平成19年11月12日

中央労働委員会事務局

第三部会担当審査総括室

室 長  神 田 義 宝

Tel 03−5403−2172

Fax 03−5403−2250


ワタナベ学園(全職域労働組合)不当労働行為再審査事件(平成17年(不再)第82号)
命令書交付について

中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成19年11月12日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

〜 雇止めが、組合結成を理由とする不当労働行為ではない等とされた事例 〜

命 令 の ポ イ ン ト

1 学園が雇止めを決定したのは、組合結成の意向が示される前であり、実際に雇止めとなった19名のうち17名が非組合員であったこと等の事実関係からすると、本件雇止めは、組合結成を理由とする不利益取扱いであるとは認められない。

2 本件雇止め問題に関する2回の団体交渉では、労使の主張が全面的に対立し、これ以上団体交渉を継続しても歩み寄りを期待できる余地はなかったのであるから、学園の対応が誠実でなかったとはいえない。

3 その後の5回にわたる団体交渉申入れ時、学園が交渉義務を負っていたのは、組合員の雇止めに関する事項のみであり、雇止めについては、先の団体交渉において歩み寄りを期待できる余地はなくなっていたのであるから、学園がこれら団体交渉申入れに応じなかったことには、正当な理由があると認められる。

I 当事者

再審査申立人    学校法人ワタナベ学園全職域労働組合(群馬県高崎市)

組合員  7名(平成14年10月18日現在)

再審査被申立人  学校法人ワタナベ学園(埼玉県吉川市)

教職員 150名(平成14年10月18日現在)

II 事案の概要

1 本件は、学校法人ワタナベ学園(以下「学園」)が、[1]学校法人ワタナベ学園全職域労働組合(以下「組合」)の執行委員長Nを平成14年3月31日の雇用契約期間の満了をもって雇止めにしたこと、[2]14年3月29日及び同年6月3日に行われた同人の雇止め問題を議題とする団体交渉を誠実に行わなかったこと、[3]組合から15年3月7日、同年9月26日、16年2月20日、同年3月8日及び同年4月1日に申し入れられた賃金、人事等を議題とする団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、組合が救済を申し立てた事件である。

2 初審埼玉県労働委員会は、組合の申立てを棄却する命令を発したところ、組合はこれを不服として、再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要

1 主文
本件再審査申立てを棄却する。

2 判断の要旨

(1)  雇止めに関する不当労働行為の成否

当時の就業規則には、既に満60歳を超えた者が新規採用される場合の規定は見当たらないが、Nと学園は雇用期間を1年とする雇用契約を締結し、3回更新されたと認められ、これが期間の定めのない雇用契約ないしは期間の定めのないものと異ならない状態となっていたとは認め難く、Nは1年間を単位とする雇用契約の下で勤務していたと判断される。

次に、Nが学園の依頼する弁護士に組合結成について意見を求める等をしたとしても、その内容が学園に伝えられたと認めるに足りる証拠はない。

さらに、[1]学園が60歳以上の教職員で正規職員による代替可能な者等について雇止めを行う決定をしたのは、Nが組合結成の意向を述べる前であること、[2]学園は組合が結成される約1か月前に本件雇止めを通知していること、[3]学園が雇止めした19名のうち、17名は組合の組合員ではなかったこと、[4]本件雇止め通知前に、Nが組合結成に向けた勧誘活動等の具体的な組合結成活動を行っていたとはうかがえないこと等の事実関係からすると、本件雇止めは、Nが労働組合を結成しようとしたことを理由とする不利益取扱いであったものとは認められず、不当労働行為に該当するとはいえない。

また、Nら法務担当セクションの業務従事者に対しては、学園から給与を下げて再雇用   する等の提案がなされていたことがうかがえるが、Nの理事会への出席停止、N一人の訟   務室の廃止、弁護士3名に訟務を依頼していたこと等からすると、従前の労働条件で雇用   契約を更新しなければならない特殊事情があるとはいえない。

(2)  団体交渉に関する不当労働行為の成否

ア 14年3月29日及び同年6月3日に行われた団体交渉について

第1回(14年3月29日)及び第2回(同年6月3日)の団体交渉において、学園は組合からの本件雇止めの撤回要求に対し、期間満了による雇用契約の終了であると明確に回答しており、「個別契約者の給与内規」についても、学園は組合結成前に2回にわたりNに対して説明しているのであるから、団体交渉において同内規の資料等が示されず、組合の望む回答が得られなかったからといって、一概に学園の対応が不誠実であったということはできない。

また、労使の主張が全面的に対立し、双方の譲歩により交渉が進展する見込みはなく、また、Nから結論が出たのでもう団体交渉をやらない旨の発言がなされていたことからすると、これ以上団体交渉を継続しても歩み寄りを期待できる余地がなくなっていたとみるべきであるから、学園の対応が誠実でなかったとはいえない。

イ 15年3月7日以降の団体交渉の申入れへの対応について

15年3月7日以降、5回の団体交渉申入れにおける申入れ事項には、いずれも雇止めに関する要求が含まれており、また、16年3月8日付けの申入書には組合員として4名の氏名が記載されていたが、(現職員の)2名については、各申入れ時に組合員であったことを認めるに足りる証拠はない。

そうすると、15年3月7日以降の5回にわたる団体交渉申入れ時、学園が交渉義務を負っていたのは、Nを含む組合員の雇止めに関する事項のみに限られ、雇止めについては、第1回及び第2回の団体交渉において労使の主張が全面的に対立し、交渉の余地はなくなっていたのであって、第2回団体交渉以降、組合が学園の説明を踏まえた具体的、建設的提案をするなど、団体交渉を有意義なものとするような事情変更が生じたとも認めらず、雇止めに関する事項を含む15年3月7日以降の5回の団体交渉申入れに対し、学園が応じなかったことには正当な理由があると認められる。

(3)  結論

したがって、初審判断は相当であり、本件再審査申立てには理由がないため、主文のとおり命令する。

【参考】

1 本件審査の概要

初審救済申立日 平成14年10月18日(埼玉県労委平成14年(不)第6号)

初審命令交付日 平成17年11月18日

再審査申立日  平成17年12月5日(労)

2 初審命令主文要旨

本件申立てをいずれも棄却する。


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