平成21年2月9日

中央労働委員会事務局

第二部会担当審査総括室

室長榎本  重雄

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京都農業協同組合不当労働行為再審査事件
(中労委平成19年(不再)第23号)命令書交付について

−農協の合併に際し、管理職が労組とは別の組織を結成等したこと、
合併先農協の会長が労組非難の言動等を行ったことは不当労働行為−

1  丹後農協と京都農協との合併に際し、(1)丹後農協管理職らが職員会を結成し加入勧奨を行ったこと、(2)人事異動の内示後の職員説明会において合併先の京都農協会長が労組非難の言動を行ったことは、支配介入の不当労働行為に当たる。

2  丹後農協が、(1)雇用・労働条件等に係る団交で合併決定前は十分な説明をせず、決定後は労組無視の姿勢を示したこと、(2)職員会結成と加入勧奨問題に係る団交で組織的関与を否定し、人事部長の個人的責任と説明する等労組の要求に真正面から対応することなく終始したことは、不誠実な団交態度であり不当労働行為に当たる。

3  合併前に丹後農協と労組間で合意した組合事務所の代替場所の提供を、京都農協が実行しないことは支配介入の不当労働行為に当たる。

中央労働委員会(第二部会長 菅野和夫)は、21年2月9日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者

1  再審査申立人

京都農業協同組合(17年4月1日、京都農協と京都丹後農業協同組合(以下「丹後農協」)が合併)

従業員数 約1,050名(初審結審時)

2  再審査被申立人

京都農業協同組合労働組合(以下「労組」)

組合員数 複数名

京都府農業協同組合連合会(以下「労連」、「労組」と「労連」を併せ、以下「労組ら」)

組合員数約160名(再審査結審時)

II 事案の概要

1  本件は、丹後農協が、(1)京都農協との合併に伴う雇用・労働条件等に係る団体交渉(以下「団交」)で、労組を無視する姿勢を示したこと、(2)職員会結成と加入勧奨問題に係る団交で、人事部長個人の責任等と説明するのみで、真正面から対応しなかったこと、(2)人事異動内示時、その後の職員説明会時及び合併前後に行われた京都農協会長や丹後農協管理職らの組合員に対する組合非難、脱退勧奨等の発言をしたこと、(3)代替場所を提供せずに組合事務所を退去させたこと等が不当労働行為であるとして、16年12月24日に京都府労働委員会(以下「京都府労委」)に救済申立てがあった事件である。

2  京都府労委は、19年4月18日、(1)合併関連事項等に係る団交に誠実に応じること、(2)組合事務所を貸与すること、(3)((1)及び(2)に関して)文書を交付することを命じ、その余の救済申立てを棄却した。京都農協は、これを不服として、同月23日に当委員会に再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1  命令主文

本件再審査申立てを棄却する。(初審命令を維持)

2  判断の要旨

(1)団交について

ア 合併関連事項に関する団交について

初審命令で不誠実とされた17年2月1日以降の団交について判断する前提事情として、丹後農協の同日前の対応をみると、労組らの求める事項について不十分な説明しかしておらず、また、本件合併が承認された以降の団交も、この姿勢を継承しつつ、職員説明会での説明を宗とし、労組を無視する姿勢を示しており、このような丹後農協の団交における対応は不誠実なものであり、団交拒否に当たる。

イ 職員会結成と同会への加入勧奨問題に関する団交ついて

丹後農協は、団交において、職員会結成と同会への加入勧奨問題について、人事部長の個人的責任である等と説明するのみで、労組らの要求に対し真正面から対応することなく終始しており、このような丹後農協の団交の対応は不誠実なものであり、団交拒否に当たる。

(2)京都農協会長、丹後農協管理職らの組合員に対する言動等について

ア 職員会の結成と同会への加入勧奨について

丹後農協の管理職らが業務時間内に職員に対して職員会への加入勧奨を行っていたこと等からすれば、これら職員会結成に向けた行為は単に人事部長の個人的行為とは解し難く、また、京都農協の会長が職員説明会で、京都農協の職員会と労働条件について話し合いを行っている等と発言していたことから、職員会の結成は、丹後農協が労組とは別に労働条件を話し合うべき組織の結成を目指して、同会への加入勧奨を行ったものといえるから、労組の運営に対する支配介入に当たる。

イ 京都農協会長や丹後農協管理職の言動等について

京都農協会長の、人事異動の内示後の職員説明会時における「訳の分からない労働組合さんが、結局話もせずに今日まできてしまった。」等や書記長に対する「組合はどうする。辞めないのか。」等の発言、人事異動内示時に共済部長が組合役員3名の内示を後回しにした行為等は、労組からの脱退を慫慂し、組合員に動揺を与える行為であり、労組の運営に対する支配介入に当たる。

(3)組合事務所の貸与について

丹後農協と労組間での団交において、代替施設の提供を条件に現組合事務所を退去する旨合意し、労組に同事務所を退去させながら、京都農協が代替施設を貸与しない行為は、労組の運営に対する支配介入に当たる。

(4)労組の申立人適格及び代表者資格、組合員大会等について

ア 臨時大会前の丹後農協労組とその後の労組との同一性について

京都農協は、合併後に行われた丹後農協労組の臨時大会は招集手続等が適式に行われておらず、その決議は無効であるなどと主張するが、同大会前の丹後農協労組とその後の労組は、人的、活動内容、組合備品等に係る財産の管理等においても、従前の丹後農協労組との同一性・継続性が認められ、また、同大会の招集方法等については、同大会前の労組と同大会後の労組との間の組合組織の同一性を妨げるものではないから、同大会前の労組と同大会後の労組は実質的に同一な組織とみるのが相当である。

イ  組合員大会及び丹後農協労組の解散決議の有効性について

京都農協は、丹後農協労組の組合員大会は残存する組合員21名のうち19名が出席して適法・適式に開催されたもので、解散決議も有効なものである等と主張するが、同大会は当時丹後農協労組を脱退していたBが世話人となって招集される等、同大会の開催手続に著しい瑕疵があり、また、同大会での決議方法も組合規約に適合しないものであるから、同大会は労組の大会として成立したものとはいえず、そこでの丹後農協労組の解散決議も有効なものとはいえない。したがって、これらが労組の申立人適格又は代表者資格に影響を与えるものとはいえない。

【参考】

本件審査の概要

初審救済申立日 平成16年12月24日(京都府労委平成16年(不)第7号)

初審命令交付日 平成19年 4月18日

再審査申立日   平成19年 4月23日


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