概要情報
事件名 |
キングタクシー |
事件番号 |
秋田県労委平成22年(不)第2号 |
申立人 |
キングタクシー労働組合 |
被申立人 |
キングタクシー株式会社 |
命令年月日 |
平成23年3月10日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が申立人組合の申し入れたチェック・オフ協定締結を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。 秋田県労委は、会社に対し、組合が申し入れたチェック・オフ協定について協議し、協定を締結してチェック・オフを再開すること及び組合への文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人が申し入れたチェック・オフ協定について協議し、この協定を締結し、チェック・オフを再開しなければならない。
2 被申立人は、本命令書写しの交付の日から1週間以内に、下記の文書を申立人に交付しなければならない。(大きさはA4判とし、年月日は交付する日を記載すること。)
記
平成 年 月 日
キングタクシー労働組合
執行委員長 X1 様
キングタクシー株式会社
代表取締役 Y1
当社が、平成22年5月以降、貴組合と協議することなく、毎月の賃金からのチェック・オフを一方的に中止し、その後のチェック・オフ協定締結を拒否したことは、秋田県労働委員会において労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
当社は、今後このような行為を繰り返さないようにします。
3 申立人のその余の本件救済申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
申立人組合は、被申立人会社との間で例年4月から6月にかけて賃金交渉を行い、36協定とチェック・オフ協定を締結していた。そして、少なくとも過去20年余りにわたって組合費のチェック・オフを行ってきた。この間、平成19年には6月にチェック・オフ協定が締結されているが、4月から6月の賃金支給に際してもチェック・オフが実施されており、協定の失効をもってチェック・オフが中止されたことはない。
会社は、22年5月1日の団体交渉で突然、今年は組合との協定が締結されていないのでチェック・オフを実施しないと一方的に宣言し、同月6日に組合からチェック・オフ協定の締結を求められた際にも、事務処理上間に合わないとして拒否するとともに、翌日の賃金支払日のチェック・オフを中止した。しかし、20年余にもわたるチェック・オフを一方的に中止するためには、中止を相当とする合理的な理由とともに、事前の交渉や話合いによって相手の了解を得るか、相手方に不測の混乱等を生じさせないような配慮が必要というべきである。
この点、会社は同協定を締結しなかった理由について、3点を挙げているが、第1の申込みが不存在であるとの理由については、過去の協定締結に際して特段明確な申込み手続きを要していなかったことや協定の空白期間が存在していてもチェック・オフが行われていたこと、22年4月の賃金についてもチェック・オフが行われていることなどから、合理的な理由とは考えられない。
第2のチェック・オフ協定の見直しの必要性については、このような理由が5月22日までの団交の中で述べられたことはなかったし、見直しの必要があったならば、チェック・オフを実施しないと宣言する前に協定内容の修正などの改善案を組合と協議することが相当であったといえる。
第3の事務処理負担の問題については、確かにチェック・オフは会社の経理担当者の手をわずらわすものであるが、会社は組合費だけを控除していたわけではなく、それ程の手間とは考えにくい上、会社は事務処理の増加分がどの程度であるかについても明らかにできないというのであるから、これが合理的な理由であるとは認められない。
これらに加え、当時会社と組合との労働協約の有効性について紛争が生じており、組合員らは秋田地裁に訴訟を提起していたところ、このような労使間が緊張した状態の中で、会社が上記のようにしてチェック・オフを中止したことからすると、会社は組合を弱体化する意図のもとにチェック・オフを中止したものと認められ、組合の運営に対する支配介入があったものと解するのが相当である。 |
掲載文献 |
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