02/03/27 第1回少子化社会を考える懇談会 <議事録>         第1回少子化社会を考える懇談会 <議事録> 1.日時  平成14年3月27日(水) 17:00〜19:00 2.場所  厚生労働省省議室(中央合同庁舎第5号館9階) 3.出席者  <メンバー>   木村尚三郎(座長)、山崎泰彦(座長代理)、青木紀久代、安達知子、大越将良、   大日向雅美、奥山千鶴子、柏女霊峰、熊坂義裕、玄田有史、小西秀樹、残間里江子   、白石克子、津谷典子、松本秀作、水戸川真由美、山田昌弘(敬称略)  <厚生労働省>   坂口厚生労働大臣、宮路厚生労働副大臣、田村厚生労働大臣政務官、   渡邊厚生労働審議官、石本政策統括官(社会保障担当)、坂本政策統括官(労働担   当)、岩田雇用均等・児童家庭局長、辻年金局長、河社会保障担当参事官、   西村政策企画官 4.議事内容  石本統括官  定刻になりましたが、大臣の到着が急な用務のため遅れております。本日は座長をは じめお忙しい方々にお集まりいただいておりますので、会議の正式な開会は大臣到着後 としまして、とりあえずメンバー紹介と議事次第の4番目以降の資料説明について、順 次、行ってまいりたいと存じます。  なお、大臣からのお話ですと、5時半にはお入りになると聞いております。  申し遅れましたが、正式な開会までの進行は、私、社会保障担当の政策統括官の石本 が行わせていただきます。よろしくお願いいたします。  それでは、まず、メンバー紹介の御紹介をさせていただきます。  テーブル正面から左回りに、  座長をお願いしております静岡文化芸術大学長の木村尚三郎さん  上智大学文学部教授の山崎泰彦さん  お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授の青木紀久代さん  東京女子医科大学助教授の安達知子さん  「男も女も育児時間を!連絡会」世話人の大越将良さん  恵泉女学園大学教授の大日向雅美さん  NPO法人「びーのびーの」代表の奥山千鶴子さん  淑徳大学社会学部教授の柏女霊峰さん  岩手県宮古市長の熊坂義裕さん  学習院大学経済学部教授の玄田有史さん  学習院大学経済学部教授の小西秀樹さん  株式会社キャンディッド・コミュニケーションズ代表取締役の残間里江子さん  伊勢丹労働組合執行委員の白石克子さん  慶応義塾大学経済学部教授の津谷典子さん  日本青年会議所会頭の松本秀作さんは遅れておられます。  いいお産の日実行委員会事務局長の水戸川真由美さん  東京学芸大学教育学部助教授の山田昌弘さん  その他、本日欠席されておりますメンバーの方も御紹介いたします。  明治学院大学経済学部助教授の黒沢昌子さん  エッセイストの酒井順子さん  東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん  コラムニスト・「OL委員会」主宰の清水ちなみさん  以上でございます。  続いて、厚生労働省側の出席者についても簡単に御紹介いたします。正面から右回り に、  田村厚生労働大臣政務官  渡邊厚生労働大臣審議官  坂本政策統括官  岩田雇用均等・児童家庭局長  辻年金局長  河社会保障担当参事官  西村政策企画官  なお、宮路厚生労働副大臣は、閣僚会議への代理出席のために30分ほど遅れて到着す る予定です。  以上よろしくお願いいたします。  引き続きまして、懇談会の開催趣旨以降の資料について、社会保障担当参事官の河か ら御説明させていただきます。  河参事官  ただいま御紹介いただきました河でございます。よろしくお願いいたします。資料に ついて御説明させていただきます。資料1、資料2、資料2と、関連資料をたくさんお 配りしております。限られた時間ですので、早口になりましたらお許しいただきたいと 思います。  資料1「少子化社会を考える懇談会」の開催について、これが開催にあたっての趣旨 ということにさせていただきたいと思いますので、この2枚をご説明する中で、適宜、 関係の資料を使わせていただきたいと思います。  資料2は、ただいま御紹介いただきました懇談会のメンバーの一覧です。平均年齢45 歳と書いてありまして、私は平均年齢よりだいぶ上ですが、お許しいただきたいと思い ます。  それでは、資料1に沿って御説明させていただきます。  まず1.趣旨のところです。  1月30日に、平成10年1月推計という日本の将来推計人口が私どもの関係機関であり ます国立社会保障・人口問題研究所でとりまとめられました。今回の人口推計において は、これまで言われていた晩婚化に加え、夫婦の出生力そのものの低下という最近の傾 向が見られたことから、平成9年の前回推計に比べて少子化が一層進展するという結果 になりました。  少子化問題は、我が国の経済社会に大きな影響を及ぼす可能性があるとともに、国民 一人一人の生活観や社会の在り方に大きく関わってくることから、その要因や少子化社 会への対応について、経済、社会保障、雇用、教育など幅広い視野から検討するため、 厚生労働大臣が主宰する有識者による懇談会を開催することとなりました。  お忙しいところを積極的にご参画いただきまして心より厚く御礼申し上げます。これ から1年ほどのおつきあいをさせていただきますが、何とぞよろしくお願いします。事 務局に御遠慮なく御指示あるいは資料作成等を命じていただければありがたいと思いま す。  いま申し上げました1月の推計について若干御説明させていただきます。関連資料の 最初に3つの白い冊子があります。「日本の将来推計人口」という冊子が2つあります が、「結果の概要」というほうに細かい数字が入っています。3つ目が「平成14年1月 全国人口推計の考え方」ですが、これをご覧いただきたいと思います。  人口推計はどういう方法でやるのかというと、コンピュータで複雑な数式を計算する んですが、考え方は非常にシンプルでして、2ページの図表3「コーホート要因による 人口推計の手順」を見ていただきますと、左上の斜線で囲まれている「将来の女子年齢 別出生率」、これ簡単にいえば赤ちゃんがどれくらい生まれるかというのを推計します 。右上の「国際純移動率」は、外国との出入りを推計します。右下の「男女・年齢別生 残率」は、どのくらいの方々が1年に亡くなるか、あるいは生きておられるか。生まれ ることと死ぬことと外国との移動、この3つあるいは4つのことを前提にして50年先ま でを推計するというのが将来人口推計の方法です。  したがって、純粋に赤ちゃんが何人生まれたか、外国との間でどういう移動が起こっ ているか、どのくらいの方が亡くなられているかという現実足元の数字を将来に伸ばす というものです。  4ページの図表6をご覧いただきたいと思います。推計について今回どういうことを 行ったかというと、いま申しました2つの要素、国際人口移動、生存率については基本 的には前の推計をもとに、いくつか微修正をしました。一番上の出生率(長期仮定)を どうするかというのは、今回、人口推計にあたって社会保障審議会人口部会でご議論い ただく過程でかなり丁寧なご議論をしていただきました。  将来の出生率をどう考えたかというと、5ページの上の表ですが、我が国の場合、生 涯未婚の出生児数は全体の出生児の1%強ということですので、生涯未婚というのを一 つの推計軸にしています。  夫婦完結出生児数を見ますと、平成9年の推計では晩婚化が進行し、平均初婚年齢の 上昇に伴い夫婦完結出生児数は以前より減少した。それ以外に出生力の低下要因は見当 たらないということでした。今回、1960年代に生まれた女性では、晩婚化以外の要因で 子どもの数が減っているという顕著な低下がみられたので、ここを新たに今度は人口推 計に入れたということです。前回推計の数字を見直すだけではなくて、新たな考えを入 れたというのがここの部分です。  下の表では、それが具体的な数値になっていまして、右下の結婚出生力低下係数とい うのがK=0.911 とありますが、ここの部分が、より割引かれて出生児数が推計されて いまして、前回の推計よりも晩婚化による低下に加えて0.911 を掛けたというのが今回 の人口推計の特色です。一言で言えば、晩婚化要因以外に結婚してからの子どもの数が 少し減っているのではないか、これが今回の人口推計の新たなポイントです。 「結果の概要」の2ページの(1) 出生率の仮定の表を見ていただきますと、中位の仮 定のところに1950年生まれの女性は結婚年齢が平均24.4歳で、結婚すると2.14人ぐらい 出生して、生涯未婚率は4.9 %だったのが、1980年代生まれでは初婚年齢が27.8歳、夫 婦完結出生児数が1.72人、生涯未婚率が16.8%となることが見込まれ、その結果、合計 特殊出生率が2050年で1.39と推計されています。前回推計では2050年の合計特殊出生率 は1.61だったのが1.39になった。ここの部分が将来の出生児数のもとでして、昭和22年 には我が国では268 万人の赤ちゃんが生まれてたわけですが、2001年では119 万人、こ の推計によれば2050年では1年に生まれる赤ちゃんの数は667,000 人という数字になっ ています。  (2) 平均寿命の仮定というのは、それぞれ寿命が延びるということで、先ほどの生存 率のところですが、その結果、2050年の平均寿命は男子が80.95 年、女子が89.22 年と なっています。  1ページの表ですが、今の赤ちゃんの数、死亡率等々を計算すると、平成12年の中位 推計では、平成12年の人口が1億2,693 万人だったが、2050年では1億59万人になると 推計されています。前回の推計では1億50万人ですから総人口はほとんど変わらない。2 050年の総人口は前回推計とほとんど同じですが、寿命が延びて赤ちゃんの数が減ると いうことですから、65歳以上人口割合が今回の中位推計では35.7、平成9年では32.3と いうことで、前の高齢化率より伸びるという推計が行われています。