概要情報
事件名 |
北九州市交通局 |
事件番号 |
福岡地労委昭和42年(不)第26号
|
申立人 |
北九州市交通局労働組合 |
被申立人 |
北九州市 交通局長 |
命令年月日 |
昭和47年 4月26日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
|
事件概要 |
市交通局の財政再建計画に反対して行なった超勤拒否闘争、安全運行点検闘争、休暇闘争が違法であるとして、委員長らを停職処分に付した事件で、処分の取消しおよび処分に伴う不利益の是正を命じた。 |
命令主文 |
被申立人は昭和42年8月2日付行なったX1、X2、X3に対する停職6ヵ月、X4、X5、X6、X7、X8に対する停職3ヵ月、X9、X10、X11、X12に対する停職1ヵ月、X13に対する戒告の各懲戒処分を取消し、同人らに対する賃金および処遇面において、上記の懲戒処分がなかったと同様の状態を回復しなければならない。 |
判定の要旨 |
0200 宣伝活動
Y1課長が無断で貼付した教宣ビラを撤去するのを阻止し、同課長の制止を無視して教宣ビラを貼付した執行委員X9の行為は、撤去の阻止に当り違法と認められる手段によったとは認められず、また、貼付した教宣ビラによって事務の支障、庁舎の外観を損った事実もないことから、違法行為とまでいえない。
0203 職場闘争と業務妨害
0414 ピケッティング
超勤拒否闘争中、執行委員X3、X9、X10、X2らが、N、O、K各営業所において、デイラー整備員の入講ないし作業を阻止した行為は、その行為の内容に暴力、暴力脅迫その他不正行為を伴った事実が認められないところからみて、正当な組合活動の範囲内のものと認められる。
0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
教宣ビラを撤去しようとしたY2課長の行動を阻止した執行委員の行為には、抗議の言葉にかなり激しいものがあったことはうかがわれるが、暴行その他不正な行為がないところからみて、正当な組合活動の範囲を逸脱したものとは認められない。
0417 法令・協約・信義則違反
0421 幹部責任
休暇闘争が違法な争議行為と判断される以上、同闘争を企画決定した戦術委員会に参加した組合三役、執行委員9名および休暇の承認にあたり、妥当性を欠く行動を指導実施した執行委員らが、地公労法第11条第1項に違反したとして、懲戒処分されても止むを得ない。
0421 幹部責任
執行委員であり、戦術委員会のメンバーであったとしても、違法な休暇闘争を企画決定指導した事実が明らかでない以上、執行委員であったという一事をもって、休暇闘争の実行者または共謀者としての責任を認めることはできない。
0204 団交・争議に付随する行為
組合幹部の懲戒処分の理由とされている違法な争議行為のなかには、正当な組合活動と評価されるものが多く含まれているので、違法と判断した休暇闘争に対する責任追及はとも角、本件懲戒処分は取消さなければならない。
0204 団交・争議に付随する行為
0421 幹部責任
超勤拒否闘争中、Y3所長の運転するバスの前面に立ちふさがって運行を阻止した執行委員X10、X11の行為は、同所長が長らく運転業務から離れていたことから、危険防止上思いとどまらせようとしてなしたもので、あながち不当ではないと思われる。
0204 団交・争議に付随する行為
休暇闘争中、Y4所長が代替勤務として別組合員Z1を稼働させようとしたことに対し、これを阻止するため抗議した執行委員X2、X8の行為は、その抗議の内容が単に説得を試みたにすぎないものであることから、正当な組合活動の範囲内のものと認められる。
0204 団交・争議に付随する行為
休暇闘争中、管理職Y5が代替運行をしようとするのを阻止した執行委員X3の行為は、その方法において暴行その他不法な手段を用いた事実がなく、単に説得の範囲を出ていないものであることから、正当な組合活動の範囲を逸脱したものとは認められない。
0204 団交・争議に付随する行為
休暇闘争中、Y6所長が運転するバスの運行を阻止した副委員長の行為は、その際の言動に違法行為と認められるものがないところから、正当な組合活動の範囲内のものと認められる。
0410 目的・手続き
時間外勤務の労働条件に関連して、36協定の締結を拒否することは違法ではないが、本件の如く、労使間の他の紛争の要求を貫徹する手段として、36協定の締結または更新を拒否することは、地公労法第11条に触れるかどうかは別として、一種の同盟罷業と解せざるを得ない。
0411 怠業
労使間の紛争に関し要求を貫徹する手段として、自動車の運行を妨げる趣旨のもとで、安全運行点検闘争を行なった場合は、地公労法第11条に触れるかどうかは別として、一種の怠業行為といわざるを得ない。
0410 目的・手続き
労使間の紛争の要求貫徹の手段として、日を指定して有給休暇、病気休暇の名目で150人近くの組合員が一斉に休暇をとって、市議会に請願行動を行なった本件休暇闘争は、その実態からみて、一種の同盟罷業と判断せざるを得ない。
0410 目的・手続き
地公労法第11条は、業務の公共性、争議行為の縁由、業務停廃の影響と労働基本権との調和を考慮して解釈すべきである。したがって、紛議の原因が理事者側にあり、かつ業務への影響が少なかった本件超勤拒否闘争、安全運行点検闘争が、同法で禁止する争議行為とは認められない。
0415 職場占拠
超勤拒否闘争とあわせて行なわれた休暇闘争は、休暇の請求方法が妥当でなく、かつこれらの実施によって、地域住民の生活に重大な影響を与えたことからみて、地公労法第11条で禁止する争議行為に該当する。
0203 職場闘争と業務妨害
0415 職場占拠
安全運行点検闘争中、Y6所長がバスを運転してきたことに抗議して、同車の鍵を取りはずしこれを暫時保管した執行委員X2、X8の行為には、何ら不当な点が認められず、また、同所長が車を運転するときには返却しており、実害もみられないことから、違法な行為とは認めがたい。
0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
1400 制裁処分
休暇闘争の実施に際し、休暇の承認を迫ってY1課長の机上にあった木製名札をもって、机上を激しく叩き机の板ガラスを破損せしめた中央委員X12の行為は、正当なる組合活動とは認め難く、地公労法第29条の懲戒を受くべきものと判断される。
|
業種・規模 |
地方公務(市町村機関) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集46集433頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1972. 8. 1 153号 68頁 
|