05/05/27 第2回母性保護に係る専門家会合議事録 第2回 母性保護に係る専門家会合                     日時 平成17年5月27日(金)                        10:00〜                     場所 13階専用第16会議室 ○中林座長(総合母子保健センター愛育病院院長) 皆さん、今日は急にお暑いところ をお集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから第2回「母性保護に係 る専門家会合」を始めさせていただきます。本日は、前回ご出席できなかった村田先生 がご出席ですのでご紹介いたします。 ○村田委員(大阪大学大学院医学研究科教授) 私は、大阪大学の産婦人科の村田でご ざいます。前回は申し訳ありませんでした。いただいた資料に目を通しまして、宿題は 少しやってきたつもりですので、よろしくお願いいたします。 ○中林座長 本日は、城内委員は欠席です。岸委員は遅れていらっしゃいますので、前 回岸委員から特にご要望のあった「女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務に ついて」は少し順番を変えて、後ほどにさせていただきます。議題2の「産前産後休業 について」資料No.6からNo.9までありますが、室長から資料説明をお願いいたします。 ○育児・介護休業推進室長 それでは、資料の説明をいたします。まず、資料No.6は、 現行の産前産後休業に関する法制度ということで、現在の制度の根拠となっているもの です。労働基準法第65条という条文があって、すべての労働者に適用される最低基準と して、産前については、6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合は、そ の者を就業させてはならないとなっています。  産後については、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならないとなっており、 ただし、6週間までの人については、女性が希望しても就業させてはならないという強 制休業という形になっています。以上が法制度です。  次に、資料No.7です。全部で6頁にわたっています。これは、分娩週数のデータで、 中林座長から提供いただいた妊産婦周産期登録データベースの2003年のデータです。全 体で4万9,827の出産データのうち、それを分娩週数別に示したもので、35あるいは36 週辺りから分娩の数が増えているという分布を示しています。  2枚目は、その累積を示したもの、3枚目は妊娠した方のうちの妊娠高血圧症候群、 以前は妊娠中毒症と言われていたものです。軽症の方の736分娩数の分布を示したもの で、これでも35あるいは36週辺りから分娩が増えているという状況になっています。 その次がその累積です。  図5は、妊娠高血圧症候群の重症の方の場合で、データ数が1,127で、重症になると 少しなだらかな分布というか、分娩週数が前のほうにずれてくるという状況になってい ます。6枚目がその累積のデータです。以上が分娩週数のデータです。  資料No.8は、1回目のときに出した資料ですが、これまでの専門家会合での検討結果 の報告書です。産前産後休業に関して、どういう考え方でとりまとめがなされていたか を簡単にご説明いたします。  資料No.8−1の平成8年10月の専門家会議報告書の2頁、「産前産後休業」の(1) の7、8行目に「最近の知見によれば、妊娠中毒症及び早産の発生が急に高まる時期は、 ともに妊娠36週であるとされており、その2週間前から日常生活において十分休養をと ることが必要である。したがって、産前休業について、妊娠34週すなわち妊娠期間40 週から差し引くと、産前6週間前頃から始めるという現行制度の基準は適切である」と いう結論になっています。  産後休業については3頁のいちばん下で8週間となっており、その考え方についてで すが、「母体の回復過程に個人差があり、産褥期間が6〜8週間であることを考慮し、 原則8週間としつつも、6週間経過後については、本人の請求等に委ねている。この水 準はILOの条約の水準も考慮して定められているので、現状において変更する積極的 な理由は見当たらない」という形で、前回の検討においても、それ以前からある制度の 産前6週、産後8週という制度を維持すべきであるという結論になっていたわけです。  昭和60年の検討では、産前産後休業に関しての検討というか、取りまとめがあまり行 われておらず、唯一5頁の(2)分娩後の保護のあり方で、「子宮及び骨盤底筋は、分 娩後6〜8週間を経過すればほぼ避妊時の状態に戻るが、全身的な回復過程は、なおも 進行していると考えられる」という記述がされています。  資料No.9は、諸外国と日本の産前産後休業の制度の状況の概要をとりまとめたもので す。ILO、イギリス、ドイツ、フランス、EU、日本という形で示しています。休業 期間については、ILO条約では14週間、産後6週間、うち強制休業が6週間となって います。イギリスは26週間で若干長くなっていますが、イギリスの場合、産前産後休業 と育児休業との区分の考え方が若干違い、育児休業はほかの国より非常に短くなってお り、一方で産前産後休業が26週間という形にはなっています。うち強制休業は2週間で す。ドイツは産前6週間、産後は8週間となっており、強制休業期間は産後8週間です。 フランスは産前6週間、産後10週間で、産前2週間、産後6週間は強制休業です。EU の場合はトータルで14週間。うち強制休業は出産前後の2週間となっています。日本の 場合は産前6週間、産後8週間。そのうちの産後6週間が強制休業という制度になって います。 ○中林座長 それでは、ただいまのご説明を踏まえて、ご自由にディスカッションして いただきたいと思います。まず資料に関して少し追加させていただきます。資料No.7は、 日本産婦人科学会の出産期委員会で全国の125の施設で約5万例近くの個票の登録がさ れていますので、その登録に従って委員会でまとめたものです。いま室長からお話があ りましたように、分娩週数に関しては、36週間ぐらいが急に増えて、正規産と言われる 37週以降にメインなものが入ってきています。図2の累積出産パーセンテージを見て も、35週ぐらいまでは、ほぼ直線で、36週から急速にカーブが上がっていく変換点と言 いましょうか、そういうものが出ております。これは2003年で最新のデータに近いもの だと思います。  妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の軽症に関しては、データが少ないのですが、登録 しているデータでは重症例を中心に書いているものですから、軽症は意外と抜かしてい ることもあろうかと思います。1,000例近い症例からは36週から増えていき、妊娠中毒 症というのは、軽症に関しては特に母体の諸機能が分娩という負荷に対して、だんだん 耐えられなくなってきて症状が出ると考えますと、母体に負荷が出るのが36週ぐらいか ら特に強くなり、それの2週間ぐらい前には症状が出始めることが多いので、その2週 間ぐらい前の34週ぐらいから全体的には安静をとるのがいいのではないかということ は、今回も前回の検討委員会で検討したときと年は変わっていますが、ほぼ同じような 成績が出ています。  重症例に関しては、胎盤の形成の異常などで、母体の負荷とは少し違った要因がある ので、早い週数でも出てくることです。これに関しては数も大変少ないので、その症例 に応じて産科医が対応していけばよろしいのではないか。軽症例は6〜10%ぐらいある ということで、かなり多いものですから、それから妊娠負荷を考えると34週ぐらいが良 いと、この表から見えたわけです。この表に関しては、私が作成したものですから、追 加いたしました。これに関して村田委員、佐藤委員、森委員からご意見がありましたら お願いいたします。 ○村田委員 こういうリコメンデーションを病理的な妊娠と正常な妊娠と一緒にして考 えていくというのは、私にはよく分からないのです。例えば、妊娠中毒症(現在は妊娠 高血圧症候群)が36週から多いから、34週ぐらいからと。ところが、実際は妊娠中毒 症が、もう少し早めから出てくる人でも、軽症だからどんどん引っ張る場合があります。 そんなにすぐ分娩しなくてもいい。反対に重症だと早く産ませてしまわなければいけな いので、発症するとすぐに人工的に分娩させるわけです。これだけ違うというのは、人 工的な介入があるから違うので、病理的な問題ですから、むしろ考え方としては、妊娠 週数の若いときに休養を与えれば、これが発生しにくいかということが問題で、異常症 例をもって分娩がいつ起こるかを休業を与える根拠にするのは、少し問題があるのでは ないか。 ○佐藤委員 大体そうです。ですから、一般のローリスクを対象にして産前産後をどう するかというのと、ハイリスクで早産や母体、胎児にもかなり影響を与えるような人の 場合には、休業というよりは強制的に入院せざるを得ないことが多いから、別個に考え るか、十把一絡げにはできないような気がするのです。 ○中林座長 おっしゃるとおりで、私が先ほど重症例は別として、軽症例は負荷に対す る過重である。