以上、人口推計に ついて御説明させていただきました。  資料1に戻ります。このような人口推計が出されたことに伴い、いくつかの議論が起 こっておりまして、これらについて有識者のお考えをぜひお聞きしたいということで、 大臣のもとにこの会を設置させていただいたわけでございまう。  2.検討内容ですが、次の3つを考えております。  1つは少子化の要因の分析です。直接的な要因としては、いま申し上げた晩婚化、夫 婦の出生児数の減少ということですが、社会経済状況や若い世代の価値観の変化も踏ま え、皆様方のお知恵をお借りして少子化の要因を分析したい。何年か前に要因分析をい くつかやっておりますが、改めて考えてみたいということです。  2番目が少子化の影響の分析です。少子化が将来の我が国の社会経済に与える影響を 分析し、対応の在り方の検討に資するため、約20年後の社会の姿を描きたいということ です。委員の方々が自らの問題としても、これからの将来を考えるにあたっても20年ぐ らいのことを考えてみたいということです。経済的側面だけでなく、幅広く社会の姿を とらえて考えてみたい。明るい面もあるかもしれませんし暗い面もあるかもしれません が、そういうものを考えてみたいということです。  石本統括官  日本青年会議所会頭の松本秀作さんがお見えになりましたので、御紹介いたします。  河参事官  3番目は少子化社会への対応の総合的な在り方の検討です。  ここで分厚い資料に目を転じていただきたいと思います。これらの資料を全部御説明 する時間はございません。お持ち帰りいただいてお読みいただければと思いますが、平 成6年から数年間、これらについていくつかの議論が行われておりますので、これらの 議論があることを御認識いただければということです。  平成6年12月、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」というのが 出されました。これはエンゼルプランと呼ばれているものです。平成5年の我が国の出 生数は118 万人であり、昨年と同じくらいですが、昭和22年の268 万人の半分以下であ るというところから始まりまして、少子化の原因、少子化の背景となる要因等々が当時 の知識と経験の中で一生懸命考えられています。  その次にあります「当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方」というの はエンゼルプランと同時に作られた保育を中心としたプランニングです。  3つ目に、旧厚生省にありました人口問題審議会で「少子化に関する基本的考え方に ついて」というのが平成9年10月にまとめられています。かなり分厚いものですので目 次だけ見ていただきますと、少子化の影響として、経済面の影響、社会面の影響という 項目がありますし、少子化の要因とその背景として、少子化の直接的な要因はなんだろ うか、少子化の要因の背景はなんだろうか、影響はどうなってるんだろうかなど、今か ら4年前ですが、かなり充実した議論が人口問題審議会で行われています。目次だけの 御紹介でお許しいただきたいと思います。  平成10年、総理官邸に設けられました「少子化への対応を考える有識者会議」という のがありまして、ここで「夢ある家庭づくりや子育てができる社会を築くために」とい う提言が行われました。  1ページの下ですが、「常に忘れてはならない基本的な留意点を3点記す」と書かれ ていて、次の3点をあげています。  1点目は、結婚や出産は当事者の自由な選択に委ねられるものであり、社会が個人に 対せ押し付けてはいけない。  2点目は、少子化が進めば、労働力人口の減少と高齢者比率の上昇や市場規模の縮小 などを通じ、経済成長へのマイナス効果や地域社会の活力低下が懸念されるなど、将来 の国民に深刻な影響を及ぼす。安易な楽観論はふさわしくない。  3点目は、出生率上昇のためには女性が家庭に戻れば良いとするのは非現実的。男女 共同参画社会の理念に反するとともに、労働力人口が減少に転じる見通しの中で、女性 の就労機会を制限することは不適切・不合理である。  このような留意点3項目をあげたあとで、いくつかの考え方、施策が書かれています 。4ページにありますように、内閣総理大臣のもと、「国民会議」を設け、この会議に おいて国民的な広がりのある取組みをしていくこと。また、内閣に閣僚レベルの取組み 体制を整備すべきであるという提言がなされていまして、現在、国民会議、閣僚レベル の取組みが行われているところです。  「国民的な広がりのある取組みの推進について」というのが平成12年4月25日、各界 を代表する方々が入られた「少子化への対応を推進する国民会議」から出されました。 ここでは、家庭を持つことや希望する数の子どもを産み育てていくことを難しくするよ うな要因を除去していきたい。あるいは環境整備が必要であるという提言がなされてい ます。  昨年から今年にかけて文部科学省でなされた「仕事と子育ての両立支援策の方針につ いて」、「少子化と教育について」というものが配られています。  最後に、この1月に閣議決定されました「構造改革と経済財政の中期展望」というも のをお配りさせていただいております。  以上、これまでもいくつかの議論が行われたわけですが、先ほど申し上げたいくつか の人口推計においても新しい要因が発見されていますので、改めて足元から考える機会 をつくらせていただきたいということで、本懇談会を設けさせていただいたわけです。  再び資料1に戻りまして、2ページの3.検討スケジュールについて申し上げます。  1年ぐらいの時間をいただきまして、3月に第1回目というのは本日の会合です。そ の後、1〜2カ月に1回程度開催させていただきまして、秋口ごろに中間的なとりまと めをお願いしたらどうだろうかと考えております。  懇談会での検討を円滑に行うため、省内に、事務次官を主査とする事務局体制等を設 けさせていただいております。  以上、私からの資料の説明とさせていただきます。  石本統括官  ありがとうございました。  坂口厚生労働大臣が到着いたしましたので、これからの進行は木村座長にお願いした いと存じます。よろしくお願いいたします。  木村座長  ただいまから、第1回の「少子化社会を考える懇談会」を開催いたします。お忙しい 中、御参集いただき誠にありがとうございます。  はじめに、開会に当たりまして、この懇談会の主宰者であります坂口厚生労働大臣か ら御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  坂口大臣  木村座長をはじめ諸先生方には、御多忙にもかかわらず、本懇談会への参加を快くお 引き受けいただきまして、心より感謝申し上げます。  本年1月に公表された新しい人口推計では、少子化が一層進むという結果になりまし た。急速な少子化の進展は、労働力人口の減少、社会保障財政への影響、家庭や地域に おける子どもの育成環境の変化など、将来の我が国の経済社会に大きな影響を及ぼしま す。また、少子化問題は、国民一人一人の生活観や社会の在り方にも大きく関わってま いります。  こうしたことから、改めて、少子化社会について有識者の方々に幅広い視野から御検 討いただく必要があると考え、本懇談会を開催させていただいたところであります。  特に、新しい人口推計では、1960年代生まれ以降の方々について、これまでの晩婚化 の傾向に加え、夫婦の出生力そのものの低下という新たな傾向がみられたことから、本 懇談会のメンバーには、30歳代、40歳代の方々に大勢入っていただいたところであり、 若い世代の価値観の変化というところも是非議論していただきたいと思っております。  これまで政府においては、総理大臣主宰の「少子化問題への対応を考える有識者会議 」や「少子化対策推進関係閣僚会議」、「少子化への対応を考える国民会議」などにお いて、議論や提言を行ってまいりましたが、世の中はさらに少子化が進んでおり、もう 少し若者の意識や文化に対応した方策の追加あるいは既存の施策の見直しが急務になっ ていると思えてなりません。これまでの様々な議論を踏まえながら、皆様方の御意見を 十分いただいて私の頭を整理してみたいと考えております。  今後1年程度と長いお付き合いになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。  木村座長  ありがとうございました。  大臣には、この後、閉会まで議論に参加いただけると聞いております。よろしくお願 いいたします。  私からも一言御挨拶を申し上げます。今お話がありましたように、少子化については 繰り返し研究会、懇談会その他がこれまで重ねられてきたわけですが、今回の将来推計 人口ではますます子どもの数が減ってきたということですのて、それについて忌憚のな い御意見を頂戴したいと思っております。  一つの方向にまとめるということではなくて、いろいろな考え方があるはずです。そ れでなくても不景気ですし、1億人以上も人口がある中で、これから子どもをどんどん 産んでどうするのという意見もあるでしょうし、逆に、世の中、じじばばばかりで子ど もが少ない、そうすると子ども自身がかわいそうじゃないの、という意見もあるでしょ う。なぜ私が指名されたのかわかりませんが、こういう者ばかりだと世の中、うっとう しい。そういう意味では子どもを産んだほうがいいんじゃないかということもございま す。  ただ一つ、戦後の日本は変わったなと思うのは、昔は子どもを持つことは喜びだった んですが、戦後は時間的な負担とか経済的負担とか負担ととらえる考え方があって、そ の上に乗っかって政策もこれまで展開されてきたのではないか。諸外国は必ずしもそう でないように思います。