労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成31年(不再)第4号
JR新潟鉄道サービス外1社不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合 
再審査被申立人  Y1会社 
命令年月日  令和2年11月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、Y1会社が、臨時雇用員でX組合の組合員であるAを解雇したこと、解雇に関する団体交渉に誠実に対応しなかったこと、Y1会社の親会社であるY2会社が、解雇等に関する団体交渉申入れに応じなかったこと等が、労働組合法第7条第1号又は第2号の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審新潟県労働委員会は、Y1会社及びY2会社の対応はいずれも不当労働行為に当たらないとして、救済申立てを棄却する初審命令を発したところ、X組合は、これを不服として再審査を申し立てたものである。
3 再審中労委は、本件申立てを棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) Y1会社がAを解雇したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか。
 Y1会社がAの解雇を決定したのは、X組合がAの組合加入を公然化してY1会社がAのX組合加入を認識した日より前である。したがって、Y1会社がAを解雇したことは、同人が組合員であることを理由とするものであるとは認められず、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。
(2) 第1回から第4回までの各団体交渉に関わるY1会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
ア 団体交渉開催期日の設定について
 第1回団体交渉開催期日の設定をめぐり、Y1会社は、Aの解雇時期を先延ばしした上で、団体交渉を開催できない理由として、監査があり、その準備の時間を要する旨を具体的に説明している上、業務の進捗に応じて、団体交渉期日を早めるよう努力していたものと認められる。
 第2回団体交渉開催期日の設定をめぐり、X組合がY1会社に対し、団体交渉開催日の交渉を求めたのに対し、Y1会社は、その翌日に、日程調整に時間を要する理由として、年度末はダイヤ改正もあり、団体交渉出席者がその業務を担当している旨具体的に説明している。
 第3回団体交渉開催期日の設定をめぐり、X組合がY1会社に対し、団体交渉開催日の交渉を求めたことを受けて、Y1会社はX組合に対し、日程を伝えて団体交渉開催を提案し、X組合が同意したものである。
 第4回団体交渉開催期日の設定をめぐり、Y1会社がX組合に対し、日程を伝えて団体交渉開催を提案し、その後、X組合及びY1会社の双方において同日を団体交渉開催日とすることを決定したものである。
 以上の次第であるから、第1回から第4回までの各団体交渉開催期日の設定をめぐるY1会社の対応はいずれも不誠実なものとはいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
イ 団体交渉の打切りについて
 第1回団体交渉のやり取り全体をみると、団体交渉開始から約2時間が経過した頃、Aに退職願を提出させようとした理由などについてX組合及びY1会社のそれぞれの発言が一通り出し尽くされており、この日にこのままこれ以上交渉を重ねても進展の見込みがない段階に至っていたというべきである。したがって、団体交渉開始後約2時間が経過したこの段階でY1会社が団体交渉を打ち切って席を立ったことは不誠実とまではいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
ウ 書類の未提示について
 第2回団体交渉において、Y1会社は、X組合からの解雇理由の説明要求に応じて、Aの解雇について、事例を示して具体的に解雇理由を説明しており、解雇理由に関する一応の説明義務を果たしているということができる。そうすると、X組合からの教育記録の提出要求にY1会社が当然に応ずべきとはいえず、これに応じなかったY1会社の対応が不誠実なものとはいえない。
 第3回団体交渉において、本社の教育指導要領につき、X組合が「制定されたんですか」と質問し、Y1会社は「ないです」と回答したが、その後すぐに「あります。申し訳ない」と発言を訂正している。したがって、Y1会社の上記対応は不誠実なものとはいえない。
 第4回団体交渉において、X組合は、再度解雇の根拠を求めているにすぎない。しかも、Y1会社は、X組合が要求する教育記録を提示できない理由も具体的に説明しているのであって、このようなY1会社の対応は不誠実なものとまではいえない。
 以上の次第であるから、第2回から第4回までの各団体交渉における書類の提示要求をめぐるY1会社の対応はいずれも不誠実なものとはいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
エ 団体交渉出席者について
 Y1会社の団体交渉出席者には実質的な交渉権限及び交渉能力があったといえるから、Y1会社がこのような団体交渉出席者による団体交渉を行ったことは不誠実とはいえず、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
(3) Y2会社は、組合員Aとの関係で、労組法第7条の使用者に当たるか。使用者である場合、組合員Aを解雇したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか。
 X組合は、Y2会社がY1会社の親会社としてAの解雇の責任を負うべきであると主張し、その根拠として、Y2会社が実質上Y1会社の経営を支配しており、Y1会社の従業員の労働条件も実際上決定していることを挙げている。このように、X組合の上記主張は、AがY1会社で検修業務を行っていた際の就労の諸条件に係るものではなく、解雇によるAの雇用終了という雇用問題そのものに係るものであり、解雇という雇用の終了に関する決定に関わるものということができる。そうすると、完全親会社であるY2会社が、Aの解雇との関係で労組法第7条の使用者に当たるといえるためには、Aの解雇に関する決定について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していなければならないと解するのが相当である。
 Y2会社は、資本関係、取締役及び業務委託等を通じて、Y1会社の経営について一定の支配力を有しているものといえる。しかしながら、その一事をもって、Y2会社がY1会社によるAの解雇について、雇用主であるY1会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえない。
 X組合は、この点に関して、Y2会社はY1会社の従業員の労働条件も実際上決定していると主張するが、上記主張事実を認めるに足りる証拠はない。
 むしろ、Y1会社の臨時雇用員については、Y1会社が臨時雇用員就業規則等の定めに従ってその労働条件を管理している。また、臨時雇用員の解雇手続については、総務部長が社長以下取締役に説明し、疑義がなければ解雇手続を進めることとされている。実際にも、Y1会社はAについて労働条件の決定や解雇の決定を自ら行っている。
 以上によれば、Y2会社は、Aの解雇について、雇用主であるY1会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるということはできないから、労組法第7条の使用者に当たらない。したがって、その余の要件について判断するまでもなく、Aの解雇に係る申立てには理由がない。
(4) Y2 会社は、X組合との関係で、労組法第7条の使用者に当たるか。使用者である場合、団体交渉申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
 Aの解雇に関する議題について、Y2会社はAの解雇との関係において労組法第7条の使用者に当たらない。
 快速列車廃止等に関する議題について、X組合には組合員でY2会社に在籍する従業員は存在しておらず、使用者と現に雇用関係にある労働者が加入する労働組合が要求したものではない。また、上記議題は、X組合の構成員である退職者の在職中の労働条件等に関するものでもない。したがって、X組合は、労組法第7条第2号にいう「使用者が雇用する労働者の代表者」に当たらず、他方、Y2会社は、上記議題との関係において同条の使用者に当たらない。
 Y3会社でのパワハラ等に関する議題について、X組合から、Y3会社とY2会社との関係性についての主張及び立証はなく、Y3会社の従業員の雇用主がY2会社であることの主張及び立証もない。したがって、Y2会社は、上記議題との関係において労組法第7条の使用者に当たらない。
 以上のとおり、Y2会社はX組合が申し入れた上記議題との関係で労組法第7条の使用者に当たらない。したがって、その余の要件について判断するまでもなく、Y2会社の対応に係る申立てには理由がない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
新潟県労委平成28年(不)第2号 棄却 平成31年1月16日
 
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