負荷がどのぐらいからかかっているのが全体的と考えられ、そのうち一 部が発症しているということで、負荷が多いのが34週とか36週であろうとご説明いた しましたが、重症例、切迫早産などの例は、逆に疾患として医師の診断の下で、これは 病的なもので休業が必要であるということが必要です。  ところが、一般的に産前休業というのは、多くの人たちが何か起こす可能性がある時 期に、あらかじめ休ませることによって、母体、胎児とも疾患を少なくしようという概 念です。生理的な負荷をどう考えて、その時期に予防的に休んでいただこうというのが 産前休業の本来の趣旨で、病的なものは診断書等で休むことになるのではないかと思い ます。 ○村田委員 おっしゃるとおりだと思います。結局は妊娠高血圧症候群を予防すること ができるという前提に立って、それではいつから休業させれば予防できるかという事実 があるならリコメンデーションを出す1つの根拠になると思います。 ○中林座長 早産に関しても同じことです。非常に早くから頸管長が短くなったり出血 があったりという異常なものに関しては、医師の診断の下で切迫早産で安静とか、いろ いろな治療があるわけですが、それ以外に、本来は正規産であるべき一部の人に早産が 起こってしまう。それには医学的ないろいろな薬剤療法もありましょうが、安静が治療 の基本になっています。全体の5、6%をいかに減らせるか、母児ともの予後を良くし ようということから、いつごろが適正か、現在の6週間が妥当か、それより早いほうが いいのか、遅いほうがいいのかのディスカッションを再度し、ILO等の基準、諸外国 の基準と併せて、現在の日本の基準が妥当かどうかを生理的な範囲をもって、ご検討い ただきたいというのが趣旨です。1つの病気ということではなく、早産や妊娠高血圧症 候群という代表的なものを考えていただければという趣旨です。 ○育児・介護休業推進室長 いまの委員の方々の議論に関連する法的なシステムについ てもう少し補足的に説明いたします。先ほどご説明した労働基準法第65条は、基本的に すべての女性労働者が適用になる最低基準として設定されております。もう1つこれに 関連して男女雇用機会均等法第23条があります。ここではどういうことが書かれている かと言いますと、妊娠した女性労働者あるいは分娩後の女性労働者は、医師等による健 康診査等でいろいろな指導をされた場合に、それを守ることができるように事業主はい ろいろな措置を講じなければならない。例えば、勤務時間を短くするとか、場合によっ ては休養させるなどの法的なシステムになっていて、例えば、そういう相談や病気など については、これで個別に対応していくという形になろうかと考えています。 ○中林座長 森委員も母性管理に関しては、随分長らくご検討いただきましたのでお願 いいたします。 ○森委員 データ的なことを2つ確認しますと、1つはいま村田委員も言われたことで、 もう1つはこのトレンドというのは、この週でこういういろいろな問題が起こってくる。 または出産はこの時期であるということは、前回は変わらないというお話ですが、正常 な場合はあまり大きな変化がないと考えてよろしいのですか。今後もたぶん変わらない であろうと考えてよろしいのですか。  もう1つは、あらかじめ休ませることが予防効果があるのか否かという、いわゆるエ ビデンスですが、そういう研究はまだほとんどされていないのですか。 ○村田委員 妊娠中に休養を与えるということは、非常に伝説的(アネクドータル)で す。例えば、妊娠高血圧症候群を少なくするであろう、早産のリスクを少なくするであ ろうというのは、非常に観念的な問題で、はっきりとしたデータはありません。 ○森委員 たぶん重症例に関して男女雇用機会均等法で1つの仕組みができて数年が経 って、少しずつですが、定着してきている。そういうような前提を考えると、本人が要 望すればという規定は成り立つ根拠が2つあります。1つは予防ができるかどうかで、 もう1つは男女雇用機会均等法の制度があるとは言っても、発症比率が10%とか、もっ と高くなってくる時期において、本人がきちんとした手続を踏んで初めて取れるという 制度では落ちこぼれる場合もかなりあるので、少し予防的に見て、本人の訴えで原則取 れるような制度を作ってしまおう。そういうカバーをすることによって全体的に有効に 機能させるという考え方があり得ると思います。ですから、前提が変わっていないこと を考えると、それから予防的なエビデンスがないとしても、産前の後半期においては、 本人の意思に基づいて、原則的にそういう休業が取れるというのが適切ではないかと、 私自身は思っています。 ○中林座長 本人が希望すれば分娩予定日の6週間から産休が取れるという制度で、そ れが適切ではないかとのご意見です。一方、職業を持っていない家庭の婦人と職業を持 っている婦人に、どのぐらい差があるのだろうか。職業がなく、家庭で介護等ハードな 仕事をしている人たちも当然厳しいわけです。これは自分の意思である一定の時期に仕 事量を軽減することは可能です。職業の場合は何らかの制度がないと、自分の意思でや めたいとか、軽減したいということはなかなか難しいというのがご趣旨だろうと思いま す。労働の苛酷さはどう違うかは別として、仕事に就いている人にはそういう権限を与 えたほうがよかろうという趣旨ですが、佐藤委員はいかがですか。 ○佐藤委員 先生方のおっしゃるとおりです。 ○村田委員 ものすごく根本的な話に持っていってしまうかもしれませんが、私はいつ もそれを心配しています。これは予定日から前ということですね。そうすると、分娩は プラス、マイナス2週間ですから、これだけのずれがあるわけです。先に起こることを 決めるのはなかなか難しいでしょうが、4週間のずれがあるものを分娩前6週間という のは、なかなか難しいのではないかと思います。ですから、全くの正常として、ある程 度の推察で予定日以前の6週間。実際には日本は6週間は強制ではないのです。 ○育児・介護休業推進室長 産前はそうです。 ○村田委員 産後はイベントが起こってからの話ですから、割合いいのですが、産前の 6週間を定めるというのは、なかなか難しいですね。 ○中林座長 先生のご趣旨を端的に表したのが、双胎の産休が予定日の10週前というこ となのです。実際の日本の双胎の分娩平均週数が、当時は妊娠36週だったので、その 10週前となると、本来は妊娠26週から休まなければいけない。それで、双胎に関して は予定日の14週前に産休を取ることができるとしたわけです。双胎の人は10週間前だ と30週から休みますが、実際に生まれるのは36週ですから、6週間しか休んでいない。 そうすると、胎児発育、その他に関しても影響するだろうということで、双胎の産休を 4週間延ばしたのです。今回のこのデータから、予定日が妊娠40週ではなく妊娠39週 にピークがあるとなってくれば、もう1週間前倒しにしなければいけないかもしれない。 日本の統計では、前回のも今回のも妊娠40週よりは39週のほうにピークがあります。 ○村田委員 一応お話の中では、これは予定日ということで話をするということですね。 ○中林座長 そうですね、多くの人が生まれるであろう予定の日から6週間前というこ とですので、日本全体が39週で生まれるとなれば、6週間前とすると、33週からのほ うがいいというデータが出るかもしれませんが、今のところは39週と4日位が、現在の 日本の分娩の平均値だろうと思いますので、その6週間前というぐらいにしているとい うことです。 ○育児・介護休業推進室長 この場合、今までよりだんだん短くなってきたら、予定日 が早くなるということにはならないわけですか。 ○中林座長 それはちょっと難しいですね、定義上の計算をしていますからね。在胎週 数は40週であるというのが間違っていると言われると、それは先ほどの話と同じで、妊 娠の期間というのは、定義上40週と決まっていますから、それは変わりません。ただし、 人によってプラスマイナス2週間ぐらいのずれはあります。日本で言うと、37〜42週を もって正規産と言いますから、いつ起こっても正常であるというわけです。 ○中林座長 村田委員は国際的で外国の事情に詳しいのですが、例えば、ディベロッピ ング・カントリーとディベロップド・カントリーで分娩予定日が少し違うということは ありますか。 ○村田委員 それはないでしょうね、そういうのは聞いたことがありません。 ○中林座長 ということですと、いまのところは、どうやら40週の数日しか変わってい ないので、いまの定義を変えるほどの事実は世界的にもなさそうですね。 ○村田委員 一方から言うと、ディペロッピング・カントリーの妊娠週数はわからない のではありませんか。 ○佐藤委員 妊娠週を確定する手段をきちんとしていないから、大体でやっているわけ です。 ○中林座長 日本の場合は、超音波や妊娠診断薬などで、非常に早く妊娠週数がわかり ますので、それによって以前は予定日超過というか、本来は40週なのに42週と数えて いる人が多かったのが、少しずつ減ってきて39週4日ぐらいになったのです。日本ほど 予定日が正確に出ている国はまずありませんね。 ○佐藤委員 アメリカでもそうですが、昔の成長曲線というのは40週を過ぎると体重が 減るのですが、そんなことはなく、妊娠週数がはっきりしていないから、42週という体 重ではなくて、本当は40週だということがあるわけです。