06/03/31 第3回人材養成分野の国際協力のあり方に関する検討会議事録       人材養成分野の国際協力のあり方に関する検討会(第3回会合)    日時 平成18年3月31日(金) 15:00〜 場所 共用第7会議室 ○釜石補佐 ただ今より、人材養成分野の国際協力のあり方に関する検討会(第3 回会合)を開催いたします。本日初めて出席された方を紹介します。オブザーバー で、財団法人海外職業訓練協会営業施設部の木村慶栄様です。厚生労働省労働基準 局安全衛生部安全課の常盤剛史中央産業安全専門官です。今日も若干欠席者がおら れますが出席者名をご覧ください。  続きまして配付資料の確認をしたいと思います。議事次第の表紙、出席者リスト、 座席表です。資料1は、人材養成分野の国際協力のあり方に関する検討会第2回会 合議事要旨です。資料2は、第2回検討会における会員指摘事項と対応の方向の1 枚紙のペーパーです。資料3は、人材養成分野の国際協力の理念(厚生労働省方針 案)です。資料4及び資料5は、それぞれ人材養成分野における海外協力の課題と 対応の方向の案、論点整理メモと、その関係資料です。  では、今野先生、よろしくお願いいたします。 ○今野座長 では、前回の関係資料からご説明いただけますか。 ○釜石補佐 では、資料1から説明申し上げます。これは前回申し上げましたよう に、テープ起こしをして議事録を作成いたしますが、それが間に合わないというこ とで今回要旨を付けさせていただいております。内容のほうは事前にお送りしてお りますので、次の資料2のほうにまいります。ご指摘いただいた事項と対応の方向 ということで取りまとめております。「協力の重点について」ということで、援助先 国の雇用関係部署と職業能力開発担当部署との連携もいるのではないかということ で、国内外の連携は大事というご指摘が野見山会員からございました。これについ ては非常に重要なことだと考えており、協力を立案する段階から留意したいという ことです。  協力期間後のフォローアップですが、こちらも野見山会員から、プロジェクトを しっかり見守っていくようなフォローアップも必要ではないか、というご指摘があ りました。これについては当方で予算措置して専門家を派遣するのも難しい話です ので、JICAとも協議しつつ考えていきたいと思っております。  大きな3点目で、人材養成分野の協力の理念についてです。今野座長から、基本 方針についてはレベルの違うものが並んでいる、というご指摘がありました。当初 作成したときに、ODA大綱の構成を参考としておりましたので引きずられたとこ ろがありましたが、ご指摘のとおりと考えておりまして、前回の理念の基本方針の ところの(1)、(2)は目標のところにして、(4)、(5)を留意事項に移し、基本 方針は開発途上国の自助努力への支援であるということに絞ることにしました。そ の内容ともダブりますが、目的のところは理念として広すぎるというご指摘が野見 山会員からありまして、働く人の格差の是正や、持続的成長を通じた就労機会の確 保という絞り込みをした方ほうが良い、というご指摘でして、右のほうに書いてお りますように、我が国の人材養成分野のODAの目的は、ここはODAとなってい ますが、格差の是正、持続的成長及び就労機会の確保を通じて、国際社会の平和と 国際社会経済の発展に貢献し、ひいては我が国の繁栄に資することであるというよ うにして見ております。  日本政府全体の人材養成分野の協力の理念なのか、それとも厚生労働省なのか、 どの機関の協力の理念かというのが明確になっていないようなことでしたので、対 応の方向に書いております。前回資料8としてお出しした成長のための基礎教育イ ニシアティヴ(第1回検討会の資料4の5)のような、重点課題別援助政策という ものをイメージしております。厚生労働省の理念となると、働く人を中心とすると いった、多少の絞り込みがあると考えておりまして若干異なってくるということで、 資料3に厚生労働省方針案ということで再度整理したところです。  次は資料3です。目的は、厚生労働省の人材養成分野の国際協力の目的です。こ れはODAから直して「国際協力の目的は」としております。目的は、働く人の格 差の是正、持続的成長を通じた就労機会の確保による国際社会の平和と、国際社会 経済の発展への貢献、そして我が国の繁栄であるとしております。それで基本方針 は1つに絞り、開発途上国の人材養成に係る自助努力への支援としております。重 点事項は同じで、雇用に結びつく職業訓練、人材養成に係る法令整備、行政の改善、 日系企業による人材養成協力活動の促進としております。重点地域はアジア。ただ アジアだけではなく括弧で「他の地域も」と書いています。留意事項が少し増えて おります。(1)〜(7)までということで、我が国の経験と知見の活用、官民協力 の促進、相手国の政治、行政背景に基づく手法の選択、透明性、公平性の確保、相 手国文化、慣習の尊重、国際社会における協調と連携、最後に環境問題への配慮と しております。  次頁にはいろいろな手法ということで、前回から若干変えているところがありま す。協力対象のところからですが、1の協力期間は変わっておりません。2の協力 対象は少し変えて、対象は開発途上国の住民、行政府、職業教育訓練機関、経営者 団体、業界団体、労働組合を挙げております。実施の方式ですが、ヒトやモノ、情 報というものに着目して、まず1番として対象者を招聘する形、これは日本への招 聘と第3国への招聘が考えられます。2番目として指導者派遣型。これは日本人の 専門家を派遣するもの、それと第3国の専門家を派遣するというものが考えられま す。それから、お金を出してどこかの機関にやってもらうという形。それと、資材 や機材を提供する形。それから、情報提供、ノウハウの伝授のみというような協力 方式もあるかと思います。以上のところは、日本から協力の対象国に対してあげる だけ、協力していくだけという形です。6番目は、もっと相手国が高いレベルにな って、相手国の状況を日本も学びつつ、一方で日本も相手国に協力するという、相 互に協力するというような形です。これは最早、ODAという枠組みから外れてく るようなものです。  4番目はほとんど変わっておりませんが、JICAを通じた二国間協力、それか らAPECなどの多国間協力、日系企業を通じた協力、民間団体を通じた協力、J ICAベースによらない政府間の協力もあるであろう。それから、民間の国際組織、 国際NGOを通じた協力もあるであろうということで、前回より若干増えておりま すが整理を再度してみました。 ○今野座長 前回の議論を整理しましたので、何かご意見、ご質問があればどうぞ。 ○牛山専門会員 資料3の人材養成分野、これが厚生労働省方針案に絞り込むとい う場合、目的が、例えば国際社会の平和と国際社会経済の発展への貢献とあります が、国際社会の平和というのは一般的というか、すべての所でも同じだと思のです が、もう少し絞り込んで、人間関係に該当するヒューマン・デベロップメントとい う言葉を国連で盛んに使いますが、もう少し人間に絞り込んで、人間開発とか、も う少し表現を絞ったほうがよろしいのではないでしょうか。 ○釜石補佐 この辺は何段階かになっております。最初は、働く人の格差の是正、 持続的成長による就労機会の確保といったことで、それが実現されて、さらに平和、 社会経済の発展となって、それがさらに上にいくというか、それが我が国の繁栄に 戻ってくるという、国益の視点が入ってくるということで、いまだんだん広がるよ うな形で書いております。平和は確かに広いのですが、アフガニスタンで実施して いるようなDDRもありますし、人間に着目したところは、その前段で書ければと いうことになるのではないかと思うのです。 ○今野座長 具体的には、この基本方針からですよね。基本方針のところは、今言 われたヒューマン・デベロップメントみたいなことが強調されているわけですよね。 これ、スーパーゴールを書いているわけですよね。 ○牛山専門会員 資料3、想定される手法の方で、ここに4項目あります。協力期 間、協力対象、実施方式、実施機関とありますが、協力対象が人間と機関と同列に 並んでいるのですね。対象者というのは、やはり、文字通りここに書かれている途 上国の皆さんだと思うのです。同列にやりますと、機関の対象、ターゲット、オー ディエンスのような形で混乱すると思うのです。書き方ですが、何らかの形で分け られて、人と対象機関という形にされたほうがよろしいのではないでしょうか。 ○今野座長 これは意図としては、直接の協力対象ですよね。 ○釜石補佐 はい。 ○今野座長 最終的には、全部住民にいくわけですよね。 ○釜石補佐 そうです。 ○今野座長 (1)は、開発途上国の住民というのは、直接住民に対してやるよう なこともあり得るという趣旨だと思うのです。直接的な協力対象ということになる と思います。ここの意図からすると、これは分けられないと思うのです。直接住民 にいく場合と、行政府にいく場合ということで。 ○牛山専門会員 表現の仕方を多少変えてと。 ○今野座長 それよりかこの表を見ていて、2番目の議題との関係なのですが、普 通の5W1Hで考えると、「何を」がないですね。でも、「何を」というのは、整理 しないと書けないですよ。これは今から議論になると思いますが、以前にいただい た資料4や5を見ていると、こういうことをやらなければいけないとかいろいろ書 いてあります。例えば、その中で能力評価システムのようなものは一種のインフラ です。あと、直接の教育訓練はその上にくるアプリケーションみたいなものです。 何かそういう、「何を」についてインフラの部分と、アプリケーションの部分を含め てうまく絵が描ければ、ここに「何を」が入るのですね。 ○牛山専門会員 例などはそれに該当すると思うのです。国費留学生制度ですね。 ですから、1つ1つにそういうものを入れると具体的になるのですが、逆にそれに 縛られる可能性もあります。 ○奈良課長 理想的には、そういう場合は協力期間に応じて、例えばこういうもの が考えられて、それの協力対象者としてはこうで、実施方法としてはこれがよくて、 という広がりのある書き方ができればよろしいのですが。今回も、まさに「何を」 のところを、是非ご議論いただければと。 ○今野座長 後から、作ればよろしいですね。 ○奈良課長 はい。それを踏まえまして、今ご指摘をいただいた格好で、「何を」と いうのを入れていくことができますと、もっと充実した格好になるのかなと考えて おります。 ○今野座長 わかりました。 ○野見山会員 要は何ををやるかによって、やる内容によって、これは長期間やっ たほうがいい問題、これは短期間でやってしまうと。だから、最初に期間ありきで はなくて、なにをやるかということによって期間も決まるし、何を誰にやったらい いかという対象も決まってくる。今言われるように「何を」というのが基本にあっ て、そこからいろいろな仕分けが出てくるような気がします。そういう意味で私は 賛成です。 ○今野座長 それでは後半の部分でいろいろなことが出てくると思いますので、「何 を」をリストアップしてもらって、それで組み替えて、体系化して、これでやれば いいという話になりそうですね。  それでは、今日の主要な議題、第2番目「人材養成分野の国際協力の課題と解決 の方向」の議論をしたいと思います。これは勝手に議論すればいいわけですね。そ れに関わる資料は、一応資料4。これは前回も出していただきましたが、これがい ちばん主要な資料になると思います。何からでも結構ですので、ご議論いただけれ ばと思います。  資料4にはいろいろなことが書いてありますが、いくつか思いみたいなものがあ ります。1つは技能評価みたいな、一種の能力評価とか、そういうシステムをどう にか「何を」に入れたいということと、あとは、企業のニーズとかをきちんと考え るとか、企業との協力をきちんとしよう、特に日系企業との関係をうまくやろうと か、そういうのは思いとしては入っていますね。 ○野見山会員 資料4の論点メモのいちばん最初の立て方ですが、これはどういう 意図でこういう立て方をしたのか伺いたいと思いました。私の感じでは、海外協力 の課題は何かと言ったときには、まず第1に、例えばグローバル化という国際的な 進展の中でどういう課題があるかが1つ挙がってくると思います。そうするとグロ ーバル化という中では【3】とか【5】いったものを1括りとして1つ考えていき ますと。  2番目は、いわゆるODA全体がいま見直しをしなければいけない時期になって いる。いわゆる、ものづくり的な協力のウエイトが下がってきている。もっとソフ トな、システム的な国際協力がこれから要請されてきている。それに人材養成分野 ではどう応えるかという1つの柱というかグループ。それから、国際協力を推進し ていく主体として日本という国の役割とか、あるいは、使用者団体とか、そういう 非政府機関の果たしていく役割、それと国際機関が果たしていく役割。要するに、 国際協力を進めていく主体を見直していくと、これからの人材養成分野では、どう いう主体がどういう役割を持ったらいいかと。【1】から【5】に大体カバーされて いると思いますが、これをどういう視点で組み立てていくか。そこのところのスタ ンドポイントというか、視点を少し整理したほうが、この【1】から【5】までが 何となく、思い付きでやったわけではないと思うのですが、何でこういう順番にな ってきているか、といったところがいまひとつ、読んでいて、あっちへ行ったりこ っちへ行ったり、重複するところがあるぞというところが出てくるので、そこのと ころをどういう視点でこの課題を整理するかと。その整理の仕方を少し考えたらど うかなという気がちょっとしました。 ○奈良課長 実は、当課が今実施している業務の中身を考えて、その中でどういう 課題があるのかという視点でまとめたものですから、一番上がJICAベース、従 来何十年とやってきている技術協力があって、その次に国際機関の枠組みでの協力、 それと最近企業がグローバル化に対応して、国際協力というよりも国内行政の延長 線として国際人材の育成的な視点からも業務がありますねと。 ○野見山会員 業務別課題になりますか。 ○奈良課長 とりあえず、まとめるときにそういう整理をしてみたということです。 ○野見山会員 わかりました。 ○今野座長 グローバル化への対応というのは第1番目なのですが、例えば、日本 企業のグローバル化への対応というと、日本企業にダイレクトにサポートするみた いな話になりますね。そうではない、そういうのもちょっと入っているけれども。 グローバル化への対応といったときには、何を考えているのだろう。労働市場が国 を越えて共通化してくるから、それに対応するインフラができるように支援すると いうのと、いろいろありますね。先ほど言った、日系企業が行っているから日系企 業に便利なように支援するとか、何かいろいろな観点がありますよね。 ○野見山会員 私が考えているのは、グローバル化は日系企業ではなくて、いわば グローバル化の中で開発途上国がいろいろな試練を受けているわけですね。要する に、先進国からいろいろな産業がどんどん入って来る。そういう中で途上国がどう 対応したか。もちろんその中には日系企業も入りますが、日系企業に限らず、例え ば東南アジアでは対中国との関係で、非常に繊維産業がやられてしまっているとか。 そうなってきた場合に、新しい産業振興を図る必要が出てきている。そういう新発 展分野に対するニーズというのが日本からも出てくるでしょうし、途上国自身が抱 えているグローバル化。  例えばグローバル化の中で貧富の格差というか、競争に敗れて非常に苦しい状況 にあるという分野に対する手助けといいましょうか、それが能力開発でできるかど うか私も詳しくわかりませんが、そういう協力の仕方もあるでしょう。私が考えて いるグローバル化、日系企業に限らず、世界的に進んでいる中で途上国が抱えてい る雇用問題、能力開発問題の部門に協力できるかどうかという辺りを、少し進めて 考えたらどうだろうかなと思っているわけです。  その中に、SKILLS-APというのですか、何か最近考えているものですが、そうい うのはまさに。技能資格制度だって、むしろグローバル化の中で出てくる問題でも ありますし、そういった考え方でいくと、グローバル化という課題の中で取り組む 業務というと悪いですが、それがいろいろ出てくるのかなと思いました。 ○今野座長 今言われたことは、例えばグローバル化して産業構造が変わって、人 材ニーズが変わって、それについていけない人は大変だし、ついていくようにどう にかしようではないかという話は、言ってみると人材ニーズが、人材の需要構造が 変わったから、グローバル化、人材需要構造が変わった、それをサポートするため の能力開発支援ということですね、結局は。 ○野見山会員 そうです。 ○今野座長 その問題と、この資料4を読んでいると、日系企業の例に即して書い てありますが、日本が持っている、例えば能力評価制度と、今東南アジアが入れよ うとしているものとが食い違っていて、そこが困るのだという話は、言ってみれば 労働市場が国際化していくときにシステム自身がついていけないので、それに合わ せて、例えば能力評価制度も合わせようと。そういう意味でのグローバル化に対応 させようという2つのことがあるのではないかと思っていたのです。  極端なことを言うと、能力評価制度を入れようと。それはその国の需要構造の変 化に合った人材を養成するために入れよう、というようにターゲットを設定したと きに、別に日本と同じである必要はないかもしれない。インドネシア版でいいかも しれない、あるいはタイ版でいいかもしれない。そうではなくて、つなごうと言っ ている以上は、やはり労働市場が国際化するとか、共通化しているというコンセプ トを入れていかないと。共通化するといったときに、労働市場が少し共通化してい るぞというコンセプトがなくして日本のを入れようとすると、せいぜい日本のほう がオーストラリアよりかシステムがいいぞという論点しかないわけですよね。イン ドネシアがインドネシア版を作ろうとしているけれど日本のがましだぜ、という出 し方しかないので、そこの観点が違うのかなという気がします。あまりうまく整理 できていないのですが。奈良さんはどう考えていますか。 ○奈良課長 現実的な面で申し上げますと、確かに今の東南アジアの国々でもイギ リス版といいますか、オーストラリア版の新しいシステムですね、まず能力そのも のをどういうように評価するかといいますか、これをコンピテンシーをベースにし たスタンダードをとにかく作って、それをベースとした評価をやって、さらに、そ の結果として資格を出しましょうというような動きで動いています。いかなるシス テムを入れたとしても、要は、本当に動くか動かないかが非常に重要になってくる わけです。コンピテンシー・スタンダードにしろNational Qualification Systemと か言われていますが、これは非常にコストがかかる、人もかかる。実際に導入して いる国々が、それはそのとおりだと言っている状態の中で、本当にいま東南アジア で、政府側はそれを入れたいとか、実際制度は作ってこれから動き出そうという状 態があるわけですが、本当にできるのかなと。それがもしうまく動かなければ、そ のような国が過去において20年前又は30年前に技能検定制度みたいなものを入れ たのですが、現実には動いてこなかった、というのと同じ状況を繰り返すことにな るのではないかなと。  現実的なことを考えた場合に、それがどうやったら動くのかということになりま すと、企業に使っていただけるシステムでなければならない。それでなおかつ、東 南アジアとか、アジアだけの話で申し訳ありませんが、アジアとすると、アジアの 経済の中で大きな比重を占めているのが日系企業であるはずだと。そういうことを 言いますと、日系企業にとって使いやすい。