平成21年2月6日
中央労働委員会事務局 第三部会担当審査総括室 審査官 高橋 孝一 電話03−5403−2265 FAX03−5403−2250 |
大阪兵庫生コン経営者会不当労働行為再審査事件
(中労委平成19年(不再)第40号)命令書交付について
− 団交ルールに関する協定書を締結している経営者であっても
団交応諾義務がないとされた事例 −
1 組合との間で団交ルールに関する協定書を締結していた経営者会は、組合から協定書の合意内容に沿った団交申入れが行われ、会員企業各社の委任がある場合には、同協定書に基づき団交応諾義務を負うと解する余地がある。
2 本件については、会員企業が破産し会員資格を喪失したことから、具体的な委任関係はないと認められるため、組合から協定内容の趣旨に沿った団交申入れがあったとしても、経営者会が組合の団交申入れに応じる義務はない。
中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成21年2月6日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要は、次のとおりです。
I 当事者
1 再審査申立人:
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部
組合員数約1,800名(平成19年4月現在)
2 再審査被申立人:
大阪兵庫生コン経営者会(使用者団体)
会員数約90社(平成19年4月現在)
II 事案の概要
1 破産手続開始決定を受けた砂川生コン社の従業員の中に組合員を擁していた組合は、同社が加盟していた経営者会に対し、組合員の雇用問題等を要求事項とする団交を申し入れた。本件は、同会が話合いを一方的に打ち切るなど不誠実に対応したことが不当労働行為(労組法7条2号)に該当するとして、大阪府労働委員会に救済申立てがあった事件である。
2 大阪府労働委員会は、経営者会には団交応諾義務がないとして救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てたものである。
III 命令の概要
1 主文
本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨
(1) 団交応諾義務
ア 11.3.26協定書について
経営者会が砂川生コン社の破産に伴う組合員の雇用問題等に係る団交応諾義務を負うか否かについて、同協定書は工場の集約化事業の実施や、工場の集約化に伴い余剰人員が出た場合の雇用保障の規定であるところ、経営者会が同社について集約化事業を実施したとは認められないのであるから、組合員の雇用問題等について、同協定書は経営者会の団交応諾義務の根拠とはならない。
イ 団交応諾義務に関する当審における付加主張について
(ア) 組合があげる本件慣行の事例をみると、組合の主張どおり、大阪広域協組加入企業が閉鎖されるなどして、共同販売体制のシェアに変動が生じる場合において、加入企業が閉鎖される企業の従業員の雇用問題を承継し処理するという点で共通した取扱いが行われており、同種取扱い事例が積み重ねられていること自体は否定できない。
(イ) このような中で、経営者会と組合、同協組加入企業に組合員を擁する4労組(組合と併せて5労組)は団交ルールに関する協定書(10.2.18協定書)を締結したが、同協定書では、交渉事項として構造改善事業の問題等が明記され、同事業に伴って雇用問題等の労働問題が生じた場合には、経営者会と5労組あるいは個別の労組が交渉し、妥結することとされている。
このように、同協定書は、組合が指摘する事例にあるとおり、同協組や経営者会加入企業全体に関連ないし影響が及ぶような問題について、同協組や会員を共通にする経営者会全体で取り組み、かつ関係労組と交渉してきたという取扱い、実績に即して締結されたものと推認される。
(ウ) そうすると、会員企業各社との個別労働問題ではなく、会員企業全体に関連ないし影響する雇用・労働条件問題に関して団交の申入れを受けたときには、会員企業各社からの経営者会に対する委任により、10.2.18協定書に基づき、当該事項は経営者会にとって義務的団交事項になるといえ、この場合同会は団交応諾義務を負う。構造改革事業に関する事項に限り義務的団交事項に当たると狭く解することは相当とはいえない。
(エ) これを砂川生コン社の破産及び同社従業員である組合員の雇用問題についてあてはめてみると、同社の破産の結果、組合員である他社のシェアに変動が生じており、したがって、同社の破産及びこれに伴う組合員の雇用問題は、会員企業各社との個別問題とはいえず、会員企業全体に関連ないし影響する雇用・労働条件問題といえるから、同社からの経営者会に対する委任により、団交応諾義務を負うと解する余地があるといえる。
(オ) しかしながら、同社は破産手続開始決定により会員資格自体を喪失し委任も終了するから、以後経営者会は、同社の破産及びこれに伴う組合員の雇用問題に関し、10.2.18協定書に基づき団交応諾義務を負うことはない。
(2) 結論
前記(1)で判断したとおり、経営者会は、組合員の雇用問題等に係る団交申入れについて団交応諾義務を負わないから、経営者会の使用者性について判断するまでもなく、労組法7条2号の不当労働行為は成立しない。
〔参考〕
初審救済申立日 平成18年4月13日(大阪府労委平成18年(不)第17号)
初審命令交付日 平成19年6月22日
再審査申立日 平成19年7月 2日