平成18年11月17日
中央労働委員会事務局
  第三部会担当審査総括室
室長 藤森和幸
Tel 03(5403)2172
Fax 03(5403)2250


中労委平成18年(審査)第1号証人等出頭命令審査申立事件
(原処分 神奈川県労委平成16年(不)第15号高橋運輸事件に係る証人等出頭命令申立事件)
の決定書交付について


 中央労働委員会第三部会は、改正労働組合法により設けられた証人等出頭命令審査申立制度に関する判断を、標記事件について行い、平成18年11月17日、審査申立人に決定書を交付したので、お知らせします。決定書の概要等は、次のとおりです。

I 審査申立人  X (川崎市川崎区)
 (原処分労委  神奈川県労働委員会)

II 事案の概要
 A運輸株式会社(以下「会社」という。)は、同社に勤務する運転手で、B労働組合神奈川県南支部A運輸分会(以下「分会」という。)の書記長であるYに対して、同人が作業中に起こした「油漏れ事故」等を理由に、平成16年2月9日付けで、同社の主要な取引先(荷主)である申立外C社の構内への入場を当面の措置として禁止し(以下「本件入場禁止措置」という。)、これを継続していた。これに対して、分会並びにその上部組織であるB労働組合神奈川県本部及び同神奈川県南支部(以下「組合ら」という。)は、本件入場禁止措置等が労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、同年9月7日に神奈川県労働委員会(以下「神奈川県労委」という。)に救済申立てを行った。
 本件は、上記救済申立事件(以下「本案」という。)の審査手続において、同18年8月4日、組合らから、本件入場禁止措置に関し、会社の専務取締役である本件審査申立人Xが組合ら及びYの組合活動を嫌悪している事実を証明するためとして、Xを証人とする証人等出頭命令を神奈川県労委に申し立てたところ、同労委は同年9月15日、組合らの申立ての趣旨どおりXに証人として出頭を命じることを決定し(以下「原命令」という。)、同月26日、Xに通知したため、これを不服として、翌月2日に、同人から審査の申立てがあったものである。

III 決定の概要
 1 主文要旨
 原命令を取り消す。

 2 判断要旨
(1)労働委員会における不当労働行為の審査手続における主張、立証は、先ずは当事者双方が任意の方法により自ら収集した資料等に基づいて行われるのが手続運用上の原則であると考えられるところ、労働組合法第27条の7に基づく証人等出頭命令は、強制力を用いて証人等に出頭を求めその陳述を得ようとするものであるから、真に事実認定のために必要であるのか、他の証拠等によることはできないかなど、なお、その必要性について慎重かつ個別具体的な検討が必要であるといわなければならない。
(2)本件入場禁止措置の原因とされたと見られるYの「油漏れ事故」等の経緯や会社がこの措置を解除できない理由等については、本案第1回、第2回審問期日において、Yの主尋問、反対尋問が行われ、また、第5回審問期日には、「水濡れ事故」の際のC社への謝罪等の対応において常にXと同席していた社長自身が、詳細な陳述書を提出した上で、会社とC社との関係や会社でのXの役割を含めて陳述し、第6回審問期日には、反対尋問が行われているのであるから、原命令がXへの尋問事項としている本件入場禁止措置の経緯やその後の状況については、外形的事実はもとよりその理由等についても十分認定が可能な状況にあるというべきである。また、組合らの証人等出頭命令申立ては、本件入場禁止措置に関し、Xの組合活動嫌悪の事実を立証しようとするものであるところ、組合活動嫌悪の情や不当労働行為意思については、これを直接Xの証言により認定を期待することには限界があり、本件入場禁止措置をとっている理由の真否、合理性等の観点から、既に調べたY及び社長の証言等のほか、陳述書を含む多数の書証を検討すべきであり、それは本件において可能であると考えられる。したがって、本案審査経過からは、Xをあえて証人として出頭を命じてまで尋問しなければ事実の認定ができないとすることは相当でない。
(3)以上により、原命令は、労働組合法第27条の7第1項第1号の要件を欠くといわざるを得ず、本件証人等出頭命令申立ては却下すべきものであり、原命令は取消しを免れない。

【参考】
 1 証人等出頭命令審査申立制度(平成17年1月1日施行・改正労働組合法)の概要
 労働委員会は、当事者の申立てにより又は職権で、審問を行う手続において、事実の認定に必要な限度において、当事者又は証人に出頭を命じて陳述させる方法により証拠調べをすることができる(法27の7(1)1号)。都道府県労委又は中労委のいずれかが発した証人等出頭命令を受けた者がこれについて不服がある場合には、中労委に対して不服申立て(都道府県労委が発した命令については審査の申立て、中労委が発した命令については異議の申立て)をすることができる(法27の10)。
 2 本件審査の概要
 本案不当労働行為救済申立年月日  平成16年9月7日(神奈川県労委平成16年(不)第15号)
 本件証人等出頭命令申立年月日  平成18年8月4日
 本件証人等出頭命令交付年月日  平成18年9月26日
 本件審査申立年月日  平成18年10月2日(中労委平成18年(審査)第1号)

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