05/02/28 第2回「へき地保健医療対策検討会」の議事録について              第2回へき地保健医療対策検討会                       日時 平成17年2月28日(月)                          13:00〜                       場所 虎の門パストラルペーシュの間                          (新館6階) ○宮本指導課長補佐  定刻になりましたので、ただいまから「第2回へき地保健医療対策検討会」を開催い たします。委員の皆様方には、遠方よりお越しいただきまして、まことにありがとうご ざいます。まず本日の出欠を確認させていただきます。本日は北窓委員、高橋委員、松 村委員の3名がご欠席ということです。また、新庄委員は後ほど遅れていらっしゃると いうことで、ご連絡をいただいております。  また、本日初めてご出席いただく委員がお二方いらっしゃいますので、ご紹介させて いただきます。元山委員、吉田委員です。それでは座長に進行をお願いいたします。 ○高久座長  本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。まず事 務局から、資料について確認をお願いします。 ○宮本指導課長補佐  皆様にお配りしてある資料ですが、資料1として「臨床研修制度:地域医療について 」ということでお配りしております。また併せて追加資料の1というのも、同じタイト ルで付けてあります。資料2は、各委員からのプレゼンテーション資料ということで、 大きく綴られているのは、樋口委員から提出されている資料です。同じく追加資料があ って、吉岡陽子委員と元山委員よりいただいている資料を追加資料としてあります。ま た、1枚紙がございまして、樋口委員よりいただいたメモが、委員の皆様方のお手元に お配りしてございます。  参考資料として、前回の会議録をお配りしております。資料のご確認をお願いいたし ます。 ○高久座長  皆様方のお手元に資料があると思います。早速議題に入りますが、まず最初に、前回 の議事内容の確認を、事務局のほうからよろしくお願いします。 ○宮本指導課長補佐  議事録については、皆様方に予めお配りさせていただいて、ご確認いただいているも のと存じております。内容をいくつかかいつまんでご紹介させていただきます。全体の 議論として、これまでの取組みの成果をどのように考えているかというご発言がござい まして、全般的に、無医地区の減少などに表れているのではないかという紹介を私ども のほうからした後、本日行っております「へき地医療支援機構」の創設というものは、 一定の成果ではないかという発言がございました。  それから、アンケートについて、いろいろとご修正をいただきました。全体の論点に ついては、特に離島における大規模災害への対応を案件とすべきではないかというお話 がございました。  医療と医師の不足を考えて、分けて考える必要があるのではないか。医師、診療科の 編成を考えるべきではないかといったご発言がございました。  ITの活用などによって、地域の不利、自然条件などをどのように克服していくのか というような視点が必要ではないかというご指摘がございました。特に歯科診療所がな いような所でも、歯科保健を充実させていくべきではないかというようなご発言がござ いました。  臨床研修などについては、全体に専門指向になっているのではないかということで、 また、へき地医療に関心を持つ人を多くするための取組みを充実させるべきではないか というご発言もありました。  それから、特に山間へき地における地域の紹介ということで、若い人は車で移動でき るが、体の悪い人は困っているのではないか。また、研修医も、興味をもってくれて も、長期の勤務については、若くて技術が足りないために不安があるといった意見があ って、なかなか進まない面があるのではないか。こういったところが、主な発言だった かと思います。 ○高久座長  参考資料として、前回の議事録がありますが、何かいまの説明についてご質問等ござ いますか。もうご覧になっていると思いますので、後でまた気がついたことがありまし たら、事務局のほうにご連絡下さい。  次に、議題の2として、資料1の「臨床研修制度:地域医療について」、これについ ても事務局のほうから説明をお願いします。 ○宮本指導課長補佐  資料1と資料1の追加というものと、併せてご覧ください。前回の会議の中で、臨床 研修制度の進み具合、特にへき地・離島医療に関する状況についてのお尋ねでしたの で、資料を用意した次第です。  全体の概況ですが、ご存じのように平成16年4月より、医師国家試験に合格したすべ ての医師は研修医として2年間の臨床研修が必修となったということで、適切な指導体 制の下で、プライマリ・ケアを中心に、幅広く診療する医師として能力を身に付けてい くということになっております。その内容としては、内科、外科及び救急部門を「基本 研修科目」として、主に1年目に研修する。小児科、産婦人科、精神科及び地域保健・ 医療を「必修科目」として、1カ月以上の研修期間を、主に2年目に研修をするという ことになっております。  少し飛んで、具体的には「地域保健・医療」にかかる研修の中で、へき地・離島に関 する医療を研修するということですが、1頁から2頁にかけて内容を紹介しておりま す。保健所の役割、社会福祉施設等の役割、それから診療所の役割、へき地・離島医療 についての役割を理解して実践するということです。指定しております研修場所として は、へき地・離島診療所、中小病院・診療所、保健所、介護老人保健施設、社会福祉施 設、赤十字社血液センター、各主検診・健診の実施施設等が実施研修場所ということ で、繰り返しになりますが、この中で1つ以上について、1カ月以上研修をするという のが、プログラムの内容になっているということです。  現状として、1,000ほどの選択肢と研修プログラムがあるということですが、その中 で、臨床研修協力施設として、いまの時点で登録されている数としては、病院が158、 診療所161ということで、319施設が登録されている状況です。  4番目と、資料2にかけての内容に移りますが、これは臨床研修制度の全般的な状況 ということで紹介されているものですが、臨床研修制度が始まって、大学病院とそのほ かの市中の臨床研修病院等の研修ということが、それぞれ実施場所としてあるわけです が、その比率は、大学対臨床研修病院のマッチした、応募して、それが研修病院として 一致した数は、52.7%対47.3%ということで、大学病院のほうから、だんだん地域の臨 床研修病院に研修医が移行している状況が見られているということです。  また、地域別に見ても、これまでの、都会が中心であったようなところから、だんだ ん北海道とか沖縄といったような地域に、プログラムを評価した医師の移動というのが 起こっていて、全般的には、大学病院から臨床研修病院、それから都会からそのほかの 地域を含む日本全体へという形で研修が進められているというところです。  資料の中に1つ間違いがあって、そこだけ修正させていただきます。1頁目の2の 「地域医療との関わり」で、4行目に、当初の12月は「基本診療科目」となっておりま すが、この部分は「基本研修科目」ですので、修正をお願いいたします。 ○高久座長  いまの説明について、何か御質問ありますか。北海道と沖縄が増えているのは、北海 道は室蘭の「カレスアライアンス」の西村先生の所とか、沖縄は中部病院などが有名だ からですね。北海道全体とか沖縄全体というよりも、特定の病院に集中しており、それ で結果として増えたという可能性はないですか。 ○野田臨床研修指導官  医事課で臨床研修指導官をしております野田です。確かに、そういう特定の病院、人 気のある病院に集中しているという傾向はやはり否めません。それと、大学などでいま まで定員の定めがなかったものが、ある程度病床規模によって研修医の数も抑えられた という傾向もあるので、そういった複合要因が加わって、そういった地方にある程度研 修医が偏っている傾向が見られるのが実態ではないかと思われます。 ○高久座長  よろしいでしょうか。それでは引き続いて、へき地保健医療について、本日は4名の 委員の方々にご説明をお願いする予定になっています。