つい先日、「ル・モンド」に出ておりましたが、フランスは特 殊合計出生率が1.91で、これが2.1 までいったらフランスの社会は健全だという解説が 書いてありました。  日本はどうしてこんなに下がってしまったのか。いい悪いは別としまして、皆様方の 率直な御意見を頂戴したいと思っております。第1回ですので、全員の方からお考えを 頂戴したいと思いますので、心の御準備をよろしくお願いいたします。年齢順というと 差し障りがありますので、アイウエオ順がよろしいかと思います。単純に割り振ります と4分ぐらいになりますが、ここだけは言いたいということを一言ズバッとおっしゃっ ていただければ幸いでございます。よろしくお願い申し上げます。  座長が出席できない場合、職務を代理していただく座長代理として、あらかじめ山崎 さんを指名しておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、ただいまの大臣の御挨拶あるいは先程の事務局からの御説明を受けて、メ ンバーの皆様から、少子化社会について、自由に御意見をいただきたいと思います。  青木委員から順番にお願いいたします。  青木委員  はじめまして、青木でございます。この会はメンバーの年齢が大事ということで、平 均年齢が45歳と書かれております。ふだん私は大学で平均年齢20代の中で暮らしており ますので、自分が若いという意識がなくなっていたのですが、今日お話を伺っているう ちに、なぜか背筋が伸びてきたような気がしております。  私は1960年代生まれですので、座長がじじばばとおっしゃいましたが、その方々に育 てていただいた世代でございます。私どもは十分に親に愛されて育った世代だと思って おります。もうひと昔前のお母さん、お父さん方は生きることに一生懸命で、子育てを するいとまがなかった時代だったのだと思いますが、私たちは一生懸命子育てをしても らった世代なのです。自由に生きていい、やりたいことをやっていいというふうに夢を 保障されて育ってきて、いよいよ自分たちが親になる番になって、自分の親と同じよう にはできないと思っている世代ではないかと思っています。  これからの世代の子ども観というのは、親に愛される子どもプラス地域の中で愛され る子どもというか、子どもを地域の中で豊かに育てるという発想の中で子育てを考えて いきたいと思っています。オギャーと子どもが生まれて、健康な子ども、健康なお母さ ん、健康なお父さんとして病院を去るわけです。その後、病気であるからとか、病気に なるかもしれないからといって医療が全部カバーするのは無理だと思うのです。健康な 家族を前提として、周産期から子育て支援センター、保育園、幼稚園、小学校というふ うに家族にとっては異文化を体験する。そういう部分を横から上手につないでケアして いくような施策が大切ではないかと思っていますので、これからの1年間、議論してい ただければいいかと思います。  もう一つは生涯発展的視点を持った、ライフプランの問題です。私は臨床心理学が専 門なんですが、若くて時間のある元気な若者が大学にはウジャウジャおりまして、大学 院で優秀な学生たちが身を立てる力がないので結婚できないということがたくさんあり ます。保育の設備とか、場合によっては夫婦寮とか、いくつか提言がなされているよう ですが、学びながら子育てができる環境が必要ではないかなと思い、今日参りました。 今後ともよろしくお願いいたします。  木村座長  ありがとうございました。続きまして安達委員、お願いします。  安達委員  はじめまして、安達と申します。私は産婦人科医でありまして、日常的に妊娠、出産 の場面に立ち会っています。毎日産科病棟におりまして、まさに生まれる寸前、そして 生まれた子どもたちを抱く若い夫婦たちの様子を見ているわけですし、これから子ども が減っていく、出産が減る、こういうことが直接的にかかわってくる分野かと思います 。  私個人としましては、橋本元総理の「少子化対策有識者会議」のメンバーでしたし「 人口問題審議会」の専門委員のメンバーでもありまして、多方面にわたって今まで少子 化の問題について、ある程度かかわりをもってきたと思いますし、自分なりの考えを持 っています。ポイントを申し上げていきますと、晩婚化、これは多様な人生があります ので、女性もキャリアをもって晩婚化が進んでくることはわかるんですが、少子化の影 響は晩婚化だけでなく、結婚してからも子どもを持とうという意欲が低下していること を考えますと、子どもを持つことのすばらしさとか、家庭を持つことの大切さとか、そ ういうことを広くアピールしていく必要性を強く感じております。  私は同時に不妊症が専門分野でもありまして、子どもが欲しくてもつくれない方とか 、一生懸命努力しても結果的に子どもを持てなかった方を日常的に見ておりますので、 そういうことにも配慮して考え方をまとめていかなくてはならないかと思います。  子どもを育てていく上で肉体的にも社会的にも経済的にもネガティブな面が少子化の 要因として今までずいぶんまとめ上げられてきたんですが、ポジティブな面も必ずある わけです。もちろん大変さはあるんですが、小さい子どもを育てている時のかわいらし さということもありますし、自分たちが年をとってきた時に家庭を持ち子どもを持って いることによるポジティブな面がわかってくるわけです。私も今ようやくわかってきた 年齢かもしれませんが、今現在のネガティブで大変な面だけでなく、10年後、20年後の ポジティブな面をもう少し認識していただくような形で、家庭のすばらしさをアピール していくことの必要性を感じております。  私の大学の後輩はみな医師ですが、専門職ですので、結婚をためらったり、結婚して も子どもを持つことをためらう者が多いです。こういう者たちが妊娠した時にサポート システムがどうしても足りません。個人がいくら努力しても限界があるわけですが、そ のサポートシステムは今までいろいろな会議でも話し合われてきました。保育施設など ハードな面もあるんですが、意識改革が大事なんですね。職場にいる時に責任ある仕事 であればあるほど時間外の仕事の時間が長いんです。臨床や研究ばかりでなく、夜の6 時過ぎからのミーティングやいろいろな会合もあるわけですが、そういう方たちが9時 〜5時で帰れるようなシステムとか、トップの方々にそういう意識を持っていただかな ければ変えられない。若い世代が子どもを産み育てることができないという現状があり ますので、ハードの面は一番大切ではあるんですが、意識的な面、ソフトの面も含めて 改善していかなくてはならないと思っています。  木村座長  ありがとうございました。それでは大越委員お願いします。  大越委員  「男も女も育児時間を!連絡会」の大越と申します。通称・育時連と申しまして、198 0年、今から22年前に発足した市民グループで、こういった分野では草分け的なものか なと思っています。当時、女性しか育児時間がとれず、男にも育児時間をということで 運動を始めたわけですが、男性にも育児時間をとらせようというのが目的ではなくて、 我々はある種の生き方の提案をしているグループです。相互乗り入れで、仕事も家事・ 育児も両方できるような生き方のほうがより幸せではないでしょかという提案を20数年 やってきたわけです。  「男も女も4時間労働、落ちこぼれてハッピーに生きようよ」、このキャッチコピー を20数年から言い続けてきてきてるんですが、当時は落ちこぼれないと男性は家事・育 児ができなかった。最近は厚生労働省などが一生懸命やっておられますので、今なら「 2人で渡れば怖くない、落ちこぼれずにハッピーに生きよう」というコピーになるんだ ろうと思います。  そういう生き方が受け入れられる社会にするためには意識改革と制度改革が両輪で必 要かなということで、育時連ではいろいろ活動しています。意識改革という意味では、 男性が家事・育児により積極的に参加するためにはパパ・クオータ(育児休業の父親割 当制)を提案しようということで、ここ10年ぐらいビラを作ってはメーデーで配ってい ます。そういった強制当割制の誘導策というのがなかなか取り入れられにくい状況では ありますが、いったんやってしまうと、家事・育児の面白みに目覚めるというのがよく あります。  制度改革という点では、育児休業法が1992年に施行されましたが、育時連の中でもず いぶん議論がありまして、この法律ができたことによってむしろ後退してしまうのでは ないかということで、その種のシンポジウムをやりました。子どもは1歳で大人になる わけじゃないですから、自立する10歳ぐらいまで父親も母親も家庭の責任をどうとって いくのか、絶対に必要なのは育児時間だ、労働時間の短縮であるということを十何年ず っと主張してきています。  私が育時連にかかわったのは1987年ですから15年前ですが、ずっと共働きで、2人と も東北出身で完全に核家族なものですから、2人目が生まれた時に転職しました。エン ジニアで設計部にいたんですが、どうしても家事・育児と仕事を両立する道が見えなか ったんですね。いろいろ悩んで、道が見えない。その時に育時連に出合ったんですが、 その中に田尻研治という人がいまして、彼は“育児ストライキ”といって、長女を保育 園に送ったあと1時間遅く出社してたんですね。こういうやり方があるんだなと非常に 勇気づけられて、目からうろこで、仕事を替わってみようかな、職住接近すれば時間が とれるし、なんとかなるかなと、そういう発想ができたわけです。  そういうことで、モデルに出合うことが世の男性にとって生き方を変えるためには非 常に重要なことだと思ってまして、恩返しの意味もあって、それ以降、育時連にずっと かかわって、少しでもモデル提供になればということで活動しています。以上です。  木村座長  ありがとうございました。次は大日向委員、お願いします。  