概要情報
事件名 |
ネッスル(東京販売事務所・島田工場) |
事件番号 |
東京地裁昭和61年(行ウ)第20号 昭和61年(行ウ)第114号
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原告 |
ネッスル 株式会社(第1・2事件) |
被告 |
中央労働委員会(第1・2事件) |
被告参加人 |
ネッスル日本労働組合(第1・2事件) |
被告参加人 |
ネッスル日本労働組合島田支部(第2事件) |
被告参加人 |
ネッスル日本労働組合東京支部(第1事件) |
判決年月日 |
平成 2年 5月17日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本2件は、会社が、(1)組合から団体交渉の申入れがあったにもかかわらず、会社内には同一名称の別組合しか存在しない理由により団体交渉を拒否したこと、(2)組合及び組合員から中止の申入れがあったにもかかわらず、組合員の給与から組合費をチェック・オフし、これを別組合に交付したことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件で、初審東京地労委及び静岡地労委は、一部救済命令を発したが、これに対し、会社、組合双方から再審査の申立てがなされ、中労委は、チェック・オフした組合員相当額に年5分の割合による金員を付加することなど一部変更したほかは、初審命令を維持したところ、会社はこれを不服としてそれぞれ行政訴訟を提起し、東京地裁は、昭和62年12月3日以降両事件を併合して審理してきたが、中労委の命令を支持し、原告の請求をいずれも棄却した。 |
判決主文 |
原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は、参加によって生じたものを含めて原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
2114 組合の不存在
組合分裂の法理が適用される場合か、別組合とは同一性を持たない組合が新たに成立したかはともかくとして、客観的にみて会社内に二つの労働組合が併存するに至った事実は動かし難い。
2114 組合の不存在
東京支部は、遅くとも支部役員を選出し、支部規約を制定した時点において、客観的にみて組合の下部組織である支部であると共に独立した労働組合として存在するに至ったというべきである。
2114 組合の不存在
客観的にみて団結体としての実態を有するに至った場合、その団結権は保障されるべきで、それまでの所属組合と会社間にユ・シ協定が締結されており、脱退の手続をせず、また、除名されたことがなかったとしても労働組合として成立するといえる。
2114 組合の不存在
組合及び組合支部からされた支部限りの事項に係る団体交渉開催申入れを、会社内には組合及び組合支部なる労働組合は存在しないことを理由として拒否したことは労組法7条2号所定の不当労働行為に該当する。
2901 組合無視
同一企業内に複数の労働組合が併存している場合には、使用者は中立的な態度を保持するべきで、組合が事実上二つの組合になった場合のチェックオフを実施に当たっても、異なるものでない。
2901 組合無視
3104 別組合利用・別組合員宅訪問
事実上2つの組合になった場合のチェックオフ実施に当たって、使用者が組合員からの中止申入れを無視してその組合費を他方の組合に交付することは、一方の組合の弱体化の意図を推認させ、労組法7条3号所定の不当労働行為に該当する。
3701 他組合等との関係
たとえ形式的には労働協約の定めに従った使用者の行為であっても、それが実質的にみて正常な集団的労使関係秩序に違反するものである場合には、不当労働行為に該当すると解して妨げない。
3104 別組合利用・別組合員宅訪問
たとえ、チェックオフ協定は有効に存続していても、組合併存下で中立義務を負っている会社が、一方の支部組合員からの中止申入れを無視して別組合の支部に交付することは、中立保持義務に背き、不当労働行為に該当する。
5005 損害賠償の請求
チェックオフした組合費を他組合の支部に交付した措置が不当労働行為に該当すると認められるのであるから、その救済措置として当該組合費相当額に年5分の割合の金員を付加して命じることは救済措置として相当性を欠くとはいえない。
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業種・規模 |
飲料・たばこ・飼料製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集25集252頁 |
評釈等情報 |
労働判例 563号 36頁 
中央労働時報 816号 58頁 
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