事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成30年(不)第41号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合(「組合」)・X2組合(「支部」) |
被申立人 |
Y1会社・Y2会社 |
命令年月日 |
令和2年7月27日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、①組合らとの労働者供給契約に基づき、日々雇用で組合ら
の組合員の雇入れを行っていたY2会社らが、平成30年2月1日分以降、労働者供給の依頼をしなくなったこと、②労働者供給
の依頼の再開に係る団体交渉を3度行ったが、いずれにおいても、Y2会社らから権限ある者が出席せず、形式的な回答に終始
し、合理的な説明をしなかったことが、それぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
大阪府労働委員会は、Y1会社及びY2会社に対し、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、文書の交付を
命じ、その他の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1
被申立人Y1会社は、申立人組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A1様
Y1会社
代表取締役 B1
Y2会社が、平成30年2月1日分以降、貴組合に対し労働者供給契約に基づく供給の依頼をしなくなったことは、大阪府労働
委員会において、当社による労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を
繰り返さないようにいたします。
2 被申立人Y1会社は、申立人支部に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
記
年 月 日
支部
執行委員長 A2様
Y1会社
代表取締役 B1
Y2会社が、平成30年2月1日分以降、組合に対し労働者供給契約に基づく供給の依頼をしなくなったことは、大阪府労働委
員会において、当社による労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰
り返さないようにいたします。
3 被申立人Y2会社は、申立人組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A1様
Y2会社
代表取締役 B2
当社が、平成30年2月1日分以降、貴組合に対し労働者供給契約に基づく供給の依頼をしなくなったことは、大阪府労働委員
会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないよ
うにいたします。
4 被申立人Y2会社は、申立人支部に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
記
年 月 日
支部
執行委員長 A2 様
Y2会社
代表取締役 B2
当社が、平成30年2月1日分以降、組合に対し労働者供給契約に基づく供給の依頼をしなくなったことは、大阪府労働委員会
において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないよう
にいたします。
5 申立人らのその他の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 Y1会社は、組合ら組合員の労働組合法上の使用者に当たるか。
ア(支部に所属し、組合にも個人加盟している)日々雇用組合員は、本件労供契約に基づいてY2会社に供給されていた当時、
21.5.1供給契約書に基づき、日々雇用労働者の供給依頼を行っていたY2会社との間では、雇用関係にあるが、Y1会社と
の間では、直接の雇用関係にあったとはいえない。
しかしながら、労働組合法第7条にいう「使用者」については、労働契約上の雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的
な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にある場合には、
その限りにおいて、当該事業主は同条の使用者に当たるものと解するのが相当であり、その成否は、具体的な事実に即して総合的に
判断されるべきである。
イ
本件においては、日々雇用組合員の供給を依頼しなかったことが問題となっているところ、本件労供契約に基づく供給依頼は、組合員の就労の端緒となるものであり、労働者の基
本的な労働条件等に係る事項といえる。そこで、Y1会社が、Y2会社と同視できる程度に、本件労供
契約に基づく供給の依頼に 関与していたかについてみる。
(ア)本件労供契約に基づく組合員の就労について、具体的にみる。
a Y2会社の正社員の人員補充問題への対応として、21.5.1供給契約書及びそれに付随する21.5.1附属協定書が締結され、
それに至る経緯においてY1会社が当事者として対応を行っていたと評価すべきである。
