労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本貨物鉄道・西日本旅客鉄道・九州旅客鉄道(福岡不採用) 
事件番号  中労委 平成 1年(不再)第26号 
中労委 平成 1年(不再)第29号 
中労委 平成 1年(不再)第30号 
再審査申立人  西日本旅客鉄道 株式会社 
再審査申立人  日本貨物鉄道 株式会社 
再審査申立人  九州旅客鉄道 株式会社 
再審査被申立人  国鉄労働組合門司地方本部 
再審査被申立人  国鉄労働組合門司地方本部北九州支部 
再審査被申立人  国鉄労働組合門司地方本部博多支部 
命令年月日  平成 6年 9月 7日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  本件は、国鉄の分割・民営化により発足した日本貨物鉄道、西日本旅客鉄道、九州旅客鉄道が採用を希望した国労組合員合458名を採用しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 初審福岡地労委は、(1)本件国労組合員を昭和62年4月1日以降各社の社員として取り扱うこと、(2)就労すべき職場・職種についての組合との協議、(3)バック・ペイ(国鉄清算事業団からの既支給額を除く)及び(4)文書手交・掲示を命じた。
 三社は、これを不服として再審査を申立てたところ、中労委は、三社に使用者責任を認め、初審命令の一部を変更し、(1)九州会社ら3社は、本件国労組合員458名(ただし、九州会社にあっては、再審査被申立人が救済対象者から削除する旨申し出た者2名を除き、貨物会社にあっては、平成元年4月1日付で同社に採用された者2名を除く。)のうち、清算事業団離職者であって、本命令交付後九州会社ら三社にその職員として採用さされることを申し出たものの中から、改革法第23条第1項の規定により同社らの設立委員の提示した職員の採用の基準等を参考として同社らが改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4月1日をもって当該会社の職員に採用したものとして取り扱い、本命令交付日から3年以内に就労させること、(2)九州会社ら3社は上記(1)による選考、判定の結果及び選考が公正に行われたことについてそれらに用いた資料を添えて、当委員会に報告すること、(3)九州会社ら三社は、上記(1)及び(2)を履行するに当たり、同62年4月1日をもって九州会社三社の職員に採用したものとして取り扱われる者(以下「採用対象者」という。)の就労すべき職場・職種について、それぞれ、再審査被申立人らと協議すること、(4)九州会社ら3社は、採用対象者に対して、平成2年4月2日からこれらの者が就労するまでの間、これらの者がその期間についてそれぞれ昭和62年4月1日に九州会社ら3社に職員として採用されていたならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額の支払いを命じ、併せて九州会社及び貨物会社に対する文書交付を命じた。
(注)初審(福岡、昭和62不2、平成元.3.9決定)別冊中央労働時報1071号参照 
命令主文  I 本件初審命令主文を次のように改める。
1 再審査申立人九州旅客鉄道株式会社、同日本貨物鉄道株式会社及び同西日本旅客鉄道株式会社(以下「九州会社ら3社」という。)は、本件初審命令別紙組合員目録(以下「組合員目録」という。)記載の組合員(再審査申立人九州旅客鉄道株式会社にあっては、同目録(1)記載の組合員(番号12のX1及び 152のX2を除く。)、同日本貨物鉄道株式会社にあっては、同目録(2)記載の組合員(番号11記載のX3び25のX4を除く。)、同西日本旅客鉄道株式会社にあっては、同目録(3)記載の組合員に限る。)のうち、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(昭和61年法律第91号)の失効に伴い平成2年4月2日に申立外日本国有鉄道清算事業団からの離職を余儀なくされた者(以下「清算事業団離職者」という。)であって、本命令交付後当該会社にその職員として採用されることを申し出たものの中から、それぞれ、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号、以下「改革法」という。)第23条第1項の規定により当該会社の設立委員の提示した職員の採用の基準等を参考として当該会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4月1日をもって当該会社の職員に採用したものとして取り扱い、本命令交付日から3年以内に就労させなければならない。
2 九州会社ら3社は、上記第1項による選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われた ことについて、それらに用いた資料を添えて、それぞれ、当委員会に報告しなければならな い。
3 九州会社ら3社は、上記第1項を履行するに当たり、昭和62年4月1日をもって当該会社 の職員に採用したものとして取り扱われる者(以下「採用対象者」という。)の就労すべき 職場・職種について、それぞれ、再審査被申立人らと協議しなければならない。
4 九州会社ら3社は、採用対象者に対して、平成2年4月2日からこれらの者が就労するま での間、これらの者がその期間について、それぞれ、昭和62年4月1日に当該会社に職とし て採用されていたならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額を支払わなければ ならない。
5 再審査申立人九州旅客鉄道株式会社及び同日本貨物鉄道株式会社は、本命令交付後、速や かに再審査被申立人らに対して、それぞれ、次の文書を交付しなければならない。ただし、 再審査申立人日本貨物鉄道株式会社にあっては、下記の文言中「九州旅客鉄道株式会社代  表取締役Y1」とあるのを、「日本貨物鉄道株式会社 代表取締役Y2」とする。
                     記
  昭和62年4月1日の採用においては、当社の職員として不採用とされた貴組合の組合員の 一部については、不当労働行為に当たる行為があったと中央労働委員会により認定されまし た。
  今後は、法令を遵守し、正常な労使関係の形成に努めます。
                                 平成 年 月 日
   国鉄労働組合
    中央執行委員長 X5 殿
   国鉄労働組合門司地方本部
    地方執行委員長 X6 殿
   国鉄労働組合門司地方本部北九州支部
    支部執行委員長 X7 殿
   国鉄労働組合門司地方本部博多支部
    支部執行委員長 X8 殿
                          九州旅客鉄道株式会社
                           代表取締役 Y1 印
6 再審査被申立人らのその余の本件各救済申立てを棄却する。
II 九州会社ら3社のその余の本件各再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1500 不採用
国鉄改革に際し、新会社に採用を希望した国労組合員に対して、国鉄が採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が新会社に採用すると決定しなかったことが少なくとも一部の者について不当労働行為であるとされた例。