大日向委員  私は専門の心理学の立場から、30年近く育児に悩み、育児ストレスに苦しんでいる母 親の声を聞いてまいりました。いま一番関心を持っておりますのは虐待です。虐待と言 っても警察や児童相談所のお世話になるような、子どもの命を奪うような虐待ではなく て、その一歩手前の段階のものです。一生懸命育児をしてるんですが、ひとつ間違うと 自分も同じことをしてしまうかもしれないというグレイゾーンのところで苦しんでいる お母さんたちの声をずっと聞いております。  この30年間聞いておりまして、変わらない部分と変わったなと思う部分がありますが 、ほとんど母親が育児をしているということ、これは変わってないんです。その心身の 負担の重さというのは、今日の関連資料で出ているいろんな答申の中でも十分書かれて おりますが、そこは本当に変わっていません。どうしてこんなに変わらないのかという と、いまだに母性愛神話とか3歳児神話が根強いんですね。東京を中心に物を考えてい くとなかなか見えない点でもあるんですが、全国を回っていますと母性愛神話、3歳児 神話に苦しんでいるお母さんたちがどれだけ多いか。その原因の一つとして男性の意識 改革が極めて遅れているのが日本社会だと思います。  一方、変わったなと思うのはここ数年ですが、「何となく育児がつらい、子どもがか わいく思えない」という母親が増えていることです。かつては何がつらいのかとたずね ると、これこれこういう理由で私はつらいという答えが返ってたんですが、何がつらい かわからない、漠然とした不安とかつらさを訴える母親が増えてきています。それは別 の言葉でいうと、生きる力を失っているということではないでしょうか。そして、その 原因として生き物に触れるチャスがなかったことも考えられます。極端な例なんですが 、赤ちゃんが動くから気持ちが悪い、さわれないという母親も出てきていることも事実 です。まだ一部ですが、そういう若い世代に対してどういう支援をしていくかというこ とも非常に大きな課題だと思っています。  私の大学では明日の親となるような学生さんたちと地域のお母さん、お父さん、子ど もたちと一緒にふれあいながら人間関係能力をはぐくんでいこうという活動や研究をや っております。こういう支援は効果が見えるまでに少し時間がかかるかもしれませんが 、先程、20年先を考えた答申をといってくださいました。10年、20年ぐらい先を考えな がら、幼い命が育っていく過程にふれあう喜びを伝えていくことも、長い目で考えてい く子育て支援ではないかと考えております。以上です。  木村座長  ありがとうございました。では奥山委員にお願いします。  奥山委員  私は横浜市でゼロ歳から3歳までの子どもと親のための育児支援施設、常設の広場運 営をしております。私は62年生まれですので、かろうじて30代なんですが、厚生労働省 のデータの中にもありましたように、子どもを産めなくなった世代ということなんです 。私は10年、東京で仕事をしてまして、会社では育児休業法の第1号の取得者となりま した。その時はまだ給与の保障等もなく、無給で8ガ月ぐらい休んだ記憶があります。 それを取得して1人目を育てましたが、出張、添乗等の多い会社だったものですから1 年後にやめざるを得ず、長男が2歳の時に地域に目を向けることになりました。  私たちの世代が結婚する時のハードルがいくつかあると思うんですね。相手の両親、 自分の両親の介護のこととか、家事や育児は女性のほうに負担がかかってくることを考 えますと、相手のお母さんの介護はどうなのかとか、長男、次男とか、いろんなことを 考えて、この人と結婚して自分はどんなふうになるんだろうかということをまず考えて しまいますよね。今よりも自分自身が大変になるんじゃないかと思われて、結婚につい てのハードルはかなりあるなと思います。  子どものことで言いますと、私は10年仕事をして、実家は田舎ですので、長男を産ん だ時に戸惑いがありました。この赤ちゃんをどうやって育てたらいいのか、非常に怖か った。周りにモデルがなかったためだと思います。働いてる間は小さい子どもと触れる 機会が全くありませんでした。そういう私たちのような者が母親になった時に戸惑わな いはずがないんですね。それをどうやって支えていくのかというところが非常に大事で はないかと思います。  実際に自分自身が地域で子育てをするのが非常に大変だった。そういう思いからNP O法人として親子の広場というのを立ち上げたわけです。何人かの仲間と共に、武蔵野 市にある0123吉祥寺という、子育て中の母親と子どものための居場所づくりをして いるところですが、そういう場所が身近にあったらどんなに育児が楽かということで、 私たち自身で立ち上げたものです。  この広場をやっていて思うのは、親の居場所がないということなんです。働いてるお 母さんやお子さんには保育所という居場所があるんですが、家庭で子育てをしているお 母さんたちには居場所が本当にないです。ゼロ歳児ですと公園にも出かけることができ ない。子どもたちをうまく育てていくためには親自身が親になるステップが必要です。 3カ月の赤ちゃんが半年後にはどんなふうになるのか、1年後にはどんなふうになるの か、そういう予想も間近で見ることなく子育てをしてますから、その広場で学ぶのでは なくて、体験として身につけていく、そういう場所がこれから絶対に必要ではないかと 感じています。  育児休業中に利用されるお母さんも多いんですね。ゼロ歳児の時に、これから働きに 行くお母さん、これから地域に残って子育てをしていこうというお母さん、そういう人 たちの接点の場にもなっています。まだ始めて2年ですが、このような場所が各地にで きていけばいいなと感じながら活動しております。  木村座長  ありがとうございました。主婦がほっとできるのは1位がおふろ、2位がトイレ、3 位が台所だそうです。  それでは柏女委員、お願いします。  柏女委員  淑徳大学の柏女と申します。児童相談所、厚生省で臨床と政策立案の実務を経験して 、現在は児童福祉、子育ての福祉について政策面から研究をしております。児童福祉の 分野では大きな課題として3つあるかなと思っています。1つは子どもの育ちがおかし くなってきているのではないか。2つ目は虐待の増加に代表される子育ての問題、3つ 目は少子化の問題ではないかと思っておりますが、こうした問題というのは、いま我々 が住んでるこの社会、便利な社会、効率を優先させてきた社会の影の部分を3つともあ ぶり出しているんだろうと思います。そう考えますと、一方で便利で効率優先の社会を そのままにしておいて、影の部分だけに対応しようとしても限界があるわけでして、こ の問題を考える時には、私たちがどういう社会を目指すのかという座標軸を決める議論 をしていきたいと思っています。  これらの3つの問題に対して、近年、いろいろな政策がとられてきているわけですが 、私どもの福祉の分野でいえば、少子化に対しては子育て家庭支援、つまり子育てに対 してお金を出すという政策になるかと思います。虐待あるいは配偶者暴力については家 庭への介入性を強化するという政策がとられています。20世紀末から21世紀になる端境 期に新エンゼルプランが策定され、児童虐待防止法が策定され、配偶者暴力防止保護法 が策定された。つまり子育てに対してお金を出す国家計画と、子育てに対して口を出す 法律が20世紀から21世紀になる時に策定されたということは象徴的なことではないかと 思います。子育てに対してお金も出さないかわりに口も出せないという状況が少子化や 虐待の増加を生み出してきた。それに対する反省から、子育てに対してお金も出すかわ りに口も出す、そういう政策転換が図られていかなければならないだろうと思っていま す。21世紀の社会、政策の在り方を考えていきたいと思っております。よろしくお願い いたします。  木村座長  ありがとうございました。では熊坂委員お願いします。  熊坂委員  岩手県宮古市長の熊坂と申します。宮古市は人口が55,000で、東京から5時間以上か かる一番遠い街でございます。委員の皆さんは東京の方が多いようですが、地方の代表 ということでこの会に加わっていきたいと思います。また、地方自治体の長は私ひとり ですので、大変な責任も感じております。子育てというのは行政がやっていかなければ ならない分野だと思っておりまして、私も内科の医者でありますが、今まで高齢者福祉 に力を入れてやってまいりました。市長になって2期目ですが、これからの地方自治体 の最大の課題は少子化であると認識しております。  20年後の社会を考えながらこの懇談会を進めるというお話がありました。宮古市は人 口55,000と申しましたが、20年後には43,000、高齢化比率が35%になります。大方の地 方都市はそういう状況になるかと思っております。その一番の原因は長生きになったと いうこともありますが、それにも増して子どもの数がどんどん減っていくことになると 思います。そうすると日本全体もそうかもしれませんが、地方が崩壊するという話にな ってきまして、少子化対策については重点的にいろんなことをやっていかなければなら ないと思っています。  地方分権の中で一括法も通りましたし、行政でいきますと、医療、保健、福祉、教育 、労政、すべてが地方自治体の仕事ということで地方自治体のほうに降りてきています が、地域が崩壊しないためには子育てが最大の課題だと思っております。宮古市として は高齢者対策と同じように一人一人の親子がすべて見えるような仕組みを作っていきた いと思います。介護保険ができまして、宮古市は65歳以上人口12,000のうち要介護認定 が1,300 人ほどおりますが、その方たちはすべて市で把握しているという状況ですが、 それと同じように子育てにも力を入れておりまして、すべての子どもの置かれている状 況が自治体としてわかっている、そういうシステムを作って、様々な問題に対して行政 が積極的にかかわっていくことがこれから非常に大事になってくると思っています。  