4名の方は、吉岡委員、元山委 員、奥野委員、樋口委員ですが、最初に吉岡委員に、住民の立場ということで、さらに 元山委員には、自治体の立場、奥野委員は医療提供側、樋口委員も同じく医療提供側の 立場ということで、各々4人の方から10分くらい説明をしていただいて、後でまとめて ディスカッションしていただくことになります。それでは恐れ入りますが、吉岡、元 山、奥野、樋口委員の順番で、約10分くらいずつ、それぞれのお立場で、へき地保健医 療についてお話をいただければと思います。最初に吉岡委員、よろしくお願いいたしま す。 ○吉岡(陽)委員  「隠岐の島からのお願い」として、ここにメモしてありますので、それを読ませてい ただきます。  島で生まれ、育った一人として今回出席させていただいております。とても理路整然 とお話しすることができませんが、そこはご容赦いただいてお話を聞いてください。で は、離島隠岐の島の現状をお話しいたします。隠岐島後は人口1万7,500人の小さな島 ですが、関係機関のおかげで、診療所は4つの村に内科の専門医がいます。そしてへき 地診療所は2つあります。これらの中で3カ所には歯科もあります。この他に内科開業 医が2、小児科1、歯科が3あります。西郷には公立の隠岐病院があり、内科・外科・ 婦人科・小児科・精神科・泌尿器科・歯科・眼科・耳鼻科・皮膚科については週1回、 本土から来てもらっている状態です。  離島が故の、住民には最大の悩みがあります。暮らしていく中で避けられない病気に 対して、医師不足と医療についてです。少子高齢化の中、人口の29.8%が高齢化し、住 民にとってはこの悩みが大きな影となっています。例えば診療所の中には高齢の先生に 来てもらっている関係で、わずか数年で休診せざるを得なかった所があり、週2、3回 の隠岐病院からの派遣で間に合わせをしています。田舎のため交通が不便で、隠岐病院 に通うことができない人にとっては、診療所の休診はとても不便です。そして生命を脅 かされます。  前回の検討会で、離島医療を担う医師の確保方法が述べられていましたが、診療所の 医師の年齢を考えてほしいと思います。いくら医師がいないからといって、あまり高齢 な方は遠慮してほしいと思います。へき地でも離島でも言えることですが、何かのとき に交代できる複数の診療所の先生の確保をお願いしたいです。また、隠岐に来られるお 医者さんには、高額の報酬を条件に来ていただいております。医師の確保とそのための 多額の支出、何十年の自治体の悩みは理解しているつもりです。また、住民に信頼さ れ、慕われるようになった頃に転勤……と、何度も繰り返されることです。そして休診 となったのです。とても残念なことになり、村民に失望を与えています。医学校で、離 島・へき地への研修期間を設けてほしいと思います。いろいろな経験をされることは、 とてもいいことだと思います。  隠岐の島は、心筋梗塞、がん、脳疾患患者が多い島です。それぞれの専門医がいない ために、本土の病院に行かなくてはなりません。費用の面で患者、付添いは莫大なお金 がかかりますので、それらの専門医の派遣をお願いしたいと思います。その費用を考え ると、患者は思うような治療を受けられないと嘆いています。旅費・交通費、これらに かかる費用に対して、何か補助金制度はないものでしょうか。  離島での、悪天候のときの患者輸送についてです。ヘリコプター、ジェット機など、 緊急輸送ができない場合の処置で、先日も友人のご主人が心筋梗塞を起こして本土に運 ぶ際、ヘリ、ジェット機が空まで来ていましたが、強風のため降りられなくて、発作が 起きてから何時間以内に本土に運ばなくては命がないと言われて大変でした。最後の手 段として、本土にいる巡視船に3時間かけ西郷に帰ってもらい、また3時間かけ、2人 の医師に付き添われ、本土の病院に運ぶことができましたが心拍停止となり、一時は絶 望的でしたが、医師、スタッフの努力と患者の生命力で奇跡的に回復して、いまは家業 に復帰しています。この日もう1人の患者がいて、晴れ間を見て輸送されましたが亡く なられました。こういう悲しいことが、何件か実際に起きています。  西郷港も22年には改修工事が終わると聞いていますので、常に出航できる巡視船の配 備をお願いしたいと思います。また、18年に隠岐空港が完成します。旧空港の利用とし て、自衛隊の駐屯を希望します。いつでもジェット機かヘリがいれば、島民は大きな安 心感を持つことができると思います。駐屯できることになれば、人口も増え、島の活性 化にもつながります。隠岐空港は、1,500メートルと2,000メートルの2つの滑走路があ ることになります。実現不可能なことではないと思います。  隠岐の医療について「住民が求めるもの」とは、医師と患者間の信頼関係とコミュニ ケーション、心のケアだと思います。患者に対して医師からの細かい説明がないように 感じられます。なぜならば、病気に対して患者・親族に十分な説明ができ、医師が自信 を持って手術できれば、今後の治療等に任せられると思いますが、すぐ「どうされます か。本土の病院に行かれますか?」と言われます。私の主人も腹痛が続き、何度も病院 に診察を受けに行きましたが、原因不明で2年経ち、大腸がんが発見されたのです。も っと親切に診療し、検査を行っていたら軽いうちに処置ができ、退院までの時間がこん なにかからなかったのではと思っております。医師の誤診とは言いませんが、医師の信 頼性を疑うようなことばかりあります。  また隠岐病院は、狭く汚く、段差があり、トイレなど、車椅子では行けないような状 態です。清潔感もない状態の病院です。出雲中央病院等とは比べものにはなりません。 このような所で働かされる医師の熱意も薄れることもあるかもしれませんし、住民側の 病院建物の判断から本土の病院に憧れ、そのような評判になっているところもあるかも しれません。「なぜ」と言いたくなります。そのために評判は悪くなり、「いまの先生 は、よう手術せんけん」と言われるようになり、病院の経営にも悪影響が出てきていま す。  少ない実例でしたが、これらを第三次医療とか言い、本土の病院と連携がなされての 処置とのことですが、繰り返し申し上げますが、本土に行くと費用も多くかかり大変で す。年間、本土に運ぶ救急患者は150人以上と聞いています。この方々の単純な計算を すると、3,000万くらいかかります。これ以外に、初めから本土の病院にかかる人は少 なくありません。このことを考えても、自分の手術、治療にプライドを持ち、はっきり 患者を納得させてくれる先生が来られることを願っています。  でもこの間、いい話があったんですよね。肝がん患者が本土の病院で治療を受けてい て、経済的にも大変で、島の病院で治療ができないかとお医者さんに相談したところ、 何カ月かは受けられませんでしたが、いま現在、自宅から通勤できて抗がん剤の治療に 励んでいます。島でも、本土の病院での治療ができる医師の派遣をお願いしたいと思い ます。離島は本土の大きな病院と違い、不安だらけの中で治療を受けていますので、信 頼できる先生と、患者の心のケアができる医師の確保をお願いします。  これは質問なのですが、離島の調剤薬局について、隠岐の島でもついこの間から、調 剤薬局で薬をいただくようになりましたが、都会と違って薬局が多くありません。いま までは、診察した病院とか医院でお薬をいただいてとても便利でしたが、病院でお薬を 出してもらえず、とても不便を感じています。特に高齢者の方々からそういう声を聞き ます。もちろん病院で薬を受け取るまでの時間が長すぎるということがあって、こうい うことをされたと思いますけれども、どうして病院内に調剤薬局ができないのか。何か 法的なものがあり、制約を受けているのでしょうか、お聞きしたいです。どうして都会 と離島を同等に扱うのか、ちょっとそこも私は感じているところです。患者にやさしい 医療を考えていただきたいと思います。  「国立大学の法人化による影響について」というのを、いろいろな方々からいろいろ なお話を聞いて、その中から抜粋したことなのですが、国立病院に派遣していただいた 先生を、大学に引き揚げをしていると聞いていますが、補充がなくて引き揚げをするな ら、医師不足になるのは当たり前のことだと思います。これは、隠岐病院にも言えるこ とで、いま院長先生がすごく大変な目にあっておられます。大学の医学局からの派遣可 能な医師が不足と聞いていますけれども、これもどういうことでしょうかということも お聞きしたいです。  