労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  三幸自動車 
事件番号  都労委平成24年不第10号 
申立人  全労協全国一般東京労働組合 
被申立人  三幸自動車株式会社 
命令年月日  平成25年7月2日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が、タクシー乗務員として勤務していた組合員X2を①就業時間中の無許可組合活動、②ホームページによる会社の機密漏洩、③虚偽の内容のビラによる会社の名誉毀損、④上司に対する暴行を理由に解雇したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は会社に対し、上記解雇がなかったものとしての取扱い及びバックペイ、文書の交付・掲示並びに履行報告を命じた。 
命令主文  1 被申立人三幸自動車株式会社は、申立人全労協全国一般東京労働組合の組合員X2に対し、平成23年9月16日付解雇をなかったものとして取り扱い、原職に復帰させるとともに、解雇の翌日から原職に復帰するまでの間の賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社本社営業所内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年  月  日
  全労協全国一般東京労働組合
  執行委員長 X1 殿
三幸自動車株式会社
代表取締役 Y1
   当社が、貴組合の組合員X2氏を平成23年9月16日付けで解雇したことは、東京都労働委員会において不当労働行為と認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
   (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 組合員X2の解雇理由について
(1)就業時間中の組合活動
 X2は就業時間内に第1回及び第2回の団交に参加したが、被申立人会社は第2回団交において、就業時間内であることを指摘するなどしたものの、結局同人が出席したままで団交が実施された。また、会社は第2回にX2が出席したことを団交の後で特に問題視してはいなかったといえる。また、第3回以降はX2の就業時間外に行われており、この問題は第2回を最後に事実上解消していたといえる。
(2)ホームページによる機密漏洩
 X2が自ら開設したホームページに掲載した資料・文書の中には会社の賃金体系についての資料や申立人組合に対する会社の回答文書など公開に慎重な取扱いが求められるものが含まれていたが、それらは公開されることにより直接に会社の競争上の地位が脅かされるような機密情報に該当するとまではいえず、また、X2がそれらを公開したことをもって解雇理由に相当するほどの重大な情報漏洩があったと評価すべき事情は見当たらない。
(3)虚偽の内容のビラによる名誉毀損
 X2が作成・配布したビラの記載内容(会社の退職金規程の廃止に伴う退職金の清算に関するもの)には正確さを欠く点があるが、事実と大幅な齟齬があるわけではなく、会社の名誉を毀損したとまで評価することはできない。また、会社の従業員に限って配布したものであり、若干事実と齟齬がある表現があったとしても、不特定多数の者に誤解を与える可能性は極めて低いといえる。
(4)上司に対する暴行
 平成23年4月30日の始業前、X2と会社の取締役管理本部長Y3との間で口論が起きた際、両人の腹部同士が接触したところ、会社はこれをX2による暴行と断じて解雇理由とした。しかし、その接触の程度は軽いものであり、そもそも暴行と評価するほどの重大な出来事ではなかったと推察でき、会社は、その後速やかに乗務停止等の指示を出すといったこともせず、X2を解雇するまで特段の措置を行わなかった。
2 総合判断
 前記1のとおり、会社の挙げる解雇理由はいずれもおよそ非違行為には該当しないか、あるいはたとえX2に責められるべき点があったとしても、解雇に相当するほどの重大な非違行為とはいえない行為であり、また、会社が23年9月に至ってこれらの行為を殊更に解雇理由として取り上げたことについて、必要性も合理性も見出せない。
 また、会社は、従業員が就業規則に違反した場合、本人に弁明の機会を与えるとしており、X2に対しても与えたとしているが、その実質は団交の場などにおいて当該行為について触れ、それが就業規則上問題であると指摘するにとどまるなど、弁明の機会を付与することの趣旨に即したものとは到底解することができない。
 さらに、他の処分の事例と単純に比較することはできないが、例えば、人身事故を起こしたが会社に報告せず、警察にも届けなかった乗務員に対する処分が出勤停止4日間にとどまった例と比較すると、X2に対する本件解雇は均衡を欠いた重い措置であるとの感が否めない。
 以上の事実に加え、会社がX2の組合加入公然化以降、明らかに組合を嫌悪していたことを併せ考えれば、会社は、同人が従業員で唯一組合に加入し、活発な組合活動を行ったことを嫌悪し、同人を会社から放逐し組合の影響力を排除するため、およそ解雇事由としては合理性及び相当性を欠く理由を殊更に取り上げて、一方的に解雇という不利益措置に及んだと判断するほかはない。
 したがって、会社がX2を解雇したことは労組法7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地裁平成25年(行ウ)534号 棄却 平成27年1月19日
 
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