概要情報
事件名 |
岩井金属工業 |
事件番号 |
東京高裁平成 8年(行コ)第45号
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控訴人 |
岩井金属工業株式会社 |
被控訴人 |
中央労働委員会 |
被控訴人参加人 |
岩井金属労働組合 |
判決年月日 |
平成 8年12月10日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、<1>組合掲示板の撤去に応じない執行委員長X1を解雇したこと、<2>青年部長X2を班長職から降格したこと、<3>管理職らが組合員らに組合脱退署名を求め、組合に組合費等返還請求書を提出させたこと、<4>組合が組合事務所として使用していたプレハブの建物を取り壊し、組合掲示板を撤去し、従業員への組合ビラの配布を妨害したこと、<5>組合の団体交渉開催要求を拒否したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 初審大阪地労委は、<1>について原職復帰を、<2>について降格処分がなかったものとしての取扱い、<4>についてプレハブの建物の提供、組合掲示板の再設置、<5>について団交に速やかに応じることを命じ、また、<1>から<5>までについてポストノーティスを命じた。 初審被申立人はこれを不服として再審査を申し立てたが、中労委は<4>の救済方法の一部分を変更したほかは再審査申立てを棄却した。 会社はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁はこれを棄却し、控訴した東京高裁もこれを棄却した。 |
判決主文 |
・本件控訴を棄却する。 ・控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1107 その他
社長は、組合解散の提案など同人の意向に応じようとしない組合及び組合の責任者である執行委員長を嫌悪し、同委員長を会社から排除し組合に打撃を与えようとして即時解雇したものと判断するのが相当である。
1200 降格・不昇格
班長職は、班内の仕事に責任を持ち班員を指揮できる地位であり、会社が組合青年部長を班長職から事実上外した行為は、職務手当が従前どおり支給されていたとしても、同人に金銭以外の職務上の不利益をもたらす取扱いであり、同時に組合の活動を萎縮させることを企図したものである。
2623 脱退届け作成・提出強要
社長の「組合をとるのか社長をとるのか」発言の意を体した本部長らが一斉に約80名の組合脱退署名を集め、組合に提出したこと及び組合費返還請求は、組織的になされたものであり、会社の行為と判断するのが相当である。これらの会社の行為は、組合の組織運営に介入するものである。
3020 組合活動への制約
実質上組合事務所として使用してきたプレハブ建物の破壊及び組合掲示板の撤去は、いずれも組合を嫌悪する社長の意を体して会社関係者が行ったものと判断され、会社の行為と認めるのが相当である。これらの会社の行為は、組合の活動拠点を奪い、活動を制限することで組合の弱体化を企図したものである。
2121 被解雇者
2241 他の係争事件の存在
社長は、「執行委員長を入れて団交を行うことはできない」と組合の申入れを拒否したが、組合の責任者であり、当該団交の議題に含まれる解雇問題の当事者でもある者の団交参加を拒否し、団交が開催されなかったことは、会社が正当な理由なく団交拒否をしたと認められる。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集31集475頁 |
評釈等情報 |
 
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