それから、いま北海道とか沖縄の離島のほうに、都会部でなくて離島のほうへ、研修 医が帰るという話を聞いておりますが、新聞紙上ではそういうお話はなくて、いつも離 島のほうには来ないという話ばかり聞きます。どうしてこんなに医学生の数が少ないの でしょうかと思うのです。例えば都道府県での医学生だけの貸付資金制度とか、例えば 隠岐の島では、看護師のみですけれども、この制度があって、卒業後は隠岐病院で勤務 を義務づけられている。こういう制度がありますから、そういうものもつくられたほう がいいことなのかということと、自治医大の地域枠を広げていただくとか、国立医大の 学生の定員を多くするとか、国立の授業料は国民の税金で賄っていると思うので、へき 地と離島の勤務の義務づけをするとかなどしてやらなければ、医師不足の問題はなくな らないと思います。  最後になりましたが、今月に入って新聞紙上に島根県の医師撤収の記事が載って騒が れています。これには産婦人科の医師の撤収が載っていました。隠岐でも、一時婦人科 の先生がいない状態があって大変でしたので、こういうことがあると、ますます少子化 が進むのではないかと案じられております。このようなことになると、いつも地方が影 響を受けます。ますます島民の不安が募るばかりですので、何か対策を考えて、島の住 民が安心して暮らせる状況をつくってくださるようにお願いしたいと思います。それか ら、2月22日のテレビで、島根大学医学部で、地域枠推薦制度たるものができたという ことが報道されまして、長い話ではありますが、少しずつ前進しているのかなと思って おります。  それから、新聞の切り抜きですが、こういうのが出ています。「ここに残る医療」 と。こういうふうに載っている先生がたくさんいてくだされば、助かるのになと思って おります。以上です。ありがとうございました。 ○高久座長  それでは次に元山委員、よろしくお願いいたします。 ○元山委員  鹿児島県大島郡宇検村長の元山でございます。大島郡といってもわかりにくいと思い ますが、奄美大島でございます。鹿児島県離島緊急医療対策組合の議長として、国、県 などのご支援ご協力をいただきながら、離島医療の充実・確保という問題に日夜取り組 んでいるところでございます。私からは、鹿児島県の離島・へき地医療の現状等をご説 明申し上げるとともに、国における補助の拡大に対するお願いを申し上げたいと思いま す。  まず鹿児島県の現状についてご説明申し上げます。お手元の資料の1頁をお開きくだ さい。「鹿児島県の離島医療の現状」についてですが、本県は南北約600キロメートル にわたり、27の有人離島を有しており、離島人口と離島面積が全国1位、離島市町村数 が28で全国2位と、全国有数の離島県でございます。県内の有人離島のうち、6市町村 13島が、医師の常駐しない無医島であり、また18市町村36地区が無医地区で、19市町村 51地区が無歯科医地区となっており、医師の確保ということが重要な課題となっており ます。  2頁をお開きください。「鹿児島県における離島・へき地医療体制整備の体系」に関 する資料です。まず最初の「離島・へき地医療体制の整備」ですが、へき地医療支援機 構運営事業、へき地医療拠点病院運営事業、へき地診療所運営事業、歯科巡回診療など の事業を行っていただいているところでございます。  次の、「離島・へき地医療従事者の養成確保」ですが、これまでの自治医科大学事業 や関係機関への医師派遣要請に加えて、新規に3つの事業を行うことにしていただいて おります。まず、医師修学資金貸与制度については、離島・へき地を中心とする公的医 療機関に勤務する医師を確保するための事業でございます。この事業については、後ほ ど詳しく説明させていただきます。次の医師募集ホームページの開設案では、昨年6月 から、鹿児島県のホームページを開設し、離島・へき地の診療所、市町村立病院、県立 病院などにおける医師募集の情報を掲載しております。これまで1万件近くのアクセス があり、すでにこのホームページを見られた県外の医師が、離島診療所に勤められてい ると聞いております。  3番目の「Drコトー応援団ネットワーク」形成事業については、離島・へき地医療 に関心のある医師、特に鹿児島大学医学部同窓会、鶴陵会などを通じて、本件に関係の ある医師等に呼びかけて、Drコトー応援団医として登録してもらい、これらの医師 に、ふるさと鹿児島の診療所への勤務や、代診医としての勤務などを働きかけて、医師 確保を図ろうとするものでございます。  いちばん下の、「離島・へき地医療の支援体制」については、地域における医師確保 対策を協議する場として、昨年8月に鹿児島大学、鹿児島大学病院、鹿児島県医師会及 び県の三者により、県医師対策協議会を設置するとともに、離島移動保健所などの事業 を行ってきたところでございます。  3頁をお開きください。本件は、先ほどから申し上げているとおり、全国有数の離島 県であり、離島地区で、重篤な救急患者が発生した場合は、県の消防防災ヘリや自衛隊 のヘリコプター等で、奄美大島にある県立大島病院や、県本土の鹿児島市、あるいは沖 縄県等の病院へ搬送しております。2の(1)の搬送の総数は平成6年度の134件から 平成15年などは220件と、約1.7倍になっております。また(2)の「島別搬送実績」に あるとおり、平成15年度222件のうち、164件がヘリ搬送で、全体の7割以上を占めてお ります。  このことからおわかりのとおり、本県の離島においてヘリ搬送は非常に重要な役割を 果たしておりますが、このヘリ搬送における添乗医師を確保するため、関係23市町村で 一部事務組合、離島緊急医療対策組合を、昭和49年から設立しているところでございま す。この緊急医療対策組合に対しては、県より運営費の補助を、また国・県より、医師 ・看護師の傷害保険料に対する補助をいただいているところです。大変感謝していると ころですが、ここでお願いがございます。3の(3)の、「運営事業費」の表にあるよ うに、事業の運営には全体で2,000万円を超える経費が必要であり、厳しい財政状況に ある私どもにとって大変な負担となっております。そこで、国における補助について、 その対象となる定員の枠を、添乗する医師・看護師への報償費まで拡大するなど、補助 金のさらなる上積みを、是非ともお願い申し上げる次第です。  4頁をお開きください。先ほども、医療従事者の養成確保のため、新規事業として紹 介した、医療従事者修学資金貸付事業についてご説明いたします。この事業は、県にお いて平成17年度から新たに取り組まれるもので、離島・へき地を中心とする医療機関に 勤務する医師を確保するため、鹿児島大学医学部の学生と、大学院生に修学資金の貸付 を行い、卒業後、一定期間、離島・へき地の医療機関に勤務した場合、返還は免除する ものです。制度は平成17年度の大学院生4名への貸付でスタートし、医学部の学生につ いては、鹿児島大の医学部が平成18年度から実施する地域特別枠、これは離島・へき地 医療の担い手を希望する者について、特別選抜を行う制度です。これに合わせて、平成 18年度から貸付をスタートすることとなっております。  具体的な貸与額は、3に記載のとおり、入学金・授業料、生活費・図書購入費とし て、学生については6年間で940万円、大学院生については4年間で636万円となってお ります。  ここでまたお願いがございます。イの「負担割合」の部分にアンダーラインを引いて ありますが、修学資金の経費のうち、生活費と図書購入費は、医師を受け入れる市町村 が負担することとなっており、この額は学生1人につき600万円、大学院生1人につき 400万円になります。医師の確保は、離島・へき地を抱える市町村にとって重要な課題 であり、そのための経費は必要な負担であると認識しておりますが、先ほど申しました とおり、各市町村とも厳しい財政状況にあり、ここでも国からのご援助が必要不可欠で ございます。つきましては、この医師修学資金にかかる市町村負担分、生活費及び図書 購入費に国の補助をいただけるよう、補助金の上積みを是非ともお願い申し上げる次第 でございます。以上、鹿児島県における離島・へき地医療の現状のご説明と、国に対す るさらなるご援助をお願いしましたが、ただいまお願い申し上げた離島緊急搬送に対す る国からの補助、あるいは修学資金貸付制度に対する国からの補助については、各県同 様、朗報をお待ちしておりますので、是非とも各県の状況を調査していただき、また要 望の趣旨をご理解いただき、今後とも温かいご理解ご指導を賜りますよう、離島・へき 地の住民を代表して、よろしくお願い申し上げます。 ○高久座長  それでは3番目に、奥野委員から、よろしくお願いします。 ○奥野委員  私からは、離島医療ということで、説明させていただきます。                (パワーポイント使用)  私の勤務しています神島というのを、写真でお示ししておきました。小さな島です。 横幅が1キロメートルしかありません。人口が500人、こういう小さな離島での医療の お話をしてみたいと思います。まず、離島の基本的なことをお話しします。島は6,800 以上あると言われていまして、いろいろな数え方があるのですが、以下の4法に基づい て指定されている離島のうち、住民の居住が住民基本台帳で確認された島、つまり、住 民票があるという島が、離島振興法を中心に300余りあります。300という数字を基にし て、少しずつお話してまいりたいと思います。  日本全国の離島の人口は約73万人、いまはもう少し減っているかと思います。ここで 特徴的なのは、5年間で5%といいますから、急激な勢いで人口は減っています。人口 がいちばん多いのは佐渡島で7万2,000人。これだけで全部の人口の1割を占めている わけですが、最も少ないところでは1人という島もあります。  人口規模別に先ほどの300の離島を見ると、500人未満の所が圧倒的に多くて、約200 の島が500人未満となっております。  それからこれらの離島の中で病院とか医師がどの程度いるのかを、表でご説明いたし ます。細かい点については、また後でお示ししますが、これは当然ですが、病院がある のは人口が多い所です。人口の少ない所には、医師がいない所が多いということです が、これをもう少し詳しく見てみます。人口が多い所に病院があるのは当然なのです が、大まかにいって、2,000人以下の島には病院はないと考えていただいて結構です。 病院があるのは、300の島のうちの大体20くらいです。最も人口が少ない島で1,200人足 らずの島にも、病院があることはあるということです。  それから、すごく大まかですが、100人以下の島に医師はいません。医師がいない島 というのが実は最も多くて、300のうちの200、3分の2は、医師がいない島です。100 人以下で医師がいる島は、長崎の黄島で、65人という所があるそうです。それ以外はあ りません。医師が1人だけという島が、300のうちの約90あって、1人でどれくらいの 人口を受けもっているかというと、少ない所が先ほどの黄島の65人から、多い所は3,900 人、約4,000人を1人で診ていることになります。最も多い人口が1,000人前後というこ とです。これは、図らずもプライマリ・ケアということをイギリスで提唱したジョン・ フライトという方が、1人のプライマリ・ケア医が診られる最適な人数は2,000人以下 だろうということを示しておりますが、大体こういうところです。最も多いところは、 調べてみると、気仙沼という町に近くて、船の便数も多いところで、多分、その大きな 街に出て行って診てもらっている方も多いのだろうということから、予想ができます。  今回は、こういった離島もたくさんあって、いろんなボリュームのものもあるので、 今回は1つの島に1つの診療所しかなくて、常勤の医師が1人しかいないという92の離 島の診療所の医師に対してアンケートを実施したので、紹介させていただきます。平均 すると大体人口が約800、それから、老年人口割合が36%、診療所の構成は、職員が、 医師1人、看護士が1人から2人、事務員1人という、大体こういった構成でできてい ます。私の島も、人口が5年で1割減っています。いちばん最初に行った25年前と比べ ると、現在半減というところです。急激な勢いで人口が減り、老年人口割合が増えてい るというところです。  診療所の設備というか、わかりやすいところで、機器は大体どういうものを持ってい るか、どのくらいの割合で持っているかということを見てみると、超音波診断装置と か、単純X線装置あたりはほとんど持っているのですが、内視鏡とかX線テレビという のは、まだまだ半分以下であるということです。つまり、こういったことを受けるため には、半分以上の島では、本土のほうへ渡って、そういった検査を受ける必要がある、 受けなければならないことになります。  離島で最も大きな問題は、救急です。まず、離島では救急搬送に非常に時間がかかり ます。大まかですが、全国集計、消防庁の調べでこういうものがありました。110番通 報があって、医療機関に収容するまでの時間を調べているのですが、30分以内というの が70%になります。つまり、119番に電話をして、その患者さんが病院に収容されるま での時間が30分以内が70%ということになります。離島ではご覧のように、同じ70%と いうところで見ると、1時間以内が70%、2時間を超えていくものも1割あるというこ とで、離島での救急搬送には非常に時間がかかっております。  もう1つ大きなポイントは、運ぶ場合に、どういうもので運ぶか。いま鹿児島の話で ヘリコプターがありましたが、7割は、漁船ないし巡航船といった普通の船で運ぶわけ です。つまり、搬送している間は、素人の手しかない。このように、搬送する場合は、 医師が同乗しない限り、搬送中の救急措置も何もできないというのが、離島でのいちば ん大きな搬送の問題です。例えば私の島ですと、こういった漁船に患者さんを乗せる場 合、どこに乗せるんだと言われて難しいのですが、その運転する前の所に患者さんを乗 せて、上にテントのようにシーツを張って走るという形で、震動とか音、冬ですと寒さ 等を防げないような状態で運んでいるのが現状です。  それから、島ではどのようにして運びますかというときに、10%くらいの医師が、ほ とんど一緒について行きますというお話はありました。「同行するのも命がけ」という のは、同行した際、こういった小さな船ですので、医師自身が危険を感じたことがある かという質問をしたところ、2割の方が、「危険を感じたことがある」と答えていま す。それから、「帰りはひとりぽっち」、これは、一緒に行くのですが、一緒に行って 帰って来る手段が全くないのです。帰って来るときに、手配は誰もしてくれないので す。行きはヘリコプターで一緒に運んでもらっても、帰りは全部自分で手配をして帰っ てこないといけない。その間、島には医師はいないということを、5割の方が答えてお られました。  それでは、救急患者さんはどうか。そういった人口の少ない所で、発生は少ないで す。例えばこの表ですと、1カ月に救急患者がいなかったというのが21診療所もありま す。これについては、いいじゃないかという意見もありますが、実は救急患者の発生と いうのは、島にとっての一大事で、その医師の評判を左右する大きな出来事でもあるわ けです。症例数が多ければ、それなりに勝手に体が動くのですが、非常に少ないといっ たときに、適切に体が動くというのは、なかなか難しいもので、少なければよいという ものでもない。それから救急トレーニングの必要性があるということが、このことから 言えると思います。  いちばん大きなポイントは、救急患者さんを搬送できないことがあります。アンケー トの中で、「荒天で搬送できなかったことがあるか、そういうことを経験したことがあ るか」という問いに対しては、35%の医師が、「搬送できなかったことがある」と答え て、経験されております。さらに、その結果、「搬送できなくて患者さんが亡くなった ことがあるか」という質問に対しては、5%の医師が、「ある」と答えております。搬 送できなくて亡くなるということは、1つは、仕方ないという原因もありますが、もし かしたら、こういう治療を施せば助かるということがわかった上で搬送できないとい う、とても悲しい、医師にとっても悔しい悲しい出来事があるということも、わかって いただければと思います。  それらのことを全部踏まえて、話を、離島での医療の制限ということにもっていきた いと思うのですが、離島での暮らしの特徴ですが、これは、海があるということで、当 たり前といえば全く当たり前のことですが、容易に本土と往来ができません。船以外に 交通手段はありませんし、便数は少ないですし、値段は高いです。例えば神島ですと、 親子、夫婦と子供2人が本土に行って帰ってくるだけで、5,000円近くかかってしまい ます。