事件名 |
フジックス |
事件番号 |
熊本地裁平成13年(行ウ)第14号
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原告 |
フジックス株式会社 |
被告 |
熊本県地方労働委員会 |
被告参加人 |
全日本建設交運一般労働組合熊本合同支部 |
判決年月日 |
平成16年 3月18日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が(1)分会書記長に対する配車差別、(2)分会アンケート配
布、会社事務室無断立ち入り等を理由とした分会書記次長に対する2度にわたる出勤停止処分が、それぞれ不当労働行為であると
して争われた事件である。熊本地労委は、(1)分会書記長に対する配車差別を止め配車差別前と同程度の配車を行うこと及び配
車差別がなければ得たであろう賃金相当額の支払い、(2)分会書記次長に対する2度の出勤停止処分がなかったものとしての取
扱い及び処分別がなければ受けたであろう賃金相当額の支払い、(3)組合に対する配車差別及び出勤停止等の不利益取扱いを行
うことによる支配介入の禁止、(4)文書掲示を命じたところ、会社はこれを不服として熊本地裁に行政訴訟を提起したが、同地
裁は請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用及び参加によって生じた費用は、いずれも原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
0211 その他の組合活動
2249 その他使用者の態度
3106 その他の行為
X1が、会社の従業員であるX2が賃金の支払を求めた訴訟において、会社の給与制度や労働実態について証言を行った行為や報
告書等を作成した行為は、X2を支援する一環として、分会の決定に基づいて行われたものであり、その証言等の趣旨も会社の労
働実態や給与制度の改善を求めるものであることを併せ考えれば、正当な組合活動に当るというべきであり、会社代表の団体交渉
への不参加等の分会に対する姿勢、X1が分会結成当初から書記長として会社との間で団体交渉を行っていたという分会における
立場、その他、会社代表による運行指示がなされた経緯に徴すれば、会社のX1に対する連続運行指示の停止や現地宿泊指示とい
う措置は、いずれも不当労働行為意思に基づくものと推認することができ、労働組合法7条1号の不当労働行為を構成するもので
あり、また、X1の分会における地位に鑑みれば、これにより組合の運営に対し支配介入を図ったものであるとされた例。
1302 就業上の差別
4601 「抽象的不作為命令」を命じた例
6221 不利益取扱い
地労委が、会社に対し、不利益な取扱いが行われた期間とその過去6ケ月間との差額賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を命
ずるとともに、配車差別を止め、配車差別前と同程度の配車を行うよう命じ、併せてポスト・ノーティス命令や抽象的不作為命令
を発したことは、不当労働行為救済制度の目的が、使用者が不公正な方法で生じさせた労働者に対する不利益を行政処分による広
い裁量的判断によって是正させることにあることに照らせば相当であって、また、その是正措置の当否は私法上の法律関係や労働
基準法における取扱いと直接関連を有するものでないから、X1の労働時間が「トラック運転手の労働時間等の改善基準のポイン
ト」の基準を上回っているものの、同「改善基準のポイント」は、労働大臣(当時)の告示として示されたもので関係当事者に対
しその遵守が求められるものであるが、自動車運転者の拘束時間に関する努力規定と解されるから、その労働時間が所定の労働時
間を超過することの一事をもって、裁量権の範囲を逸脱し又は違法があるとまでは認め難いとされた例。
0211 その他の組合活動
1400 制裁処分
X3が会社の許可を得ることなくアンケート用紙を従業員に配布したことを理由に会社が同人に対し、本件第一処分(始末書の提
出及び出勤停止2日間)を行ったことについては、会社代表の分会に対する姿勢、本件処分がなされた経緯、X3による本件アン
ケート用紙が社内の規律秩序を乱すおそれがなく、問責や制裁の対象とならない正当な組合活動と評価しうること、及び印刷物の
配布を理由に従業員が懲戒処分を受けたことなどに照らせば、本件第一処分は、会社の不当労働行為意思に基づく不利益処分に当
るというべきであり、また、X3の組合における地位に照らせば、これにより組合の組織、運営に対し支配介入を図ったものとい
わざるを得ないとされた例。
0700 職場規律違反
1400 制裁処分
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
X3が無断で本社に立ち入ったこと、通常の運行経路を迂回してA営業所に立ち寄ったこと等を理由に会社がX3に対し本件第二
処分(始末書の提出及び出勤停止7日間)を行ったことについては、本件処分がなされた当時、会社と分会は非常に対立・緊張し
た関係にあったこと、そのような中でX3は分会執行委員として積極的に組合活動を行っていたこと、その一方、会社は運転手の
本社事務室内への無断立入りや車両への私物の持込みを禁止し、その旨周知してはいたが、実際にこれらに違反した場合でも注意
や警告に止めるのが通常であり、懲戒処分までされたことはなかったこと、本件第二処分はX3の組合活動に対して行われた本件
第一処分がなされてから僅か1ケ月余り後になされた ものであることなどを総合すれば、本件第二処分はX3に対する不利益処
分であり、また、X3の分会における地位に照らせば、これにより組合の組織、運営に対し支配介入を図ったものといわざるを得
ないとされた例。
5200 除斥期間
会社は、本件第二処分に関する救済申立ては、同処分の通告時又はその履行時からいずれも1年以上が経過してからなされてお
り、労働組合法27条2項所定の除斥期間が経過し、不適法であると主張するが、本件第二処分は、本件第一処分から僅か1ケ月
後に、軽微な命令違反や就業規則違反に該当しない行為を取り上げてなされたもので、本件第一処分と同じく、分会やX3に対す
る不当労働行為意思に基づくものと推認されるから、同一目的に基づく相互に密接に関連した一連の行為であると見るのが相当で
あって、第一処分と第二処分は、一体として1個の不当労働行為を構成するものとみるべきであるから、これに対し是正を求める
救済の申立ては、第一処分の救済申立ての日に申立てがなされた日に申し立てたられたと見るのが相当であり、本件第二処分に関
する救済申立ては適法であるとされた例。
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業種・規模 |
道路貨物運送業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2005年5月10日 1043号 57頁
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