いまは日本がいちばん妊娠週 数が確定しているのではありませんか。 ○中林座長 90何パーセントの人が正確に予定日を知っていますね。 ○佐藤委員 特に、日本産婦人科の周産期登録のデータは、きちんとしている施設ばか りですから、非常に正しいと思います。 ○中林座長 選ばれた全国125の施設で予定日を決めて取ったデータですので、大変正 確です。 ○佐藤委員 いま39週と何日がいちばんピークだと言われましたが、私が30年前に宮 城県で3万例ぐらいやったのでは、40週0日がピークでした。ですから、いま初潮と同 じように、だんだんこちらへ来ているかというデータはないのです。 ○中林座長 40週を覆すようなデータは、いまのところないということで、それを予定 日として、その予定日から平均的に6週間前から産休ということになっています。それ については、いまいくつかのディスカッションがありました。  岸委員、先に産前産後の休業をやっておりますので、これに関してご意見がありまし たらいただきたいと思います。 ○岸委員 私は唯一の女性委員ですので、その経験も述べさせていただきます。私は実 は双胎で子供を産んでおります。それから、ずっと大学教員をやっておりましたので、 かなりハードな仕事をしております。結論的には森委員がおっしゃったように、少し予 防的な考え方を入れるほうが、今の日本は少子化ですし、男女雇用機会均等法以降、女 性はいろいろな職場に入っておりますが、かなり頑張って仕事をしているのではないか と思います。  私個人では双胎のときも相当ギリギリまで仕事をしておりました、かなりお腹が大き くなってきますので、ドクターストップみたいな形で仕事を少し休みました。2回お産 をして、3人の子供を持っておりますが、いずれもギリギリまで働いていました。重量 物こそ持っていませんが、階段はかなり昇りますし、相当緊張をしてきて、それでも仕 事が大事だと真面目に考えるものなのです。それは子供にとっては良くなかったのでは ないかと深く考えました。3人とも健康に育っていますが、働く女性に対しては、その ように考えるほうが子供のためにいいのではないかと思います。 ○中林座長 そうすると、1つは病的なものがあった場合には、当然ドクターストップ 等で早めに取ることもできる。しかし、双子であればもう少し早いのですが、1人の場 合には正常な方でも、34週ぐらいからというのが妥当かなと思われます。逆に2週間ぐ らい延ばしたほうがいいというご意見がありますか。そうすると、企業など、いろいろ な面で難しい点があるのかもしれません。 ○岸委員 私が分娩したころは、本人が希望すれば5週間でもいいという条項がありま した。非常にいい上司でしたが、「頑張りなさい」という意味で、それを言われました。 女性の教育研究者として頑張れと。私はそれは忘れられません。そのような条項があっ て、それは励ましもあるし、私自身も頑張ってしまったのですが、予防的な視点を入れ ていかないと取りづらいということが非常にあると思います。 ○中林座長 岸委員のような優秀な方は、仕事の都合で産休がせいぜい2週間とか4週 間ですね。何十年も仕事を続ける女性が産休を取れないために、子供の健康が害された り、母親の健康が害されるとなると問題ですね。女性は短期間の妊娠、出産という時期 は許される限り保護したほうがいいというのが、私たち産婦人科医の全体の考えです。 ○佐藤委員 6週間という根拠は何かあったのですか。 ○中林座長 分娩前6週間と決めたのは、ILOに準じたのでしょうね。いまでは妥当 だなという気がするのですが、どういうことで決まったのでしょうね。 ○佐藤委員 すごくシビアな重労働をやっている人は、IUGRも、早産も多いという データはあります。そういう働いている人の場合と家庭にいる場合を十把絡げにして6 週間というと、人それぞれだから数字というのは決まらないと思うのですが。 ○村田委員 IUGRは、入院させてベッドレストをしても良くならないというデータ はあります。 ○佐藤委員 ありますよね。 ○村田委員 それは予防するという意味では、あまり効果はないでしょうね。ただ、I UGR、早産が非常に多いのは女性のレジデントなのです。肉体的な労働が問題になっ ているのか、精神的なプレッシャーが問題になっているのか、精神的なストレスの多い 人は胎児の成長が良くないという両方のデータはあります。ただし、肉体的にどのぐら いの運動があればというデータはないみたいです。 ○中林座長 森委員と6年前に、仕事のストレスがどのぐらい妊娠に影響するかという のを調べたときにも、肉体的にどうこうということはどうしても出なくて、むしろ仕事 の質として自分の意思で仕事を止めることができないとか、例えば、NICUの看護師 や麻酔の医師など、切迫早産やお腹が張っても自分で仕事を止めてしまったら、相手の 患者が亡くなってしまうなどというストレスフルな仕事をしている人ほど、妊娠中毒症、 早産が多いというデータは出ています。ですから、やはり精神的なストレスは妊婦にと っては、大変よくないようだ、それをなくすにはどうしたらいいかは、単に肉体的な安 静だけではなかなか取れないと思います。 ○佐藤委員 それが6週間でカバーできるのかという証拠がないですからね。 ○村田委員 6週間で予防するという事実はないみたいですね。だから、結局は強制で はないのではないでしょうか。ただ、妊婦が確かにお腹が大きくなってくるし、動きに くくなってくるし、非常にアンカンファタブルな生活である。だから、怪我も多いだろ う。確かに妊婦は、妊娠週数が重なると、非常にバランスが悪くなるから転倒事故、外 傷などは多くなるわけです。そういうのを予防するという意味で家庭にいたほうがいい ということは言えると思いますが、病気に関しては予防できるという事実はありません。 ○中林座長 私どもも妊婦が働いていて、「どのぐらい働いたらいいでしょう」とよく 聞かれます。そのときに答えるのは、その本人ができると思う8分目とか、自分が疲れ たとか、非常に厳しいとか感じないぐらいの仕事ならいいですよと答えます。強制され ない、自分の意思で動けるような範囲なら家庭にいるのとあまり変わりないので、案外 続けても大丈夫ですよという話はするのです。 ○村田委員 そのデータはエクササイズのことですね。よく健康のために運動を非常に されている方が妊娠して、運動を続けてもいいかという問題で、そのデータがあるみた いです。ただ、いま言われたとおりで、個人的に随分違いますから、妊娠前に1日5km 走っていた人が、2kmか3km走るのは何でもないことで、そういう運動は続けてもよろ しいのです。運動をすると疲れて、心拍数が随分と上がってくる、息が切れてくるのな らやめなさいということです。 ○中林座長 2kmしか走らない人が、妊娠して体重を増やさないようにと5km走ったら 困りますし、重い身体のまま同じ2km走っても、これまた負担になります。そういう点 で普段の仕事量や運動量によって負荷は違うし、その人の予備能力や体力によっても違 うので、なかなか一律にどうこう規制はできないが、法的には一般論的に希望すればで きるということをつくっておかないと女性の保護は難しいでしょう、という岸委員のご 意見もあって、森委員もそういうご意見です。私ども産科医としても妊娠していない女 性は、男性と同等に働いていただいたほうがいいと思っていますが、妊娠したときは少 し無理をしないように産休を取るのは妥当だと思います。この6週間に関しては、ニュ アンスとしては妥当だろうと思いますが、それを実証する科学的なデータというと、大 変難しいということになりますね。 ○佐藤委員 それは考え方なのです。私が思っていたのは、このデータも同じですが、 35週になると90%以上がお産をする。休むということは、突発的に分娩が始まるかもし れない数がかなり多くを占めるところを基準にする。分娩週数がかなり正確になってき たとしても、今やっている計算では、1週間前後のずれがあることから34週ぐらいから が90%以上になるだろうということで、突発的なことを含めて産前は6週間とする。お 産が始まるのがどのぐらいかというのは、大半が90%ぐらいと考えてやると、そのよう なことになるのではないかと思います。 ○村田委員 要するに、これは強制で休ませるわけではありませんから、希望されるの なら6週間でも、むしろ妊娠中ずっと休んでもいいというぐらいの考え方です。我々に してみたら、32週ぐらいまで休んで、それ以後は働いてもらったほうがずっといいので す。 ○佐藤委員 それ以後であれば、まず母子ともに大丈夫だという保証があるから。その 前が大切なのです。 ○中林座長 先ほどの表で90%を見ると、35週という線になりますね。 ○佐藤委員 その1週間前後がずれていますから、34週ということになります。 ○村田委員 こちらは異常ですから、これを考えてはいけないのです。これは入院して 治療する対象になるわけです。 ○中林座長 そうすると、むしろ産科医としては、初期は流産、その他は別として、20 〜30週ぐらいまでは、あまり無理してほしくないという感じが大変強いですね。 ○村田委員 むしろそちらのほうが大事なのですけれどもね。 ○中林座長 それは何年か前、妊娠28週から2週間ごとだった妊婦健康診査の期間を、 中期の管理を重視して妊娠24週から2週間ごとにしましょうという勧告が、厚生労働省 から出たように思います。村田委員がおっしゃったような趣旨は、検診期間には織り込 まれているのですね。いずれにしろ、妊娠中は女性にはあまり無理をしてほしくない というのが、産科医の平均的な考え方ではないかと思います。 ○村田委員 ですから、強制的でない限りは6週間というのは、非常にリーズナブルで はないか。 ○中林座長 6週間という数字が、本当に正しい数字なのかどうか分からないにしても、 必要なら産休を取っていただくということに関してはいいのではないかと思います。大 体皆さんご意見がその辺に集約したようですので、この点に関してはそういう方向で、 今までの6週間ということでまとめたいと思います。  それでは、議題1の「女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務について」に 移りたいと思います。資料説明を事務局からお願いいたします。 ○育児・介護休業推進室長 まず資料No.1ですが、前回にも出した資料で、「妊産婦等 の就業制限の業務の範囲」を示したものです。そのうち18号という有害業務関係で、鉛、 水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準 ずる物質のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務については、妊婦、産婦 ともに、その他の女性についても就業制限、就業させてはならないと現在なっています。  資料No.2です。これも前回出した資料で、「各国及び日本の危険有害業務に係る規制 の状況」です。日本のように、一定の業務について就業を禁止するタイプの規制を行っ ている国と、リスク評価をして必要な措置をとるという形の規制を行っている国があり ます。  これに関して前回の議論の中で、そういうリスク評価タイプの規制として、どういう ものがあるかという点について調べて提出するようにということでしたが、それが資料 No.3です。私どもで調べた範囲内ではEUのものを提出しています。EUで1992年に指 令が出ており、妊娠中の労働者及び出産直後又は授乳中の労働者の職域における安全衛 生の改善を促進するための対策導入に関する指令が出されています。  「保護のしくみ」ですが、まず事業主は、妊産婦等にリスクがあると考えられる業務 についてリスク評価を行う。リスクが明らかになった場合は、労働環境の改善、労働時 間の調整あるいは配置転換、休業といったリスク回避の措置をとることになっています。 一定のリスクが明らかになった場合は、妊婦及び授乳中の労働者は業務に就くことを強 制されない、という仕組みになっています。  リスク評価に関して、その基準とするため、欧州委員会は妊産婦等に有害と考えられ る化学物質等の評価についてのガイドラインを制定して、各国はこれを広く周知すると されております。ガイドラインでは、妊産婦等に有害と考えられる化学的要因あるいは 物理的要因、生物的要因、労働環境等と対応するリスク回避のための措置を例示してお ります。下にテーブルという形で例示されております。水銀及びその化合物についての 例示です。これ自体は、資料No.3別添2に化学的な要因に関するテーブルを示してあり ます。  水銀に関しては、どのようなリスクがあるか、そのリスクを予防するための例が示さ れています。予防対策として、水銀特有なものというよりは有害物関係の原則的なこと が書かれているみたいですが、まず、ばく露を防止することが大事です。ばく露をしな いようにする、されないようにすることが第一の優先事項であります。それができない 場合には作業計画、管理を伴う技術的手段等、個人用の保護具の組合せでばく露を制御 しなさい。個人用保護具はほかの方法が適用できない場合にのみ制御する方法等が用い られる、あるいは他の方法と組み合わせて二次的な防護対策として使用すべきものであ る。このようなことがリスクに対処するための予防手段の例として示されています。  事業主はリスク評価に当たっては、既存のばく露限界値をEUで示していますので、 それを考慮するとともに、妊産婦等のリスクに特別の配慮をしなければならない。例え ば、労働時間の変更、作業転換、場合によっては休業させるなどの考慮をしなければな らない。このような保護の仕組みになっています。これがEUの基本的な考え方ですが、 さらにEUで現在、化学物質の管理について、登録、評価、認可等から構成される新し いREACHシステムの導入が提案され、導入に向けた作業が進められています。  どういうものかと言いますと、まずEUの中で年間1トン以上の化学物質などを製造 する事業者、あるいは輸入する事業者は、欧州化学品庁に、つくろうとする物質にどの ような有害性があるかとか、それを十分わからない場合に確かめるためにこういう試験 をする用意があるなどという記載した登録書を提出する。EUの各国の当局は、その登 録書の内容を評価して登録者が提案する試験実施計画が必要だと認めた場合には試験実 施を要求する。試験の結果、有害性が分類され、発がん性があれば変異原性、生殖毒性 といった毒性について、カテゴリー1から3までに分類され、その内容に応じて発がん 性、変異原性、あるいは生殖毒性のカテゴリーが1及び2は強い物質とか、難分解性、 あるいは生体蓄積性、毒性物質等については、使用前に認可をされない。こういう条件 で使ってよいなど、認可の条件内でなければ使用してはならないというシステムが、今 後EUで導入されようとしています。ですから、これでいろいろな化学物質に対する有 害性の試験などもずっと行われて、それに対する評価がさらに増えてくることが考えら れます。  資料No.4は、我が国の化学物質関係の今後の管理の方向です。平成15年に人の健康の 確保、化学品の国際取引を促進することを目的に、化学物質の危険有害性を、引火性、 発がん性、生殖毒性など30ほどの項目に分けて、それぞれの危険有害性ごとに程度を分 類する。その分類した結果を、例えば、それを譲渡するような場合に容器、包装などに 絵文字として付する。さらに、一定の手順により化学物質の危険有害性の詳細なことを 記載した文書(MSDS)を作成する。そういうことを内容とする化学品の分類及び表 示に関する世界調和システム(GHS国連勧告)が国連から勧告されました。要は、化 学品が世界各国で動くわけですが、その際にメーカーあるいは輸入者から末端のユーザ ーまで、危険有害性がきちんと伝わるようなシステムをつくっていこう。それが勧告さ れ、それに基づいてAPEC域内、日本も入りますが、このシステムを平成18年までに 実施するということで作業が進められています。  このためにはいろいろな化学物質について、どういう有害性があるかを評価、分類し なければならないわけです。現在日本においては、労働者の保護と化学物質関係の規制 をやっている厚生労働省安全衛生部と、毒激物の管理の法律を施行している医薬局があ って、それと環境問題を担当している環境省、経済産業省などが連携をしながら、約1,500 ぐらいの物質について評価作業を進めているという状況です。  システム自体が来年末から動き出すようにしようとしていますので、1,500物質の評 価自体は来年夏ごろには終えようということで作業をしていると聞いております。この 中で生殖毒性も分類されることになっており、ここに書いてありますように3段階に分 けよう。人に対して生殖機能又は生殖能力、あるいは発生に悪影響を及ぼすことが知ら れている物質が区分1A。区分1Bは、人に対して生殖機能又は生殖能力、あるいは発 生に悪影響を及ぼすと考えられる物質。区分2は、人に対して生殖毒性又は発生毒性が 疑われる物質。1A、1Bにいくに従って毒性が弱くなるということになろうかと思い ますが、こういう分類をしよう。そういう分類をするための作業が、現在日本において 進められているという状況です。  資料No.5は、いろいろな化学物質の生殖毒性に関する評価が各国でどのようになって いるかを調べた結果です。左側は現在の就業制限がかかっている業務に係る有害物質で す。まず、1枚目、鉛からアニリンまでが規則で明示的に示されています。塩酸以下、 炭酸ガスまでは、その他これらに準ずる有害物で通達で示している物質です。  女性則上の規制値がありますが、この数値はその通達の中で、発散する場所における 業務に就くことを規制しているわけです。発散する場所における業務というのは、この 濃度以上の場所における業務だということを通達で示しています。ですから、法令では、 この濃度以上の所で女性が働くことを禁止していますが、実際問題として事業主が、自 分の事業場の濃度を測って、これ以下だから働かせるなどという行動はとっていないと 考えています。 ○村田委員 男性と女性とはっきり分けてあるのですか。 ○育児・介護休業推進室長 これは女性を働かせてはいけないための濃度ということで 示しています。 ○村田委員 男性はいいということですか。 ○育児・介護休業推進室長 この濃度自体は女性が働けるか、働かせていいかどうかを 判断するために示しています。 ○村田委員 女性を特に取り上げてということですね。 ○育児・介護休業推進室長 そういうことです。次に、右側に労働安全衛生法上の管理 濃度を示しています。男女を含めて労働者一般の労働災害を防止するための労働安全衛 生法という法律がありますが、その中で作業環境が適切かどうかを評価するための濃度 として管理濃度が物質ごとに示されています。女子則のほうで規制されている物質のう ち、管理濃度が示されているのはこういうもので、こういう数値になっているというも のです。  次は、日本産業衛生学会の勧告値が許容濃度という形で示されているもので、これは 1日8時間週40時間、この濃度の下以下で働いても、ほとんどの労働者に影響は出ない であろうということで、日本産業衛生学会から勧告されている値です。昭和22年か23 年だったと思いますが、女子則上の規制値というのが示されていますので、見ていただ いたら分かりますように、日本産業衛生学会の勧告書は当然低く、厳しくなっていると いう状況です。  次がACGIHの勧告です。これはアメリカの衛生工学者たちがカンファレンスをつ くっており、そこがTWA8時間の時間過重平均、短時間でもこれ以上は駄目というシ ョートタームのばく露限界、あるいは瞬間的にも絶対に駄目という天井値という形で、 それぞれの物質について勧告値を示しています。このうち物質の濃度の後ろに※が付い ている物質がありますが、鉛、水銀、一酸化炭素については、勧告値の設定に当たって、 生殖毒性が考慮されている物質です。ですから現在女性則で規制されている物質のうち、 ACGIHの勧告値の設定に当たって生殖毒性というものが考慮されているのは、鉛、 水銀、一酸化炭素ということになっております。  最後がEUの生殖毒性分類です。当時、ECの67/548という、危険な物質の分類・ 包装・表示に関する指令があって、それに基づいて2004年4月までに、全体で3,360物 質のいろいろな有害性について分類しております。その分類結果の中で、1枚目にあり ますように女性則のほうで規制している物質のうち、生殖毒性がある(いわば受胎能力 を害する、あるいは胎児に有害である)ということで分類されているものに一酸化炭素、 二硫化炭素があります。それ以外は生殖毒性があるというようにはなっていないわけで す。  ただ、これはどうしてかは分からないのですが、鉛には明らかに生殖毒性があると思 うのに、少なくともこの指令による分類では鉛単体では、まずリスト自体に上がってい ないという状況です。化合物については、後でお話します。先ほどの母性保護の所で、 EUの92/85というのがありましたが、このガイドラインでは水銀も、母性に対して生 殖毒性があるということになっています。しかしEUの別の指令による分類では、水銀 も生殖毒性があるという分類にはなっていないという状況にあります。  2枚目以降は、女子労働基準規則では明示的には規制されていないけれども、いろい ろな勧告で生殖毒性があるとされている物質には、こういうものがあるというのを調べ た結果をお示ししたものです。ACGIHの勧告値を設定する際に生殖毒性を考慮して いるものと、EUの生殖毒性分類で生殖毒性があるものです。  2枚目の下のほうで、以下に鉛化合物がずっと続いております。女子則上で申します と、鉛及び鉛化合物については、通達で規制の対象にしております。ただ鉛化合物のう ち、どの鉛化合物が対象かどうかは明示しておりません。鉛化合物のうちのこういう物 質については、ACGIHあるいはEUの分類で生殖毒性がある、あるいは生殖毒性が 考慮されているということになっております。 ○中林座長 ただいまの資料に関してご質問、ご意見はありますか。これは岸委員から、 ヨーロッパまたは海外でのいろいろな資料に関してご指摘いただいたものに沿って、事 務局で調べていただいたということです。 ○村田委員 環境として、温度に対する規制はないのですか。これは全然別ということ ですか。このごろ、特にそれが問題になっていますが。 ○育児・介護休業推進室長 妊産婦や女性に関しては、資料の1番目の19号とか20号 辺りに、「多量の高熱物体を取り扱う業務」、あるいは「著しく暑熱な場所における業 務」というのがありますね。 ○村田委員 20号からですね。サウナやジャグジーなどで神経管欠損が2倍、3に増え ていくという事実が、もうどんどん出ていますから、これはものすごく大切な問題では ないかと思います。 ○中林座長 神経管欠損は、葉酸との代謝と関係なく、高熱の所で温度だけで増えるの ですか。 ○村田委員 温度だけですね。 ○中林座長 これはどういう理由ですか。 ○村田委員 やはり温度が上がることによって。お母さんの発熱もそうです。妊娠早期 の発熱で、神経管患者が増えますからね。 ○佐藤委員 熱が代謝を変えるのです。それはもう発表されています。 ○中林座長 葉酸の代謝を介して変わっていくということですね。 ○村田委員 ただ日本はわりあい少ないでしょ。 ○佐藤委員 少ないです。 ○村田委員 熱い風呂が好きなくせに。それがわからないですね。熱くても駄目という データはあるのですよ。 ○佐藤委員 妊娠初期にインフルエンザなどになった人が、ニューロチューブディフェ クトになりやすいのは発熱だと言われているのです。 ○中林座長 いま話が出ているのは、葉酸が少ないと子の神経管の奇形が起こりやすい けれども、日本は海外に比べて葉酸量はそれほど違わないが、しかし発生率が低いと言 われていますね。 ○村田委員 いや、このごろはだんだん出てきてるでしょう。 ○中林座長 葉酸摂取量の少ない人が増えてきているのですか。 ○村田委員 いや、そうではなくて、ニューロチューブディフェクトや神経管欠損の頻 度が増えています。 ○中林座長 だんだん海外と同じような傾向になってきたのですが、いままで日本では 神経管欠損が少なかったので、葉酸の摂取についてあまり言われていなかった。しかし 今のお話ですと、葉酸代謝を含めて発熱が悪そうだということで、いま村田委員から高 温の環境に対してどうかというお話が出たわけです。妊婦に関しては19、20号ですでに 言われていることで、やはり妊婦はあまり暑い所はよくないのですね。 ○村田委員 むしろ妊婦というよりも、妊娠したかどうか分からない人もいますから、 女性ですね。 ○中林座長 妊娠する可能性のある人は、あまり熱いサウナに入ってはいけないし、高 熱を出してもあまりよくないということですね。それでは有害物質のほうに関して、い かがでしょうか。 ○岸委員 いろいろ調べていただいて、また資料も出してくださってありがとうござい ます。また1992年当時のヨーロピアン・コミュニティのものには、これが出ているはず ということで、出していただいてありがたかったわけです。資料を見ますと、別添2で ラベルがどうのこうのと出ているのは、1999年ですが、1992年以降2005年の今まで、 どのように変化しているのですか。これが大切なのです。 ○育児・介護休業推進室長 この別添2は、92/85でリスク評価をしなさいということ になって、そのリスク評価に対するガイドラインという形で出されているものです。 ○岸委員 今いろいろご報告と言いますか、お教えくださったところで、資料No.5に日 本の安衛法上の管理濃度、産業衛生学会勧告値、ACGIH勧告値、EUの生殖毒性分 類、そしていちばん左側に女性則上の規制値となっておりますが、女性則がつくられた のは何年でしたか。 ○育児・介護休業推進室長 昭和22年です。 ○岸委員 例えばACGIHは、毎年勧告を作り直しておりますよね。私も自分がメン バーですから責任があるのですが、日本産業衛生学会もACGIHほどではないけれど 作っています。作ってはいるけれど、日本産業衛生学会の勧告は、実は生殖次世代影響 に関してのラベルは、まだしていないのです。その点が少し遅れているので、資料No.5 には出ていないのです。  いま厚生労働省の中のタスクで作業を進められているということは、私も若干耳にし ておりますが、いちばんギャップがあるのは、EUの生殖毒性分類は結構カテゴリー化 されているということです。例えば資料No.5の2頁辺りにアミトロール、エチレングリ コールモノエチルエーテル、2‐エトキシエチルアセタート、2,4‐ジニトロトルエ ン、ジメチルアセトアミド、フタル酸ジブチル、ブロモプロパン等とありますが、私は 個人的に、最近すごく知見の出ているものについては、日本ももうちょっと対応したほ うがいいのではないかと思います。いま厚生労働省の中でも、担当の部署で作業をされ ているようですが、それは文献的な整理をされているのだろうと思います。昭和22年の 女性則というのは、やはりちょっと古くなっているのです。特にEUの場合はカテゴリ ー分けをしていますので、そのように少し準備をされるのがいいのではないでしょうか。  また、鉛と水銀がEUでは出ていないとおっしゃいましたね。有機水銀ですと、非常 にはっきりした胎児性水俣病のようなものが出るのですが、例えば2番目の水銀蒸気の 場合はあまりと言いますか、ネズミに対して実験的にやってみますと、神経障害は出る けれど、実際の影響はあまり出ないのです。そういう意味で私は、厳密にやるとEUの ほうが正しいと思っております。  鉛も同じです。