平成21年1月30日
中央労働委員会事務局 第一部会担当審査総括室 室長西野 幸雄 Tel 03−5403−2157 Fax 03−5403−2250 |
モリタエコノス外1社(社内メール等)不当労働行為再審査事件
(中労委平成19年(不再)第55号)命令書交付について
モリタエコノスが、分会員を含む管理職全員に対し、組合及び分会が大阪府等に対して行った要請について「極めて残念なもの」等とする社内メールを送信した行為等は、いずれも同社の言論の自由の範疇に属するものというべきであることなどから、組合に対する支配介 入の意図に基づくものとはいえない。
中央労働委員会第一部会(部会長諏訪康雄)は、平成21年1月29日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要は、次のとおりです。
I 当事者
1 再審査申立人:
大阪地域合同労働組合(「組合」)
組合員 約450名(平成19年3月19日現在)
大阪地域合同労働組合モリタ管理職ユニオン分会(「分会」)
組合員 数十名(平成19年3月19日現在)
2 再審査被申立人:
株式会社モリタ(「モリタ」)
従業員 約580名(平成19年3月19日現在)
株式会社モリタエコノス(「エコノス」)
従業員 約280名(平成19年3月19日現在)
II 事案の概要
1 本件は、(1)平成17年5月11日、エコノスが、管理職全員に対し、組合及び分会(「組合等」)が大阪府等に対して行った要請について「極めて残念なもの」等と記載した社長名義の示達文(「5.11示達文」)を添付した電子メール(「5.11社内メール」)を送信したこと、(2)同年9月21日、モリタが、組合の上部団体に対し、組合の特別執行委員であり団交担当者でもあるAが同上部団体の機関紙上に掲載した記事(「本件記事」)について抗議したこと、(3)同年12月8日、エコノスが、管理職全員に対し、上記(2)の抗議に対する組合の上部団体の謝罪文や抗議に至る経緯等を記載した社長名義の文書(「12.8社長書簡」)等を添付した社長名の電子メール(「12.8社内メール」)を送信したこと、(4)団体交渉(「団交」)及び本件当事者間の別件に係る中労委の和解の席において、モリタ及びエコノス(「両社」)が、本件記事に関しAに対して謝罪を求めたことが不当労働行為であるとして、組合等が大阪府労委に救済を申し立てた事件である。
2 大阪府労委は、上記(1)〜(4)はいずれも不当労働行為に当たらないとして、組合の申立てを棄却したところ、組合等はこれを不服として再審査を申し立てたものである。
III 命令の概要(初審の棄却命令を維持)
1 主文
本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨(次の判断を付加するほかは、初審判断を引用する。)
(1) 社内メールの送信について
ア 5.11社内メールの送信について
5.11示達文に「極めて残念なもの」等と記載されていることは、ことさら分会員を威嚇したり、分会員に対し何らかの報復や不利益を示唆しているということはできない。また、5.11示達文の内容は、組合等が大阪府等に対して行った要請について、エコノスの見解や対処方針を表明したものであって、エコノスの言論の自由の範疇に属するものというべきである。さらに、当該要請をエコノスが重大なものと受け止めたと推認できることから、5.11示達文を管理職全員に送信したことは不相当とはいえない。よって、当時の労使事情を勘案しても、5.11社内メールの送信は、支配介入の意図に基づくものとはいえない。
イ 12.8社内メールの送信について
12.8社長書簡の内容は、本件記事をめぐる一連の事実経緯を説明したものであるところ、本件記事は両社の会社分割を非難するものでエコノスの信用にも関連する内容であるから、エコノスの言論の自由の範疇に属するものというべきであり、また、Aを非難したり、Aと分会員とを離間させようとする意図を含んだものとはいえない。よって、12.8社長書簡等を管理職全員に送信したことを不相当なものということはできず、当時の労使関係を勘案しても、12.8社内メールの送信は、支配介入の意図に基づくものとはいえない。
(2) 本件記事に対する抗議及びAに対する謝罪要求等について
ア モリタの使用者性について
本件は、モリタが本件記事について組合の上部団体に抗議したこと等が支配介入であるとして争われているところ、本件記事は、両社の会社分割等や、本件当事者間の別件救済命令(「別件命令」)を履行しない両社の対応を批判する内容が記載されたものである。そして、モリタは、両社の会社分割まで分会員らの使用者の地位にあり、組合等と別件命令に関する団交を行っていたのであるから、本件記事に対する抗議等に係る申立てについては、モリタは労組法第7条の使用者に当たる。
イ 本件記事に対する抗議について
モリタがその従業員の労働組合を利用して組合の上部団体に働きかけることによりAの団交担当外しを画策したという組合等の主張は採用できない。また、本件記事の不穏当な表現に対し、モリタが組合の上部団体に是正と適切な措置を求めたことには相応の理由があるといえる。抗議文の内容も、使用者としての意見を表明するものであって、組合等やAを誹謗中傷したりAの団交担当外しを求める記載は認められない。よって、本件記事に対する抗議は、組合等の交渉力を低下させることを企図した支配介入とはいえない。
ウ Aに対する謝罪要求について
組合の上部団体から本件記事に対する謝罪文が出されることを踏まえ、両社が団交や中労委の和解の席上で本件記事の執筆者であるAにも謝罪を求めたことは、それ自体不合理なものとはいえない。また、謝罪要求がモリタだけではなくエコノスも含めた両社と組合等との和解を目指す話合いの過程で行われたことからすれば、エコノスが本件記事に関しAの謝罪を求めたことは格別相当性を欠くとはいえない。よって、Aに対する謝罪要求は、組合等の交渉力を低下させることを企図した支配介入とはいえない。
〔参考〕
1 本件審査の概要
初審救済申立日 平成18年 4月24日(大阪府労委平成18年(不)第25号)
初審命令交付日 平成19年 9月27日
再審査申立日 平成19年10月10日(労)
2 初審命令主文
本件申立てをいずれも棄却する。