1日4便しかありません。パッと思ったときに、すぐに行くことができないの が、離島の暮らしの特徴です。それから、先ほど言いましたように、荒天時には交通が 途絶します。全く行き来ができません。  それから、あと3つ、これはほかのへき地、いわゆる山間へき地でも同じようなこと ですが、周りを海に囲まれているので、それなりに生活が自己完結しているというか、 いろいろな施設が小さいながらも整っていて、小さなソサエティを形成しているとか、 家族、仕事の面が、狭い地域で重なり合っているので、人間関係が密であるとか、ほか の地域との交流が、本土に比べて少ないと思うので、独特の習慣とか文化が育ちやすい のではないかというふうに思っております。  離島での診療の特徴は、いくつかありますが、救急のことは先ほど述べました。医師 と患者が互いに逃れられない。街ですと、例えば患者さんが、医師が気に食わなけれ ば、違う医師のもとへ行くこともできます。けれども、離島では、お互いに逃れること ができません。いやな患者さんでも、いやな医師でも、かからなければいけない。  それから、フルタイム勤務というのは、勤務時間は少ないのですが、これも例えば、 夜、どこかにフラフラと出かけるというようなことはできないので、いつもその島の中 におります。つまり、24時間緊張を強いられる勤務であるということです。  それから、島の中が大きな家族であるということです。家族というのは、よい意味で も悪い意味でも、愛憎を含んだ上での大きな家族である。その中での診療であるという ことです。  最後に、「大変度」という、変わった言い方をしましたが、離島などでの大変な度合 いというのは、tに、いわゆる救急の搬送時間に人口を掛けたような形で表現できるの ではないか。救急搬送の時間がすごくかかって、人口の多い所は非常に大変で、人口が 多くても救急搬送時間が短ければ、大変な度合いは少ない。非常に簡単ですが、こうい う図式もできるのではないかということです。  それから離島の医療の改善のポイントとしては、当然のことながら、医療の質を上げ る、住民の方に安心を与える、医師の負担を軽くするというようなことがポイントでは ないかと思います。そのための方法としては、何度も述べておりますが、救急というの が、患者さん、住民の方に安心を与えるという意味、それから医師の負担を軽くすると いう意味、それから質を上げるという意味でも、すべてこれにかかってきております。 人口とか、救急搬送時間に応じた診療所の設備とか、救急搬送方法を改善したり、また 新しくつくってみたりとか、それから、その医療に携わる人、住民への救人・救急のト レーニングあたりが必要だと思います。  24時間、365日常駐、これは、島の人が安心を得るためのいちばん当たり前の話で、 いちばん実施できないことではありますが、これにできるだけ近づけられるような方 法、代診とか複数医師配置とか、そういうことを含めて、これは大きなポイントではな いかと思います。  それから、いつでも来てくれる代診、今日も私の代わりに代診の方に来ていただいて おりまして、安心して外へ出てこれます。離島の医師にとって、島から離れられない24 時間フルタイムから外れること、それから勉強できること、フルタイムから外れて、常 に休暇が堂々と取れるというようなことが、非常に大きなポイントではないかと思いま す。  質の問題としては、やはり島の方は本土側へのアクセスが容易にできないので、でき れば専門家の先生に来ていただいて、定期的な診療をしていただく。それから、自分の している診療も、一人でしていると独善的になるので、例えば、画像診断などにおい て、本土側に最近のITを用いて診断をしていただいて、それを返してもらって、例え ばダブルチェックをして、医療の質を上げていくといったようなことが必要ではないか と思います。簡単ですが、以上ご紹介させていただきました。 ○高久座長  奥野委員、どうもありがとうございました。最後になりますが、樋口委員からお願い いたします。 ○樋口委員  資料2をお開きください。1枚めくって、1頁をご覧ください。へき地医療の苦悩 は、すべて全国どこでも同じ状況だと思います。岩手県も、離島はないのですが、いわ ゆる山間へき地と申しまして、県北沿岸のほうは、冬になると雪の峠を越えなければい けないという気象条件も、へき地医療にはかかわっていると思います。  そういうことで、昭和25年に、「日本のチベット」と言われた岩手県に、「県下にあ まねく医療の均てんを」という相言葉、創業の精神の下に、現在27の県立病院がござい ます。岩手県は、ここに地図が描いてありますが、四国4県にほぼ匹敵する広さで、人 口10万単位の医師数が174人、四国4県は、徳島275人、愛媛231人等、4県合わせて、 人口10万対254人です。したがって、広さから見ると非常に少ない。それから、広さ面 積からいうと、関東の4都県、千葉・埼玉・東京・神奈川と、面積は同じなのですが、 医療密度というか、医師密度、人口密度をもじった医師密度は、東京の100分の1です。  そういう中で、どのように27の県立病院がネットワークを組んでいるかという図で、 27の県立病院が、下のほうの印が付いているセンター病院から、診療所、地域病院、地 域総合病院、地域基幹病院というふうに分かれて、お互いに連携を取り合って医療を確 保しております。ここ2、3年の間に、200床規模の病院の産婦人科が6カ所引き揚げ られて、これは、1人で産婦人科をやっていることが非常に危険であるということで、 もっと中核病院に複数集めるような格好になってしまいました。  2頁目をお開きください。そういう中で、私の病院が、地域に医師を派遣する立場と しての形をご説明したいと思います。ここに書いてあるように、私の病院は、いま常勤 の医師が100人、研修医が38人いるわけですが、その中で、右側の表のように、27すべ ての病院に、そこの病院に足りない専門科の診療として応援、あるいは当直の応援、あ るいは病気で休まれた方、あるいは学会出張などの方の穴埋めの応援等を含めて、平成 15年度は1,802回、1日約5人くらいです。現在は平成16年度は毎日6人の医師が、何 かの形で、ほかに応援に行っております。そして、遠隔医療、ITを使ったテレパソロ ジー、病理診断です。それからテレラジオロジー、これは画像診断の連携を、4つ、5 つの病院、合計9つの病院と持っております。  3頁目をご覧ください。3頁の棒グラフは、横軸は27の県立病院の名前ですが、棒グ ラフのほうは、ほかの病院に応援に行った数です。折れ線グラフのほうは、ほかの病院 から応援をいただいた病院です。患者数が減ったおかげで、全体としては医師の充足率 が上がっておりますが、このような形で、年間6,349回、27の県立病院が、お互いに応 援しているという格好です。  この利点と欠点を述べますと、応援するほうの病院は、医師が十分潤沢にいるわけで はなく、必ずその応援した診療科の医師がいなくなった分、診療機能が低下し、外来 の、あるいは手術の待ち時間等が低下してしまいます。また、残された医師がその分の 診療をするものですから、常に労働過重になっています。  経営的に申しますと、うちの医師たちは、大体1日、入院・外来合わせて40万円の診 療報酬を稼いでいるのですが、それがいませんから、毎日5人分、入るべき収入が入ら ない。そしてその5人分の給料は自分の病院から出しているということですから、どう しても経営上は赤字体質になってしまいます。  医師の移動時間が、ほかの病院に行くのに、いちばん遠い所で車で2時間半かかりま す。以前、移動中に交通事故で亡くなられた方もありました。そういうことで、今度は その応援をいただくほうの病院の問題ですが、応援をいただくことによって、専門医療 をある程度カバーできる。地域住民にとって喜ばれるわけです。それから、行った医師 が、40万ほどではないのですが、多少収益が入るものですから、その病院の収益がよく なる。それから、医療法上の定数確保に、その病院が、医療法上の医師の定数、60%を 何とか維持する。  問題は、そのような病院に、できれば1年交替くらいで行っていただくようにしてい るのですが、学校の先生と違って、学校の先生は学校がないと働けないわけですから、 どうしても3年交替くらいで行くわけですが、医師は学校と違って、どこでも働ける、 開業の自由があって、家族の都合、あるいは症例が不足するというようなこと、あるい は、地方の病院へ行くと、自分が専門医になるときの経験の施設基準がなっていないか らということで、辞められてしまうことがしばしばあります。