鉛の場合は成熟の哺乳類、特にラットなどですと、ブラッドブレーン バリアを通るブラッドバリアが脆弱な時期は、非常に移行します。ですから子供のとき にばく露すれば、子供の発達は遅れます。それについてはアメリカなどで、たくさんの データがあります。アメリカの古い住宅の壁の鉛を子供たちが食べると、非常に発達の 遅れがあります。 ○村田委員 それは胎児が危険だということですか。 ○岸委員 胎児と言うよりも。 ○村田委員 ブラッドブレーンバリアができていないのですか。 ○岸委員 そうですね。ただ実験的には、むしろお母さんの時期にばく露した、お母さ んに非常に毒性があってもその影響が出ないようなレベルで子供に出れば、生殖次世代 影響がすごく大きいと判断するのですが、そうでない場合は、むしろ母親への影響とい うことを先に考えます。ところが有機水銀などの場合は、お母さんにはあまり影響がな いレベルで出るものですから、そこはちょっと分けて考えるほうがいいですよね。 ○村田委員 鉛の場合はお母さんのほうが先に症状が出て、そのレベルでは胎児は大丈 夫ということですか。 ○岸委員 いま非常に記憶がはっきりしているのは、幼弱な時期のラットには非常に影 響響がありますが、妊娠中の母がばく露して、母には影響が出ないで子供に非常に影響 があるというレポートに関しては、私はちょっと記憶が定かでないものですから、そこ は留保したいのです。 ○育児・介護休業推進室長 補足的にご説明いたします。日本で分類作業が進められて、 資料No.4のいちばん下に書いてあるような分類が、1,500物質ぐらいされるということ です。その意味でEUと同じような分類がなされるのは、多分来年の夏ぐらいまでと考 えております。その作業自体は、諸外国のいままでの知見や試験結果を参考にしながら 行われているわけですが、まずこのEUの分類というのが、いちばん参考にされるもの として扱われていると聞いています。 ○中林座長 このカテゴリー1、2、3と区分1A、1B、2というのは、ほぼパラレ ルなのですか。 ○育児・介護休業推進室長 はい。 ○中林座長 生殖毒性に関してですから、カテゴリー1、2、3でも同じでいいように 思うのですが、わざわざ日本で別にしたのは、何か意味があるのですか。 ○育児・介護休業推進室長 そこまではちょっと分かりません。 ○村田委員 「知られている」「考えられている」「疑われている」というように違い ますよね。 ○中林座長 これと1、2、3が、事実はないけれども知られている、考えられている というところが非常に似ているので、EUを基準にすれば、これでも似たようなことで はないかと思うのですが。 ○育児・介護休業推進室長 日本が現在進めているのは、国連勧告に基づくもので、そ のための分類マニュアルというのが作られております。GHSの分類、国連がこういう ようにしているということのようです。その中でのコメントによりますと、EUの生殖 毒性カテゴリー分類と、GHSの生殖毒性区分の考え方は一致しているようです。 ○岸委員 いま論点になっていますのは、カテゴリー1は発がん性のIARCの分類に 非常に準拠しているのです。要するにこういう中毒物質の発がん性や生殖毒性というの は、ヒトのデータをどれだけ大事にするかということなのです。ヒトに対して明らかな エビデンスがあるものを1にしているわけです。2と3は動物実験等であった場合、そ れが適切な匹数があるか、研究デザインが適切か、コントロバーシャルな議論があるか というのを統合して、どちらが妥当かという判断をするわけです。またヒトの疫学デー タでも、十分なサンプルサイズがないときには1にならないし、十分なコーザルリレー ションシップが推定されないときには、2になる可能性もあります。国際的にはIAR C(国際がん研究機関)のがんに対する分類に準じていると思います。 ○中林座長 先ほど岸委員から、国際的な文献的な考察と同時に、実験的なものがもう 少しあったほうがいいのではないかというご発言があったのですが。 ○岸委員 おそらく実験的なデータについても、考慮しながら分類していると思います。 ○中林座長 そうすると、日本では特にこういう物質が多いから、これに対してもう少 しよくやらなくてはいけないということではないわけですね。 ○岸委員 まず、この分類をすることがいちばんだと思います。2番目は、やはりリス クコミュニケーションを先々どうやっていくかということです。また前回の委員会でも 問題になりましたが、事業主の方、あるいはばく露されている可能性がある妊婦などに、 このぐらいのレベルなら大丈夫ですよとか、現実にかなり許容濃度に近い所で働いてい るとしますと、生殖次世代影響があるのであれば、その期間は少しリーブしたほうが。 ○中林座長 おそらく来年の夏ぐらいまでに、そういった分類と同時に、日本としての 基準を作られるのでしょうけれども、より現場で使いやすいものが必要だということで しょうか。 ○岸委員 これがボンと出るのが。もちろんこれも大事ですが。 ○中林座長 まず第1に、これが出ないといけませんね。その後にその応用法をきちん としたほうがよいですね。 ○岸委員 はい。結局、産業医の先生方は事業主からも働いている方からも、いろいろ 心配になって聞かれるわけです。それについて相談に乗ってあげられるような体制、ま たは産業医が心配になったときに、私どもが例えばほかの産業保健推進センター辺りで 相談に乗ってあげられるようなものがあって、よく運用されることになるのではないか と思います。 ○森委員 GHSの世界というのは、ドクロマークが容器にボーンと付いて職場に来て しまうと、これは何だということになってしまう。実は私、大学でGHSの講義を持っ ているのですが、そういうものに対して専門家がちゃんと答えられるかどうかというこ とで、産業医などはこれからすごいプレッシャーを受けることになるのです。さらにそ れが生殖毒性になると、もっとよく分からない中で話をしないといけないという問題点 が確かにあるのです。一方、GHSの世界で1,500物質ということを考えると、確かに 非常に使用頻度が高くて、生殖毒性がはっきりしている物質に関しては、物質名を列挙 して最低限の基準として規制をするという方法が成り立つと思うのです。ただ物質をず っと列挙していっても、もう限度がありますよね。 ○中林座長 実際に現場でどのぐらい使われているかも分からないですものね。 ○森委員 多分1,500から、さらに2,000とか3,000に増えていくと思うのです。そうい うことを考えると、労働安全衛生法の規制そのものも、GHSの世界においてはやり方 を少し変えないといけなくなっています。いまは完全に物質列挙主義なのです。そうな ってきたときにまず前提としては、女性労働の問題だけが独自のやり方ではなくて、当 然そういった背景に基づいて、合ったやり方というものに今後合わせていくということ が、どうしても必要になってくると思うのです。 ○中林座長 この前おっしゃった、女性に悪ければ男性にも悪い基準をきめて、そこま でに引き下げようという考え方ですね。 ○森委員 むしろその仕組みを使うという感じですね。新しい労働安全衛生法上の仕組 みをうまく活用すると。いままで生殖毒性の次世代影響については、労働安全衛生法で もあまり明確に取り上げてこなかったのが、今回世界標準の中で、こういったことにつ いてもラベルが貼られるので、多分、女性保護のほうからも使いやすい仕組みになって くるでしょう。  もう1ついま議論しているのは、毒性とどのぐらいの職場でリスクがあるかという話 は別なのです。ばく露という要素がある。ところが管理濃度と2番目の枠は、実際に法 律で測定を義務づけられている物質ですが、1,500物質に関しては、職場でばく露濃度 や職場の環境を測りなさいという規制にはならないと思うのです。そうすると1,500物 質の世界になったときに、数値をもって規制をするというのも非常に難しいのです。一 部の明らかに毒性のある物質で、使用頻度の高いもので管理濃度があるようなものにつ いては、そういう規制は成り立つのですが、それ以外の膨大なリストについては、原則 的な考え方をもって何らかの規制をしていくというやり方しか、もう成り立たないでし ょう。  さらに、どうもハザードがありますというリスクアセスメントをやる仕組みが、EU の場合、特にイギリスなどではずっと昔から法律になっていて、モニタリングをしなく ても大体リスクが評価できるような方法を、彼らは編み出しているのです。それは、使 用頻度や使用量、有害性だけで、大体このぐらいのリスクがあるだろうというように推 定して、それに合った対策を基本的に立てなさいという、コントロールバンディングと いう方法です。それをいま日本で、何らかの形で取り上げられないかという検討がされ ているようです。そのあたりをうまく活用して女性の問題もやっていかないと、数字だ け決めていってもモニタリングできないのです。 ○中林座長 厚生労働省としては管理濃度以外に、何か考えていらっしゃるのでしょう か。確かに1,500とか2,000の物質の濃度を測れというのは、とても無理なことですか ら。 ○育児・介護休業推進室長 これは基本的に、基準局の労働安全衛生法の問題だと思い ます。聞いているところでは、昨年5月ぐらいに高齢化への化学物質のあり方について、 専門家に集まっていただいて検討が行われ、報告書が出ております。