3900 「不利益の範囲」
国鉄改革に際し、新会社に採用を希望した国労組合員に対して、国鉄が採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が新会社に採用すると決定しなかったことが少なくとも一部の者について不利益取扱があったと判断された例。

4417 条件付命令・協議命令
命令交付後新会社に職員としての採用を申し出た者の中から、新会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4月1日をもって新会社の社員に採用したものとして取り扱い3年以内に就労させることを命じた例。

4417 条件付命令・協議命令
会社が採用対象者を選考する際に、選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われたことについて、それらに用いた資料を添えて労働委員会に報告することを命じた例。

4417 条件付命令・協議命令
救済対象者の数を具体的に明示せず「相当数となるようにすべきである」とした例。

4417 条件付命令・協議命令
昭和62年4月1日をもって新会社の職員に採用したものとして取り扱われる者の就労すべき職場・職種について、組合と協議することを命じた例。

4408 バックペイが認められなかった例
清算事業団を離脱した平成2年4月2日から就労するまでの期間について、昭和62年4月1日に新会社に採用されていたならば得られたであろう賃金相当職の60%に相当する額の支払いを命じた例。

4612 P.Nに替えて他の措置を命じた例
陳謝文の手交及び掲示を命じた初審命令を文書交付に変更した例。

5006 採用の請求
新会社発足に当たっての社員の採用は、典型的な新規採用の場合における企業の採用の自由とはその性質を異にしており、しかも、本件不採用は不当労働行為に該当するのであるから採用命令は企業の採用の自由を侵害するものではないとされた例。

5006 採用の請求
基本計画において、定められた採用人員枠を超えて採用を命ずることは救済命令の裁量の範囲を逸脱するものであり、会社の経営状況からも命令の実現は不可能であるとの会社主張が斥けられた例。

5006 採用の請求
補充採用において、採用を辞退し、あるいは募集に応募しないような組合員と雇用契約を締結することは、法律上も事実上も実現不可能であるとの会社主張が斥けられた例。

1500 不採用
承継法人の職員の採用にあたり、国労と他の組合員の採用率は著しい格差のあることが不当労働行為とされた例。

4911 解散事業における使用者
国鉄による承継法人への職員となるべき者の選定及び雇用候補者名簿の作成は、承継法人の設立委員の補助機関として行ったものであり、その過程は不当労働行為と目される行為があった場合の責任は設立委員に帰属された例。

4911 解散事業における使用者
改革法23条3項にいう採用とは文字どおり採用のみを指し、不採用については同条項が適用されないとの会社の主張が斥けられた例。

5121 挙証・採証
承継法人の職員の採用にあたり、国労と他の組合の組合員との採用率に著しい格差の生じた合理的理由の疎明がない場合、大量観察方式による判断が許された例。

3604 労働者に落度がある場合
国鉄改革の課程において職場規律の是正に必ずしも協力的でなかった国労組合員の行動にはそれが勤務の評定に影響を与えることとなったとしても無理からぬ側面もあったとされた例。

4909 事業分離後の新企業体
商法上の発起人に相当する鉄道会社の設立委員が負うべき不当労働行為とされる行為の責任は当該鉄道会社に帰属するとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集100集877頁 
評釈等情報  中央労働時報 平成6年11月10日  882号 23頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡地労委 昭和62年(不)第2号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 1年 3月 9日 決定 
 
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