私は50歳でございまして、この中では高齢者ということになるわけですが、今まで死 亡診断書ばかり書いてきましたので、これからは少子化に力を入れていきたいと思って おります。  木村座長  ありがとうございました。高齢者と言わないでください。私はどうしていいかわから なくなる。  では玄田委員、お願いします。  玄田委員  最初に、この会に対する違和感をお話しさせていただきたいと思います。先ほどから3 0代が何人だとか40代が何人いるということを、あたかもそれがすばらしいことである かのようにおっしゃるのは、平均年齢も含めて、とても違和感があります。先ほど報道 関係の方がたくさんいらっしゃって、この会の特徴として若い人の感性を生かすなんて 書かれたらたまらない。昨年10月1日に雇用対策法を改正して年齢差別を撤廃したはず の厚生労働省が、いまだに年齢がどうしたなんていってるのは非常に違和感を感じます 。お前もそろそろいい年なんだから子どもを産まなくてどうするんだと言われてる違和 感に通じるのではないか。これからはこの会を開く時に30代が何人いるとか40代がどう だなんていう議論はやめていただきたいということを申し上げたいと思います。  なぜ少子化が進むのか私にはわかりませんが、一つ結論を言えば、未来がないから子 どもを産まないんだと思います。なぜ未来がないと言い切れるかというと、いろんな政 策や対策をとったとしても、1970年代以降の経済学が指摘するのは、将来に対する予想 が変わらなければ、どんな政策をしてもいい方向にはいかないんだ、逆にいえば、いい 予測ができるような社会になれば多くのことが変わるだろうということです。そういう 意味では予測が変わらないことが大きな問題であって、自分の子どもに未来がないと思 えばだれも産まない。  そのためにどうすればいいかというのは大きな問題ですが、いま政策的に考えるべき ことは、ある種の攻めの政策をそろそろ考えなければならないんだろう。少子化という と守りの対策のようなイメージがあるんですが、これからは、ある種の壮大な社会実験 をするぐらいの気概で政策を打っていかなければならないのではないか。日本人は実験 という言葉を聞くと人体実験であるとか厳しい見方をすることが多かったんですが、新 聞を見てもわかるように治験者募集の新聞広告をこれだけ見るような時代になった。こ の状況を打開していくためには、ある種の実験をしていくんだという気概をもっていか なげればこの問題は解決しない。  どういう実験が必要かというと、抵抗が大きいかもしれませんが、特定の地域を限定 した問題を取り上げることが必要ではないか。保育サービスの場合、休日保育や延長保 育が本当に問題になってるのは都市部だと思います。都市部の問題と地方の問題を全く 同一にして議論しても介護サービスや保育の間違は間違うのではないか。税制等につい ても、今の第2次ベビーブーマーが子育ての大事な時期にあるとするなら、向こう5年 間、消費税等を減税して、5年後に関してはしっかり増税するというふうな約束をする ことによって今の消費を活性化させる、その中で子どもを持つことの環境を変えるとか 、そういうことを考えていかなければ状況は変わっていかないのではないかと思います 。  先ほど奥山さんと大越さんの言われたことに共感する言葉がありました。それはモデ ルという言葉です。なぜ男性が育児休業を取らないかという議論があって、落ちこぼれ になるからというお話がありましたが、本当に現状はそうなのか。育児休業を取ってる3 0代後半の男性は1%弱ですが、彼らは落ちこぼれどころか極めて有能な人だと思いま す。逆にいえば、有能な人しか育児休業は取れない。有能であって自信があるから育児 休業ができるんだ、有能な人が育児をしてるんだということをインフォメーションとし て伝えれば、ずいぶん状況は変わるんじゃないでしょうか。  そういう面でいくと、どういうモデルがあるのかということをちゃんと提示すること が必要になっているわけで、別の言い方をすれば、日本人はこうあるべきだというふう な、だれも特定の人を対象としないような議論をするよりも、ある置かれた状況によっ て、こういうモデルがあるんだということを提示する。みんながインターネットで探し てるのは、自分の姿に合ったモデルを探してるんだと思います。そういう意味で、ここ で議論する時にも日本はこうあるべきだという議論ではなくて、どういういいモデルが あるのかということを一つ一つ探していくことが極めて重要ではないかと思います。  最後に、皆さんおっしゃらないので一つだけ言うとするなら、1年間議論するのであ れば、少子化の問題と、先ほど生涯出生率の計算のところにも出てきましたが、国際純 移動率、すなわち外国人と日本人との共生という問題も含めて議論しなければ、この問 題はどこかでアンバランスになるのではないかと思います。以上です。  木村座長  サッチャーさんが日本に来た時に財界人の一人が日本の将来はどうなるでしょうかと 聞いたら、明るい未来を考えない人に明るい未来はやってきませんと答えたそうですが 、いま明るいお話をいただきまして、ありがとうございました。  それでは小西委員、お願いします。  小西委員  さっきから自分がどうしてここにいるのか、非常に不思議に思っております。私は公 共経済というか財政学というか、そういう学問の理論的なことをやっておりまして、子 どものことをことを考えたことは今までありません。子どももおりませんので、基本的 にはこういうことに物を言うのはやめようと心に決めてたんですが、それもできなくな ったので、順番が回ってくる間に考えたことを申します。  よくわからないのは、子どもを増やすこと自体が重要なのかとうかということなんで すね。経済学にはいろんな分野がありまして、一番ピュアな経済学では、子どもを持つ 時にも夫婦はいろいろ合理的なことを考えて子どもを持つかどうかを選択するだろうと いうわけです。子どもを持つと母親が働けなくなるとか、どのくらいコストがかかると か、そういうことを全部考えた上で行動しているはずだから、実際に出生数が減ろうが 増えようが社会全体にとってはなんの問題でもないんだという極論もできないことはな いんですね。  そういう観点から子どもの数について経済学がどんな答えを用意できるのか、いくつ か考えてみました。労働力が減って経済成長が停滞するとか経済の活性化が鈍化してし まうという議論をするんですが、これは労働力の問題であって、必ずしも子どもの数の 問題ではないはずなんですね。外国から人を呼んできて若い労働者を入れれば、それで 経済成長は問題ないのではないか、経済は活性化するのではないかということになると 、子どもの問題ではないんじゃないかという気がする。  次に税制とか社会保障の議論が出てくるわけですね。子どもの数が減って年金とか医 療とか介護とかシステム自体が問題になってくる。確かにそうなんですが、別の言い方 をしますと、現在の世代が将来の世代を搾取しようとしてるのと同じなわけです。つま り将来の世代を増やして、その人たちの上がりで俺たちは楽をしようと考えてる。そう いう意味では、子どもの数を減らすことよりは社会保障とか税制の制度を変えることの ほうが重要ではないかという気がするので、これも子どもの数を増やす積極的な理由に はならないのではないか。  先ほどから意識改革という話が出てきたんですが、これは経済学の手に負えない問題 なので、なんともしょうがないわけです。そうやって考えますと、少子化の問題を考え る上で経済学から見なくてはいけないのは子どもの数を増やそうということではなくて 、子どもを持つという選択をした人の労働力をなるべくうまく供給できるようにしよう という視点が必要ではないかと思うわけです。それが子育ての支援であったり、保育所 をどれぐらい増やすかということであったり、そういった考え方が重要ではないかとい う気がしています。  合理的に子どもを持ってると考えるなら、子どもを産めばいくら出しますよというこ とをやれば子どもの数は増えるのかもしれませんが、現実的にはそういうことはないん じゃないかと思うんですね。もっとお金があったら4人欲しいんだけど、今は2人にし てるとか、それがどれくらいあるのかわからない。そういう実証研究があるのかどうか 知りませんけど、経済的な理由で少子化が起きてるということはあまりないんじゃない かという気がしています。いずれにしても今まで考えたことがないので、これから少し 勉強させていただこうと思っています。  木村座長  ありがとうございました。では残間委員、お願いします。  残間委員  ただいまの学習院コンビのお話を聞いていて、バラエティに富んだ人選だと思って、 嬉しくなりました。私は日ごろPRとかコミュニケーションを生業しておりますプロデ ューサーで、新しいやり方とか新しい考え方をあまりしかつめらしくない方法で世の中 に報しめていくというのが日常の仕事です。  すでに子どもを持ってしまった人にとっては具体的支援策は効を奏すると思うんです が、これはカンフル剤であって、抜本的な少子化を解決するには至らないのではないか というのが私の考えです。女が子どもを産むか産まないかと迷った瞬間、すでに産まな いほうに針が振れてるんですね。どうしようかと思った人は、産まないほうに針が1ミ リでも振れているから考えるわけです。どさくさにまぎれて考えない人は産むんですね 。問題はこのへんで、なぜ迷うほうに針が振れるかというと、この国自体に魅力がない という一語に尽きると思います。この国で生きていきたい、住み続けていきたいと思わ ないという気持ち。もちろん祖国ですから愛しいとは思っていても、どんどん生きにく くなっているこの国で子供を産みたいと素直には思えないのでしょう。