別にシステムも日本のシステムと全く 同じシステムである必要も何もないわけですが、それぞれの国で仕事をしておられ る会社が使えるシステムだったら自分の所でお金をかけてやるよりも、このシステ ムをうまく運営するのに協力してやっていったほうが非常に効率的、なおかつ、質 の高いレベルの労働力が確保できるという、目算が立つようなシステムになるよう に企業が協力し、各国の政府がそういう協力を得られるようにしてやっていくのが いいのではないか、というような考え方で私自身はいるのです。 ○今野座長 それはグローバル化とは、直接的には関係しない話ですね。 ○奈良課長 はい。 ○今野座長 先ほど野見山さんが言っています2番目のODAのポリシーの問題で、 ハードからソフトにいこうというようなことに関連するのかな。「何を」というとき に、ものを持って行くのではなくてソフト持って行きましょうと。そのときに持っ て行くソフトの新製品は、これがいいと。日本のQualification Systemを持って行 きましようということですかね。 ○奈良課長 そこまでいけるかどうかは。そういう話をやりますと、日本としても。 ○今野座長 そこにグローバル化を入れると、日本のシステムを持って行ったとき に、例えばタイへ行ったときにタイ版としてもあまり直してほしくないのですよね、 グローバリゼーションを入れてしまうと。特に労働市場の国際化みたいなことを考 えると、あまり変えてほしくないということになる。観点によって持っていき方が 違ってくるかもしれないなという気が何となくするのです。たぶんイギリスの場合 は絶対変えたくないでしょう、そのままバーンと持っていきたいでしよう。 ○奈良課長 そうだと思います。ちょっと余談になりますが、ついこの間までIL Oのアジア太平洋地域の技能開発に関する会合がありまして、その中で話題が2つ あったのです。1つはコンピテンシー・スタンダードみたいなものをアジア太平洋 地域のモデル版を作りましょうと。それと、それを踏まえた資格制度。そういった ようなモデルを作ろうではないかということが議題として上がっていますが、結果 から申し上げますと、オーストラリアとかニュージーランド、シンガポールはそう なのですが、現実にそういうものを持っている所は反対なのです。1つは、アジア 太平洋地域にモデルを作ること自体について、何で今さら金をかけなければいけな いのかと、例はいくらでもあるでしょう、現実にと。それと、仮にそういうモデル ができてしまった場合には、今自分たちが有しているシステムに影響を与えかねな い、それが嫌だと。端的な言い方をすると、そういうような格好でモデルを作るこ と自体について合意が、技術的な会合でありますが、そういうメンバーの中で合意 が得られなかったことがありまして、これが能力開発分野について物差しをつくろ うといいますか、何かつくろうとするときに、今のグローバリゼーションと言いつ つも、結局はそれぞれ個々の国が今有しているものを、それぞれ大事にしたいとい うのを持っているのかなと。  あとは人の移動みたいな話になってきて、やはり2国間の協定なり、合意する他 国間の協定というレベルの話でしょうという感じの結論になってきたのです。 ○野見山会員 その場合、今言われたオーストラリアとか、その他の国で今すでに 開発しているもの、それは自分の国だけでやるというのなら弊害はないかもしれま せんが。要するにオーストラリアのシステムを他の国に売り込もうという動きが出 てくれば、それを受け入れる国があったり、受け入れない国があったり出てくると。 それはまさに、お互いにとってマイナスになるわけで、やはりそこにグローバルス タンダードとは言わないけれども、ある程度共通した、あなた方が狙っていたもの が必然的に出てくる可能性はあるのですが、今の動きはどうなのですか。国内だけ を守るというならそういう反対の主張はわかるけれども、それだけにとどまらない のではないでしょうか。 ○奈良課長 たぶんコンピテンシー・スタンダードでも何でもいいのですが、それ を作り上げる際にいちばん基本的な部分、そういう部分は何か共通のものとしてア イディアが出せると思うのです。スタンダードみたいにもう決まってしまった、完 全に書かれてしまっているようなものとしてモデルを出すことについては、すごく 抵抗感があるみたいですね。どういうことをキーとしてきちんと入れ込んでいかな ければいけないのか、あとQualification Systemという話になってきますと、当然、 他国間の相互認証みたいな話になってきますと質ですね、それが相手の国が出して いる証明書というものが、本当に信用できるのかという話に必ずなってきますので、 相互の国がきちんと、それが比較できるということと、信頼ができる、信用ができ る。そういうことを満たすためにはどういう要件が必要なのかと。そういうところ についてのものを示すということは、できるのだろうなという感じだと私は認識し ています。産業そのものも国によってだいぶ違っていますから、ある職種をポンと 言ったところで、たぶん違うのですよね。同じ国内においても企業間で違いますの で、コンピテンシー・スタンダードみたいなのを国の中で定める場合においても、 必ず妥協の産物のはずなのですよね。企業の最先端のノウハウがわかるような部分 は絶対入ってこないはずですから、どこで妥協できるかという話になってきて、国 内でもそうですから、さらに国際という話になってくると、もっと妥協がしづらく なってきて、結局つくったところで、ほとんど何を書いているのかわからないよう な、抽象的な表現になってしまう可能性があるのかなと。非常に抽象的な議論にな っているのですが、何か、そういう感じを抱いております。 ○今野座長 この点について、今考えているのは日系企業を通して少しずつ日本の 技能検定みたいなのをプロモーションしていこうと考えているのでしょう。 ○奈良課長 技能的な分野に関して言いますと、手軽に評価できる、物差しとして は技能検定的なもののほうがいいのではないか、というのが我々の勝手な考え方で す。実際にNVQなどですと、実際に業務で行っているのを見ながら評価をやって いく。それで全体について初めて、この職種のこういうレベルのコンピテンシーが 有していますよという証明をするということになります。ものすごく手間暇かかる のが目に見えていますが。それと、実際の評価者は本当に確保できるのか。特に途 上国においては実際にやっていないような、ほとんど存在していない職種について 何かやろうとしたら、評価者そのものが本当に評価できるのかというような問題が 十分考えられますので、それよりは、やはり技能検定的に、非常にやるべき要素が はっきりしているもので、ある瞬間、瞬間でしかないのかもしれませんが、そうい うものを作らせるとか、そういったところで評価していくほうが、わかりやすい評 価なのかなという気がしております。 ○今野座長 ご意見はいかがですか。 ○鈴木会員 具体的な話しか私はよくわかってないのですが、例えば、タイでドイ ツが支援したTGI(自動車関係)のシステムは非常に有益だと伺っているのです。 最初の資料にも書いてありましたが、ちょっとご説明いただくと嬉しいのですが。 第1回目に配られた資料の中にTGIだったと思います。それに似たようなことで、 日本はTAIに対して今やろうということで、自動車関係の所で教育をやっており ます。 ○今野座長 TGIって何ですか。 ○鈴木会員 ドイツが技能訓練のシステムをタイの中で実際に運営までしているの です。ご存じの方はおりませんか。  うちでタイへ行った人が現場調査をしたときに、それはもう非常に。タイの拠点 からも研修生を派遣していると聞いたのです。これはなかなか面白いなという。 ○今野座長 TGIは訓練センターですか。 ○鈴木会員 そうです、向上訓練です。実際に研修生を集める営業から、訓練から、 そういった仕組みをドイツ方式でやっているということを聞いております。川上さ ん、よくご存じではないですか。 ○川上専門会員 鈴木先生のお話は、まず1つは日本がかつて自動車産業界の人材 育成、そういったトレーニングを目的にインステテュートを作った、経済産業省の サイドで作ったTIというのがあったのです。できたのですが、結局、それは少し 活動も止まり、建物だけが残っていたという状況の中で、ドイツも同じような形で タイに対して、ドイツ車のひとつの戦略的な目的でエンジニア、あるいは技能者の 方々のトレーニングをサポートする目的でインステテュートを作りました。タイ・ ジャーマン・インステテュートですね。これはもともと日本が得意にしていた技術 協力のようなトレーニングも行っていたのですが、やはり、さすがドイツで、車を 売るという、セールスという一つの基地にもしておりまして、車を売りながらトレ ーニングしていくという、非常に上手なやり方で、非常に活性化して動いていると いう状況を聞いております。 ○鈴木会員 具体的に空気圧とか、シーケンスとかいろいろなコースがありまして、 タイの自動車産業に限らないと言っていましたが、電機産業などにも研修生を募集 して、結構自立した形で運営されていると聞きますね。 ○川上専門会員 今鈴木先生が言われたそのポイントは、最初はODAのような形 で、国費で支援したのですが、やはり自立的な形で収入も上がってまいりますから。 ○鈴木会員 そうらしいですね。 ○川上専門会員 はい、利益が上がるのです。その利益をもってサイクルしてトレ ーニングをしていくという、非常に上手なやり方で活発に動いているという1つの 機関があるということです。 ○今野座長 こういうのがうまくいくというのは、内容がいいからですか、安いか らですか。 ○鈴木会員 調査してみないとわかりませんが、少なくとも内容はいいのでしょう ね。その企業ニーズにマッチしているから成り立っていく。成り立っていくから、 ある程度の資金が集まれば、また新しいカリキュラム、教材が開発できるという、 いい循環をしていると伺っております。私も聞いた話程度で申し訳ありませんけれ ども。  それに似せた形で、いまJICAで来年度から始めようとしていますよね。何か ご存じの方おりませんか、タイで。 ○搆専門会員 厚生労働省では直接関与していないと思いますが、側聞はしていま す。 ○鈴木会員 あれはT社、H社、D社、N社が中心になって、自動車産業を活性化 させる人材育成のできる仕組みを、本格的に予算が付いて始めようとしていますね。 これはどちらかと言うと、私の感じではTGIに似た感じがしております。具体的 に聞いているのは、T社は比較的T社生産方式を教えたい、H社は金型関係を教え たい、D社は保全関係と生産技能を教えたい。N社は技能評価、技能検定を中心に 指導したいと伺っています。 ○今野座長 例えば、タイのT社だったら、そこまでしなくても自分の会社の訓練 センターで十分できるのではないですか。 ○鈴木会員 生産拠点ですか。 ○今野座長 そう、作らなくても。 ○鈴木会員 今、うちの場合はタイに1つ作りましたが、そこをもう少し充実させ ようと考えております。具体的には、先回もちょっと話題にしたのですが、タイか ら技能五輪の国際大会の選手2人を日本に呼んで、訓練をして、今度の静岡大会に タイの選手として出そうと。もう1つあるのは、やはり企業内養成訓練を何とか作 らないと、継続的な人材育成といいますか、技能訓練ができないという考えは、結 構強く持っています。  今日、もし話題になるのであれば、先回からの技能評価普及は今後もやりたいの ですが、企業内の職業訓練制度はASEAN、アジア各国にあるのかどうか、ちょ っと伺いたいのですが。 ○今野座長 ないと思います。要するに、昔の養成校みたいな形でしょう。 ○鈴木会員 そうです。今日本でも養成校、D社などは最たるものですが、中卒、 高卒持っていますが、結構、最近また見直しされて、日本の国の中でも養成訓練は 大事にされつつあるような気がしますね。 ○今野座長 知っていますか。私は知っている限りでは、ないと思うのです。要す るに養成校制度。せいぜいあるとしたら、近いのが中国の昔の技工学校では。国営 企業に入ってから、そこで3年の養成訓練をして、国営企業に送り込むという技工 学校はありましたが、それは今国営企業とは別れていますから、今はないと思いま す。大体養成訓練というセンスないのではないですか。 ○牛山専門会員 形は違うのですが、アプレンティスシップになってしまいますね。 契約みたいな形でやっている所は、英国の旧植民地的な所は、結構まだ、その制度 は残してやっている所はあります。オーストラリア、ニュージーランドもアプレン ティスシップ制度は。 ○今野座長 かなりしっかりやっていますか、日本の養成校のように。 ○牛山専門会員 実は、これ企業側から相当不平不満が出て見直ししているところ があって、ほとんど機能していない国もあるはずです。 ○川上専門会員 今のお話で、私は実際に経験しましたのは、インドネシアで自動 車関係のローカルの企業で、日本の企業とたくさん提携して生産している企業があ りました、アストラというのですが。こちらの訓練校、いわゆる独立採算制という ことですね。本社がありまして、その本社の外に、人件費は本社から来るのですが、 訓練校は訓練生からお金を取って、言ってみれば運営していくと。そこに入って来 る方は高卒、ポリテクニックの2年間のコースが用意されるのです、そこへ入った 方はまだ従業員ではないのです。訓練の成果を見て雇用先が決まっていく。半分ぐ らいはアストラの中に行く学生もいますが、成績が振わなかった方は、どこかほか を斡旋されて、ほかの方へ求職活動をしていくと。実際には、いわゆる企業内訓練 という形をとってはいるのですが、まだ雇用されていない。 ○鈴木会員 比較的ドイツのデュアルシステム的な感じですね。ドイツの場合はも う少し企業内でやって、比較的優秀な人材は自社で採用という話を聞いています。 ○川上専門会員 ですから、有料という形です。 ○鈴木会員 日本で言えば専門学校みたいですか。 ○川上専門会員 はい。それを企業が実際に運営している。そこにいる方々は学生 という形。卒業の時点で半分ぐらいはその会社に雇用される。残りの方は外で求職 活動をしていくという形態です。 ○鈴木会員 日本では独特なのですかね。H社、T社、みんな持っていますよね、 現在でも。30年、50年との歴史がありますね。 ○今野座長 歴史的に見ると、日本のメーカーの現場で成長を支えたのは養成校の 人たちです。そういうシステムが日本みたいに大きな形であるというのは、あまり 知らないのですよ。 ○奈良課長 日本は非常に独特だった。そういう言われ方はします。 ○今野座長 ただ、日本の場合でも、最近ちょっと違うと思いますが、日本がうま くいったのは、まだ所得水準が低くて、中卒でも優秀な子がいっぱいいて、大学に 行かないで日立に行きたいとか、T社に行きたいという子がいっぱいいて、それが 3年間ぐらいバッチリ養成をして、T社マンをつくって現場に送っていったわけで すよね。そういうのは鉄でも電機でもみんなやっていますよね。だから途上国向き なのですけれども。お金がなくて、学歴水準が低くて優秀な人を引っ張るにはいち ばんいいのですよ。雇用も保証されていますし。一種、現場のエリートみたいなも のだから。 ○牛山専門会員 1つ違うのは、日本の場合は長い契約社会ではなくて一生という 形です。そういう場合、短期間で動くときに、資格的に、いわゆる政府で決められ た資格がいいのか、養成校の資格がいいとか、これは大きな問題になってくると思 いますね。 ○搆専門会員 私もそう思っています。何年も勤めた後、移動することが前程だと すると、企業からすると、企業が持っているということは、それを全部社会的なイ ンフラの整備になってしまうことになります。半分出てしまっても、それはクオリ ティの高い方を確保するための投資だと言うのだったら、それはいいのだと言うの ならいいのですが、企業間の移動が激しい国が多くて、それはなかなか成り立たな いのかなと。そういう中で企業内の評価ではなくて、社会として、国ということで もいいのですが、それは技能を評価するということが初めて、それで初めて引き続 き貢献することが可能になるのかなと思うのです。 ○今野座長 日本の養成校システムが商品として売れるかどうかとは別にして、日 本の製造業の成長を支えた非常に大きな原動力の1つだという話だと思いますね。 それで、養成校の人ですごく出世している人はいっぱいいますからね、部長ぐらい まで上がっている人、中卒で。輸出できないからしようがないけれども、商品とし てはあるということですかね、海外に売れない商品として。 ○鈴木会員 今言われるような懸念があるからインドネシアのA社の場合は、授業 料を取って、企業が運営しながらいい人は自分の所へ入れてという仕組みになって いるのだろうと思います。自動車産業に限らず工業系は、そういう仕組みも要るよ うな気はするのですが、どうなのでしょうか。日本の場合が特殊なのかどうかです が。 ○今野座長 事実としては、鉄もそうですし、重電もそうだし、自動車もそうだと 思いますが、現場の職長以上は、かなりの比率が養成校だと思いますね。養成校の 周りに一般のブルーカラーがつくという体制ですね。 ○鈴木会員 今T社もD社も、どちらかと言うと製造現場の課長は、比較的そうい う人たちがなっていく例は、まだ依然として強いですね。一時期それは、実は結構 ふれたのですが、現場はもう少しコンピューター管理も含めて、QC手法で物がつ くれるという、結構ふれたのですが、最近はそれがゆり戻しされてきて、うちの場 合ですと、今年4月の新入社員は以前より増えました。中卒が増えていますし高卒 も増えています。 ○今野座長 養成校だけの話をすると、たしか労働市場の問題との関係があって、 そんなの新商品になるのかということがあるのです。また、逆の見方もあって、低 学歴を採っておけば逃げないという。中卒で採っておいて昇進させれば、社外に出 たら中卒になってしまうから逃げない。実は、日本の企業の養成校は、そういう面 はすごくあったのです。だから、高度成長期は、高卒資格を夜間学校などで取らせ ようと一生懸命やっていたのですが、取らせると逃げられるのではないかとすごく 心配しながら日本企業もやっていたのです。特に関東の川崎辺りの工業地帯でやっ ていたような養成校は、養成工のなかで社内に残ったのは半分ぐらいですからね。 あまりそういう統計はないのですが、半分ぐらいしか残っていないのです。あとは 売れるから出て行っている。それでもやってきたわけですからね、日本は。たぶん T社あたりはほかに競争相手がいないから、そういうことはなかったと思いますが、 川崎辺りは、かなり逃げられていますね。  こういうのはうまく売れますかね。経営者がそれで行こうと思わないと駄目です かね、向こうの経営者が。 ○鈴木会員 いちばんそれがポイントだと思います。 ○奈良課長 技能評価システムの事業をやっていて、よく経営者サイドから言われ る話として聞かされたのは、人材開発というのは長期的な投資ではなくてコストと して見てしまうということ。それで実際上はなかなかうまくいかないと、マレーシ ア、インドネシア、フィリピンの政府の人たちからよく言われました。それと東南 アジアは、現実問題として日本以上に学歴社会です。家族に優秀な人がいると、そ こに金をつぎ込んで1人の人間を、とにかく大学を出させてしまおうとする。大学 を出るということと、一般的にワーカーとして働くことに対して、非常に意識の差 があるのかなという気がします。  本当に大きい企業が抱えてくれるのなら、それなりに安心感はあるのでしょうが、 そうではない所、あまり知られていない所、日本が養成校として採用して何かやろ うとしても、それだけインセンティブが働くかというのはあると思うのですけれど もね。 ○今野座長 基本的に大企業でないと無理なのです。T社やD社辺りで、タイで養 成校制度をやらないですか。 ○鈴木会員 それは今検討を始めました。だから、日本の終身雇用制度がそれを定 着化させているのだとしたら、なかなか難しい問題ではありますよね。いま検討し ているのは、タイと中国もやりたいのですが、ある程度力をつけると変わっていっ てしまうからというのが、おっしゃるとおりやはり一様に大きなネックですね。 ○奈良課長 私の感じですが、実際に東南アジアのほうでジョブホッピングという のは、比較的下のほうのブルーカラーでは、多くないのではないかと思うのです。 マネジャークラスぐらいになってくると確かにあるのですけれども。 ○鈴木会員 そんなにないですよね。 ○川上専門会員 統計は見せていただけませんでしたね。やはり圧倒的にマネジャ ー以上のところのジョブホッピングということを聞いております。 ○奈良課長 そういうことが成立することの可能性というのは、筋としてはあるよ うな気がするのですが、そのためにどこか大きいところが実際に始めて、それがう まく機能するといいますか、そういう例が出てこないと広がることは難しいのかな という感じがしますけれどもね。 ○今野座長 それとODAとはどういう関係があるのですかね。関係ないかな。 ○奈良課長 難しいというか、やはり私企業の活動に対してODAを注ぎ込むとい うのは無理だろうと思いますので、システムをサポートするための政策的なものな どをやるとか、何かそういうことでODAということはあり得ると思いますけれど もね。 ○今野座長 私も詳しくはわからないのですが、歴史的には日本の養成学校が企業 内で出てきたときに、その前に法律でそういうのを認定するという仕組みがあって つくっていったのではなかったでしたか。違いましたか。 ○鈴木会員 今そうですよね。厚生労働省の認定に基づいて、普通訓練課程や専修 課程などがありますよね。 ○奈良課長 それに基づいて、また一方で助成金があるなどということは、日本の 場合、大体そういうのが脇にありますから、何もなければ認定制度をつくっても。 ○今野座長 あったから認定をつくった。 ○奈良課長 何か必要なので認定制度がありますので。 ○野見山会員 今、日系企業という話が出ていますが、私はよくわからないのです が、タイの場合だと自動車産業があるのですが、部品調達率、現地の調達率を高め ていかなければ、関税の関係で非常に問題になるということで、現地調達率を上げ れば上げるほど、日系企業というのは現地の裾野産業をいかに育てるかというのが、 むしろT社にしてもN社にしても大事な課題になってくる。そうすると、日系企業 というのではなくて、下位の中堅企業を育てるためのニーズが非常に出てきている。 そのための資格制度を少し準備しなければいけないということがあって、私がいた ころ、JICAが1つの大きなプロジェクトとして、裾野産業の技能振興をどう図 るかという課題を持って、経産省の技術者何とか協会というのがあるでしょう。A OTS、あそこからT社やN社など大勢の人たちが来て、鋳物だとか何とかといろ いろやっていました。そういう意味で、日系企業の関係というよりも、日系企業が 育つための地場産業というか、そういう企業の振興もあるから、それがひいては日 系企業というか、T社自身の足腰を強くする原因にもなりますから、広く考えてい けば、地場産業振興のための技能振興対策というか、これは名目にもなるし、非常 に大事な課題にもなるのです。厚生労働省がやるかどうかは別として、そういう辺 りは視野として持っておく必要があると思います。 ○鈴木会員 うちはAOTSで毎年20人ぐらい、海外留学生が1年間来ますよ。 ○野見山会員 大勢受けていますよ。 ○鈴木会員 今年も4月から2カ月ぐらい、日本語勉強のために東京・大阪で勉強 して、そのあと6月ぐらいから23名、AOTSを利用して海外から留学生が来ます ね。あれは厚労省とは違うのですよね。 ○今野座長 あそこは経産省です。厚労省は日本ILO協会が何とかを架ける橋、 それで同じようなことをやっています。規模が小さいです。 ○田中室長 年間130名ですかね。管理職クラスですから、職長クラスを育てる、 現場の管理・監督者を育てるという形の制度がありますけれども。 ○今野座長 もしかしたら、人材養成の日本のODAでいちばん役に立っているの は、それかもしれないな。ILO協会のとAOTSと。それで、AOTSは累積で いくと何万でしょう。ILO協会ももう何千ですよね。 ○田中室長 ILO協会は5,000です。AOTSと桁が違っています。 ○今野座長 みんな中堅に育っていきますからね。 ○鈴木会員 そういう意味では、今の評価者訓練などは、その一端を担っているか なという感じはします。今やっていただいている、あれは非常に面白いです。 ○今野座長 技能検定制度をどんどん広めるというのは、うまくいきそうですかね。 ○奈良課長 別にそれにこだわっているわけではないのですが、本当に厚労省など という枠を離れて考えますに、特に人材養成という分野の話をした場合、日本が持 っているものは企業の皆様が持っておられるノウハウなり、これまでいろいろなこ とをやってこられた知恵が本来いちばんの力だと思うのです。世界協力で何だかん だやったところで、それが何になるのかと、正直言ってそう考えるときがありまし て、やはり日本が求めるものは企業の皆さんのそういう力なのではないかと。そう いうことが国際協力という言い方がいいのかどうかはあるでしょうが、それがその 国の中で十分に力を発揮できることが企業のためにも良いことであり、またそれぞ れ進出しておられる国の中でも、それが十分機能していくという姿が、こういう分 野ではいちばん良いのではないかというのがあります。我々がやる仕事の中でも、 是非そういう企業の皆様と一緒になって、何か仕事ができないかと。 ○今野座長 そのとき、何でもいいのですが、とりあえず商品としては技能検定だ として、日本がODAで援助しましょうと言ったときには、技能系が多いから、日 本の製造業はこれで成長したという自信がないと。先ほどの養成校の場合は自信が あるわけです。でも、輸出しにくいという問題があるのですが。技能検定の場合も、 すごく貢献したという自信がなければいけませんよね。そういう意味で、企業にと って非常に役に立って、ニーズに対応した良い制度であったと。そう考えると、私 は技能検定は役に立ったと思っているのですが、役に立ったというエビデンスはあ まりないのです。つまり、そういう研究もないしね。 ○野見山会員 ただ、あれは労働市場の近代化にとっては、技能検定は非常に重大 な役割を持ったし、要するに学歴や年齢によらない、技能を公証することをベース とした労働市場というか、需給関係を確立する。そういう意味で、労働市場の近代 化にはプラスになっているし、企業に役に立つだけではなくて、そういう面があっ たと。求職者だって、自分が技能検定でどれだけ持っているというのが1つの公証 制度として大きなメリットにはなっていると思うのです。  それに関連してなのですが、ここに何カ所かに「情報発信」と書いてあるのです が、日本に欠けているのは情報発信能力が非常に遅れているということですね。要 は外国にいると、オーストラリアはこうやっているとか、イギリスの制度はこうだ とか、途上国としてはそういう情報はものすごく持っているわけですよ。ところが、 日本は何をやっているかというのは、まるっきりとは言いませんが、非常に少ない。 結局、日本語の資料しかないから、情報がわかっていない。いまいろいろ言われて いる養成校制度だって、こういう制度でやってきたということすら、彼らに情報が 十分伝われば、途中で脱落なり移動があるかもしれないのですが、こういう制度を 入れようという1つの機会が出てくると思うのです。だから、今持っている国の制 度も、もちろんいいですよ。国の制度のいろいろなやり方も発信することは大事で すが、そういう企業が能力開発に関してどういうことをやっているかということに 関する情報発信を、まず英語の資料をふんだんに作って、そういうものを大いにP Rすると。これはやはり向こうから注文をとるというか、日本に対するニーズが出 てくる1つのきっかけにはなると思うのです。能力開発だけのことではなくて、ほ かの制度もみんなそうですが、その点が非常に遅れていると思いますね。だから、 これからは大いにエネルギーを投入する分野だとは思いますけれどもね。 ○田代専門会員 今まで本当にその人自体を訓練するとか教育するという、養成な どがあったのですが、厚生労働省で昔から歴史的によく実施しているのは、そうい う指導者の養成をたくさんしてきたというところも、裾野を広げる意味で非常に大 きかったのではないかと思われます。世界中にセンタープロジェクトというのをた くさん企画・参画して、そこで教える方々を日本に呼んできて、いろいろ勉強して いただいて、またそれを世界に戻して、そこの国の方々をまたそこで教育してもら うという部分では、厚生労働省のやった施策としては非常に良かったのではないか と思います。JICAを通じてですが、そういう指導者の養成自体では5,000人か ら6,000人ぐらいの規模では、もう既にやっていると思います。そこから出ていく 教えられる方々の裾野を考えれば、ものすごい数の方々がそこで恩恵を受けている のではないかと考えるところです。以上です。 ○川上専門会員 今のお話に関連するのですが、やはりどうしても資料3に書かれ ている人材養成分野の国際協力の理念、これと裏腹の関係なのかもしれませんが、 この種の国際協力は、どうしても無形の協力ということになるわけですよね。そう すると、いろいろ書き込まれている表現をかけて、実際にこれを政策評価していく 場合に、なかなか難しいものがたくさんあるなと。やはり実態が無形ということで すから、相手国がいつまでも感謝してくれればいいのですよね。そうすると、1つ の評価にはなっていくのですが、1例で技能検定というのがあると、もう何十年も 前に日本の持っていた技能検定の資料を、小出しにしたのではなくて、たぶん一度 にドンと韓国に行ったのだと思いますが、日本のおかげでこういう制度ができまし たということはどなたからも聞いたことはありませんし、おられる方はそのことも 知らない。  そして、それがまた中国にも行って、センターができて、日本と同じシステムで 検定が行われている。これは昔、日本が協力してこのようにしたのだと、中国の人 も知らない。確かに評価というのは非常に難しい面が出てくるなと。