労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪地裁平成29年(行ウ)第5号
ナンセイ不当労働行為救済命令取消請求事件
原告  株式会社X(「会社」) 
被告  大阪府(同代表者兼処分行政庁・大阪府労働委員会) 
被告補助参加人  Z労働組合
関西地区生コン支部(「組合」) 
判決年月日  平成29年10月11日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要   組合が平成27年2月7日、A1の組合加入を通知したところ、会社は、同年3月21日の団体交渉において、同月31日に定年退職となるA1の再雇用条件について、著しく低い条件を提示した。組合は、同月30日、A1の再雇用条件に係る団交再開を申し入れた(「本件団体交渉申入れ」)が、会社は応じなかった。
 本件は、会社が、①60才で定年退職となるA1に対し、著しく不利益な定年再雇用の労働条件を提示し、従前どおりの労働条件での再雇用を求めた組合の要求を拒否し、A1を再雇用しなかったこと、②A1の再雇用にかかる労働条件についての本件団体交渉申入れに応じなかったことが、それぞれ、不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、A1の再雇用、バックペイ、団交応諾並びに文書の手交及び掲示を命じた。
 会社は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点1(会社が、平成27年4月1日以降、A1を定年退職前と同一の労働条件で再雇用しなかったことが労組法7条1号本文前段及び3号の不当労働行為に該当するか)について
(1)就業規則の解釈について
 平成18年8月1日変更後の会社の就業規則は、63歳までは、「それまでの就業状況や健康などを勘案し、雇用条件を見直」すことなく再雇用する旨規定するものであると認めるのが相当である。
(2)不利益取扱いに当たるかについて
 もっとも、会社の就業規則の規定内容に照らし、従業員の健康状態等を勘案し、担当業務を見直すこと自体が否定されるものではない。
 会社のA1に対する再雇用契約の提案は、A1の健康状態等を勘案した担当業務の見直しとしても合理性を欠くものであると認められる。したがって、定年退職前と同一の労働条件で再雇用しなかったことは、労組法7条1号本文前段の不利益取扱いに当たると認めるのが相当である。
(3)組合員であるが故か否かについて
 会社は、①A1が組合員となる前は、A1の雇用継続に極めて協力的であったと推認されるところ、A1が組合員となったことが通知された後、会社はA1に対し、従前の労働条件よりも著しく低い条件の再雇用契約を提案していること、②A1の再雇用契約が議題となった席でA1及び組合に対する敵意をあらわにしていることを併せ鑑みると、不利益取扱いは、A1が組合員であることを理由とするものであると認めるのが相当である。
 以上によれば、会社が、平成27年4月1日以降、A1を定年退職前と同一の労働条件で再雇用しなかったことは、労組法7条1号本文前段に該当する不当労働行為であると認められる。
(4)労組法7条3号について
 会社は、A1が組合員であるが故に不利益取扱いをしたものであるところ、このような取扱いを受けるとすれば、労働者らの組合活動意思が萎縮し、組合活動一般に対して制約的効果が及ぶものであり、会社の組合員らに対する態度をも併せ鑑みれば、組合員を減少させ、もって組合の弱体化を意図したものであると認められる。
 以上によれば、会社が平成27年4月1日以降、A1を定年退職前と同一の労働条件で再雇用しなかったことは、労組法7条3号に該当する不当労働行為であると認められる。

2 争点2(本件団体交渉申入れの拒絶に正当な理由があるか)について
 ①上記のとおり、会社は、A1に対し合理性を欠く内容の労働条件に関する提案を行ったこと、②A1が、会社に対して、意見を聞きに行ったという医者の名前を教えて欲しい旨再三尋ねてもこれに答えず、また、最後まで上記提案内容の根拠についても具体的に説明しないまま、3月21日団体交渉が終了したことが認められ、これらの点からすると、同団体交渉において、会社が誠実な交渉を行ったり、合意達成の可能性を模索したとは認め難いこと、③その後、組合は、平成27年3月30日、A1の賃金労働条件を議題とする本件団体交渉申入れを行ったにもかかわらず、会社は、A1については、同月31日付けで退職とする、今後A1に関する団体交渉は一切しない旨回答して、これを拒否したこと、以上の点からすると、本件団体交渉申入れの拒絶に正当な理由があるとまでは認めることはできない。

3 以上の次第で、本件救済命令は適法であり、会社の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成27年(不)第24号 全部救済 平成28年12月12日
大阪高裁平成29年(行コ)第227号 棄却 平成30年4月12日
最高裁平成30年(行ヒ)第292号 上告不受理 平成30年9月27日
 
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