スイスの調査会 社IMPの魅力度調査でも日本はどんどん落ちるばかりです。先行世代が少しも幸せそ うに生きていない、子どもを持った人があまり幸せそうじゃないこの国で、あえて子供 を持とうとは思わないという気持ち、私には解るような気がします。  昔は子だくさんというのは幸せの象徴でした。霞が関にも「4人子どもがいる親の会 」というのがあるらしいということですので言いにくいのですが、今の日本では4人と か5人子供を持った人は、幸せそうどころか、世の中に適応していくのに大変そうに見 えます。子だくさんのお母さんにはなりたくないという、この空気感って否定できない と思うのです。芸能人や著名人が子育てのプラス面を強調してインタビューに応じてま すが、あれは切り取った一断面にすぎないわけで、子どもは泣くし、叫ぶし、出血もす れば排泄もするわけですから、よく考える人にとっては、子供を持つことは不自由に思 えてくるのでしょう。  制度での支援とか具体的な支援も大事なんですが、えも言われぬ空気感からくる呪縛 というんでしょうか、子供を持ってもなんとなく幸せそうじゃない。みんなによかった ねと言われたりご祝儀をもらったりという一瞬はあっても、しっかり考えるとそんなに 幸せじゃないんじゃないかということを先行世代が見せてしまっている現実をどうする かという、ここが問題ですね。  私は結婚もしたことがありますし、出産も1回だけ経験しましたが、男並みに仕事を するには、乳飲み子のころはベビーシッター代が1年間で600万円から1,000万円も必要 でした。大臣をはじめとしてお子さまを最愛の妻に後顧の憂いなく預けていらっしゃる 男性にはわからないと思うんですが、収入はほとんど家賃とベビーシッター代に消えま した。領収証を束にして税務署に持っていっても全然認められません。子供は娯楽なの かと思いました。  今回の懇談会では、なぜ子供を持たないかについて、表層的なことだけでなく根っこ のところまで触れていただきたいと思います。なぜ産みたくないのか、今だからなのか 、この国だからなのか、抜本的なところをちゃんととらえていって、そこから方策を検 討していくことが大事だと思います。資料には、天文学的な数字のところまでの将来推 計が出てますが、そこまでいかないまでも、10年先に違う未来が見えてくるような議論 ができればと思います。  私自身も勇気をもっていろんなことを話し合っていきたい、そんなふうな場にさせて いただきたいと思っております。  木村座長  ありがとうございました。ぜひ根っこをよろしくお願いします。  では白石委員、お願いします。  白石委員  私は伊勢丹労働組合の執行委員をしております。今日は現状をお聞きいただけたらと 思っています。過去から私どもの会社は女性にやさしく働きやすい環境があります。現 在もいくつかの育児制度がありまして、育児休職制度とか育児勤務制度というものはか なり整っていると思っています。本年度は両方合わせて100 名以上の方が取ってるとい うのが現状なんですが、ここ何年かは会社の経営環境も厳しくて、営業時間が非常に長 くなりました。新宿店は10時開店で来月から8時までの営業になりますので、そうする と10時間営業になります。店舗休業日も年間5日間、それでも私どもは流通業界として はいいほうかなと思ってまして、同じ仲間では1日だけという会社も出てきております ので、そういう点では働きにくい環境になってきています。  10時間の中でシフトで働いてますので、どうしても人が薄くなります。そういった中 で育児勤務制度を作ってやってるわけですが、土曜日、日曜日に出勤になりますとベビ ーシッターに預けなくてはなりません。日曜日1日預けると1万円から1万5千円かか ります。時間帯で勤務してますので、給与所得は時間割計算になりますので、そのへん の負担が大きいという問題があります。延長保育等々もまだまだ整ってない部分があり ますので、多少よくなってきてるかなとは思いますが、私たちメンバーの皆さんと話し てる中ではそういった声が大きいです。  いま一番大きい問題としてとらえているのが、流通ですとパート労働者とか有期契約 の社員の数が増えてきています。正社員でない人たちを現制度の中にいかに導入してい くかを、労使で話し合いをしてるところなんですが、これから女性が子育てをしながら 働くためには、そういった部分にも手をつけていかなくてはいけないのかなと思ってい るところです。これからいろいろそういったお話もしていきたいと思いますので、よろ しくお願いいたします。  木村座長  ありがとうございました。津谷委員、お願いします。  津谷委員  私は日本に400 名ほどいる人口学者の1人でして、デモグラフィーを専門にしている ものですから、ここにお呼びいただいたのではないかと思います。少子化という言葉は1 991年に経済企画庁の「国民生活白書」で初めて目にしたのですが、平たくいえば出生 率の低下ですね。単なる低下ではなくて、むかし日本は女性が4.5 人ぐらい産んでたわ けですが、それが2になった。人口の急激な増加は経済成長によくないというので、こ れは大変めでたいことだったわけです。  少子化とはなんなのかというと、人口の再生産、つまり同じだけの次の世代を産み残 すことのできる出生率をかなり割り込んでいる状況である。どのくらいならいいのかと いうと、女性1人当たり子ども2人強です。これは結婚してない方も含めて全女性です 。1970年代半ばから始まっていまして、75年に子ども2人を割り込んで、それ以来1度 も回復しておりません。それだけでなく、80年代後半以降、超低出生率への低下に歯止 めがかからない。そして1989年に1.57ショックになった。別にショックを受けるほどの ことではなくて、それ以前から始まってたんですが、少子化という「化」がつくと社会 に広まるんですね。社会の中でそういう認識が出てきて、こういう話になっているのだ ろうと思います。  人口の変化というのは、日本の社会が戦後経験した社会経済、意識などいろいろな変 化の結果出てきたマクロの変化でして、なぜ少子化について皆さんが非常に心配なさっ たり注目を浴びているのかというと、このままほっておくと人口の高齢化を招く。日本 は世界で最も急速に高齢化しています。そのうちに人口が減少する、労働力が高齢化す る、さらに高齢化人口も高齢化する。そうすると経済に悪い影響がある。人が足りなく なる。今も景気が悪いんですが、さらに経済成長がまずいうことになる。  先ほど小西先生が人を入れてくればいいじゃないかと言われましたが、外から人を入 れてくることで是正しようとすると、97年の国連の推計では、毎年70万人ぐらいの外国 人を2050年まで入れ続けなくてはいけない。それが可能だとしても、日本の社会自身が 変わってしまう。  2006年には出生児数が死亡者数を下回るという推計ですが、つまり人口が減少するわ けです。いったん人口の変化が始まりますと惰性がありますので、2000年の合計特殊出 生は1.35ですが、しばらく減少が続いていくという状況だと思います。  宮古市長のお話を聞いていても地方の高齢化が深刻なことはわかるんですが、子ども をたくさん産んでもらおうといっても、結婚も出産も個人の選択である以上、来るべき 変化を受け入れて、いかに対処していくかということを考えなくてはいけない。そのた めにこの懇談会が行われて、私もメンバーに入れていただいたのではないかと思います 。  先ほどから未来がない、子どもを産むのも大変な社会であるという御意見が出ました が、その通りだと思います。少子化はアジアの新興工業国、東南アジアの国々でも60年 代半ばから、我が国は70年代半ばから起こっています。その後の様相が変わってまして 、80年代半ばから日本をはじめとしてイタリア、スペインなど少子化が止まらない、じ り貧の社会になってる。一方、先ほど木村先生がフランスのお話をなさいましたが、イ ギリスもそうで、女性1人当たり1.8 人ぐらいで安定してる。アメリカをはじめとして 北米、スカンジナビアでは人口の置換え水準を回復してる。  先進諸国は日本と同じように女性の高学歴化、女性の雇用労働力化、意識の改革、日 本でいう男女共同参画その他あったわけですか、ある国は上がったり高位で安定してい るのに、どうして日本は下がってるのか。先ほど小西先生は経済学では説明できないと おっしゃったんですが、私はそうじゃないと思うんですね。女性が子どもを持つことの 機会コスト(オポチュニティコスト)、つまり精神的、時間的、物質的なコストが、女 性の高学歴化、雇用労働力化などによって社会進出が進むことが一方でありながら、日 本での家族関係、家庭、そこにおけるジェンダー関係が変わらない以上は、ますますコ ストが高くなるわけです。  昔のように結婚や出産が当然、必然であった社会ではないですから、コストとベネフ ィットを女性および夫婦が計算して、子どもを産まなくなってきてる。結婚しない、し ても前のようにはたくさん産まない、産めないという状況が出てくるのは当然でありま す。  1970年代半ばの先進諸国の女性の労働力率と出生率をプロットしますと、マイナスの 関係です。女性の労働力率が高くなってる社会ほど出生率が低かったんですが、90年代 半ばをプロットしてみますと反対で、女性の職場進出、社会進出が進んでる社会ほど出 生率が高くなってる。上がる一方の結婚、出産、育児の機会コストをゼロにすることは 絶対に無理ですが、その軽減に成功した社会と、そうでない社会がある。なぜ我が国は それが今までのところうまくいってないのかということをここで考える機会にさせてい ただきたいと思います。  80年代後半に国際比較調査がありまして、「あなたはなぜ子どもを持つんですか」と いう質問に対して、スウェーデン、アメリカ、フランスでは「子どもを持つことは喜び だから」という答えが低いところで65%、高いところで80%強、日本は20%でした。