概要情報
事件名 |
大阪兵庫生コン経営者会 |
事件番号 |
中労委平成22年(不再)第58号 |
再審査申立人 |
大阪兵庫生コン経営者会(「経営者会」) |
再審査被申立人 |
全日本建設交運一般労働組合関西支部(「建交労」) |
再審査被申立人 |
UIゼンセン同盟関西セメント関連産業労働組合(「UIゼンセン」) |
命令年月日 |
平成24年1月18日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、複数の労働組合が2つのグループに分かれて、経営者会とそれぞれ共同交渉を行っている中で、経営者会が、①共同交渉の開催時刻の変更をUIゼンセンに知らせなかったこと、②組合ら(「2労組」)と別グループ(「別労組ら」)との間で賃上げの回答時期に差を設けたこと(「本件対応」)が不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件である。
初審大阪府労委は、本件対応は不当労働行為に当たるとして、経営者会に対し、これに関する文書手交を命じたところ、経営者会は再審査を申し立てた。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 経営者会が、2労組との共同交渉で、別労組らとの共同交渉では行った賃上げ回答を同時には行わず、回答時期に差を設けたこと(本件対応)は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
経営者会は、別労組らに有額回答した日に2労組とも交渉しながら、有額回答の条件を明らかにすることはなく、「先が見えたら同じ回答をする」などと曖昧な回答に終始していた。そして、具体的な理由も述べず有額回答できない旨繰り返すなど、経営者会は2労組の理解を得るに足る説明や説得を行ったとはいえず、誠実な対応を通じて2労組との間の合意達成を模索する姿勢に欠けるといわざるを得ない上、およそ2労組に別労組らと同時期に有額回答することを目指していたともいえない。
このような経営者会の対応は、有額回答の時期につき別労組らと2労組とを合理的理由もなく差別扱いしたものであり、使用者の中立保持義務に反し、誠実交渉義務を尽くしたものとはいえない。よって、経営者会の本件対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
2 経営者会の本件対応は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
ア 経営者会は、別労組らに有額回答した日に2労組とも4時間半にもわたり交渉しながら、曖昧な回答に終始した上、経営者会に交渉を委任していた19社中13社もの会社が異を唱えて委任を取り下げてもなお有額回答しないとの態度を固持していることからすると、経営者会は、別労組らと同時期には2労組に有額回答しないとの意図の下に、2労組が、別労組らが推進している限定販売方式の廃止及びブロック対応金の廃止などの施策の実施に懸念を表明していたことに藉口して、これらに対する協力を有額回答の条件として持ち出し、あえて2労組に対する有額回答を先送りにしたと推認される。
したがって経営者会は、別労組らを有利に扱おうとする意図の下に、2労組の弱体化を企図したというべきである。
イ さらに、2つのグループの間に回答時期や内容に差が生じれば労働組合間で問題が起きるのは明白といえ、経営者会もそのことを十分了知していた。しかも、春闘交渉の要求事項の中でも、賃上げという組合員にとって最も重要な事項の一つである要求について、経営者会は賃上げは実施できない旨繰り返していたにもかかわらず、別労組らへの有額回答後も、2労組に対しては、共同交渉の早期開催を申し入れるなどの措置を取っていない。また、別労組らへの有額回答の翌日には既に、別労組らが、賃上げ回答は2労組にはなされていない旨記載したビラを2労組の組合員が勤務する職場にも配布していたのであるから、経営者会としては、2労組と別労組らの春闘交渉に関する取組みについて公平を期する観点から、少なくとも同日に行われた2労組との共同交渉においては有額回答するよう尽力すべきところ、誠実交渉義務に反して有額回答せず、結局、2労組への有額回答は別労組らへの回答に3日遅れたものである。
したがって、経営者会が2労組に対する有額回答の時期に差を設けたことに合理的な理由はなく、有額回答の時期を意図的に遅らせることによって2労組の弱体化を企図したものである。
よって、経営者会の本件対応は、労組法第7条第3号の支配介入に当たる。
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掲載文献 |
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