b Y1会社とY2会社とは一体となって供給の依頼を行っていたとみざるを得ない。
c さらに、団交に係るY1会社の対応についてみる。
B3(当時)Y1会社代表取締役・Y2会社代表取締役及びB2(当時)Y1会社取締役・Y2会社取締役は、Y1会社とY2
会社とを区別することなく、一体のものとして捉えて、組合らとの交渉に臨んでいたとみざるを得ない。
(イ)以上のことを総合的に勘案すると、Y1会社は、Y2会社が本件労供契約に基づく供給の依頼をしなくなったことについ
て、現実的かつ具体的に関与していたとみるのが相当である。
ウ そうすると、Y1会社は、本件労供契約に基づく供給の依頼をしなくなったことについて、Y2会社と同視できる程度に現実
的かつ具体的に支配、決定できる地位にあるといえるのだから、Y1会社は、組合がY2会社に労働者供給をしている日々雇用組
合員の労働組合法上の使用者に当たる。
2 Y2会社らが、組合らに対し、平成30年2月1日分以降の日々雇用組合員の供給を依頼しなかったことは、労働組合法第7
条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
ア まず、Y2会社が組合らに対し、平成30年2月1日分以降の日々雇用組合員の供給を依頼しなかったことは、組合員に対す
る不利益に当たるかについてみる。
(ア)Cセンターを通じて供給される日々雇用組合員の内の何名かがY2会社において継続して日々雇用を依頼され、就労することの
期待権があったことをもって、直ちに、全ての日々雇用組合員が個々に、継続してY2会社に供給され、日々雇用される期待権
を有していたとみるべき理由はなく、就労実態など、各組合員の個別具体的な事情を考慮して、個々の日々雇用組合員ごとに判断
されるべきである。
Y2会社は、個々の日々雇用組合員にとって供給先の一つにすぎない上、Y2会社での就労を期待することにつき合理的な理由
があったとはいえず、その他、特段の事情を有する組合員がいたとまではいえないのであるから、特定の日々雇用組合員が本件労
供契約に基づきY2会社に供給され、Y2会社において、継続して日々雇用される期待権を有していたとまではいえない。
(イ)以上のとおり、個々の日々雇用組合員がY2会社において継続して就労する期待権を有していたとまではいえない以上、
Y2会社が21.5.1供給契約書に基づく日々雇用組合員の供給を依頼をしなくなったことによって、組合らの組合員が不利益
を被ったとはいえない。
したがって、その余を判断するまでもなく、Y2会社が平成30年2月1日分以降、日々雇用組合員の供給を依頼しなくなった
ことは、組合らの組合員に対する不利益取扱いには当たらず、この点に関する組合らの申立てを棄却する。
イ 次に、Y2会社が、組合に対し日々雇用組合員の供給を依頼しなくなったことは、会社らによる、組合らに対する支配介入に
当たるかについてみる。
(ア)まず、組合に対する支配介入に当たるかについてみる。
Y2会社が平成30年2月1日分以降、組合に対し、21.5.1供給契約書に基づく供給を依頼しなくなったことは、組合員
に対する不利益取扱いには当たらないが、21.5.1供給契約書の一方的破棄は、合理的理由もなく、労使で合意した契約内容
を反故にするものであり、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
(イ)次に、支部に対する支配介入に当たるかについてみる。
①21.5.1供給契約書及び21.5.1附属協定書は、組合らとY2会社との間で締結されたものであること、②支部の日々雇用組合員が、
Y2会社に供給されていたこと、が認められ、これらのことからすると、21.5.1供給契約書に基づく使用の申込みが行われなくなれば、
支部の組合活動にも影響を与えることは明らかである。
そして、Y2会社が、本件労供契約に基づく供給の依頼をしなくなったことにつき、合理的な理由が認められないことは、前記
(ア)判断のとおりである。
したがって、Y2会社が、組合に対し労働者供給契約に基づく使用の申込みをしなくなったことは、Y2会社らによる、支部に
対する支配介入にも当たる。
ウ 以上のとおりであるから、Y2会社が平成30年2月1日分以降、組合に対し、21.5.1供給契約書に基づく供給を依頼
しなくなったことは、Y2会社らによる組合らに対する労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為には当たらないが、同条
第3号に該当する不当労働行為である。
3 30.2.7団交申入れ、30.3.8団交申入れ及び30.5.24団交申入れに対するY2会社らの対応は、労働組合法
第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
決定権限までは有さないB2(当時)Y1会社取締役・Y2会社取締役のみが団交に出席していたことについては、状況を説明し、
組合らも理解していたといえ、日々雇用組合員の供給の依頼を行わなくなった理由については一定説明を行い、経営状況についての
資料は組合から提示を求められていなかったため提示していないというものであるから、かかるY2会社らの対応は不誠実であったとまではいえず、
この点に関する組合らの申立ては棄却する。 |
掲載文献 |
|