概要情報
事件名 |
小湊鉄道 |
事件番号 |
千葉地裁平成15年(行ウ)第35号
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原告 |
全日本建設交運一般労働組合千葉県本部千葉合同支部 |
被告 |
千葉県地方労働委員会 |
被告補助参加人 |
小湊鉄道株式会社 |
判決年月日 |
平成16年 8月27日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が組合に加入する意思を表明したX1に対し、遠距離通勤や残業の減少による減収を伴う職場への配置転換を行ったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、千葉地労委は、配置転換の撤回及び原職への復帰を命じ、バックペイ及び文書掲示・交付については棄却した。これを不服として、組合が行政訴訟を提起したが、千葉地裁は、組合の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1.原告の請求を棄却する。 2.訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
5008 その他
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
労働委員会は、救済命令を発するに当たり、広い裁量権を有するものであるが、救済命令制度の本来の趣旨、目的に由来する限界を逸脱することは許されないところ、救済命令の内容の適法性が争われる場合においても、裁判所は労働委員会の裁量権を尊重するべきであるが、その行使が是認される範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるときには、当該命令を違法と判断することができるとされた例。
4408 バックペイが認められなかった例
6226 救済方法の適法性
本件配置転換の目的がX1の賃金減少にあったとは考え難く、X1が分会加入を正式に表明する前に急遽行われたことからすると、本件配置転換は、むしろ本件命令において認定しているとおり、X1の分会加入を妨害し、分会に所属する組合員の増加を阻止することにあったというべきであり、また、残業は必ず一定してあるものではないから、本件配置転換がなかったとしても、従前と同様の残業による賃金収入があったとはいえないこと等、地労委が、個人的被害の救済及び組合活動一般に対する侵害の救済を考慮した上で、本件配置転換を撤回し、X1の原職復帰を命じることによって、会社によって侵害された集団的労使秩序の迅速な解決を図り、今後の集団的労使関係を正常化することが可能になると判断し、バックペイを命じなかったとしても、裁量権の範囲を逸脱するものではないとされた例。
6226 救済方法の適法性
謝罪文の掲示・交付には、労働委員会において会社の行為が不当労働行為と認定されたことを関係者に周知徹底させることによって、労働関係のゆがみを是正し、同種行為の再発を抑制する効果があることは否定できないが、本件救済申立て後は、救済申立て以前のように会社役員による分会に加入したら会社を辞めてもらう旨の発言はないこと、会社と組合が本件救済申立事件の中で和解による解決も検討したことが認められるところ、このような状況の下で、地労委が、会社の配置転換という不当労働行為による救済措置として直接的な本件配置転換の撤回及び原職復帰のみを命じることで、労使関係の修復が円滑になされると判断したとしても、労働委員会の裁量権の範囲を逸脱するものとはいえないとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2005年 4月10日 1042号 48頁 
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