概要情報
事件名 |
エクソンモービル(再雇用制度廃止) |
事件番号 |
中労委平成15年(不再)第49号 |
再審査申立人 |
スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(以下「組合」又は「本部」) |
再審査被申立人 |
エクソンモービル有限会社(以下「会社」) |
命令年月日 |
平成23年11月2日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
本部及び分会連(併せて「組合ら」という。)及び組合員X1が連名で、(1)11年1月1日付けの定年退職者再雇用制度の廃止に関する会社と本部との団交(以下「本部団交」という。)における会社の対応が団交拒否に当たり、また、(2)①会社がX1の所属する分会連に団交申入れをせずに同制度を廃止したこと、及び②12年1月31日付けで定年退職するX1の再雇用要求に関する分会連の団交申入れに会社が応じなかったことが団交拒否に当たり、さらに、(3)①会社が同制度を廃止したこと、②X1を再雇用しなかったことが不利益取扱いに当たるとして、同年11月6日に救済を申し立てた事件である。
初審広島県労委は、上記(3)①を申立期間徒過により却下し、その余の申立てを棄却したところ、組合ら及びX1はこれを不服として再審査を申し立てた(X1は再審査中に申立てを取り下げた。)。
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命令主文 |
主文
Ⅰ 1 初審命令主文第2項を次のとおり変更する。
2 本件再雇用制度廃止に関する本部と会社との団交が団交拒否に当たるとの申立て及び会社が分会連に対して、同制度に関する団交申入れを行わずに同制度を廃止したことが団交拒否に当たるとの救済申立てをいずれも却下し、その余の救済申立てをいずれも棄却する。
Ⅱ 本件再審査申立てを棄却する。
Ⅲ 初審命令主文第1項を「本件再雇用制度を廃止したことが不利益取扱いに当たるとの救済申立てを却下する。」と訂正する。
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判断の要旨 |
1 本部団交に係る団交拒否について
本件再雇用制度廃止に関する本部団交は、廃止通知以降6回、11年1月1日の廃止後1回開催され、廃止撤回を求める本部と受け入れられないとする会社とが対立し、結局廃止後の同月19日の団交で本部が、廃止は了解できず救済申立てを行う旨述べているから決裂する状況となったものと認められ、その後本部は団交を申し入れていない。また、本部は、12年1月17日の本部団交でX1の再雇用を要求し、同年2月9日に同要求と本件再雇用制度廃止の無効を主張しているが、この本部団交や本部要求は、上記の本部団交や本部要求とは別異のものというべきである。しかるに、組合らの救済申立ては同年11月6日になされているから申立期間徒過により却下を免れず、これと異なる初審命令部分は相当でない。
2 分会連に係る団交拒否について
ア 再雇用制度廃止に関する団交拒否
分会連は、独自の組合規約、意思決定機関及び執行機関をもった労働組合であるから、所属組合員の労働条件について独立して団交の主体たる地位にある。しかしながら、上記(1)のとおり、同制度廃止に関する本部団交が決裂する状況となったところ、その間に分会連からの団交申入れはなく、また、本部三役と分会連三役を兼務するX2が本部団交に出席し、出席しなかった場合でも事後に本部団交の内容及び本部の意見や考えを聞知していたし、分会連三役のX1は、X2ら本部三役からの電話連絡及び本部の「団交速報」により事実経過等を聞知していたのに本件救済申立てまでの間、分会連は団交を申し入れなかった。他方、本部から本部団交で協議すべきであるといわれた会社は、分会連との事前協議の取決め等がない状況下で、上記(1)のとおり同制度廃止に関する本部団交は決裂したと認識していたと推認される。以上によれば、会社が、分会連に同制度廃止に関する団交申入れを行わずに同制度を廃止したことが団交拒否に当たるとの組合らの救済申立ては、申立期間を徒過したものとして却下を免れず、これと異なる初審命令部分は相当でない。
イ X1の再雇用要求に関する団交拒否
再雇用について分会連と事前協議の取決め等がなく、また、分会連はX1の再雇用に関して団交申入れを行っておらず、会社が分会連に団交申入れをしなければならない特段の事情もうかがわれない本件においては、X1の再雇用に関して団交申入れをしなかった会社の対応が団交拒否に当たるとはいえない(なお、会社は同制度廃止問題は既に決裂していたと認識していたと推認される。)から、これと同旨の初審命令部分は相当である。
3 本件再雇用制度を廃止したこと及びX1を再雇用しなかったことについて
組合らは、①本件再雇用制度廃止に合理的理由はなく、本部は合意していないから同制度を維持しなければならないのに、X2及びX1の定年退職を知った上で、X2の退職直前に同制度を廃止して同人を再雇用せず、引き続きX1を再雇用しなかったことは、X1が組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たる、②本部は同制度廃止の効力が廃止日以降の全定年退職者に及ぶと考えて団交を行い、救済を申し立てているから「継続する行為」に該当すると主張する。まず、初審命令の却下判断の当否をみるに、上記1及び2アの団交経緯にかんがみれば、同制度の廃止自体は完結した1個の行為である上、それをめぐる団交は11年1月19日の本部団交をもって終了しているから、12年11月6日に行われた本件再雇用制度廃止に関する救済申立ては申立期間を徒過したものとして却下を免れず、これと同旨の初審命令部分は相当であるが、初審命令主文第1項には明白な誤りがあるので、主文第Ⅲ項のとおり訂正する。次に、X1を再雇用しなかった点をみるに、同制度期間中の再雇用希望者は全員再雇用され又は再雇用制度停止一時金を支給されているところ組合員には定年退職者はおらず、同制度廃止後は、X2及びX1のみでなく定年退職者全員が再雇用されておらず、その中に別労組の組合員もいたから、会社がX2及びX1をことさら不利益に取り扱う目的で同制度を廃止したとはいえない。
なお、組合らは、11年4月1日付け廃止とせず、X2の退職直前の同年1月1日付け廃止としたのはX2への適用を排除するためであり、引き続きX1も再雇用しなかったものであると主張する。しかしながら、廃止期日を会計年度に合わせた会社の経営上の判断に、特段の不合理な点は認められず、さらに、3月にも組合員でない定年退職者が1名存在し、廃止期日を4月1日としなかったことにより不利益を受けたのはX2だけではないから、会社がX2への適用を排除するため11年1月1日付け廃止としたものとは認められず、ましてや12年1月31日付けで定年退職するX1に同制度の適用を排除する意図の下に同制度を廃止したとは到底いえない。また、組合らは、定年退職者及び早期退職者の中にアルバイトとして雇用された者がいた事実を会社が隠蔽したのは不誠実である点に関する判断が、初審命令には欠けている旨主張する。しかしながら、アルバイト雇用が同制度と実質的に同一のものとの組合らの立証はないことに加え、①同制度の適用ではなく、各事業部署で一時的かつ部分的な労働力不足解消のための短期有期契約で更新はほとんどなく、②契約期間、契約日及び職種も多種多様で、③制度廃止後4年間の退職者約400ないし500人中約20ないし30人の雇用にすぎず、各事業部署の一時的労働力不足等を個別のアルバイト契約により補う会社の経営判断が不合理ともいえず、形式を変えて定年退職者の再雇用を存続させ又は復活させたともいえないことから、組合らの主張は採用できない。したがって、X1を再雇用しなかったことは、不利益取扱いとは認められず、これと同旨の初審命令部分は相当である。
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掲載文献 |
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