目標研修項目の改訂・充実を行いました。  (2)研修施設の認定。これは昨年度の終わりに行いましたので、ここに書かせてい ただきました。82施設の認定を行いました。これはカリキュラム等を詳細に審議委員 会で審議をして検討をしたものです。  (3)平成17年度の専門医の試験を、筆記試験・口頭試問等を含んでこれも例年の 通りですが、実施をしていて毎年30名程度認定され、現在1,000名を少しオーバ ーした専門医がおります。  (4)小児神経科専門医制度に罰則規定を付加。これは専門医が信頼できる専門医制 度であるために必要不可欠の項目でありますので、専門医のみならず問題があった場合 の指導医の資格はく奪等も含めて規定を新たにしたというところです。  今後の検討事項ですが、現在平成17年度から検討中の事項としては、その専門医を 持っていれば含まれる診療領域に関しては診療実績と能力が一定程度以上あるというこ とを国民にわかりやすく保証するための体制として、診療実績と能力で資格更新を評価 することを検討し始めました。今までは多くの専門医は研修等あるいは学会発表等で更 新単位が与えられるが、診療実績と診療能力をどのように評価するかを現在検討中です。 研修会はその第1歩ですが、今後は心の診療に関しても各レベルでその能力をどのよう に評価し、国民に能力を担保して表示するかということが極めて重要な課題です。  次のページですが、心の診療に関する研修等に関しては、今までこの1年近く実施し てきたことの列記で詳細な資料を付けませんでした。  (3)は第1回プライマリーケア医のための子どもの心の診療セミナーと称しまして、 本学会が中心になり関連の多くの学会に後援いただき、「軽度発達障害児にプライマリ ーケア医ができること」と題して表記の内容のセミナーを予定しています。  以上です。 ○裄V座長  はい。どうもありがとうございました。それではその次、日本精神科病院協会の森委 員。 ○森委員  私の方はいつもやってきたことなので簡単に説明します。心の健康づくり対策研修会 と書いている資料です。ここには思春期児童の問題とPTSD。こことは少し外れますが、 Post-traumatic stress disorderがありまして、二つ合わせての補助金事業になっている ので申し訳ございませんがPTSDのこともここに入ってしまっています。  思春期のことだけについてご説明いたします。これはもともと平成12年に、当初は 委託の形で厚生労働省の方から日本精神科病院協会にお話がございました。その当時は もっぱら裾野を広げてほしい、地域で困っている問題が起こっても行政として対応がで きない状況にあるということで、何とかこの研修会をやってほしいというお話がありま した。平成13年から研修会がスタートしています。現在、今回が6年目になります。 既に医師はこの研修会を出た方たちが約700名強、コメディカルが1,500名強い ます。このコメディカルの6割以上が大体地方行政の方です。そういった研修会である ということをまず記憶していただきたいと思います。児童思春期については平成12年 の企画当初から当時東海大学におられました山崎晃資先生が中心になって取り組んでく ださっていた関係もありまして、現在も山崎先生にいろいろなカリキュラム等でご協力 をいただいております。またここにおられる齋藤万比古委員にもいろいろなことでご協 力をいただいておりまして、厚く御礼を申し上げます。  今年度はこのようにこの検討会のことも含めて考えるわけですけれども、この研修会 は先ほども申し上げましたようにもともと厚生労働省からの依頼で行われ、予算の都合 で補助金事業に変わったものですので、今回も厚生労働省の障害保健課の方と、どうい うことをやろうかという相談から入っております。  今回は、アドバンストコースをぜひ開いてほしいという要請がありましたので、ここ に書いてありますようにアドバンストコースというのができました。ページをめくって いただきますと右のページに思春期精神保健対策専門研修会コメディカル・スタッフに ついては200名の2回、医師については100名の1回とアドバンストコースの50 名になっています。  このアドバンストコースについては先ほど申し上げましたように山崎先生にいろいろ 考えを練っていただいており、具体的なことがわかり次第こちらからお伝えしたいと思 っています。この募集案内の左のところの太字を見ていただきますとわかりますように、 先ほど申し上げました経過がありますので、この(7)に各行政機関での活動の充実強 化を図るため研修修了者については受講申込書に記載された情報を元に研修修了者名簿 を作成し、都道府県、政令指定都市、精神保健福祉担当主管あるいは精神保健福祉セン ター、保健所、児童相談所等の行政機関に配布するということになっております。例え ば地震が起きたときであればこれはPTSDの方ですけれども、PTSDの研修を受けた者 がどの地区に何人いるかということがすぐわかるということになっています。  これは思春期にとってどのくらい役に立っているのか私たちにはわかりませんけれど も、こういったことを続けておりまして、今年度も企画をしたということです。