労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ザイオソフト 
事件番号  中労委平成21年(不再)第32号・第33号 
再審査申立人  第32号再審査申立人 ザイオソフト株式会社(以下「会社」) 
再審査申立人  第33号再審査申立人 全国一般東京一般労働組合(以下「組合」) 
再審査被申立人  第33号再審査被申立人 会社 
再審査被申立人  第32号再審査被申立人 組合 
命令年月日  平成22年11月10日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要   会社が、19年10月9日付けで組合が行った賃金制度の改善などを議題とする団体交渉申し入れ(「本件団体交渉申し入れ」)に対し、(1) 組合の組合員に使用者の利益代表者である者が含まれている、(2) 具体的日程を決める前に時間帯、出席者、議題などを明確にするよう調整を求めるなどとして応じなかったことが、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は、会社に対し、賃金・退職金制度の改善などを議題とする団体交渉について、組合の組合員に経営会議への出席者がいることなどを理由に団体交渉を拒否することなく、速やかにかつ誠実に応じることを命じたところ、会社はこれを不服として、また、組合は初審命令が誓約文の交付および掲示を命じなかったことを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 
命令主文  1 初審命令主文の一部を改め、文書手交を命じる。
2 会社の本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合は労組法の規定する労働組合といえるか。
 組合は実質的要件が欠如しているとの会社の主張は、当委員会の資格審査において、労組法第2条および第5条第2項の規定に適合するものと認められ、適格決定されているのであるから、失当である。また、会社は、経営会議のような経営上の重要な意思決定機関に出席していた分会員らは、労組法第2条但書第1号に定める「使用者の利益を代表する者」に当たると主張するが、経営会議は、主として、月次決算、社員採用、製品の不具合などについて各部署の報告事項を述べる場となっていたことからすると、そのような会議に出席していたことをもって会社の労働関係についての計画と方針に関する機密事項に接していたとはいえないのであるから、分会員らが今後も同様の会議への出席を予定しているとしても、その職務上の義務と責任とが労働組合の組合員としての誠意と責任に直接抵触するとまではいえず、「使用者の利益を代表する者」には該当しない。
2 会社が本件団体交渉申し入れに応じないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。
本件の団体交渉事項については、労働条件に関する事項が含まれていることは明らかであり、組合がその内容についても説明していたことからすると、事前に明らかにしておかなければ団体交渉が円滑に行えないような疑義が存在していたとはいえない。それにもかかわらず、会社は、交渉議題が不明確であるとして調整を求める旨の主張を繰り返していた。このような会社の対応は、事前調整の要求を繰り返すことにより、いたずらに団体交渉の開催を先送りにしているものであり、団体交渉に応ずる意思がないものといわざるを得ない。更に、組合は救済申立適格を有すべき法的資格ないし地位を有していないなどとする会社の主張と照らし合わせると、会社の対応は、組合の団体交渉権を否認するに等しいものといえる。よって、会社が本件団体交渉申し入れに応じないことは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
3  初審命令の命ずる救済方法は相当であるか。
 初審命令交付後の状況をみると、組合が、会社の社長に分会役員らとざっくばらんな話をしたい旨メールを送ったことに対し、会社は、以後この様な行為を行わないよう指示する旨通告したのみで、組合の提案に対し何ら具体的な回答を行っていない。このように、会社には組合との団体交渉に応ずる意思は認められず、分会員の労働条件について団体交渉を行う必要性は大きいということができる。
 そこで、本件の救済方法について検討するに、(1) 会社が組合の団体交渉権を否認するに等しいといえる対応を取っていること、(2) 本件労使間においては、分会員の加入する組合との団体交渉により労働条件を決定するという関係の構築が不可欠であることからすれば、本件については、会社の不当労働行為責任を明確にした上で、上記団体交渉拒否のような事態の再発を防止し、正常な労使関係の確立を図るため、諸般の事情を考慮し、会社に対し、初審命令主文に加えて、今後同種の不当労働行為を繰り返さない旨の文書交付命令を命じるのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成20年(不)第3号 全部救済 平成21年8月4日
東京地裁平成23年(行ウ)第33号 棄却 平成23年10月19日
東京高裁平成23年(行コ)第377号 棄却 平成24年2月23日
最高裁平成24年(行ツ)第186号・平成24年(行ヒ)第220号 上告棄却・上告不受理 平成24年8月29日
 
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