韓 国で群を抜いて高かったのは「子どもを持つことは家族、祖先のため、血を絶やさない ための私の義務である」という答えなんですが、それも日本はないんですね。なんの理 由なのかというと、ほとんど何もない。それは80年代後半の調査ですから、今はもっと 悪くなってるのではないかと思います。  2000年に横浜市とエージング総合研究センターとのタイアップで子育て調査をした結 果を解析してみますと、公的な保育サービスに入りたいけど入れないということと、子 どもをもう1人ほしいけど産めないということがマイナスに結びついてるんですね。少 子化の是正はどうあれ、子どもを増やすということではなくて、夫婦、女性のウエルビ ーイングとウエルフェア、そしてニーズのあるところに、社会、政府として支援してい くことがうまくできて、結果として出生率が上がれば大変めでたいことですが、そうで なくても構わないと私は思っています。  木村座長  ありがとうございました。松本委員、お願いします。  松本委員  社団法人日本青年会議所の会頭をやっております松本でございます。青年会議所は全 国の747 カ所で地域のまちづくりという観点で活動をやらせていただいておりまして、2 002年度の重点テーマとして地域の経済再生、教育改革、広域学区というところをやっ ています。それぞれについて施策、提言など細かい話はまとめていますが、そこに絞り 込んでいきますと、この国の在り方を考えた中で、豊かさとは何か、何が幸せなのかと いう部分にぶち当たることがよくあります。その中で少子化、子どもを産むことを考え る観点というのが大きな話題となり、全国で議論を闘わせているところです。  そんな中で、皆さんのお話にありますように、家庭内の問題、男女の役割の問題とい う部分を大きく取り上げて、地域で商業や中小企業をやってるメンバーが多いので、意 識の啓蒙というところから始めようということでやっております。新しい価値観を打ち 立てるにあたって、皆さんの御意見等を聞かせていただきまして参考になっております 。  モデルケースという話がありましたが、747 カ所で展開している青年会議所運動の中 で、我々が率先して将来の在り方、モデルケースを商業、中小企業の間で作っていきた いな、そういう実践的な団体になっていきたいなと思っておりますので、そういう意味 でも御活用、御協力を賜りたいと思います。  木村座長  ありがとうございました。水戸川委員お願いします。  水戸川委員  水戸川と申します。メンバー表に、いいお産の日実行委員会事務局長と書いてありま すが、皆さんの肩書を拝見して、私のような者がこの場に伺って意見を述べさせていた だくのは適当なのかどうか、ドキドキしておりまして、今も頭が真っ白です。  いいお産の日実行委員会について説明させていただきますと、11月3日を「い(1)い(1 )お(0)産(3)」というふうに語呂合わせをしています。よく男性の方が「いいおっさん の日ですか」と言われるんですが、これは非営利団体でして、お母さんや医療従事者と 共に11月3日をお産を考える日として毎年イベントを行っています。お産の仕方を紹介 するイベントではなくて、お産というのはどういうことなのか、命を迎えるというのは 家族にとってどういうことなのか、産みたいとか育てたい、どう育てていこうかという ことを共にみんなで考えましょうということで、1993年に、ある自助グループが「いい お産の日」と命名してイベントを開催しました。  今年で9年目を迎えますが、東京を拠点として、この日に全国でみんなで語り合おう ということで30カ所ほどのネットワークが去年の段階でできています。命をどのように 迎えるかということで様々な意見が出されるんですが、妊娠している期間というのは女 性が一番変われる10カ月ではないかと思います。自分の体を知ることができて、おなか の中の赤ちゃんがどう育っていくかを知ることによって子どもに対する愛情も深まって いくのではないか。そして共に子育てにつながっていくのではないか。幼児虐待の問題 も語られていますが、そういう面においてもうまく連携していけるのではないかと思い ます。  場慣れしてないものですから、うまくお伝えできない部分もあるかと思いますが、妊 娠期間におなかの中に赤ちゃんを抱えている女性にとって周りがどうサポートしてくれ るか、自分として自主的に子どもを育てようとする気持ちをいかにはぐくんでいくかと いうことが少子化の問題にもつながっていくのではないかと考えています。  たくさんの自助グループと一緒に開催しているイベントで語られることの中には、草 の根の意見、生の意見がたくさんあります。それらを少子化社会に反映できるように、 皆さんにお伝えしながら考えていただけたらと思っています。  もう一つはワーキングマザーということでもありまして、私自身、高校を卒業した娘 と小学校5年生の娘と4歳になる息子を抱えて、テレビ番組の制作コーディネーターと いう職種に携わっております。日ごろ陰ながらの職種ですので、だれかを演出していく 、華やかにさせていくという現場なんですが、18年前に子どもを産んだ時に、育てなが ら仕事をしていくことは本当に厳しかったです。  今も変わらないのは保育園の入所の問題なんですが、保育園に入れようと思って申請 すると、まず仕事先を申請してくださいということになるんですね。卵が先か鶏が先か ではないんですが、子どもの預け先がなかったら仕事はできないわけで、この点につい ては今でも意見がたくさん出ています。  18年間の様子を見てきて、いろいろ変わってきているとは思うんですが、まだまだ草 の根の意見が伝わってない部分があるのではないかという気がしております。  木村座長  ありがとうごじました。では山田委員、お願いします。  山田委員  東京学芸大学で家族社会学を専攻している山田と申します。お金と愛情で結婚や子育 てを読み解くというのを20数年間研究してるんですが、最近、学生に「山田先生は顔は 明るいけど話す内容が暗い」と言われます。皆さんが夢を語る中で1人ぐらい身もふた もない意見を言う人がいてもいいのではないかという気がします。どのくらい身もふた もないかというと、「家なき子」というテレビドラマで安達祐実さんが「同情するなら 金をくれ」というフレーズがあったんですが、それをもじって「子育ての楽しさを語る ぐらいだったら金を出せ」と、先日、ある雑誌に書きました。私は社会政策論もやって おりまして、高齢者に対する社会保険や財政支出を1とすると、日本はイタリアと並ん で先進国最低水準の0.2 ぐらいです。アイルランド、スウェーデンなど北欧諸国は高齢 者に1出したら、同じぐらい子育て中の若者に対して1を出すということをやってるわ けです。  小西委員が経済はあまり関係ないのではないかとおっしゃいましたが、調査などを見 ますと、子育てにお金がかかる、結婚する前から俺の収入では妻子を養えない、無理だ という若者もいました。人並みの子育て水準というのが非常に高くなってしまっていて 、ある人がファミコンのゲームを買ったら他の人も買うというのもありますし、ある地 方に調査に行った時に、小学生が、ある有名メーカーの1万円ぐらいのスニーカーをみ んな履いていました。どこかの家で高いものを履かせたら、周りもかわいそうじゃない かといって履かせるようになったのかもしれません。  そのように結婚や子育てにお金がかかるようになってるのに反比例して、若い人の生 活が見通しがだんだん立たなくなってる。雇用情勢もそうですし、たとえ今は職があっ ても明日なくなるかもしれないという状況で人並みの子育てをすることになるとリスク が非常に高いと思う人が多いのではないでしょうか。  よくモデルの話がありまして、玄田さんは有能な人のモデルと言われましたが、問題 は、それほど有能ではない、そこそこ稼げる人のモデルがなくなってるのではないか。 フリーターの人にインタビューを試みたところ、山を当てるように、うまくいけばこう なるんだけど、うまくいかなくなった場合、フリーターのまま結婚して子どもを育てる ことになったら悲惨なことになるわけです。そこそこの能力の人がどういうふうに子ど もを育てていって、夢のある生活を描けるか。そういう問題を考えなくてはいけないと 思います。  私は本当の研究は夫婦なりカップルなり恋人なりの愛情関係の研究をやってまして、 最近の研究では、子どもを産むと夫婦仲が悪くなる。これは10年ぐらい前からアメリカ で言われてた事実なんですが、日本でもだんだんそうらしい。専業主婦は「あなたは好 きなことをしてて私は子どもに振り回されてる」というと、「俺は稼いでるんだ」とい う形で仲が悪くなるらしい。しかし、それでも子どもを産んで一緒に生きていきたいと 思う。玄田さんは未来がないとおっしゃいましたが、若い人が生きていくためには希望 が必要だと思います。希望というのは努力が報われるところからくるのだと社会心理学 者が言ってました。子どもを育てる苦労が報われないと思ってしまったら、産み控える であろう。苦労があっても、なんらかの形で報われると感じられる世の中にしなくては いけないと思っています。  少子化対策というよりも、若者の希望が強い社会では自然と子どもが生まれてくる。 つまり子どもの数というのは社会の活力のバロメーターだと私は思っています。木村先 生の御専門になってしまいますが、ローマ帝国にしろベネチアにしろ文明が衰退する時 には必ず少子化が伴っていたという例がありましたので、そうならないためにも、若い 人の希望をつなぐことが結果的に少子化対策となるような社会であればと思っています 。  木村座長  ありがとうございました。最後に山崎座長代理、お願いします。  山崎委員  私は社会保障の特に政策に関心をもっております。