平成21年6月19日

中央労働委員会事務局

第三部会担当審査総括室(担当室)

審査官 高橋孝一

tel.03(5403)2279

fax.03(5403)2250

三和交通不当労働行為再審査事件(平成20年(不再)第2号)命令書交付について

中央労働委員会第二部会(部会長 菅野和夫)は、平成21年6月19日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要等は次のとおりです。

〜 組合員である嘱託従業員の雇用を継続しなかったことに合理性があるとした事案 〜

会社が、嘱託従業員の組合員Aに対し、嘱託雇用契約を継続しない旨通知したことは、Aが会社との面談を拒否し、その乗務員としての適性を確認できないことが決定的な理由であり、不当労働行為に当たらない。

I 当事者

再審査申立人

三和交通労働組合 組合員16名

再審査被申立人

有限会社三和交通(埼玉県坂戸市)従業員56名 (平成18年10月10日現在)

II 事案の概要等

1 本件は、会社が、(1)嘱託乗務員の組合員Aに対し嘱託雇用契約を継続しない旨通知したこと、(2)同Bに対しAと同様の通知をしたこと、(3)正規乗務員の組合員Cを懲戒処分に付したこと、(4)同処分に係る文書を長期間掲示したことが、労働組合法第7条第1号に該当するとして救済申立てのあった事件である。

2 初審埼玉県労委は、1の(2)及び(4)について不当労働行為と認め、会社に対し、Bとの嘱託雇用契約があるものとして取り扱うこと及び文書交付を命じ、その余の救済申立てを棄却した。

3 組合は、20年1月8日、初審命令のうち救済申立てが棄却された(1)及び(3)の部分(以下それぞれ「争点の(1)」・「争点の(3)」という。)を不服として、当委員会に再審査を申し立てた。なお、会社は(2)及び(4)の部分について再審査申立てをせず、初審命令を履行した。

III 命令の概要等

1 主文 本件再審査申立てを棄却する。

2 判断の要旨

(1) 争点の(1)について

ア 会社は、面談によりAの適性が確認できなかったため、Aを継続雇用しなかったものである。

即ち、会社の専務が、Aに声を掛けて嘱託雇用の前提となる面談を申入れたことが認められ、その際、Aは、組合が会社に提出した「面談には一切応じない」旨の文書を指して「組合が通知しているとおり。」と答えたにとどまり、その後も会社側に申入れや団交で面談に応じる意思などを伝えなかったことは、当時の組合の方針表明を併せて考えれば、Aは嘱託雇用の前提となる面談の申入れを拒否したと認めるのが相当である。

そして、会社が嘱託雇用契約の手続に導入した面談は、高齢の乗務員の勤務意欲や運転技術等を確認して運行の安全確保を図るという、会社の基本的使命に基づく重要な手続であり、当時の会社の経営状況、面談の上契約書を取交わすなど労務管理の改善を推進していた状況も考慮すると、会社がAに嘱託契約の不継続を通知した決定的理由は、面談を行えずAの乗務員適性を確認できないことであったと認めることができる。

イ これに対し、組合は以下の点を挙げて不当労働行為意思があると主張するが、何れも失当である。

(ア) Aの雇用不継続は労使対立が激化する中でなされた。

会社は、ストライキ前後を通じ団交で会社の方針を具体的に説明していたこと、労使協定の適用に関して組合間差別をしていないこと、同時期に面談対象となったA、Bを含む組合員6名のうち面談に応じた4名と嘱託契約を締結したことなどの事情から、労使関係は決定的に悪化していたとはいえない。

(イ) 解雇権濫用法理が類推適用される。

嘱託雇用契約に関する社内規定によれば、嘱託乗務員としての雇用期間は1年であり、65歳以上での再委嘱には会社の承認が必要であるから、Aに対する嘱託雇用不継続の通知に解雇権濫用の法理を類推適用する前提を欠く。

(ウ) 雇用不継続とされたのは組合員A及びBだけである。

会社は、6名の組合員中面談に応じた4名の組合員とは嘱託契約を締結し、面談に応じなかったA、面談を拒否すると考え声を掛けなかったBのみを不継続としたものである。

(エ) 団交での会社側の発言内容は組合嫌悪の情を表わす。

団交におけるAの雇用に関する会社の専務の発言は、経営難の状態にある会社の方針に協力的ではないAを適切な人材と言い難いことを述べたにすぎない。

(オ) 会社は書面でAの面談意思を確認しなかった。

会社が、Aに対し、面談できなかった乗務員に対する措置と同じ対応をしなかったことは、既に、Aが面談に応じない意向を明確にしたと理解した結果であり、当時の組合方針等から会社がそう理解してもやむを得ない。

(カ) Aの勤務状況、実績はさほど悪くない。

Aの勤務状況・実績は初審で救済されたBと比較しても良好といえず、劣っている。

ウ 以上を踏まえると、Aに対し嘱託雇用契約の不継続を通知したことは不当労働行為意思に基づくものではなく、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。

(2) 争点の(3)について

Cに対する懲戒処分は、欠勤・早退の多いCに対し会社が求めた面接などの一連の措置に対し、同人が適切な釈明もせず応じなかったことによるもので合理性がある。また、Cの就業規則違反の態様、出勤停止3日間の処分は同処分として最も軽いことをも考慮すると、相当性がある。

そして、会社が勤怠状況の悪い乗務員に事情を聴取することは異例ではく、Cは病欠が連続5日を超えた場合提出する診断書を提出せず、会社は始末書等を提出しない場合には就業規則に基づく制裁を行う旨告げていることから、Cに対する懲戒処分はCが組合員であることや組合活動を理由になされたものとはいえず、労働組合法第7条第1号の不当労働行為とはいえない。

参考 本件審査の状況

初審救済申立日 平成18年10月10日(埼玉県労委平成18年(不)第6号)
初審命令交付日 平成19年12月26日
再審査申立日   平成20年 1 月 8 日


トップへ