開業されてしまうという 問題があります。  そういうことで、へき地医療の公的繰り入れというのが、国からあるのですが、私の 病院ですと、繰り入れが入っても年間数億円、収入がないという格好になっておりま す。また、同じ27の県立病院、ほかには脳外科とか心臓外科とかがないわけですが、そ ういう紹介患者も、いまの制度では同一開設者からの紹介は加算できないということ で、いま少しそういうところで紹介率が問題になっております。経営にも響いておりま す。  同じように、地域医療支援病院の加算にも、単なる紹介率と逆紹介率だけでは測れな い、つまり、私の病院から毎日5人ほど、5、6人がほかの病院に行っているというよ うなことが評価されないと、どうにもならない。このようにして、全国医師不足にあえ ぐ地域は、どこも同じ事情だと思います。したがって、WHOで言っているようなこ と、あるいは日本国憲法第25条で言っているような、「健康で文化的な最低限度」を守 るという意味で、この日本国が発展途上国ではない、そういうところを、こういうへき 地医療のカバーに力を注ぐべきだろうと考えております。  5頁をお開きください。岩手県の地域医療協議会で、「医師を育てる、知ってもら う、残ってもらう、住んでもらう」というアクションプランが作ってあります。6頁 は、ついこの間、地方の高校生向けに医者にならないかと講演会をやっています。  11頁は医師の密度です。全国と東京を比べますと、面積当たりの医師の数がこんなに 違う。私の県は100分の1ぐらいになっているということです。  25頁は、人口10万単位の医学部の入学定員数です。これも人口割りにしますと、徳島 のような入学定員数が非常に高い所と、全国あるいは岩手県等、このような差もありま す。  27頁は、全国の国・公立大学医学部の入学定員数です。関東地方は私立大学が多いわ けですが、国・公立はその割に少ないものですから、受験生が東北・北陸等に行ってい るので、東北・北陸等の医科大学は草刈場になっておりまして、卒業するといなくなっ てしまうという問題があります。  29頁をお開きください。上の表は東北地方の医学部の残留する割合ですが、東北大学 は24%、多い所でも福島医大の61%。下の表は、自分の所在地の出身者がどのぐらいい るかで、さらに少なくなっているわけです。  そのようなことで、30頁ですが、岩手県は55年前から医師確保対策の事業をやってお りまして、市町村の単独でやっていた奨学資金制度が、県と市町村が一緒になる。27県 立病院の医療局でやっているもの、自治医科大学等やっておりますが、医療局で平成4 年度末まで養成した346人中、義務を履行したのは237人で68%、義務履行後も定着して くださった方は55人、15%。義務期間しかあまり効果がないということになっておりま す。  48頁をお開きください。そのような中で、私どもの病院は臨床研修制度の中に地域医 療を2カ月取り、地方の中小病院に2カ月行ってもらっているのです。研修医は卒前教 育が専門医の教授に習ってくるのでまだ専門志向ですから、それが嫌だということで非 常に評判を悪くしておりますが、私の病院は使命としてこれをかたくなに守っておりま す。それでもよい人が来てくださいということで、定員が埋まらないこともあります。 しかし、いったん2カ月間地方の病院に行って、保健、医療、福祉、行政との関わりを 経験してきますと、急性期の病院は、いわゆる臓器別の専門医療は人生の一部分であっ て、人間は一生の間介護や老健などでずっと医療に関わっていることを覚えていき、目 が開きます。そのような中で、今度終わる2年生14人のうち2名が、地域医療を望みた いと言っております。  49頁をご覧ください。そこで、後期研修制度に力を入れています。後期研修は、完全 に地方公務員として身分を安定させます。  50頁ですが、コースを2つに分けました。総合診療医コースというのが、いま言った 地域医療に携わりたい者が2名出ました。専門医コースがやはり人気がありまして、す べての高度医療もやりますので、そこにも数名残ります。高度医療をやりながら、地域 を応援しながら、地域の医師が私たちの病院にローテーションすることによって、診療 能力を高めて残る人を多くしたいということです。  51頁の下の表ですが、このようにそれぞれの後期研修では、必ず地域医療に1年間に 3〜6カ月行くことになっており、これも専門医をやりたい人たちはこのために行かな いと言うのですが、いまのところ折れないでこれでもやってくれる人を待っています が、指導医が非常に負担になっている現実があります。  最後に、後ほどお回ししました医師の地域偏在、診療科医偏在の改善メモがありま す。これは、岩手県においても55年の医師確保の歴史があるのですが、全く改善されて いないということで、抜本的改革が必要だと、あえてこのようなドラスティックなメモ になってしまいました。  1番目は、医科大学の入学定員に地域枠を設置すること。2番目は、地域枠入学者の 特定診療科の選択を奨励すること、あるいは義務化。3番目は、大学講座に診療科定員 制を誘導すべきではなかろうか。つまり、歯学部は歯科しか診られない。医学部にも麻 酔医学部などがあってもいいのではないか。4番目は、究極的にはこうしなければ絶対 に直らないと思うのですが、全医科大学に国家予算が投入されている観点から、全医師 に臨床研修とは別に一定年数地域医療勤務を義務づけ、キャリアとして評価するシステ ムが必要ではないか。5番目は、新医師臨床研修制度における地域保健・医療研修の重 視とその推進病院への支援をしていただきたい。保健所を1週間ぐらい診てお茶を濁し ている病院もあると聞きます。そういう所に研修医が集まっているそうです。6番目、 後期研修における地域保健・医療の取組みをする病院に支援をしていただきたい。7番 目は、診療報酬上の地域加算枠を東京など都会や離島にのみつけるのではなく、へき地 にもつけていただきたい。8番目、地域支援病院の指定要件に、地域病院へ診療応援医 師を派遣している病院を評価する。9番目、紹介率算定要件に、同一開設者であっても 過疎地病院からの紹介を評価すること。10番目は、診療報酬上勤務医が開業へ加速させ ない方策をとること、ということを提案したいと思います。以上です。 ○高久座長  ありがとうございました。4人の委員の方々から、各々の立場からへき地医療につい てお話をいただきました。今日は、主にこの4人の方々のお話と、前回に事務局からへ き地保健・医療に関する検討すべき課題としていくつか挙げられています、持続可能で 住民が満足するへき地医療・離島医療の内容や、あるいはへき地医療や離島医療の推進 方策として、医師確保の方策、診療支援の充実などについて、自由なご意見を賜りたい と思います。どの委員に対してでも結構ですが、ご質問、ご意見、どなたかおありでし ょうか。  では、最初に吉岡委員にお伺いしたいのですが、隠岐病院、公立というのは市立です か。町立ですか。 ○吉岡(陽)委員  隠岐広域連合がやっています。 ○高久座長  隠岐は市ですか。 ○吉岡(陽)委員  いいえ、郡です。 ○高久座長  町立・・・。広域連合、市町村でつくった。 ○吉岡(陽)委員  そうです。 ○高久座長  隠岐は、島根県立中央病院から応援が来ていないのですか。交代で来ていると聞いた のですが。 ○吉岡(陽)委員  2人ですが、先生が来ておられます。1年交代ぐらいで、少ないそうです。すぐ代わ るそうですので。院長先生に、自分に権限がないから大変だと言っておられました。何 年かいてほしいのですが、すぐ代わるからその補充が大変ということです。 ○吉田委員  私は、旭川医大で眼科の教授をやっております。いま、何人かの委員から身につまさ れる話をお聞きしたのですが、私はいろいろな工夫をしておりまして、少しだけ明るい 話題を提供したいと思います。  ご存じのとおり、北海道は九州と四国を合わせたぐらいの面積で、空港が13カ所もあ ります。医師数は、どなたかからご紹介いただいたように全国の平均を少し上回ったぐ らいです。しかし、偏在化がいま問題になっています。私は13年間眼科の教授をしてお ります。