それを見ますと、 現在の労働安全衛生法の規制には、まず禁止物質というのがあって、これは製造許可を することが必要です。それと局所排気装置を付けるとか作業環境測定をするなど、一定 の管理の下だったら使いなさいという物質があります。それ以外のもう少し毒性の弱い 物質については、製造者がMSDSなどを交付して、ユーザーに有害性を伝えます。そ れをユーザーのほうでアセスメントするかどうかは別としても、自主的に管理をしてや りなさいと。それ以外に、全く規制のかかっていない物質があります。とりあえずその 基本的な枠組みは維持していこうというように聞いております。それが報告書の中身で す。  ただ先ほどのGHSシステムが出てきておりますので、それにきちんと対応できるよ うにはしていかなければなりません。もう1つ、こういう管理の下で使いなさいという 物質については、事業主ができるだけ柔軟に対応できるようにしていこうということで す。例えばずっと良好な作業環境が維持されているような作業場ですと、今まで絶対や らなければ駄目だと言っていた物がいいよというように、柔軟な管理ができるようにし ていこうと。だんだん事業主に自主的な管理を求めていこうという方向にはあると思い ますが、報告書では現在の枠組み自体を大きく変えようという形にはなっておりません。 ○中林座長 例えばその事業所で大量に使うとか、これをこのぐらい使うとこういう濃 度になる可能性があるというのは、企業によって違ってくるわけですよね。そういう物 に対する規制は、実際にどのようにしていくのか。 ○森委員 禁止物質があって、特別な方法まで書いてあるもの、管理の方法が決まって いる物質まで全部数え上げても、100ちょっとまでしかいかないのです。その一方で、 リストにずっとあるものをどうするかという話なのです。女性労働の話も、データが古 すぎるのでいろいろ問題はあるのですが、そういう最低基準として挙げるべきものと、 さらにそこから先のリストに対して、一般原則の中でどうするかというのがあるのです。  1,000いくつの物質についても、ある程度許容濃度が決まっているものはあるのです が、許容濃度があることと、実際に労働者がどのぐらいばく露しているかというのを職 場で測るかというのは、また別の話になってくるのです。そこは何らかの推定をしなけ ればいけないでしょう。その仕組みとして提案されているものがあると。例えば健康診 断をやって自動判定をすると、すごく保守的な判定になるように、その方法でやると、 多分保守的な対応をしなさいというように、自動的になるような仕組みになっていると 思うのです。そういうことも勘案して、そういう仕組みをうまくこちらでも使うことを 前提に。ですから、そちらが出来てみないと、我々が女性労働者に対してどういう規制 をかけていくかという答が、いまの段階では現状としてちょっと難しいのではないかと 思うのです。 ○中林座長 女性労働者というか、敏感なほうに合わせて決めていくことになろうかと 思います。 ○佐藤委員 私も前回言ったのです。先ほど産業医に相談すると言いましたが、こうい うものが発表されると、必ず我々の所に来るのです。自分が働いていれば、自分の環境 はこの中のどこに合いますかと言っても、我々はわからないわけです。ですから、こう いうものを作って然るべきだけれども、その後は相談所と共にどういうことをしていく のかということを。委員がおっしゃったように、どこをどういうように測ればいいのか というのがまだ決まらないうちに、これだけが先に出てくると、妊婦や女性がただ混乱 するだけです。いちばん困るのは、対処する我々なのです。ですから、そこのところで ストーリーがうまくいくようなことを考えてやらないと、ただ数字だけが独り歩きにな って混乱するだけですから、そこのところをちゃんと押さえてからでないと、私はこれ を作っても意味がないと思うのです。 ○村田委員 それはやはりレベルが違うと思うのです。理想的に言えば、こういうもの を規定して、その次にアセスメントをして、各妊婦に安心を与える、リアシュアランス を与えるようなシステムがないといけないのです。しかし、その最初の部分がまだ不十 分なのです。定めるだけ定めておいて、それをどのようにアセスメントするかとなると。 ○森委員 私の知識の中では、コントロールバンディングという方法では生殖毒性とい うラベルが貼られると、基本的にはこの対策をしなさい、例えば密閉化をしなさいとか、 いろいろなことが出ているのです。ただ実際の事業場がそのリコメンデーションと違う 状態であったときに、どういう話をするかというところになると思うのです。 ○村田委員 例えばその安全性を確認するということはできないのですか。 ○森委員 それを誰がするかということになります。 ○佐藤委員 そうすると作っても、ただ混乱するだけではないかと思ってしまうのです。 ○岸委員 私はちょっと違う考えを持っております。やはり働いている人と事業主とい う立場から見ますと、EUであれACGIHであれ、ある程度情報を知る権利はありま すから、それはそこでストップするべきではないと思うのです。厚生労働省が働く人や 事業主のことを考えながら、それに対してどういうように政策を取っていくかと考える べきです。私は労働安全コンサルタントです。先生方は産婦人科医です。それぞれ専門 の立場でおられるので、ご心配の気持はわかるのですが、やはり出すべきものはきちん と出さないと。働いている人にはやはり知る権利があるのです。それに対してどう対応 するかということを、やはりきちんと考えていくべきだと思います。 ○中林座長 そのとおりだと思います。 ○村田委員 それに対しては全く反対はないのですが、情報を出した後、かえって心配 を与えたり、パニックになったりしませんか。 ○岸委員 出した後は、安全原則と予防原則と言うのでしょうか。EUなどが取ってい るのは、プレコーションのあるディシプリンですよね。EUや国連などが世界的に取っ ているのは、予防原則なのです。先ほどの妊婦の休暇も同じことです。やはり治療より も、まず予防です。この程度だったらリスクがないのではないかと思われるところを、 できるだけ化学的に推測して、それに近いところまでばく露を下げることが望ましいの ですが、働いている女性をその職場から追い払うものでは、どちらがいいのか分からな くなりますよね。そこでその次にどうするかというのが、また次の考え方で出てくるだ ろうと思います。もし、どうしても濃度を下げられないのであれば、一定期間、本当の 危険なときだけ少しほかの場所に代われるような措置を取るとか。ただ、それにはすご く厳密ないろいろな話になってきますから、この委員会よりも、もうちょっと別の専門 家の委員会で考えるべきことだろうと思います。 ○中林座長 ただ、ここに書いてある生殖毒性カテゴリー1のようなものが、実際の現 場にどのぐらいあって、ここに書かれているよりも、かなりの高濃度でいく可能性があ るのか、それともそれはほとんどの場合、この限度以下になっているのか、その辺はど うなのでしょうか。 ○岸委員 許容濃度より以下にするような努力は、今すべての職場がやっておられるは ずですから。 ○中林座長 これはもう当然ですよね。許容濃度は年中超えているのでしょうか。 ○岸委員 それはほとんど超えていないように管理されていると思います。ただものに よっては労働安全衛生法で、年に2回環境測定をしなさいと言われているところを見ま すと、現場はかなりそれに準じて、安全衛生のための仕事をしているはずですが、森委 員がおっしゃったように規制のない物質、未規制物質も現実にはあるわけです。この中 のものが日本の厚生労働省等の法律では未規制だった場合、どうするかというのは、ま た別の考え方です。ただ、それも先ほど室長がおっしゃったように、いま何らかの準備 をされているはずですので、ラベルをすることは絶対に必要なことですし、そういうデ ータがあれば公表することも、やはり私はやらなければいけないことだという点でちょ っと。 ○中林座長 それをいかに基準以下にきちんと下げているかですね。各企業ごとに自分 たちが使っているいろいろな物は、ある程度理解して購入して、その一部が出ていくわ けでしょうから、そういうものに関して各企業が責任を持って管理してもらいたいです ね。特に自分の会社で使っている物は、ある程度わかりそうに思うのですが、そういう ものでもないのですか。 ○岸委員 もう1つは、相談はいろいろな所にくるわけです。例えば私どもが北海道の ある地方に行って、産業医のための講習会をいたしますね。そうすると産婦人科で産業 医の先生から、トルエンを使っているけれどもどうかと聞かれます。産婦人科の先生は、 お産に関しては専門ですが、労働衛生に関しては、労働衛生コンサルタントや何かを活 用することによって、それがクリアされるはずなのです。 ○佐藤委員 ですからこの規制をやると同時に、どこに行けばいいかという宣伝、これ についての相談はこういう所がありますという道筋を、ちゃんとつくってあげないと混 乱するだけです。 ○岸委員 それはやはり大事なことです。 ○佐藤委員 ですから作ってもいいし、私はやるべきだと思います。 ○中林座長 厚生労働省としては、そういうことをしていく予定ですね。 ○育児・介護休業推進室長 委員が言われるように、やはり規制を作っても、あるいは 対策を取っても、それが事業所なり労働者なりに伝わらなければしょうがないので、そ ういう努力はずっと続けていたわけです。ただ、これが今の時点で万全かといったら、 まだまだ不十分な点が多々ありますので、それはそれとして努力していくということに なるかと思います。 ○佐藤委員 完全なものというのはあり得ないですよね。何が本当に影響しているかは わからない。そういうことではなくて、こういうものがあった、こういうものを作った、 その理由はこうだ、胎児や母体に危ない、ではどういうものを使っている所でこういう 危険性があるか、それを相談するにはどこへ行って相談したらいいかというシステムを、 やはり一緒につくってやらないと混乱するだけで、労多くして功少なくなってしまうと 思うのです。そこがいちばん大切ではないでしょうか。我々が現場でやっていると、そ こがいちばん困るのです。 ○村田委員 そのとおりです。何も中途半端だからとか、よく分かっていないからとか、 測定できないからというのではなく、やはり事実は知らせないといけないと思います。 いま佐藤委員がおっしゃったように、我々が一体どこへ行ったらいいかというのと同時 に、一般の人がものすごくパニックになってしまうのです。この間のマグロの水銀のと きも、患者からは随分「食べていいんですか」と聞かれたけれど、私たちもよくわから ないのです。やはりある程度のリアシュアランスを与えられるような、ここまでは大丈 夫ですよというような安全な線を。例えば放射線などは、その辺がわりあいはっきりと していますよね。ですから私は、そういうアプローチが必要ではないかと思うのです。 ○中林座長 今後はこういったものを明らかにし、当然各企業に、そういった指導をさ れていくことになるわけですね。 ○育児・介護休業推進室長 そうですね。 ○中林座長 それでまた少し心配があれば、それぞれの産業医に十分な知識を持ってい ただいて、心配には対応していくという体制が取られてほしいということですね。 ○森委員 企業のビヘイビアとしても妊娠中の問題は、本人が不安であればこの期間だ けだし外しましょうという話になるのですが、いま議論しているのは、女性全般の話な のです。 ○中林座長 生殖毒性ですからね。 ○森委員 女性全般の話に対してどこまでやるかというのは。 ○村田委員 これから妊娠する人というのが、この危険のいちばん大きなところでしょ うね。 ○森委員 もちろんリスクコミュニケーションの目的というのは、情報を開示して不安 に応えるというのが、非常に大きな目的なので、それをやろうとしたときに、一方で女 性全般の禁止という話が、もともとの議論にあったので、それは不安に応えるという話 とは、また別の問題ですよね。 ○中林座長 やはり妊娠したときだけではない。卵というのは精子と違って、女性があ る程度ずっと持ち続けて、いろいろな影響をそのまま受けて蓄積するわけです。その辺 に関しても、こういったものにどういう影響があるかというところまで考えるのが、生 殖毒性ということで、カテゴリー1、2、3と分けているのだと思いますので、我々と しては是非その辺も明記された上で、答申というか、調査報告が出てまとまっていくこ とをお願いしたいと思います。  来年の夏にはこういったものが出てくる予定ですから、私としてはそれに関して、ま たいろいろな専門の方々に検討していただければ、いちばんいいのではないかと思うわ けです。そのようなことで大体皆さんのご意見はよろしいですか。 ○村田委員 少し本質から離れた質問になるかもしれませんが、こういう生殖に関する 害ということになると、女性一般になりますよね。更年期の女性はこれから外すという ことはあるのですか。 ○森委員 いまの規定は女性一般ということで、更年期、閉経後はいいという話は全く 関係ないです。 ○村田委員 生殖ということでの規制がかなりかかわるわけですよね。そうすると妊娠 するおそれのない人は、そういうところから外れるのか。この委員会の趣旨が、女性が できるだけ均等に働けるようにしようという趣旨だとしたら、妊娠の可能性のない方に は、男性と同じような機会を与えようという姿勢があってもいいのではないかと思うの です。 ○育児・介護休業推進室長 先ほどまでの議論ですと、とりあえず日本で進められてい る分類作業が終わって、各物質についていろいろな生殖毒性、生殖毒性の中でも胎児に 対する毒性、あるいは受胎能力に関する毒性など、いろいろあると思うのですが、そう いうものが出てきた上で、そこのところは議論されるべき話だろうと思うのです。その 際、検討結果によってはいま村田委員がおっしゃったような選択肢も、当然あろうかと 思います。例えば現在、放射線の規制に関しては男性と、妊娠の可能性のある方と、も う妊娠の可能性のなくなった方とでは、ばく露の防護の水準が異なる規制をしておりま す。いま言われたのは、そういうお話だろうと思いますが、それは今後の検討のときに、 そういう選択の余地はあるだろうと思います。 ○佐藤委員 これは話が別になるかもしれませんが、いまの女性の雇用の問題について は、何も関係ないのに嫌がらせをして、職場から女性を排除するときに、逆にこういう ことを利用してやられるのが、いちばん怖いのではないですか。雇用は皆平等だ平等だ と言うけれども、結局その職場での嫌がらせというか、プレッシャーがかかって、女性 がみんな辞めていくというのが多いのです。そういうところを本当は監視すべきなので す。これが利用されるようなことがなければいいのですが。私はそう思います。 ○中林座長 ですから女性でも男性でも、共に生殖には関係ないぐらいまで職場が全部 安全であれば良いのです。 ○佐藤委員 妊娠と出産だからこれを変えるけれども、生殖にかかわるのだったら、い ま男性不妊が増えてきているのは、この全部の物質に対して、こういうことがあるので はないかということであって、妊娠する前だったら男も女も、もう同じなのです。 ○中林座長 そういうことだと思いますので、それを十分クリアされるだけのレベルに 規制して、それがしっかり規制されたら、女性に対する差別はなくなるだろうと思うの です。その辺は基準を決めると同時に、現場での規制をしっかりしていただきたいとい うのが、我々の考え方でしょう。  皆さんからのご意見は、ほぼいただいたように思います。ひと通りの意見が出たとこ ろで、次回は一応最終ということで、前回と今回の議論を踏まえた上で、答申案のまと めを作りたいと考えております。事務局から次回の会合の予定について、お知らせいた だけますか。 ○育児・介護休業推進室長 次回の開催については、6月17日の金曜日15時からを考 えております。場所はこの建物の16階、専用第17会議室を予定しております。 ○中林座長 あと室長、専門家の先生方、課長、特に何か追加はありませんか。 ○職業家庭両立課長 ございません。 ○森委員 今日議論の落ちているものとして、産後の部分がなかったのです。 ○中林座長 産前のほうを熱心にやっていましたので、失礼しました。 ○森委員 産後は多分、これでいいというのであればいいのでしょうけれども。 ○中林座長 産後は強制6週、任意で8週の休業ということでありまして、教科書的に は産褥期は産後6週間ということです。 ○村田委員 それはあまり出来ないことではないのではないですか。 ○中林座長 特別に皆さんが問題意識を持っていなかった、ということで落ちたのかと 思います。 ○佐藤委員 統計上では、妊娠高血圧症候群だったら12週です。 ○中林座長 これは多分、佐藤委員がおっしゃるかと思ったのです。 ○村田委員 そこはまた別の議論ですよ。 ○佐藤委員 そういうところまでクリアするのだったら12週です。また統計的にも、12 週がかなり多いのです。 ○中林座長 これは私が聞いたところですが、いままで日本は妊娠高血圧症候群の後遺 症を、6週と決めていましたね。それを今度改定のときに12週に延ばしました。という のは、重症で病的なものに関しては、そこまで影響が残るかもしれないということです。 ○村田委員 これはやはり正常な人を中心にしなければいけないので、全然別の観点か ら見ないといけないのです。 ○中林座長 そう思います。病態論で見なければならないということですね。 ○佐藤委員 私は統計的なことを主張したのです。 ○中林座長 私は多分、佐藤委員はそれをおっしゃるのではないかと思っていて、12週 というのが少し議論になるかと思ったのです。基本的には村田委員がおっしゃったよう に、病的なものはそうなるけれど、正常なものは6週間の産褥期で、またそれに余裕を 取って8週ということで、大きな問題はないのではないかと思います。その後は育休と いう違う問題になろうかと思います。森委員、そのようなことでよろしいですか。 ○森委員 はい。 ○中林座長 また落としたところがあれば、最終のところで盛り込むとして、次回にま とめをしたいと思います。今日はいろいろと多方面から、実のあるディスカッションを していただいたと思います。先生方、大変ありがとうございました。これで終了いたし ます。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課 法規係 (内線7856)