概要情報
事件名 |
阪急トラベルサポート |
事件番号 |
中労委平成23年(不再)第5号 |
再審査申立人 |
株式会社阪急トラベルサポート(「会社」) |
再審査被申立人 |
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合(「本部」) |
再審査被申立人 |
同HTS支部(「支部」)、支部の執行委員長X |
命令年月日 |
平成23年11月16日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
|
事件概要 |
会社に登録する派遣添乗員であるXは、Z誌の取材に応じたところ、Z誌に同取材による記事(本件雑誌記事)が掲載され、同記事は組合ブログに紹介された。会社は、これら記事が事実に反し、会社の名誉を毀損し会社の業務を妨害するものであるとして、Xに対しZ誌及び組合ブログに訂正記事の掲載などを求めるように要求し、Xがこの要求を拒否したことから、Xを本件アサイン停止とした。
本件は、①本件アサイン停止及び②本件アサイン停止に関する団体交渉に組合らが求めるZ誌の出版会社代表者の同席を拒否したことが不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
初審東京都労委は、①本件アサイン停止が不当労働行為に当たるとして、会社に対し、Xの添乗業務への復帰及びXが本件アサイン停止から添乗業務復帰までの間に受けるはずであった賃金相当額の支払、②上記①に係る文書交付を命じ、③その余の申し立てを棄却したところ、会社は不服として再審査を申し立てた。
|
命令主文 |
上記初審命令主文①及び②をそれぞれ、「①本件アサイン停止を解除し、Xを会社の登録派遣添乗員として取り扱うこと」、「②Xが派遣添乗員として就労していたならば受けるはずであった1年間分の賃金相当額を支払うこと」に変更。
|
判断の要旨 |
1 本件アサイン停止は不当労働行為になり得ないとの会社の主張について
会社は、Xは派遣の都度雇用関係が生じる登録型派遣労働者であり、アサインを受ける権利を有しないなどとして、本件アサイン停止は不当労働行為に該当する余地はないと主張する。
しかしながら、会社とXの関係は、派遣添乗ごとの短期労働契約が長期間にわたり専属的かつ継続的に繰り返されてきたものであるなど、常用型の派遣に近似した関係があり、会社は同期間も含め労働組合法第7条が適用される使用者であったとみることができるから、本件アサイン停止は、会社とXの間に存在してきたこのような関係を切断する措置として、不当労働行為に該当し得るものである。
2 本件アサイン停止について
ア 本件雑誌記事中の「同僚3人が仕事が原因で体調を壊し亡くなった」との記載は、Xの発言がもとで記載されたものであり、XのZ誌の取材に対する対応は、会社の派遣添乗が極めて過酷なものとの印象を与えるもので、会社の名誉・信用を相当程度毀損するものであったと推認できるから、組合活動として正当化されるものではない。また、Xが訂正記事の掲載を拒否し、会社の名誉毀損の拡大の回避、会社の名誉回復の措置をとらなかったことも労働組合の正当な行為といえるものではない。よって、本件アサイン停止は、Xの正当な組合活動の故の不利益取扱いとはいえない。
イ 会社の派遣添乗員のアサイン停止事例をみると、業務に関し又は業務中に、本人自らが行ったことに対し措置が行われたものであるが、本件アサイン停止は、自ら執筆した記事に対する責任が問われたものではない。また、これまでXに非違行為があり、Xに注意・指導が行われたり、懲戒処分などが行われたりしたことをうかがわせる事情は認められないのであるから、Xに対する本件アサイン停止の相当性には疑問がある。また、会社は、本件アサイン停止を通告した際に行った事情聴取(本件事情聴取)以外にXに事情を聴取し、釈明や是正を求めるなどの措置をとった形跡はうかがわれず、本件事情聴取においても、Xが謝罪や訂正記事の掲載を拒否すると直ちに「抗議文」を示し、会社の就業規則で定められた解雇と事実上同視できる本件アサイン停止を通告している。以上によれば、本件アサイン停止は、その措置内容としての相当性に疑問があり、また、慎重かつ的確な手続をとることなく性急に行っているといわざるを得ない。
ウ 支部は、みなし労働時間制の適用ないし未払残業代の支払をめぐって、会社と厳しく対立していたが、会社は、支部の委員長としてこれら活動の中心的存在として重要な役割を担っていたXを快く思っていなかったことは当然に推認される。
エ 以上を総合勘案すると、本件アサイン停止は、みなし労働の撤廃などを掲げて活動する支部の中心的な存在であるXに対し、解雇と同視し得る措置を課し、Xを会社から排除することにより、組合の組合活動を減退させようとして行われたものと推認でき、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
3 救済方法について
本件アサイン停止は、不当労働行為に当たるが、Xには一定の処分ないし措置が行われてもやむを得ない事情が認められ、また、Xの派遣添乗の実現は会社のみでなし得ることではない。よって、本件救済にあっては、会社に対し、上記命令主文のとおり命じることが相当である。
|
掲載文献 |
|