いま、吉岡委員から非常に身につまされる話を聞いたのですが、もちろん北海 道にもいろいろな島がありまして、例えばいちばん北の稚内の横には、利尻島と礼文島 という所があります。利尻島は人口が6,000人で、礼文島は2,000〜3,000になってしま うのですが、一種の過疎地帯です。  しかし、北海道では高橋はるみさんが新しい知事になりまして、真っ先に行ったのが 離島の医療対策になりました。当時、自民党の武部幹事長と高橋さんが、離島の医師対 策としてまず最初にやってほしいことは、専門医の確保だということになりました。利 尻島には、眼科診療が全くありませんでした。そこで私のところに相談に来まして、ど うしたらいいかということで、月1回旭川医大、あるいは稚内の市立病院から眼科医を 派遣しているのですが、眼科といってもいろいろな疾患があって、月1回の診療ではま かなえません。そこで、私たちは文部科学省の医学教育課や総務省などいろいろな所か らご援助いただいて、遠隔医療を13年間もやっています。旧国立大学には、唯一遠隔医 療センターがありまして、私はセンター長をやっているのですが、現在36の病院とセン ターがつながっています。大学に17の診療科がありますが、15の診療科で遠隔医療をや っています。  そこで何を考えたかというと、月1回利尻島に眼科医を派遣することしかできないけ れど、近隣の稚内市立病院から医師を派遣するのですが、当然行った医師には能力の限 界があります。この患者さんは手術をしたらいいのか、手術するとしても、利尻島でも 患者さんは場所を選びまして、もちろん利尻島ではできませんので、稚内や旭川や札幌 など、いろいろな選択肢があるわけです。それを瞬時に遠隔医療を使ってやる。つま り、利尻島から遠隔医療で稚内につながっていますし、旭川医大にもつながっています し、札幌の病院にもつながっていますし、函館の病院にもつながっています。そこで手 術が必要となった場合に、利尻島の診察医がその患者さんと家族に話をして、札幌に行 くのか旭川に行くのか瞬時に決めるシステムです。これをやって、利尻島の町長さんが 非常に喜んでいるのですが、たった月1回しか行かない診療で島の眼科診療がまかなわ れているのです。過去1年間で、手術した方は20名にも上ります。  ある医師が、稚内から利尻島に行って患者さんを診察する。もちろん、その医師は手 術していませんから、その患者のことはわからない。そのときに、利尻島から旭川医大 に同時に遠隔医療で画像をつないで、手術をした私が患者さんを診察する。実は、その 患者さんは札幌での手術を望みましたので、私は札幌で手術をしたわけです。そのよう な形で、私は前回欠席しましたが、前回ITの利活用がへき地のポイントとして挙げら れましたし、山間地域では研修医が若くて技術が磨けなくなってしまうことが話題にな りました。しかし、この遠隔医療システムを使うことによって、少なくとも旭川医大の 周りでは、北海道は数値的には医師数が少ないし偏在していますが、36の病院では非常 にアクティブに医療が行われている。私の専門は眼科ですから、内科や今日お話になっ た救急には少し疎いのですが、少なくとも専門の眼科、耳鼻科に至っては非常にアクテ ィブにやっていることを、いつかの機会にこの会でもご紹介したいと思います。  そういったことが、いま国のe−Japan構想の一環ともなっているのですが、文 部科学省では遠隔医療センターの機器の更新の予算もつけていただきました。これをや ると、救急医療なども、最近は救急車に乗った段階で患者さんの状況がセンターの病院 に情報提供できますし、島に至っても、実は今年計画しているのですが、島で患者さん が発生したときには、まず旭川医大の救急部に情報を飛ばしてもらう。そして、その患 者さんが稚内に行くべきか札幌に行くべきか旭川に来るべきかを指示するシステムを構 築しようと考えています。  まとめますと、私は13年も教授を務めていて、医師数の少ない広い北海道にいて、い まの結論は、島あるいはへき地には医師を派遣すると考えると無理です。ですから、い い医療を提供することにいま考えを変えています。いい医療とは、医師とシステムで す。そのシステムの中に、遠隔医療システムが確固たる位置を築きつつあるのではない かと思っています。  最後に、利尻島と旭川医大と札幌と函館とを結ぶ遠隔医療のシステムですが、これも 北海道や稚内市や利尻町に行っても予算がつきませんでした。この予算を支えてくれた のは、ほかならぬ厚生労働省の科学技術研究費だったのです。実は3,000万要求してそ れは認められず、1,000万だったのですが、500万で機械を6カ月間リースして、あとの 500万で遠隔医療は果たしてコストエフェクティブかどうかを、○○総研という所に委 託して、費用対効果を出して皆さんにご報告しようと思います。したがって、医師がい ない、いないと嘆く気持はわかりますが、もう少し行政や大学、医局なども含めていろ いろなことを考えていかなければならないのではないかというのが、私のいまの経験と 提言です。 ○高久座長  ありがとうございました。先ほど、「Drコトー応援団ネットワーク」という話があ りましたが、吉新委員、Drコトーに関係しておられないですか。 ○吉新委員  別に関係はしていませんが、私のところでもへき地・離島応援の研修医を教育してい まして、離島に行きたい方は30数名います。現在、沖縄の久米島に2人出しています が、しばらくそこでやってみたいという話が出まして、南方の島は皆喜んで行くようで す。  先ほどの吉田委員のお話ですが、去年私どもの協会から4カ月間利尻島に出しまし て、やはりベースになる医者がいないといけないと思うのです。遠隔でいろいろな補助 はできると思うのですが、そこにメインのドクターがいて、ある程度ドクターがいない と、一時的な疾患に対しては対応できると思いますが、中長期のバックグラウンドなど を把握して初めて医療はできると思うのです。モニター越しにいろいろな問題は解決す ると思いますが、へき地・離島の問題では、いきなりの救急や高度医療をどうするの か、産婦人科はどうするのかという話になりますが、それはまた別の問題で、ベースに 基本的な医療をどうするかを議論すべきではないかと思います。  我々は、去年名寄にも6カ月ドクターを出したり、現在も厚岸町でドクターが2人足 りないという話がありまして、基本的にはずっと行ってもらって、地域の住民側に立っ てバックグラウンドをちゃんと把握してやるドクターをどのように確保するかが、委員 会の基本ではないかなと思っています。 ○吉田委員  おっしゃるとおりだと思いますが、それは診療所によって違うと思います。内科や外 科あるいはその他救急であれば、やはりベースとなる医者が必要なのですが、でもいま 委員がおっしゃったように名寄なども医師数が足りません。足りないプラスアルファの ところを、何らかの工夫をしなければならないというのが遠隔医療の考えです。 ○前野委員  読売新聞の前野です。地域医療を実践している病院を見てまいりました。先週、北海 道の瀬棚町という所に行きました。ご存じの方もいらっしゃると思います。東京から飛 行機を使って、猛吹雪の中、函館経由で9時間かかりました。4日間過ごしてきた瀬棚 町を少しご説明したいと思います。  瀬棚町は、海岸沿いにある奥尻島の入口の町で、人口2,700人程度ですが、平成元年 の時点では老人医療費が市町村の中で全国一でした。町の医療はどうあるべきかと全町 民を対象にアンケート調査を行い、平成12年に町立診療所を作りました。16の有床の診 療所で自治医大の2人の先生を中心にスタッフが23名、さらに保健師が5名という形で やっております。そこでは、福祉と保健を一体にした町おこしをしようという町長と院 長の考え方でやっておりました。医療と保健にドクターはもちろん必要なのですが、予 防医療を柱にすえて、医師だけに頼らないチーム医療をやっている。代表的な施策で は、日本で埋もれていた肺炎球菌ワクチンを初めて公費補助した。この瀬棚町の試みが 全国21市町村に広がっています。そこでは、単なる都市部からの医者確保、派遣のレベ ルではなく、自治医大の先生たちが町民の中に入って地域医療を根付かせ、老人医療費 が平成元年には全国第1位だったのが、いまは818位まで落ちて一人頭半額になってい る。とにかく予防の形で、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを推進し、その 他ピロリの除菌まで始めていました。