概要情報
事件名 |
東急バス |
事件番号 |
東京都労委平成14年(不)第9号
東京都労委平成15年(不)第115号
東京都労委平成13年(不)第96号
|
申立人 |
全労協全国一般東京労働組合 |
被申立人 |
東急バス株式会社 |
命令年月日 |
平成17年 5月10日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
|
事件概要 |
会社が、(1)組合員である乗務員に対し、残業扱いとなる業務の割当てを行わなかったこと、(2)別組合との職場協議を行いながら、組合とは職場協議に応じなかったこと、(3)郵便物の取次ぎなどの便宜供与に応じず、別組合と差別して取り扱ったこと、(4)別組合に対しては認めている営業所内でのビラ配布について、組合には認めなかったこと、(5)乗務員の勤務ぶりを調査した乗務状況報告書の評価基準等に関する団体交渉に応じず、同報告書に押印しなかった組合員を譴責処分に付したこと、(6)譴責処分に関する団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、(1)乗務の割り当てに関する他組合との差別的取扱いの禁止、(2)郵便物等の取次ぎに関する他組合との差別的取扱いの禁止、(3)便宜供与に関する協議の誠実応諾、(4)文書交付及び掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人東急バス株式会社は、バス乗務員に対し残業扱いとなる乗務を割り当てるに当た って、申立人全労協全国一般東京労働組合の組合員に対して、他の乗務員と差別して取り扱 ってはならない。
2 被申立人会社は、申立人組合から会社従業員である組合員あてに送られてきた郵便物等に ついて、申立外東急バス労働組合に係る郵便物等と異なる取扱いをしてはならない。
3 被申立人会社は、申立人組合が要求する便宜供与について、申立外東急バス労働組合との 間に合理的理由のない不平等が生じないよう、申立人組合との協議に誠実に応じなければな らない。
4 被申立人会社は、添乗調査の頻度等の運用及び乗務状況報告書の評価基準について、申立 人組合が団体交渉を申し入れたときは、団体交渉事項ではないなどとして拒否してはなら ず、誠実に応じなければならない。
5 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交 付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁 大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、本社及び会社従業員の勤務する営業所内の従業員の見 やすい場所に10日間掲示しなければならない。
(文書略)
6 被申立人会社は、前項を履行したとき、速やかに当委員会に文書で報告しなければならな い。
7 その余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
X1組合員は会社を退職しているが、組合を脱退したとは認められず、また、同人に係る救済申立ては、残業の割当てに関するものであるが、これについて同人に不利益が生じている場合、それは退職によって解消されるものではなく、同人が本件申立てによる救済を求めない旨の意思表示を行ったこともないから、組合にはなお救済申立てを維持する利益が存在するというべきであり、却下を求める会社の主張は採用できないとされた例。
2625 非組合員化の言動
2900 非組合員の優遇
会社は組合の分会結成後約半年を経過した頃から組合員に残業を割当てなくなっているところ、(1)組合員に残業させる業務上の必要がなくなったことについて会社は具体的な疎明を行っていないこと、(2)残業を希望しながら割り当てられなかったのは組合員だけであること、(3)組合と会社の労使関係は悪化の一途をたどっていたことからすれば、会社が組合を嫌悪して組合員に対し差別的取扱いをしたと認めるには十分な理由があり、会社が残業の割当てについて組合員である乗務員に対し他の従業員と異なる取扱いをしたことは、組合員であることを理由とした差別的取扱いであり、ひいては組合組織の弱体化を図ったものとして支配介入に該当するとされた例。
2216 その他
組合は、営業所の所長が別組合との職場協議に応じながら、組合の申し入れる同様の協議に応じないことが不当労働行為であるとして救済を申立てているが、組合が営業所長に協議を申し入れる際、職場協議とは言わずに団体交渉という言葉を使用し、応じないのは団交拒否であるとすることから、営業所長が団交応諾義務が生じる使用者はあくまで会社自体であるとし、団体交渉申入れは本社あてに行ってほしい旨回答したことは必ずしも不当とはいえず、営業所の日常的な問題に関して別組合の役員と営業所長が職場協議を行う慣行が成立していたと認めるに足る疎明もないことから、組合の申立てが棄却された例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2900 非組合員の優遇
同一企業内に複数の労働組合が併存する場合は、使用者は、各組合に対して中立的な態度を保持し、併存組合を合理的な範囲で平等に取り扱うべきことが要求されていると解されるところ、会社は別組合に対して郵便物の取次ぎ等各種の便宜供与を行っていること、組合に対し便宜供与に応じない具体的理由を何ら説明せず、内部検討すら行っていなかったこと等から、会社はそもそも、便宜供与について組合と誠実に協議し、合理的な範囲で組合と別組合を平等に取り扱う意思が全くなかったとみるのが相当であり、これら会社の行為は、いずれも併存組合に対する中立保持義務に反しており、支配介入に当たるとされた例。
2300 賃金・労働時間
バス乗務員の乗務状況を把握するため会社は覆面の調査員による添乗調査を行っており、乗務員には調査員から提出された乗務状況報告書に押印を求めているところ、会社は添乗調査に関する事項は団交事項に当たらないとして団体交渉に応じていないが、添乗調査の結果に基づく評価が査定に影響することは会社も認めており、査定の結果は賃金や賞与にも影響し得るのであるから、添乗調査の評価基準は組合員の労働条件に密接に関連する事柄ということができ、会社が団交に応じないことは、正当な理由のない団交拒否とされた例。
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
バス乗務員の乗務状況を把握するため会社は覆面の調査員による添乗調査を行っており、乗務員には調査員から提出された乗務状況報告書に押印を求めているところ、覆面の調査員による添乗調査制度そのもの、その調査結果を査定に反映させること自体には業務上の必要性が認められ、また、当該乗務員に乗務状況報告書への押印を求め、これに応じない者に対し業務命令違反として就業規則所定の懲戒処分をもって臨むことに問題はなく、乗務状況報告書に押印しなかった組合員9名を譴責の懲戒処分に付したことは、組合に対する支配介入及び組合員に対する不利益取扱いに当たるという組合の主張は採用できないとされた例。
|
業種・規模 |
道路旅客運送業(バス専業) |
掲載文献 |
|
評釈等情報 |
 
|