今のお話の指 導員の場合も、よく各国にまいりますと、国によっては指導者の方々がいまは総局 長になっておられる方もおられて、そういった方が日本の技術指導を受けて、こう いうセンターの中で今指導員の方がおられる。人を育てるのは非常に大事だと言っ てくれる国は、我々にはまだ次の弾みになる。  この中で、書き込めるのかどうか、私の個人的なあれなのですが、国際協力の中 で非常に大事なのはパートナーシップ、信頼関係といいますか、ワンウェーで何が ニーズだと。調べて、これはここが足りないから、インフラを整備しないといけな い。そのためには、これを投入してやりました。一定の期間で終了します。成果が 上がりました。それは表面的なものかもしれませんが、やはりなかなか表現しにく いのはパートナーシップとか、彼らがもっと望むのは共有化ということを言うので す。それをこのペーパーの中では「活用」という言葉で置き換えられていくわけで すが、「活用」と書くと、いきなりこれが活用されるのか、されないのかというのは、 なかなか判断が難しい。どの程度の活用なのか。  相手の方がよくおっしゃるのは、活用するのは自分たちという認識で話しておら れると思います。ですから、最初にニーズありきというよりも、国際協力の最初の 発端はテンプテーションみたいなものがあって、彼らは日本のものを何でも知りた がる。それを学びたがる。その軽い助走のところのまず1つの入り口があって、何 かテンプテーションしてしまう。そこでパートナーシップができていくと、今度は たぶん共有しましょうと言ってくるのです。共有化が始まってきますと、今度はイ ンプルーヴ、アップデートしていく、あるいは新しいものを取り入れるという、そ こに要請が出てくると思います。  その要請に基づいて、何をどうすべきかというのは、またパートナーシップのレ ベルで一緒に考えてやりませんかと。日本は答を知っていても、それはやはり自立 的発展、自助努力といいますか、そういうものを促す意味で、彼らのほうからそう いうものを発信させる。それに対して、また私どもがパートナーシップという1つ の枠の中で、サポートという言葉が良いかどうかわかりませんが、いろいろ情報・ 経験を共有化しながら連携していく。そういう姿なのかと思います。いずれにして も、無形なものを扱っているという点で、こう書いたときに、やはり最後に不安に なるのは、どのような政策評価をして、この事業の到達点を見るのかという、そこ ですね。是非、いろいろなご意見を教えていただければと思います。 ○今野座長 評価は難しいですね。私は初めて聞いたのですが、先ほどの技能検定 の仕組みは、韓国にどさっと行ったのですか。いま韓国で同じようなことをやって いるのですか。 ○川上専門会員 全く同じシステムをとっており、日本も同じだと思いますが、い ま韓国も過渡期にあります。それは何かというと、ホワイトカラー層に向けた対象 で、どのように拡張するかということです。彼らとのコミュニケーションの間で得 た知識で恐縮なのですが、韓国は実はアジアの中でNVQなりがなかなか普及しな い、実態的に運用されにくいという面を彼らもよく意見として言ってくださるので すが、日本と韓国は汗を流すのが好きな国です。一般的にほかの国では、汗を流し てお金をかけて何か一生懸命やるというのは好まれない。  ですから、ボーンとパッケージがあれば、パッケージで体系的なものができてし まいます。パッケージで体系的なものができると、運営してくれるのは、そこでも う国のほうは手を洗えるというのです。そうすると、あとは民間にボーンと「やり なさい、これが良いパッケージだよ。中身はあなたの所でつくればいいじゃないの。」 と、そこでコンピテンシーの問題が出るというのです。何が問題かというと、例え ば海を1つ定義するのにコンピテンシーの体系化をする場合に、ある特定の企業が 任せられる、ある特定の指定機関と呼ばれる、あるいはトレーニングプロバイダー と呼ばれる所がアサインメントを受けるわけです。「あなたの企業をおいて、ほかに こういうことをできる所はないよ。」と。それが、ときには日系企業であったりする わけですね。「是非つくってください。」できたら、「これが国家基準です。評価者も、 あなたの企業から出してください。1人でいいですよ。1人で巡回していただけれ ばいいです。オン・ザ・ジョブで。」、そういうことで出来上がっていく。  韓国は、もっと冷静に見ていますね。イギリスに相当勉強に行ったようでして、 NVQの目指すところというのは何か。私の意見ではなくて、彼らの意見です。そ れは、この仕組みは職務を遂行する能力のどこを目指したものか。日本の技能検定 にしても、韓国の技能検定は常に上のレベルへハードルを上げていって、そこに向 かって何年後にそこへ到達するというディマンディングだというのですが、そうい う基準だと。  ところが、NVQは労働者が怠けないように、怠けている人はちゃんと平均のと ころまで来て、あなたはちゃんと平均的な仕事ができる、ということを証明する制 度であって、平均まで来て、何でそれ以上にもっと努力して能力を上げなければい けないの、というのが実際にアジアで使い忘れているといいますか、なかなか使わ れにくい、普及しにくいということです。  ちょっと話が変わりますが、最近インドネシアが体系はできましたというのです。 私も見せていただきました。こんな厚いボリュームのコンピテンシー・スタンダー ドができています。でも、これでは試験ができない。その下をユニットに分けまし た。そのユニットのところで、日本の技能検定をそのまま移転してほしいというの です。だから、2つの考えを持っています。  体系化された非常に立派な、日本にはそういうものがなかなかないのではないか ということで、牛山さんが最初の会議で指摘された点がありましたが、彼らはまず コンピテンシー・スタンダードが非常に良いものだ、バイブルのように使えると。 しかし、運用する意味で、ものは何かというと、やはり日系企業を見たときに、そ こに写るのは高実績であり、実際に実力をつけておられる企業、そこに育っている 人たちを見たら、やはり日本のシステムは間違いなく良いのだけれども、どうやっ てそれを活用するか。そこで使われている技能検定制度に着目して、検定制度はコ ンピテンシー・スタンダードの中でちゃんと運用的に存在していくと。インドネシ アは今それを目指して、日本に非常に熱い視線を送ってきております。問題は日本 がそれにどう応えていくか。実は守秘義務とかいろいろな問題もありまして、それ らを全部放出できるのかということですね。いまそういう状況があります。 ○今野座長 先ほど言われたのは、中国にも行っているのですか。 ○川上専門会員 それは韓国から中国に行っております。無形の協力なのですが、 韓国の場合にはきちんと建物に「KOICA」という銘板も入っていますし、一つひと つの椅子のここにも「KOICA」と入っていますし、5階建てのビルをまるごとつく ってあげて、その中が試験センターになって、コンピューターシステムも、自国で 使っていたシステムをソフトウェアごと寄贈しています。ですから中国は最初楽だ ったと思います。JICAではなくKOICAからもらったものでスタートしたとい う状況です。 ○牛山専門会員 今検定を極めようというのは難しいとは皆さん理解したと思うの ですが、私は日本のものをいまから出すというよりも、例えばILOのAPSDE Pという昔あった所を通して、今それがSKILLS-APですか、名前が変わりました ね。日本はそういうような所、いわゆる国際機関とタイアップして、また新たに制 度をつくり上げるという中期的・長期的な面で支援するという形のほうがいいと思 います。今から持っていって、英国、オーストラリア、カナダ辺りがまとまったシ ステムに太刀打ちするには、ちょっと力不足ではないかと思いますね。  ですから、1つのあり方としては、国際機関を利用しながら、新たな制度をつく り上げると。私は、コンピテンシーベースの形の基準が悪いということはないと思 うのです。ただ、英国的な5段階のやり方は、学歴などをも加味した、そういうも のがアジアには受け入れられないのではないかと思うのです。ですから、そういう ものを日本側が完璧に見て、日本だけでつくるとちょっと弱いと思いますから、国 際機関を利用して再構築するという1つのあり方がいいのではないかと思います。 ○今野座長 技能検定の話でだいぶ議論が行われたのですが、ほかにも新商品が書 いてあると思うので、それについてもご意見があったらお願いします。 ○鈴木会員 今評価普及は6カ国になっていますが、アジアという範囲で、例えば インドへ広げるなどというのは、可能性はあるのですか。 ○田中室長 システム事業ですか。 ○鈴木会員 はい。今技能評価普及システム6カ国のうち、インドはまだ対象国に なっていないのですよね。 ○田中室長 実際スリランカも実質的には入っていませんが、スリランカは入った りしていますから、実態的には広げています。国からの要望があれば。 ○鈴木会員 それは国からの要望。 ○田中室長 日系企業の関係になるのかもしれませんが、実態的にJICAの専門 家で行っている方の要望などいろいろなもので、そこは柔軟には対応しているので す。予算上は確かにそうなっていますが、あまり離れてはまずいですが、ある程度 の柔軟性の中では対応しています。もちろん、ちゃんとシステム的に増やせという 話も一方であるかもしれませんが、そこはまた別途考えたいと思います。 ○今野座長 あれはそうやって日系企業に一生懸命つくってもらって、それがその 社会に広がればいいなと思っているのでしょう。 ○田中室長 そうです。前から言いますと、日系企業があって、収益サプライヤー 等、地場産業を含めて、それが最終的にその国の制度として引き上げられれば成功 だなという形のスキームで考えているわけです。 ○鈴木会員 サプライヤーに広げる施策はないかなと思って、これはなかなか難し いのですよね。 ○今野座長 難しいというのは、サプライヤーにやる気がないということですか。 ○鈴木会員 なかなか理解浸透しない、する方法も講じていないのは事実なのです。 ○田中室長 メリットが見えないからでしょう。 ○鈴木会員 そうかもしれないですね。あまり情報も流してもいけないけどね。 ○今野座長 日系企業を通して、そのように少しずつでも広げようという動きで、 例えばAPSDEPでもいいのですが、持っていってやると違う商品になる可能性 がありますよね。つまり、APSDEPはAPSDEPで、オーストラリアはこう いうのがいいぞなど、いろいろなことを言うわけですよね。それで何かつくったと き、違う商品を2つつくるということになりますよね。 ○奈良課長 それぞれの国の中で、方向性は決まるだろうとは思うのです。先ほど インドネシアの例がありましたが、要するにコンピテンシー・スタンダードみたい なものをやっても、評価の部分になったら技能検定みたいなほうが評価しやすいと いう、システムの組合せというのは現実にはいろいろ考えられるのだと思うのです。 それで、日系企業がそれぞれ国の中で政府が進めようとしていることに対して、ど れだけ協力できるかによって決まってくるのではないか。その中で話をしていけば、 企業としては、これはこのような形にしてほしいとか、現実にはそういうやり取り ができるのだと思います。 ○今野座長 いまの鈴木さんのお話は、日系企業でそうなったとしても、そこから 先は出にくいという話なのですね。広げるときに、サプライヤーにさえ難しいとい う話ですよね。そこは何か仕掛けが要るのかもしれない。 ○鈴木会員 結局、現状を高くしようとすればするほど、サプライヤーの力をつけ ないと、調達部品の不良につながる例が非常に多くなりつつありますので。 ○奈良課長 例えばD社が、タイの工場のほうでサプライヤーに対して、「あなたの 所、こういう資格を持った人間がいなきゃ駄目よ。」というような縛りを掛けること ができないのでしょうか。 ○鈴木会員 どうなのだろうな。ちょっと。 ○今野座長 そういうときに、みんなできませんと言われたら、怖いのではないで すか。部品が入らなくなるから。 ○奈良課長 ただ、現実にタイでは、T社が現地調達率を上げるというので、一時 期かなり日本から技術指導に送り込んでおられたのですよね。それで、とにかく日 本から協力会社に行っていただくのもそうなのですが、ローカル企業のレベルも上 げようということで、かなりやっておられたとテレビで見たことがあるのですけれ ども。 ○今野座長 そういう点で、先ほどのタイのTGIの話ですが、例えばT社はそこ に人を出さないのではないかとか思うので、誰が訓練生として行っているのだろう と思ったのです。しかしTGIは商売になっているというのですね。商売になって いるのはサプライヤーレベルが人を出すからですかね。 ○鈴木会員 受講生ですか。 ○今野座長 T社とかH社とか、あれだけの大規模であれば、自前で訓練校をつく りますよね。そうしたら、訓練生を出さなくなるのではないかと。そんなことはな いですか。 ○鈴木会員 どうなのですか。私も現地に行ったことがないので、わからないので すけれどもね。 ○川上専門会員 サプライヤーとサービスステーションと全部、いわゆるセールス のネットワークに関係するところをそこに集めてやるということです。営業戦略の 一環として、訓練は1つの国際協力的な顔、そしてそのチャンネルでニーズも拾っ て情報が入りますから、私どもが事業をやっていて大事なのは、与えるだけではな くて、事業を通して情報を収集するというのは非常に大事なことで、国なり厚生労 働省がそれを活用するためのものをちゃんと積み上げていかなければいけないので す。いまのドイツの例ですと、非常にうまくいっているなと感じたのは、実はそこ のところですね。国際協力という顔で、いろいろ深いところに入っていって、情報 が入って、それがマーケットリサーチになって、それに基づいて今度は営業をして いくと、そういう上手なやり方で、たぶん存続しているのだろうと。 ○奈良課長 国際協力という顔をして、実際上は企業ですよね。言ってみれば企業 活動をやっているという感じで、なおかつサプライヤーなりセールスのほうの質も 確保しつつ。 ○今野座長 例えばタイは自動車の生産拠点ですから、そこにあるT社、N社、H 社など、が集まってサプライヤー向けの訓練センターをつくろうではないか、とい うのが先ほどの経産省のプロジェクトと、そういうことですか。 ○鈴木会員 これはなかなか力を入れていますね。最近、D社から1人専任を置か ざるを得ないと言っています。専任を置くだけの、なかなかの金額、予算を確保で きたような話も聞きましたね。4月から本格的に活動を始めます。ただ、H社とT 社は、現地にいる日本社員がそれにかかわっている、というように聞きました。D 社とN社は、現状では日本から派遣されていく。そのようになっています。 ○搆専門会員 状況は、大体継続的に把握はしています。タイ側のコミットメント というか、日本側からの手厚い協力に対し、タイ側の人的投入が少なすぎるように 思いました。途上国側の投入確保というのは重要で、日本ばかりが投入しすぎると 自然と日本側がやりたくてやっているというような雰囲気が出てしまうことがあり ます。 ○今野座長 TGIも、いま搆さんがおっしゃられたのと一緒ですよね。 ○搆専門会員 ただ、おそらく利益が上がるような仕組みを作ったとのことですが、 それは、タイ側として実感が湧くような仕組みだったのではないかと思うのです。 初期デザインはよく考えなければいけないと思います。ドナーだけでリソースを最 適化して完成させてしまうと駄目で、途上国側が努力して初めてうまくいくという 仕組みにしておかないといけません。タイの自動車関係の人材育成についてウォッ チしているのは、今後も民間主導で進んでいったらいいと思うのですが、いずれ国 家検定の話になったときに、タイの労働省が中核となるべきであり、日本の労働行 政が長年に渡り協力して仕組みづくりに携わり熟知している関係で、厚生労働省と しても何らかのコミットはしていくべきだと考えているからです。 ○今野座長 日本流の言葉で言うと、認定校になっていないわけですね。認定校に するということは、政府が一定のカリキュラムについて制約をするわけだから、例 えば政府の資格制度とマッチングする形でやるのでしょう。認定しないで勝手にや ってと言ったら、いろいろなシステムで訓練校が出来上がるということなのですが、 いまT社やH社がやっているのは、そういう意味では認定校ではない。日本流の認 定校ではない。 ○奈良課長 タイの技能開発局(DSD)とは、十分に連携はとっているはずです ね。向こうのDSDという所の幹部の人たちも、そういう点で十分認識しています から。 ○川上専門会員 私は議事録で拝見させていただいたのですが、前回ダブルスタン ダードというご心配のご指摘もありましたね。タイからしますと、タイ側の政府の 方の視点を私どもはちょっと気にするのですが、日本の者が行ってトライアルをし て、「さあ、どうですか。日本のもので、こういう仕組みでやりますよ。これを検定 で評価する方は、こういうトレーニング、能力を高めなければいけませんよ。それ によって、初めて正当な評価ができるようになります。」と、そこまで手解きしてい く中で、やはりタイにはタイの考え方でできたレベルがあるのです。日本のレベル にはとてもとても届かないし、このレベルでやったって、受ける人は出てこない。 お金を払ってまで受ける人はいない。このレベルだったら、十分お金をもらってい ると、そういう言い方をしますね。  ですから、実態的には今のところダブルスタンダードとは捉えていない。むしろ タイのいちばん基礎級の雇用可能な技能を保証するためのところを、日本の3級と いうのがありますので、そのレベルでもって肉付けさせてほしいというのが彼らの 要望。1級はいくらあっても邪魔にならないという状況です。 ○今野座長 タイなどでやる日系企業の中だけを考えると、あれだけ国際的に売れ る製品をつくっているわけだから、ちゃんと日本の1級、2級ぐらいの人はいない と困りますよね。 ○鈴木会員 全くそのとおりです。 ○今野座長 そうすると、普通の労働市場に出てしまうと、いまおっしゃられたよ うなことで、「まあ、3級でいいんじゃない。」という感じですかね。  商品の1つとして、日系企業にかなり協力してもらうというか、そういう形のと きのやり方として、ここで提案しているのでしょうが、「日系企業はどうしてやるん だろうか。」と思っています。社会貢献などと言ってしまえばいいのですが、そうで はないときに日系企業がやるインセンティブというのは何ですかね。やはり社会貢 献しかないのかな。 ○奈良課長 先ほど川上さんからダブルスタンダードという話がありましたが、ダ ブルスタンダードでいちばん心配しているのは、いわゆるイギリス型のものが本当 に国の中で、それをやりなさいよと言われてしまったときですね。 ○今野座長 そのときに困ると。 ○奈良課長 今日系企業も、日本の国内で使っているシステムを、基本的にはその まま外国に持っていって、同じようなことでやっておられます。現実の問題として 考えた場合に、これから人の移動が時代の流れの中で、どんどん高まってくる可能 性は否定できないわけですね。そうなってくると、それぞれ国においてはシステム をきちんと運用していくというのは非常に大事だということになってきて、そこで 出来上がってきたシステムと、日系企業が実際にこれまで使ってきたものが違って くると、まさにダブルスタンダードになってしまう。そこになる前に、それだった ら現実に今お使いになっているもの、そのままだと当然というのは無理でしょうか ら、相手の国がつくろうとしているシステムの中で、うまく自分たちが使いやすい ような格好で入れてもらうと。抽象的な言い方で恐縮なのですが、そういうことを やることが日本の企業、日系企業にとって、非常に大きなメリットになるのではな いかと。 ○今野座長 それは、かなり日系企業を説得しないと、なかなかそういう気持にな らないのではないですか。どうですかね。 ○鈴木会員 そうだと思います。 ○今野座長 タイ辺りで自動車産業の日系企業の経営者が、みんな本当にそう思っ たら、すぐできてしまいそうですよね。