平成19年12月25日

中央労働委員会事務局

  第三部会担当審査総括室

          室長  神田義宝

Tel  03(5403)2172

Fax 03(5403)2250


大阪府・大阪府教育委員会(平成17年度団交)不当労働行為再審査事件
(平成18年(不再)第51号)命令書交付について

中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成19年12月25日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要は、次のとおりです。

〜いわゆる混合組合も、労組法第7条各号の別を問わず救済を求めることができるとされた事例〜

命 令 の ポ イ ン ト

1 大阪教育合同労働組合のようないわゆる「混合組合」(地方公務員法の適用される職員と労働 組合法の適用される労働者の双方を構成員とする労働組合をいう。)も、労働組合法の適用され る構成員に関わる問題については、同法第7条各号の別を問わず申立人適格を有する。

2 非常勤特別嘱託員等の平成18年度報酬引上げ要求を議題とする団体交渉における大阪府の 対応が、不当労働行為に当たると判断することはできない。

I  当事者

再審査申立人    大阪教育合同労働組合(大阪市中央区)

(組合員数333名(平成19年3月12日現在))

再審査被申立人  大阪府(大阪市中央区)

同          大阪府教育委員会(同上)

II  事案の概要

1  本件は、大阪府(以下「府」)及び大阪府教育委員会(以下「府教委」)が、大阪教育合同労働組合(以下「組合」)から申入れのあった非常勤特別嘱託員(以下「特嘱」)及び非常勤若年特別嘱託員(以下「若特」)の平成18年度報酬引上げを議題とする団体交渉(以下「本件団交」)において、(1)別組合との団体交渉においては、本件団交議題について決定権限を有する知事等を交渉担当者として出席させながら、本件団交においては、決定権限を有しない府教委課長補佐を交渉担当者として出席させたこと、(2)若特の報酬引上げ要求に関して、当初提案(月額1000円引下げ)に固執するなどして、一方的に団体交渉を打ち切ったことが労働組合法(以下「労組法」)第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、組合が救済(誠実対応及び文書掲示)を申し立てた事件である。

2  初審大阪府労働委員会は、組合が、地方公務員法(以下「地公法」)の適用される職員と労組法の適用される労働者(特嘱、若特等)の双方を構成員とする「混合組合」であり、両者のうち、地公法の適用される職員が主体となっているので、労組法の適用される構成員個人への不利益取扱い(労組法第7条第1号及び第4号)に関する申立人適格は認められるが、団体交渉拒否及び支配介入(労組法第7条第2号及び第3号)に関する申立人適格は認められないとして、組合の本件救済申立てを却下した。これを不服として、組合は、再審査を申し立てた。

III  命令の概要

1  主文要旨

(1) 初審決定中、府を相手方とする救済申立てを却下した部分の取消し、同部分に係る救済申立ての棄却

(2) その余の本件再審査申立ての棄却

2 判断要旨

(1) 組合の申立人適格等

上記「命令のポイント」の1のように解しないと、労組法の適用される組合の構成員は、労働組合加入の自由が保障されているにもかかわらず、自らの労働条件を労組法上の使用者に対する団体交渉により解決する手段を持ち得ないこととなり、不当労働行為救済制度の本来の趣旨である労働者の団結権の保護及び労働組合選択の自由の観点からして著しく妥当性を欠くこととなるから、初審決定における組合の申立人適格を否定した判断は相当でない。

府教委は、府の執行機関の一部にすぎず、不当労働行為救済命令の名あて人たる法律上独立した権利義務の帰属主体となり得ないものと判断するのが相当であるから、府教委の被申立人適格を認めることはできない。

(2) 府の不当労働行為の成否(上記「命令のポイント」の2)

ア  府教委課長補佐は、地公法の規定及び府人事委員会規則(「管理職員等の範囲を定める規則」)に基づき、教育長から交渉担当者としての指名を受けて、地公法の適用される職員の勤務条件に関する交渉に出席するととともに、それに付随する本件団交に出席したものであり、関係部局との事前の協議及び調整の範囲内において回答及び交渉内容を決定する権限を有していた。また、府側は、組合側と同じ日に、少なくとも二つの別組合との団体交渉においても、本件団交議題のうち少なくとも若特の平成18年度報酬月額につき、組合側への引下げ提案と同内容の提案を行っており、他に、府側が、本件団交と同一議題に関して行われた別組合との団体交渉において、交渉の内容や進行において別組合と比べ差別したと認めるに足りる証拠はない。したがって、府が、組合に対する弱体化意図をもって、ことさらに、別組合との団体交渉における交渉担当者と比べ職位の低い府教委課長補佐を本件団交に出席させたとはいえない。

イ  団体交渉の経過によれば、府側は、若特の平成18年度報酬改定に関する提案について、その基礎となる考え方や提案理由を説明した上、これに対する組合側の主張に対しては反論を行い、組合側からの1000円未満四捨五入方式を1円単位で算定するように改めるとの提案に対しても、いったん持ち帰り、関係部局との協議・調整も含めて検討を行った上で、その後の交渉において、それが受け入れられない理由につき改めて説明を行っているのであって、かかる交渉態度は不誠実なものとは認められない。また、府側が自らの当初の回答を堅持する一方で、組合側も、納得できる回答がなければ交渉打切りとみなすなどと述べたほか、団体交渉で解決できなければ本件救済を申し立てるとして団体交渉を終了させているのであるから、それ以上団体交渉によって問題の解決を図ろうとする意思はなかったものといわざるを得ない。そうすると、両者には既に歩み寄りの余地はなかったものと認められ、なお交渉の余地があるにもかかわらず府が一方的に団体交渉を打ち切ったものとはいえない。

  以上により、本件団交における府の対応が、不当労働行為に当たると判断することはできない。

【参考】

1  本件審査概要

 初審救済申立日    平成18年4月14日

 初審決定交付日    平成18年8月9日

 再審査申立日      平成18年8月9日

2  初審決定要旨

 本件救済申立ての却下


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