以上で す。 ○裄V座長  ありがとうございます。その次には私の書いた駄文があります。提出した覚えは全く ないので、無視していただいて、次は日本精神神経学会の山内委員から。 ○山内委員  日本精神神経学会から2点ご報告を申し上げます。1点は従来からやっていたことで すが、今回も平成18年度5月11日から13日まで福岡で開かれました第102回の 精神神経学会で、そこにコピーがついているようにシンポジウム・一般演題の発表が行 われました。シンポジウムはここにあるようにアスペルガー症候群の関連のものです。 シンポジウムの7ですが、本研究班の報告ということで、ここにご出席の委員の方ある いは関係の方々にお話をいただき、専門医の養成について特にシンポジウムを開催して いただきました。そのほか一般演題、ポスター等は、そこにある通りこういうものが学 会に報告されています。  2点目につきまして平成17年の本検討会報告書にありますが、日本精神神経学会が 受け皿になって関連の諸団体を統合し、子どもの心の診療医の養成を推進しよういうこ とを提言しましたが、これを受けて学会の中に児童精神科医育成に関する小委員会を設 けまして、今年度はこの委員会を中心として、森委員も今度日本精神神経学会理事に就 きましたので、一緒に協力して関連の団体・組織と協調して推進していきたいと考えて います。以上です。 ○裄V座長  どうもありがとうございます。一度戻って西田委員から何かありますか。 ○西田委員  全国児童青年精神科医療施設協議会としては、特に新たなことはあまりしていません ので、今回は出しませんでした。 ○裄V座長  協議会はこれからの検討において大きな役割を担っていただかなければいけないと思 いますので、よろしくお願いします。吉村委員よろしくお願いします。 ○吉村委員  資料の12になります。実は全国のカリキュラムを3年に1回調べています。200 6年版がもうすぐ出ますが、2003年版では既にお話ししましたように全国の大学で 精神科の講義にはばらつきがある。11時間くらいから45時間と書いています。しか も少ない所では小児についてはゼロという所もあります。それからスタッフが全くいな いという所も、小児について1/4くらいあります。2006年版が出ましたら紹介し たいと思います。モデルカリキュラムにつきまして、現在文部科学省で医学教育の改善・ 充実に関する調査研究協力者会議でカリキュラムの改定が議論されておりまして、今年 は当面地域医療ということだけで抜本改正はこの次行うということです。実は精神系の 方では小児についてはほとんど触れられていません。小児科の方で少し触れられていま すが実施につきましては全く情報がありません。  それから国家試験ですが、今年は実は530問中精神科は27問。例年通り5%出た のですけれども、小児の問題が6問出ました。確か去年は2問くらいだったと思います けれども、国家試験に出て参りますと教員も学生も認識が高まって参りますので、ぜひ これを推進していただきたいと思います。 ○裄V座長   どうもありがとうございました。卒前教育は非常に重要ですし、これに関連した国家 試験ということに関しても子どもの心の診療に関しての充実というのは大変強く要請さ れておりますので、ぜひよろしくお願いします。委員の皆さんからの取組みで市川委員 は何かありますか。 ○市川委員  これまで、検討会の事務局のお手伝いをさせていただいており、感じたことを述べさ せていただきます。三つの群に分けた際に、これらの群の連携を考える必要があると思 います。都内では、この6年間に発達障害関係のクリニックが非常に増えております。 2割が小児科で、8割が精神科です。時折、話し合いを持っており、逆三角形の最底辺 と中間の連携かと考えています。 ○裄V座長  市川委員には今回新たに委員に加わっていただいたのですが、冒頭にもお願いしたよ うに第2グループ・第3グループ両方にまたがってカリキュラム・テキストの作成に尽 力いただきたいと思いますのでお願いします。最後になりましたが南委員から全体とし ての印象など。 ○南委員  私はメディアの立場ですが、国民の視点で、二、三お話をさせていただきたいと思い ます。一つは今さらというか改めてなのですが、心の診療、子どもの心の診療医の、心 という言葉です。これは国民に「子どもの心の診療医」なるものが正しく理解されるよ うに、かなり私どもも努力をしていかないといけないと思っています。というのは、脳 科学の進歩ということもあり、「心とは脳なのか」とか、心とは何なのかということを めぐって、一般の人たちの認識がかなり混乱しているのが現状だと思います。   子どもの心の診療医という話が進んでいるということをお話ししますと、ほとんどの 方が今大変な社会問題ですからとおっしゃるのですが、その理解は人によって非常にさ まざまです。登校拒否児を考える人もいれば、自閉症のようなもの、あるいは発達障害 までを思う人もいる。それぞれが理解する「子どもの心」というものが必ずしも一つで はない、という現状に、言葉は難しいなと痛切に感じています。  