タイ辺りは、日本の自動車産業で全部占め ているみたいなものだから。 ○鈴木会員 そうですよね。 ○奈良課長 政府の方がシステムはつくって、あとはもう全部お任せよみたいな感 じでやってきている面がありますから、実際話をしていると、別に日系企業に限ら ず、ローカルの企業のほうも、政府が新しいのをつくっても、「またつくったの。ま た何かやれと言うのか。」という感じの反応がよく返ってくるのですけれども。 ○今野座長 タイにある日系企業の自動車会社の業界団体みたいなものがあったと して、そこで皆さんが集まって、「こういうのをつくろうじゃないか。」とつくって もらって、セットになって政府にお願いするというと、すごく強いですよね。個別 の企業がやっていても、あまり意味がないですよね。 ○奈良課長 そういう形ではなくて、やはり1つのまとまりとしての力だと思いま すけれども。 ○今野座長 そうすると、そういうことをやるように、例えばタイの自動車産業の 日系企業の人たちをプロモーションする、お願いをする。プロジェクトが必要だっ たら、そこにお金を出して、そういうのをつくっていただくということになるのか なと。 ○奈良課長 そういうイメージなのです。 ○今野座長 聞いてみて、どうですか。 ○鈴木会員 現地の人でないと何とも言えないような気がするのです。わからない な。何とも返事のしようがないです。 ○奈良課長 今、自動車産業でそういう動きがあるということは、ある意味で必要 性が強い分野ではあるのかなと思うのですけれどもね。各国にすれば、「日本企業に 是非入ってほしい。」という言い方をよくしますよね。システムをつくっても、なか なか日系企業が使ってくれないし、そういうもの、スタンダードみたいなものをつ くり上げていくときも、なかなか入ってきてくれない、協力をしてくれないという のはよく言いますね。その背景には、今まで政府がやってきたことに対して、全然 信用していないということがあるのではないかと。それとシステムそのものが本当 に動いてきた実績がないと。そういうことを背景にすると、言われてもすぐおいそ れとは乗れないということは、現実問題としてあるのだと思うのですけれども。 ○今野座長 もしそういうのをやるとしたら、仕掛けとしては日本のODAとして、 日本側とタイ側の政府とで、例えばタイ自動車産業協会の3者がが協力してやるの かな。そういう仕掛けですかね。 ○奈良課長 イメージとしては、そんなイメージだと思います。 ○鈴木会員 今のスタイルは、タイ自動車工業会とタイ政府、DSD関係だったと 思いますが、そこが中心ですね。それとあと、たしかJICAでしたね。JETR Oですか。 ○川上専門会員 JETROとJICAと、それぞれ入っております。 ○搆専門会員 工業省の系列のところだったはずです。 ○川上専門会員 JODC。 ○搆専門会員 いや、日本側ではなくて、タイ側のことを言っているのです。タイ 労働省ではなくて、工業省の関係機関がオフィシャルチャンネルになっているはず です。もちろんタイの労働省と連絡はしているでしょうが、そういうチャンネルだ と思います。 ○川上専門会員 評価の話のあとで、検定の話のときに、DSDがかんでくる話で すね。 ○搆専門会員 国家検定以外のところは工業省系機関で進んでいます。 ○今野座長 今、実施している日本の検定制度を日系企業に入れていることを援助 するというのは、向こうからの要請でするというのですが、実際に回し方はどうし ているのですか。先ほどみたいな体制でやっているわけではないのですか。例えば 自動車の日系企業がやりたいといったときにやるというケースと、日系企業が全部 集まって、業界団体でやるぞというケースと。 ○田中室長 川上さんが詳しいかもしれないのですが、私の知る範囲においては、 個別の企業だと思うのですが、どうなのでしょうか。 ○川上専門会員 はい、そうです。ちょっと誤解があったのかもしれませんが、今 のケースはT社なら自分でできるではないかと。それは実はT社は向こうに移転す るシステムを使って、T社の人材育成をするとは考えていない。あくまでも関係企 業、サプライヤー、そういったところの技能・技術のレベルを上げるための技能検 定は有効だろうということで、そこを対象にした人材育成にどうやって協力するか ということで、各企業がそれぞれ役割を持ちましょうと。検定の前には当然トレー ニングがありますから、トレーニングのために、まず学校も必要でしょう。こうい う分野の人材を育成する学校もつくりましょうと。それは今経済産業省のプロジェ クトの中に出てきているところですが、3つほどアカデミーをつくるという動きが あります。そのアカデミーでトレーニングする。さらには、今度、日系企業が巡回 指導する。日本から送るのではなく、指導者を現地で出す。  そして、さらに今度、検定というところになったら、特定の企業にプロジェクト 的に支援していただこうかと。日本から指導者の方が行って、指導するという形で す。今企業を選ぶということは、協力する企業はそういう形で選ばれていきますが、 実際に参加する企業というのは、自発的な問題ですから、強制されないわけですね。 自ら参加したいところが参加してくる。そのプロモーションをするのが、今の工業 省の傘下にあるTAIという機関です。ですから、そこが本当に一生懸命動かなけ れば、全体の構想もなかなか走らない。  先ほど搆補佐もおっしゃったのですが、結局、彼らがどこかで頓挫して、何かお かしなことになると歯車が動かなくなってしまうのですね。そこが動かないから全 体が動かなくなるというところもあって、確実に動かすために、どういうようなと ころ、信頼のできるパートナーを結ぶかというのは、実はこれからの問題になって くるのではないかと思います。一旦できた組織だから、安心してそこと手を組めば、 その日本のシステムを売りにしたプロジェクトがちゃんと動くのかというと、1つ どこかがおかしな動き、例えば判断を間違って、あっちを向いた形でやってしまい ますと、全体が動かなくなってしまう。現に何年か前から起きていることですが、 そういうことがあり得るということです。抽象的なお話を申し上げました。 ○今野座長 いずれにしても、個別企業が「やるぞ。」、「やりませんよ。」と手を挙 げると、そういう形になっているということですね。 ○川上専門会員 そうです。 ○今野座長 T社が手を挙げたら、N社は手を挙げないとか、そういうのはあった かもしれない。ないか。 ○搆専門会員 個別企業からのアプローチというと非常に奇異に感じるかもしれま せんが、そういう大企業が手を挙げるということは、先ほどのサプライヤーなどを 全部含めた一種の業界団体から総意で要請を受けるというようなイメージで、タイ 政府は捉えているのではないかと思います。 ○川上専門会員 今のお話のとおりで、実際には自動車工業界というものは現地に ありますし、部品工業界もありますし、試験の実施の際にも、そこが実行委員会の 役割をしているような形になっています。 ○今野座長 それで、先ほどここで議論のあった、日系企業の枠を超えて、どんど ん広がるというシナリオにはなっているのですか。シナリオが実現する方向には。 ○鈴木会員 ですから、私から見ると、まだそうなるといいなと言う段階ですね。 現実にタイの拠点でも、日本の課題をわざわざ持っていって、社内検定としてやっ ているのですよ。タイ金型センターというところは、旋盤とかフライス盤などの検 定。それはタイの政府であるはずなのに、同じ課題が最近できたはずなのに、あま りそういう話は下りてこずに、「しょうがないから、日本のものを持っていって、社 内検定としてやろう。」と、そういう実態なのです。D社タイ拠点の人が初めて検定 を受けたのは、DSDがと言ったほうがいいのか、タイ政府がと言ったほうがいい のかわかりませんが、技能五輪の予選を国家検定でやると言ったものだから、日本 の課題で初めて国内予選が実施されて、タイの中に日本から持っていった検定があ るのだということが初めてわかったとか、何かよく下に下りていないというのは事 実ですね。 ○今野座長 そろそろ時間でして、まとまらないままで終わるということになりそ うですが、いろいろな意見をいただいたので、その中を少し整理していただく。こ れは最終的には報告書みたいなものをつくるのですか。 ○奈良課長 3回のご議論を中間的な取りまとめという意味合いで、1回まとめて みることにしたいと思います。また、能力開発関係の国際協力のあり方みたいなも のについて、内部的にも、局内でもまた検討を続けることになっております。そう いうことを踏まえつつ、来年度、内部でさらに検討したものを、もっと具体的な格 好でご議論いただくような場を設けることになるかもしれないということです。も しそういうことがありましたら、また引き続き、こういう格好でご協力を頂戴でき ますればと思っております。 ○今野座長 司会者としては非常に無責任だったのですが、私は特定の結論を得る 必要はないだろうと思って運営したものですから、皆さんのいろいろなご意見をい ただければ、それで十分かなということで。最後はまとまらないような形で終わり ますが、それでいいかなというようには考えて運営をさせていただきました。ほか に何かありますか。 ○奈良課長 本当にどうもありがとうございました。今申し上げましたが、そのよ うなことで、中間的な格好を1回整理させていただいて、謝金も出ない状態で誠に 申し訳ございませんが、メールという便利なものがありますので、それでまたいろ いろとお伺いしたいと考えております。先ほど申し上げましたが、場合によって、 またこのような場にご参加をお願いすることになろうかと思いますので、是非引き 続きご指導を頂戴できますれば幸いでございます。本当にどうもありがとうござい ました。 ○今野座長 それでは、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。 【当文書の照会先:職業能力開発局海外協力課協力係(内線:5957)】 1