概要情報
事件名 |
日本シェーリング |
事件番号 |
東京地裁昭和58年(行ウ)第133号
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原告 |
総評合化労連化学一般日本シェーリング労働組合(乙事件) |
原告 |
日本シェーリング 株式会社(甲事件) |
被告 |
中央労働委員会(甲・乙事件) |
被告参加人 |
X1 外6名(甲事件) |
被告参加人 |
総評合化労連化学一般日本シェーリング労働組合(甲事件) |
判決年月日 |
平成 2年 3月 8日 |
判決区分 |
救済命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、(1)課の廃止を理由とする配置転換、(2)団体交渉申入れの拒否、(3)賃上げに際しての、いわゆる「80%条項」と「妥結月払い条項」の導入、(4)51年度夏季及び冬季の各一時金における別組合員との差別取扱い、(5)チェック・オフの一方的中止を行ったこと、が不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。 初審大阪地労委の一部救済命令に対し、会社側から再審査の申立てがなされ、中労委は、主文の一部を変更し、その余の再審査の申立てを棄却したところ、会社及び組合は、これを不服としてそれぞれ東京地裁に行政訴訟を提起した。 東京地裁は、(1)課の廃止は経営判断として合理性を有するものであるから、会社が組合を快くおもっていなかった等の事情があるからといって、経営判断と関係なく、専ら組合弱体化の意図をもってなされたものとは認めることができないとして、再審査命令の一部を取り消し、(2)一時金の査定については、再審査命令が組合員と別組合員中の営業所内勤者との平均支給月数に差があることを、不当労働行為と認定しているが、両者の職種が同一でないからこれを比較するのは相当でないなどとして、再審査命令が初審命令を変更した部分を取り消す判決を行い、その余の請求は棄却した。 |
判決主文 |
1 被告が、中労委昭和55年(不再)第39号事件について、昭和58年8月3日付けでした別紙1命令書記載の命令中、次の部分を取り消す。
1 主文第I項の3のうち、初審命令の主文第4項(1) 中に「各人に対する査定部分を全日本シェーリング労働組合の組合員」とあるのを「の査定部分の平均が、全日本シェーリング労働組合の営業所の内勤者である組合員」と改めた部分
2 主文第I項の4によって改められ、第I項の5によって第5項とされた初審命令の主文第6項
3 主文第II項のうち、主文第I項の5によって第6項とされた初審命令第7項の記の記の(5)に対する再審査申立てを棄却した部分
2 甲事件原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用(略) |
判決の要旨 |
6330 審査手続の違法
本件命令書は形式的に当事者の表示の一部欠くものといえるが、このような場合でも当該手続全体を通じて誰が当事者であるか明らかであれば、命令自体が無効又は取消事由のあるものとなることはないと解すべきで、本件命令に違法はない。
6330 審査手続の違法
再審査命令書の主文の記載方法については、初審命令書における主文の記載方法を定めた労委規則を準用する規定があるほかは特段の規定は存しないから、その方法は中労委の裁量に委ねられていると解すべきである。
1800 会社解散・事業閉鎖
企業が組織の変更を行うか否かは、本来的に営業の自由に属し、その変更が経営判断として合理性を有する場合には、専ら組合活動に打撃を与える目的をもってされたものであるなど特段の事情がない限り、不当労働行為となることはない。
1800 会社解散・事業閉鎖
EDP課廃止に当たって、会社は課員が組合員であり積極的に組合活動を行っていたことを相当程度考慮したことは推認できるが、同課の廃止それ自体は合理性を否定できず、これが組合を弱体化させる意図をもってなされたとは認められない。
1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
EDP課廃止に当たって、会社は課員が組合員であることを相当程度考慮したとしても、同課の廃止それ自体の合理性は否定できず、経営判断と関係なく専ら組合員を分散させる意図をもって、同課の廃止に伴う配転を行ったとは認められない。
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
EDP課廃止に当たって、会社は課員が組合員であり積極的に組合活動を行っていたことを相当程度考慮したことは推認できるが、同課の廃止それ自体は合理性を否定できず、これを不当労働行為と認めてした救済命令は違法であり、取り消す。
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
EDP課廃止それ自体の合理性は否定できず、経営判断と関係なく専ら組合員を分散させる意図をもって、同課の廃止に伴う配転を行ったとは認められず、これを不当労働行為と認めてした救済命令は違法であり、取り消す。
2212 交渉の場所・時間
会社は、組合からの団交申入れにそのまま応じず、逆に自ら申し入れた場合で自ら示した条件に応じた場合にしか団交を行っておらず、誠実に団交を行っていないことが明らかであり、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
5001 将来における予防、不特定な内容の請求
会社の申入れ条件に応諾した場合に限って団交を行うという会社の態度は一貫したものであったから、団交にあたり日時、場所等を一方的に指定することなく団交に応じるよう命じる旨の一般的救済命令の必要性はあったものといえる。
1202 考課査定による差別
2901 組合無視
51年の各一時金について、組合員と別組合員に対する平均支給月数に差が生じることについて合理的理由があるといえないことは、会社が組合員であることの故に不利益な取扱いを行った結果であり、不当労働行為である。
6355 その他
会社の考課制度上は、外勤であるか内勤であるか等によって差が生じることとはなっていないから、組合員が内勤の者のみであるからといって、別組合員の内勤者との間に差があることに不当労働行為の認定を留めたのは違法がある。
1202 考課査定による差別
労基法、労組法等によって認められた権利の行使による不就労は、まじめに働いていないと評価し得ないものであり、これら権利の行使を控えさせて生産効率を高めることを目指すような措置は合理性があるとはいえない。
1201 支払い遅延・給付差別
3102 争議対抗手段
一切の不就労時間を逸失時間として稼働率を計算し、前年の稼働率が80パーセント未満の者は賃上げをしないという80パーセント条項に合理性はなく、労使関係の状況に照らすと、同条項は組合活動を制約することをも目的としたものである。
1201 支払い遅延・給付差別
別組合員は溯って賃上げが行われたのと同一の結果となっていること等からすると、妥結月払い条項は、会社が組合の活動の抑圧を目的としたもので、これにより賃上げ溯及分の支給を受けられなかったのは組合員であるが故の不利益といえない。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3102 争議対抗手段
賃上げに際し、会社が80パーセント条項や妥結月払い条項に合意を余儀なくさせたのは、組合の運営・活動に対する支配介入に当たり、その結果、組合員に賃上げ遡及分等を支払わなかったことは不利益取扱いとしての不当労働行為に当たる。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社のチェックオフ中止の理由が変転していること、会社と組合との間には多くの紛争があり、対立していたこと等に照らすと、会社がチェックオフを中止したことは組合に打撃を与えようとしたもので労組法7条3号の不当労働行為に当たる。
4603 その他
初審命令がチェックオフの再開とポストノーティスを命じたのは救済方法として、労働委員会の裁量にあることは明らかで、これを維持した本件命令も適法である。
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業種・規模 |
化学工業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集25集137頁 |
評釈等情報 |
労働関係民事裁判例集 41巻2号 187頁 
ジュリスト 奥山明良 977号 97頁 
季刊労働法 野間賢 156号 146頁 
中央労働時報 811号 44頁 
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