とはいえ、こういう言葉を使うことにした以上は、「子どもの心の診療医」がどうい う患者を対象にしているのかをある程度明瞭に発信していかないと、なかなかその制度 がうまく患者に届かないということになりかねない。先ほど桃井委員がおっしゃったの ですが、例えば「心イコール神経」とは、多くの親は考えないということが危惧されま す。発達障害の場合、子どもの心の診療医とつながるのかどうか、その辺は啓発してい く必要があるのではないかという印象を持ちました。  もう一つ。今いかに診療施設を選ぶかということが社会的に大変大きな関心になって いて、その際外科で言えば手術の数とか、数だけではなくてかなり細分化した手術業績 を問題にするなどしているわけです。子どもの心の診療に関しては立ち上がりも遅いで すから、現在はまだ研修を受けた先生がどこにいるかを一般の人に示すといった段階で しかないと思いますけれども、今後は診療の量や実績を、診療側から示していくことが 求められます。それが課題ではないか。その辺をぜひご検討いただけたらと思います。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。大変貴重なご意見をいただいたと思います。 ○奥山委員  一つだけお話をしなくてはいけないと思いました。子どもの心の診療関連医学会連絡 会というのを創設いたしました。  2月に理事長先生に集まっていただいたことを前回裄V座長からご報告いただいたと 思うのですが、日本児童青年精神医学会、日本小児神経学会、日本小児心身医学会、日 本小児精神神経学会、乳幼児医学心理学会、思春期青年期精神医学会の6つの学会が協 力いたしまして、何らかの研修制度を充実していこうということで、7月25日にそれ ぞれの担当の方に集まっていただいてワーキングチームを作りました。各学会に理事会 の方でワーキングチームで話し合ったことを承認いただけるかどうか諮っている最中で す。  先ほど裄V座長がおっしゃった通り、3月17日に合同の研修会をするというのが一 つですが、それ以外にも学術集会も何らかの研修をして交互に宣伝もし合いますし、そ れから他の学会の方が研修を受けられるような制度を今検討中です。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。これで各委員からご意見あるいは団体としての取組 みをご紹介いただいたわけですが、最後になってしまいましたけれども厚生労働省とし ての取組みについてご説明いただけますか。大変時間が少なくなり申し訳ございません。 ○虐待防止対策室長  虐待防止対策室です。報告書が出されて以降の対策についてご説明させていただきた いと思います。資料(13)の左上にありますように6月末に虐待防止の相談処理件数、 新しい平成17年度の速報値を公表しました。3万4,000件ということで前年度の 3%増なのですが、これは児童相談所が対応したもののみです。17年度から制度改正 により市町村も児童家庭相談の窓口になりましたので、市町村が独自にケース管理をし ながら対応しているものがあります。あと1カ月先になりますが市町村の動向について も公表していきたいと思っています。虐待の数が増えている中で発生予防と早期発見・ 対応と保護・支援を切れ目なくやっていくというのが私どもの方向で、予防領域とケア・ 治療という両面において医師・医療機関において期待しているところが大きいと思いま す。  資料を2枚めくっていただきますと、死亡事例の検証報告というのがあります。今年 の3月末に虐待において死亡した事例は全事例、児童部会の下にあります専門委員会で 検証・分析をしております。第2次報告の4ページ目ですが、医療機関の役割の重要性 についても提言をさせていただいています。  それから次のページ、今後の児童家庭相談体制のあり方研究会報告を4月28日に取 りまとめています。児童福祉法が改正されて新しい相談体制が17年度からスタートし ていますが、全国の先進事例を見ながらさらに児童家庭相談体制を充実・強化していく にはどうしたらいいか、現場の方々の意見も伺いながらまとめました。医師・医療機関 の関係につきましては、最初の○にありますように、児童相談所という専門的な相談を 受ける福祉の行政機関において、常勤医師を配置する重要性が非常に大きいことが指摘 されております。全国の実践例においては常勤医師がいらっしゃる県の実践例がありま すし、さらに常勤の医師がいない場合にも隣接したところにクリニックを開設をして何 らかの医療的な対応ができるような工夫が最近進んできているということが言われてお ります。それから次のページは、医療機関と関係機関との連携ということになりますけ れども、(1)の3つ目の○にありますように厚生労働科学研究におきましても、医療 機関からの虐待通告についてまだまだ躊躇が見られるという報告があります。その場合、 一般の地域の医師の方々からのご相談に応じて、通告であるとか診断書の作成、あるい は子どもの治療のための受け入れを、基幹病院を結成して対応していくというような活 動をしている地域もあるという実践例を示しています。  児童相談所における医師の体制については、今回から初めて新しく数字を取り始めま した。