概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成30年(不)第22号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和2年2月10日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、従業員1名を雇止めとしたことが不当労働行為で
あるとして申し立てられた事件である。
大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(争点)会社が、A組合員を平成30年3月31日をもって雇止めと
したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。
1 A組合員と会社との契約は、有期の雇用契約であったと見るのが相当である。
ただし、A組合員が、契約が更新されることを期待するのには合理的な理由があるとみるべきであり、このような状況下での雇
止めは、解雇に準ずる不利益性を有することは明らかである。
2 本件雇止めについて、合理性があるかについてみる。
平成29年10月のC1会社の広域協加盟に伴い、会社が生コン輸送の対象としていたC1会社の製造する生コンの受注構造が
大
きく変化し、C1会社自体の経営状況は不明だが、会社の売上高の年間の合計額は、実際に減少しており、営業損益も大幅に低下
して営業損失が発生しているといえる。その上、同30年3月になってもC1会社の生コン製造のシェア割りも確定していない中
で、組合との対立関係を背景に、会社が広域協の存続そのものを危ぶんでいる状況であったことからすれば、同30年3月31日
をもって、会社が、今後の先行きが不安だとして、1年の有期雇用契約の従業員について雇止めをしたとしても、直ちに不合理で
あるとまではいえない。
3 A組合員を雇止めとした当時の労使関係についてみる。
(1)某会社の代表取締役であり、労働組合に顔が利くという評判の人物であったC2氏が30年2月8日にA組合員と会社応接
室で面談し、組合と縁を切らないと契約がなくなる旨述べたことが認められるが、30.2.8面談の内容は、組合脱退勧奨とと
られても仕方のないものであり、また、社長ではないとしても、それ以外の会社関係者がC2氏に何らかの依頼をした疑いも拭い
切れないとはいえ、C2氏自身や会社がそれを否定している状況において、会社の指示によるものと明確に認めることまではでき
ない。
もっとも、C2氏に組合との対応について知恵を貸してほしいと依頼したのは会社であり、また、30.2.8面談の際、C2
氏がA組合員に話してもよいかと許しを求めた際に、社長は「大丈夫です」としてそれを許しているのだら、30.2.8面談に
おけるC2氏の言動に対して、会社にも一定の責任があるというべきであるが、そのことから、会社が組合を嫌悪していたとまで
認めることはできない。
そうである以上、30.2.8C2発言を根拠に、本件雇止めが組合嫌悪により行われたという組合の主張は採用できない。
(2)会社は、組合と事前協議合意に関する協定を結んでおきながら、組合と協議することなく、本件雇止め通告を行ったとい
え、会社が、本件雇止めを行うまでに30.3.9団交及び30.3.16団交を行ったことなどを考慮しても、会社の対応は、
事前協議合意に関する協定である29.6.1協定書を軽視した行動であるといえる。
4 しかしながら、①本件雇止め通告の際、社長はA組合員に、アルバイトでもいいのであればと、引き続き会社での就労を容認
する発言を行ったこと、②会社はA組合員だけでなく、同組合員より勤務期聞の長い非組合員2名も併せて雇止めとしていること
が認められ、これらの事実と前記2、3の判断を併せ考えると、A組合員が組合員であることを理由に雇止めとなったとまで認め
るに足る疎明はないと言わざるを得ない。
5 以上のとおりであるから、本件雇止めについては、組合員であることを理由として不利益な取扱いをしたものとも、組合に対
して支配介入したものともみることはできず、本件申立てを棄却する。 |
掲載文献 |
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