年金、医療、介護に関心をもって おりまして、今は子どもの問題に関心があります。今日は大臣に最後まで同席していた だいておりますことをとてもうれしく思います。  いま私が一番懸念しておりますことは、これまで相当の議論をしてきまして、今日も 分厚い資料を配っていただいてるんですが、考えるとか懇談するという段階はもう卒業 しなければいけないのではないかという気がいたします。下手をすると「会議は踊る、 されど進まず」ということになってしまうのではないか。ここは「少子化社会を考える 懇談会」ですが、従来の報告書と同じものを1年後にまた作るのか。そういうことはも うやめなければいけないと思います。  1.57ショック以来、いろいろ議論し、それなりの施策は進められてきました。しかし 現実は惨胆たるものだと思います。厚生労働省ができたわけですが、労働省が推進して きたことは育児と仕事の両立支援ということでして、育児休業法ができ、雇用保険を通 した育児休業給付もできました。  数字を手元に用意しておりますが、毎年、子どもが120 万人生まれています。産む前 、女性はほとんど働いています。しかし育児休業をとって再び職場に返った人は平成12 年度で63,338人です。生まれた子どもの数は120 万人に対して6万3千人余りというこ とになります。育児休業を一切とらないで勤めを続けた女性もいるにせよ、非常に少な いということです。その中で男性は163 人です。これは全国ですから、育児休業をとっ た男性が一切いない県もあると思います。これはまさにフォーカスの対象でして、厚生 労働省にもフォーカスされた有能な男性職員がいらっしゃるわけですが、いろいろやっ てきたけど現実はこうだということだと思うんですね。最近、大臣はあちこちで頭を下 げておられるんですが、こういった点でも実効性が上がってないということだと思いま す。  さて、私は懸念すると言いましたが、現状の分析はほどほどにして、早めに将来に向 かっての本格的、抜本的な対策を打ち立てるという方向で議論をしていただきたいと思 います。この夏ごろには中間的なとりまとめということですが、かなり踏み込んだ骨太 の方針のたたき台のようなものが夏までにできればいいがなと思っております。  先ほど来、いろいろ議論の中に出てきました。ただいまの山田委員の話にもありまし たが、我々は高齢者の扶養を年金、医療、介護という形でみんなで支えるということに ついては合意をしております。年金で高齢者の生計を支えるわけですが、子どもの養育 費をみんなで支えるという考え方はありません。一定所得以下の方にわずかな児童手当 を支給しているのみです。高齢者のケアを介護保険という形でみんなで支えるわけです が、育児については必ずしもそうなっておりません。保育に欠ける子どもに対して、低 所得者に重点的に公費を配分して保育料を軽減するということですから、所得に関係な く高齢者をみんなで支えるという考え方とは保育サービスの提供の仕方は大きく違うと 思います。  ついでに申し上げますと、高齢者の医療を老人保健制度を通してみんなで支えてるわ けですが、子どもの医療についてみんなで支えるという考え方はありません。一般に高 齢者は国民健康保険に偏ってる。したがって健康保険組合も含めて皆で支えるというん ですが、子どもを多く抱えているのはサラリーマンの保険です。これをみんなで支える という考え方はないわけです。山田委員もおっしゃったように、あまりにも日本の社会 保障は高齢世代に偏った資源配分をしてる。このバランスを回復させなければいけない ということだと思います。皆で支えるということを言いましたが、具体的には保険的な 仕組みというのが日本では最も有効な手段だと思っております。  労働行政、福祉行政、そして社会保険、この中には医療保険、年金、労働保険があり ますが、そういったものを総合的にとらえて、基本的な部分は一元的に推進するという 政策の方向を目指すべきだと思います。それができる厚生労働省ができたわけでして、 労働行政も含めた子育てにかかわる施策の総合的、一元的な推進の方向性を示すことが できるかどうかというのが厚生労働省をつくったことの成果を問われることだと思いま す。2人の大臣が1人になって、ただ大臣が2倍の仕事をしなければいけなくなったと いうことではいけないと思います。実効性のある政策を打ち立てなければいけないと思 います。  木村座長  ありがとうございました。  大臣から一言お願いいたします。  坂口大臣  いやあ、バラエティに富んだお話だったですね。国会の議論というのは非常に画一的 でございまして、1人が言えばみな同じことを言うんですが、今日は1人として同じ意 見がなかった。これだけバラエティに富んでいろいろ議論をしていただきましたら、す ばらしい結果が得られるだろうと思いました。結論が出なくても、そのプロセスでいろ いろな御意見を出していただくことは大変大事なことだと思いました。初めからこのへ んにいきそうだなという議論だったら何遍やってもらっても同じことですが、こういう バラエティに富んだ御意見だったら、議論を深めていただけばいただくほど、たとえま ともろなくても、参考にさせていただける御意見が出たという気がいたしました。どう ぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  いろいろな考え方がございますが、厚生労働省にしましても、我々政治の場におりま す者にしましても、子どもを産む産まないは夫婦の話ですから、我々がとやかく言う話 ではないわけです。しかし産みたいけど産めないと言われたら我々の責任になってきま すので、そこをどうするかということを常に考えていかなければならないわけです。  したがいまして最初の御挨拶に戻るわけですが、統計的にだんだん数字の状態が悪く なっていくものですから、どうしたらいいかと考えております。今まで厚生労働省がや ってきたことの延長線上のことはやっていかなくてはならないと思っておりますが、そ れだけで足りるのかという気になりまして、国会図書館に行きまして、少子化に関する 本を探してほしいと頼みました。5、6冊の本を選んでくれまして、その中に青木さん のお書きになった本が含まれておりまして、それを読ませていただきました。いろいろ な面接例を書いておられるんですが、「子どもを産んでも得になることは何もない」と 答えた方の例が載っておりました。損か得かといわれたら、なるほど得ではないんだろ うなという気もしましたし、この問題は非常に根が深いな、どういう意識がそういうふ うにしてるのか、そこが今までと現在と変わったところなのかなという気もいたしまし た。  私のような年代の者ですと子どもを産めば、それだけの大きな価値があるという中で 育ってきて、損か得かという考え方をしてこなかったものですから、打ちのめされたよ うな気がいたしました。厚生労働省の皆さんといろいろ相談しまして、今日のこの会議 をつくっていただいたわけでございます。本当にバラエティに富んだ御意見をありがと うございました。何度か申しますが、心から感謝を申し上げたいと思います。ありがと うございました。  木村座長  大臣、ありがとうございました。最後までおつきあいいただきまして感謝いたしてお ります。  今日はこれでおしまいにさせていただきたいと思いますが、皆さん方はいろいろと言 い足りないことがおありだと思います。いずれ事務局から紙がきますので、そこに御自 身の率直な意見を少子化について書いていただいて、4月末日までにお出しいただきた いというのが事務局からのお願いです。  その時に、これから先は私の意見ですが、青年会議所の松本委員がおっしゃったよう に何を幸せと思っておられるのか、残間委員がおっしゃった根っこの部分を正直に書い ていただけませんか。金が大事だとか、何がなんでも死ぬまで働くのがいいとか、なん でもいいんですが、御自身にとって何が幸せなのか。その中で子育てはどのくらいの位 置にあるのか。そこから外れて、あれは全く地獄だとか、なんでもいいんですけど、御 本人の根っこのお考えを正直に書いていていただけると、これから議論を進めていく上 で参考になりますので、建前論じゃなくて、本音のところでよろしくお願い申し上げま す。  最後に、事務局から今後の進め方について説明をお願いします。  河参事官  先ほど見ていただきました資料1の3番ですが、今日を第1回とさせていただきまし て、第2回、第3回、第3回と年度内ぐらいまで続けさせていただきたい。秋口ぐらい に中間的な御意見をまとめていただければと思っております。そのために次回は5月と 7月と続けまして、先ほど若干御説明させていただきましたが、御議論いただきたい問 題を3つに分けて書いております。大臣がおっしゃいましたように前後左右になろうか と思いますが、このような形で進めていただければありがたいと思います。  これまで政府全体の中で行ってきました子育て支援策のフォローアップもしてみたい と思いますので、それについての御議論もいただくことがあるかと思っております。何 とぞよろしくお願い申し上げます。  木村座長  次回は5月17日、午前10時から12時まで、場所は追って事務局よりお知らせするとい うことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。  これをもちまして、第1回の少子化を考える懇談会を終了いたします。本日はありが とうございました。                                      以上    (担当)      厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室       政策第一係長 森       政策第一係  木寺      電話:03−5253−1111(内7691、7692)