1番右側にありますように常勤医師の配置状況は今年の4月1日現在で38名と いうことになっております。  次のページ、予算的な対応としては、児童相談所において医師・医療機関と連携をし ながら機能強化を図りつつあるところでして、18年度は約18億の枠内のメニュー事 業として、カウンセリングの強化や医療的診断・治療面からの助言をいただいたり、家 族療法をやったりというような事業をしています。  最後に研修体制ですが、私どもは子どもの虹情報研修センターという児童虐待・非行 などの思春期問題についての情報提供とか研修・研究のためのナショナルセンター的な 機関を社会福祉法人にお願いして進めております。そこでの医師向け研修として18年 度は2コマ行われます。そのうちの1つは今年の5月にすでに実施しております。児童 相談所と情緒障害児短期治療施設、医療機関等の医師・専門研修をこういうメニューで やっております。特に主眼を置いておりますのは、各機関・ネットワークにおける中心 的・指導的役割を果たしていただくための知識を得ることを念頭に、虐待等の見立て・ 援助、法的対応というところを中心に研修をしています。それから2つ目は11月に予 定しておりますけれども、これについても資料のような形で3日間の研修等を行う予定 です。以上ご報告です。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。 ○障害保健福祉部  次に障害保健福祉部精神・障害保健課から資料15に基づきまして簡単にご報告させ ていただきます。  まず発達障害に関して、1ページ目にお示ししております。昨年4月から発達障害者 支援法が施行されており、本年6月23日に、発達障害対策戦略推進本部を設置して今 後関係部局で協力をしながら施策や予算を取りまとめ審議する予定となっているところ です。  次に2ページ目です。これは障害保健福祉部においてのこれまでの取組みですが、発 達障害者支援の人材育成について2ページ目に示しております。平成14年度より発達 障害者支援センター職員を対象とする研修、そして自閉症に関するセミナーの実施。平 成17年度からは発達障害関係職員の研修をそれぞれ国立秩父学園において行っている ところです。  次に、児童思春期の専門研修については、3ページ目にあります。この部分は先ほど 日本精神病院協会の森委員からこれまでの経緯等をご説明いただきました。繰り返しに なりますが平成13年度より思春期精神保健対策研修事業、医師・看護師・保健師等を 対象とした養成研修を行っております。  平成17年度までの累計で医師が763名、コメディカルが1,505名受講してお りまして、その名簿を都道府県等に配布し、いつでも相談事業を実施できる体制を構築 することを目標としております。今年度18年度から新たにアドバンスコースを設けて さらなる拡充を図っているところです。以上です。 ○裄V座長  どうもありがとうございました。 ○母子保健課長補佐  手短に申し上げます。14番の資料です。先ほど新医師臨床研修制度の研修では十分 な子どもの心の診療への対応は難しい側面があるという研究報告がありました。新医師 臨床研修制度の中で、平成17年度版の試行版ということで、研修の指導に当たってい ただくドクターにお使いいただけるような指導ガイドラインを作成しています。最終的 には2007年度に完成版を作成する予定ですが、この試行版にインターネットのリン クを張り、一番目立つような形で本検討会の報告書及び概要版を載せていただきました。 狙いとしては、こういった子どもの心の診療に関しての意識を研修指導医の先生方自身 にお持ちいただくことです。必要に応じて到達目標や必要な参考資料、さまざまな関係 者の取組みや研修を参考としていただけるように、リンクを張って情報提供させていた だきました。  繰り返しになりますが、先ほど奥山委員と齋藤委員のご説明がありましたように、厚 生労働省としてはナショナルセンターで11月に、成育医療センターでは11月13か ら15日、国立精神・神経センターでは11月20日から22日に、それぞれ子どもの 心に関係する研修を行っておりますので、こういったモデル的な研修の成果などにつき ましても評価をいただき、こちらの検討会でテキストやガイドラインの作成にご活用い ただければと存じます。 5.閉会 ○裄V座長  どうもありがとうございました。厚生労働省としての取組みとして、虐待・発達障害・ 新医師臨床研修における取組み、そしてナショナルセンターでの医師向け研修、そうい ったことをご説明いただきました。  大変限られた時間の中で駆け足になって申し訳ございません。すでに予定の時間を過 ぎてしまいました。特に付け加えて何かご発言・ご意見がなければ本日の検討会、本年 度の第1回の検討会を閉じさせていただきたいと思います。進行の不手際で少し時間が 延びてしまったことを大変申し訳なく思っています。どうもありがとうございました。   ―終了― 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 電 話:(代表)03−5253−1111 齋藤(内線:7933)  佐々木(内線:7938)