とにかく病気を見つけて治療していくのではな く、むしろ健康を作っていくという新しい考え方で、町の活性化にも役立っている。実 際にそこの試みを見た自治医大の若き医師が是非とも学びたいと4月に赴任するようで す。全国からの見学者や研修生が絶えません。新たな試み、むしろその地域地域に合っ た形での活性化、熱心な医師プラス首長さんの熱意が合体することによって、いままで と違ったプログラムができるのではないかと私は感じておりました。先週の土曜日に帰 ってきたばかりなのでまだ興奮気味なのですが、現地の先生にをお招きしてお話してい ただければと思います。 ○高久座長  ありがとうございました。私は自治医大に関係しているものですから、結構いろいろ な所に行っていますが、前野委員がおっしゃったとおりで、そこの自治体の長とそこに 腰を下ろして医療に従事するドクターと、両方の存在が必要です。実際に自治体の長に 理解があり医師との協力がうまくいっている地域が、うまくいっている例を、私もいく つか見てまいりました。前野委員がご覧になったのもそういう例だと思います。自治体 の長がいくら旗を振っても、それに一生懸命協力する医療関係者がいないと地域医療は うまくいきませんし、逆でも成り立たない。へき地ではそこに腰を下ろす医師が多くな いという問題がどこでもあります。奥野委員はずっと島の医療をやってこられているわ けですが、1つお伺いしたいのは、今日ご出席のときに代診を頼んでこられたというこ とですね。代診のルートは個人的に探されるのですか。それとも、島のほうで面倒を見 たのですか。 ○奥野委員  実は、代診に関しては三重県にへき地医療支援機構ができまして、専任担当官がい て、いまはその専任担当官を中心に市が依頼すれば来ていただける仕組みになっており ます。協力病院についても、いろいろな病院になっていただいたのですが、形だけかな と思ったら、例えば島の診療所に代診を頼むと、意外と大きな病院の先生方も手を挙げ てくださって、思った以上に協力をしていただける。いまのところ、県内のいくつかの 診療所から代診派遣依頼が、去年で50〜60ぐらいあり、今年ももっと多いのですが、ほ とんど消化できている状態です。県によって支援機構の仕組みの取組みはでこぼこある と思うのですが、しっかりしていただくと非常に効果を発揮すると思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。へき地医療支援機構は、前の第9次のときに本日ご 出席の吉新委員などからいろいろ知恵を出していただいて、各県に支援機構を介してへ き地の医療を応援するシステムを作ったわけですが、いまの奥野委員のお話を伺うと、 三重県ではうまく働いている様ですね。この機構の内容が県によってかなり相違があり まして、今回の検討会で各県でへき地医療支援機構がどの程度うまく運営されているの かを調査し、更に、モデルケースを紹介していただければ、へき地医療の支援の1つの 方策になるのではないか。第10次の検討会では、支援機構の現状の調査と運営の方向性 を示すのは重要な仕事ではないかと考えています。  ほかに、どなたかご質問、ご意見おありでしょうか。 ○奥野委員  先ほど、医師が長いこといるのがいいかというお話が少しありましたので、自分の経 験や卒業生の関係からお話してみたいと思います。私は、25年前に小さな島に行きまし て、今回3回目の赴任なのです。最初は2年、その次は4年、いま7年目、もう通算し て十何年になりますが、長いこといることも必ずしもよくはないとも思います。それは そこの人口規模にもよるのです。例えば、たかだか500人の所に25年、通算して十何年い ますと、もちろん非常にいろいろなことがわかってくるわけですが、ある人から「あな たは島の医療の神様だ」と言われますが、それでも人は好き嫌いが絶対あるわけで、25 年いたら3割ぐらいがたぶん嫌いな人で、3割が好きな人で、間がどちらか。その間の どちらかを引っ張るのが仕事だと思うのですが、私を嫌いな3割の方は、先ほど言いま したように、小さな地域へ行けば行くほどお互い逃れられないわけです。ですから、私 にかかるしかないわけです。私が嫌いでもかかるしかない。そういうつらい状況を提供 してしまうことも十分考えていかなければいけないということ。  へき地医療で、特に1人でやっておりますと唯我独尊というか自分勝手になりまし て、医者としての診方も誰のチェックも受けずに自分だけでやっていくので、簡単に言 えばろくな医者にならない。特に若いときからずっと長いこといるのは、あまりよくな い。ですが、適度に交代していくとか、あるいはまたやってくるとか、例えば医者のラ イフスタイルでも卒業生でよく聞くのは、若いときに行ってすごく思い出があって、い まは都会で云々だけれど、もう少し年を取って子供の手が離れたら勤務したいな、など ということがあるわけです。そうしますと、そういうことを組み合わせていくことも大 事かなと思います。住民の方にも、皆さん本当に長いこといてもらうのがいいのですか と、もう一回ちゃんと問い直していただきたい。  人口規模というお話をしましたが、もう少し大きな規模になりますと、住民と医師は ある程度一定の距離を保てるわけです。そうすると、少し長いこといたとしても、例え ば20年いたとしても住民との関係は比較的うまく保てるのかもしれないけれど、小さい 所にいればいるほど、長くいればお互いいろいろなことが見えてきたりして、先ほど言 いました愛憎半ばすることもあるということも知っていただきたいと思います。 ○高久座長  それはある程度大きな施設、例えば病院ですと複数の医師がいますから、患者も選択 できますね。 ○樋口委員  いまのお話ですが、国民も昔は顔見知りで、長くいるのがいいということですが、い ま国民も意識を変えなければならないと思うのです。とにかく、なじみの医者よりも病 気をしっかり治して欲しいということですから、極端に言えば1週間交代でもいいのだ ろうと思います。ですから、それを国民に啓蒙することが1つ。  地域になかなか長居しないことの1つに、地域に行くと特に若い発展途上の30代ぐら いまでの医者は、やはり専門のほうが遅れるのではないかとか、症例が少なくて腕が鈍 るなどでなかなか大変なのです。そういうわけで、いま公的病院のあり方を問題にされ まして、特に自治体病院ですが、過疎地の不採算地区には欲しくて都会の病院はいらな いのではないかということですが、それをやってしまいますと、特に私の県などはそち らに行った医師が戻ってくるわけです。そして高度医療をまた学んでやり直しして、ま た行く格好で、それがなければ地域の病院だけが集まった自治体病院は意味がなくなる し、医者が行かなくなると思うのです。大病院は地域を支援する、研修ができる、高度 医療もできる。へき地医療を考える場合、へき地の病院だけを見るのではなく、大病院 と一緒に見ていかないと守れないと考えております。 ○高久座長  おっしゃるとおりで、私も長いだけでは駄目だと思います。若い年代の人は自分の専 門の勉強も当然考えなければなりませんので、そこは難しいところがたくさんありま す。ただ、1年交代だとどうしても地元の方には不満が残るでしょうね。変な医師だと 早く帰ってもらいたいが、折角いい医師が来たのにすぐ交代となりますと不満が出る。 その辺りは難しいところだと思います。  今日は少し早めに終わらせていただきたいと思いますので、これで議論を終わりま す。発表された4人の委員の方々、どうもありがとうございました。次回について、事 務局から何か連絡がありますか。 ○宮本指導課長補佐  次回、第3回の予定は、前回お知らせしましたように3月31日(木)の午後2時から 4時。会場は、厚生労働省18階専用第22会議室で予定しております。またご案内を差し 上げたいと思います。次回の内容ですが、本日に引続き何名かの先生方からご説明いた だきたいと考えております。ご相談させていただきたいと思いますし、我こそはという ご希望がございましたら座長と相談いたしますので、私のほうにご連絡いただきたいと 思います。 ○高久座長  それでは、本日はどうもありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省医政局指導課  宮本、川畑  03−5253−1111 (内線)2554又は2550