平成19年12月17日
中央労働委員会事務局第一部会担当審査総括室 審査官 横 尾 雅 良 TEL 03−5403−2169 FAX 03−5403−2250 |
鉄道建設・運輸施設整備支援機構外9者不当労働行為再審査事件
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−再審査被申立人Aらは再審査申立人らとの関係で労組法上の使用者とは認められない−
労組法第7条の「使用者」は、労働契約関係又はそれに準じた関係を基盤として成立する団体的労使関係における一方当事者をいい、そのような関係にない者はこれを含まないと解すべきであり、Aらは使用者に当たらない。
中央労働委員会(第一部会長 渡辺章)は、平成19年12月17日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要等は、次のとおりです。
I 当 事 者
再審査申立人 全国金属機械労働組合港合同(大阪市港区)
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(大阪市西区)
おんな労働組合(関西)(大阪市北区)
国鉄千葉動力車労働組合(千葉市中央区)
個人3名
再審査被申立人 個人1名(A)
国(東京都千代田区)
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)
(横浜市中区)
北海道旅客鉄道株式会社(札幌市中央区)
東日本旅客鉄道株式会社(東京都渋谷区)
東海旅客鉄道株式会社(名古屋市中村区)
西日本旅客鉄道株式会社(大阪市北区)
四国旅客鉄道株式会社(香川県高松市)
九州旅客鉄道株式会社(福岡市博多区)
日本貨物鉄道株式会社(東京都千代田区)
(以上7社をJR各社)
II 事案の概要
本件は、(1)平成17年11月20日に放送されたNHKのテレビ番組における再審査被申立人Aの発言(11.20発言)は、国鉄労働組合を崩壊させるために日本国有鉄道の分割・民営化を計画し、実行したというものであり、また、(2)11.20発言が憲法及び労働組合法を無視したものであるにもかかわらず、この発言について国、鉄道・運輸機構並びにJR各社が黙認し、放置しており、これは再審査被申立人らの威圧による団結権破壊であって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、大阪府労働委員会に、救済申立てを行った事件である。
III 命令の概要
1 主文
本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨
(1) A、国及び鉄道・運輸機構の使用者性について
労働組合法は、労働者が使用者との交渉において、対等な立場に立つことを促進することを目的とするものであり(1条)、不当労働行為制度も同法がその一環として規定したものであるから、同法第7条の「使用者」は、労働契約関係又はそれに準じた関係を基盤として成立する団体的労使関係における一方当事者をいい、そのような関係にない者はこれを含まないと解すべきである。
本件についてみると、A、国及び鉄道・運輸機構は、再審査申立人らとの関係において、労働契約関係又はそれに準じた関係にないことは明らかである。
したがって、A、国及び鉄道・運輸機構は、再審査申立人らとの関係で労働組合法第7条の「使用者」に当たらないことは明白であり、A、国及び鉄道・運輸機構に対する本件救済申立ては、労働委員会規則第33条第1項第5号にいう「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき。」に該当する。
(2) JR各社の被申立人適格
再審査申立人らは、JR各社のためになされ、その利益を代表してなされたAの介入行為について、JR各社が不当労働行為責任を負うことは不合理ではなく、JR各社は11.20発言を暗黙裏に了承していることからすれば、実質的にはJR各社の行為とみるのが適切である旨主張する。
しかしながら、11.20発言は、自民党と社会党の対立を軸とした55年体制の崩壊に至る経緯を回顧して述べたものに過ぎず、JR各社とは無関係になされた発言であり、しかも、労働組合法第7条が規制の対象にする団体的労使関係上の主体たる地位においてなされた行為でないから、不当労働行為の問題を生じさせるものでもない。
したがって、JR各社に対する本件救済申立ても、労働委員会規則第33条第1項第5号にいう「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき。」に該当する。
(3) 以上のとおり、A、国、鉄道・運輸機構及びJR各社に対する本件救済申立てをいずれも却下した初審の判断は相当であり、本件再審査申立ては理由がない。
【参 考】
1 本件審査の概要
初審救済申立日 平成18年11月16日(大阪府労委平成18年(不)第57号)
初審命令交付日 平成19年 7月 5日
再審査申立日 平成19年 7月17日(労)
2 初審命令主文
本件申立ては、いずれも却下する。