平成18年11月28日
中央労働委員会事務局審査課
   特定独立行政法人等審査官
黒田 正彦
Tel 03−5403−2166
Fax 03−5403−2250


日本郵政公社生野郵便局不当労働行為事件
(平成17年(不)第1号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 菅野和夫)は、平成18年11月28日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 申立人 天六ユニオン(大阪市北区)
 組合員110名(平成17年3月18日現在)

 被申立人 日本郵政公社(東京都千代田区)
 職員約26万2千名(平成17年3月31日現在)

II 事案の概要
 被申立人日本郵政公社(以下「公社」)の生野郵便局当局(以下「当局」)は、平成16年10月29日、9年半にわたり雇用更新を重ねていた日々雇用の非常勤職員Aに対して、予定雇用期間が満了する同年11月30日限りで雇用を終了すること(以下「雇止め」)を書面で予告したところ、Aは、同月15日、申立人天六ユニオン(以下「組合」)に加入した。
 組合は、平成16年11月16日付け団交申入書により、生野郵便局長に対して組合員Aの雇止めに関する団交を申し入れたのに対し、当局は、組合と同月30日に話合いを行ったが、組合は、同話合いにおける当局の対応が不誠実であったとして、再度、同年12月1日付け団交申入書により、Aの雇止め及びAが雇止めまでに取得しきれなかった年次有給休暇(以下「年休」)の取扱い(以下「年休問題」)に関する団交を申し入れた。これに対し、当局は、前回の話合いで十分であるとして一切応じなかった。
 本件は、当局が組合の団交申入れに応じなかった上記の行為が、労働組合法第7条第2号の団交拒否に該当する不当労働行為であるとして、平成17年3月18日、当委員会に救済申立てのあった事件である。

III 命令の概要
 1 主文
(1)組合が交渉委員を指名してその名簿を提示したときは、交渉の手続に関し必要な事項を公社・組合の間で取り決めた上、公社は、Aの年休の取扱いを交渉事項とする団交に応じなければならない。
(2)その余の申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1)日々雇用の一般職現業国家公務員の雇止めは団交事項か
 公社職員は、その身分においては一般職国家公務員であり、国家公務員たる地位に関する国家公務員法の規定(任免等)は適用されることから、公社では、非常勤職員任用規程を定め、人事院規則と同様に任期を1日とする非常勤職員が予定雇用期間を満了した場合には、当然退職となると規定しており、日々雇用の非常勤職員の予定雇用期間満了による退職は、当然退職であることを明らかにしている。したがって、Aは生野郵便局を予定雇用期間満了により当然退職したものと判断されるのであって、そのことは団交事項ではない。また、予定雇用期間が満了し当然退職した者の個別の採用については、特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(以下「特労法」)第8条の団交事項のいずれにも当たらない。
(2)年休問題は団交事項か
 公社職員の場合、特労法第8条により、賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項等については、団交及び労働協約の締結が認められている。年休問題は、休暇に関する事項であるから団交事項であることは明らかであり、退職予告通知時においてAの未取得の年休が57日あったのも、労使が団交を通じて柔軟な取り決めをしているからであると推認される。
 公社は、残っている年休の扱いについて、どの職員の場合においても退職により無効となるものであり、Aに対して特別な取扱いはできないと主張するが、退職時におけるAの年休残日数は41日に上っているのであるから、公社は、組合に対し、そうした根拠を示すとともに、特別な取扱いができないことについてしかるべき説明をしなければならないものと認められる。
(3)交渉委員でないことは団交拒否の正当理由となるか
 本件申立てに至るまで、組合及び公社ともに交渉委員の指名等の特労法の手続を踏んでいない。この点、公社は、団交申入書の名宛人生野郵便局長は、組合と団交を行う公社の代表としての交渉委員に指名されておらず、当事者たり得ないと主張するが、それならば、特労法上の団交の特殊性を指摘し、公社としても、正式の手続が踏まれれば交渉委員を指名し、団交に応ずるというべきであって、生野郵便局長が交渉委員でないことは団交に応じないことの正当理由とはならない。
(4)話合いを行ったことは団交拒否の正当理由となるか
 話合い(平成16年11月30日)について
 当日の状況をみると、年休問題については、組合が残日数の消滅扱いは法律違反であり、労基署に訴えることも可能だと意見を述べたのに対し当局はどうぞ構いませんと述べ、物別れの状態で終わっており、当局の回答や説明も紋切り型の対応の域をでないまま、開始から1時間余りで警察官を動員して話合いを中止したものと認められる。
 なお、組合の態度については、冒頭録音をめぐる意見の対立から机をたたいた事実はあるが、その後の話合い(雇止め、年休問題)の過程では、言葉が乱暴・粗野なだけで、それ以上特に威迫にわたるほどの行為があったとは認められない。
 この話合いは、組合の団交申入れにより行われたもので、組合も合意の上このようなかたちで行われたものであるが、年休問題については十分な説明が行われたとは認められない。
 団交申入れ(平成16年12月1日)について
 組合の団交申入れに対し、当局は前回の話合いで十分であるとして応じなかったが、先に判断したとおり、雇止めは団交事項とはいえないが、年休問題は団交事項であり、年休問題に関しては、まだ説明を尽くすなど団交の余地はあるといえるので、Aが予定雇用期間満了により退職になったとはいえ、当局はこれに応ずべきであったと判断される。しかるに、当局はこれを拒否したのであるから、この行為は労働組合法第7条第2号の団交拒否に該当する不当労働行為であると認められる。
(5)救済方法
 本件の場合、組合は、公社に対し、特労法第10条及び第11条で定められている交渉委員の指名及び名簿の提示などの手続を踏んでいないが、以上のとおり、公社には、年休問題に関して団交に応ずる義務があるので、救済命令としては、組合は団交申入れに際し、上記特労法の手続を踏むことが必要であることを明示し、主文のとおり命ずることとする。

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