平成18年11月14日
中央労働委員会事務局
  第三部会担当審査総括室
室長 藤森和幸
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250


サクション瓦斯機関製作所不当労働行為再審査事件
(平成16年(不再)第62号)命令書交付について


 中央労働委員会第一部会(部会長 山口浩一郎)は、平成18年11月14日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 産業別労働組合ジェイ・エイ・エム東京(東京都渋谷区)
    組合員43,162名(平成17年6月10日現在)
 再審査申立人 産業別労働組合ジェイエイエム
  サクション瓦斯機関製作所労働組合(東京都江東区)
    組合員10名(平成17年6月10日現在)
 再審査被申立人 株式会社サクション瓦斯機関製作所(東京都江東区)
    従業員約27名(平成14年12月10日現在)

II 事案の概要
 株式会社サクション瓦斯機関製作所(以下「会社」)が、就業時間内組合活動及び組合業務による会社施設使用に関する労働協約(以下「57年協約」)の解約を通知したところ、産業別労働組合ジェイエイエムサクション瓦斯機関製作所労働組合(以下「組合」)は、この解約は不当労働行為意思に基づくもので無効であるとして、その存続を主張してその後も57年協約に従って時間内組合業務に参加し、また、組合業務による会社施設(食堂)使用の申入れを行った。これに対し、会社は、時間内組合業務時間分を組合員の月例賃金から控除したほか、組合業務による会社施設(食堂)の昼休みの使用について不許可とした。
 本件は、会社が行った上記組合員の月例賃金からの控除が不利益取扱い及び組合に対する支配介入に、また、上記組合業務よる会社施設(食堂)使用の不許可が支配介入に当たり、不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 平成16年10月26日、初審東京都労委は、申立てを棄却したところ、平成16年11月5日、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
 当委員会も、初審命令と同じく、会社が行った57年協約の解約については相当であると判断し、組合員の月例賃金からの控除及び組合業務による会社施設(食堂)使用の不許可については不当労働行為に該当しないと判断する。その理由については、次のとおりである。
(1) 57年協約の解約の相当性について
 57年協約に係る具体的な問題が生じていた最中にこれを解約することの労使関係上の配慮に問題がないとはいえないものの、会社としても57年協約の内容の一部を削除するなど譲歩となる条件を提示する交渉を行っていたにもかかわらず、労使間の和解が不調となったことから57年協約の解約に連なっていったものといえ、57年協約の解約は必ずしも不当なものとまではいえない。また、本件解約通知をもって、組合が主張するような専ら組合の財政基盤の破壊を意図したものと解するには無理があるというべきであり、団体交渉と同様に評価することができる都労委及び中労委における和解作業によっても57年協約改定の合意には達しなかったのであるから、組合が主張するような会社による57年協約の一方的な解約とまではいえない。そして、会社は、代表取締役の記名押印のある文書により、57年協約を解約すると通知したのであるから、労働組合法第15条第3項及び第4項に定める労働協約解約手続を履践しているとみることができる。以上を併せ考慮すれば、会社が57年協約は失効したと考えることには相当の理由があるというべく、これを労使関係上、不公正なものということはできない。
(2) 月例賃金からの控除について
 上記のとおり、会社が57年協約は適法に解約され、失効しているものと考えたことには相当の理由があるのであるから、時間内組合業務従事時間について会社が行った組合員の月例賃金からの欠勤控除は、専ら組合に打撃を与える目的で行われたとまでの事情は窺えない以上、不当労働行為に該当するとまではいえない。
(3) 組合業務による会社施設(食堂)使用の不許可について
 組合は、昼休みの食堂使用が許可されなくなったことによる組合活動の支障について具体的に疎明していない上、会社が、就業時間後においては、従来どおり使用を許可している事情が認められることからすれば、あながち不適切な取扱いとはいえない。加えて、組合は、広さが不十分であるとしても、会社から組合事務所を貸与されており、食堂に代わる場所で集会等を行う工夫をする余地があったものと考えられる。したがって、会社が57年協約は失効していると考えたことに理由があることも併せ考えれば、昼休みの食堂使用の不許可が57年協約解約前と異なることをもって直ちに合理的理由が無く、組合嫌悪の不当労働行為意思に基づく支配介入になるとまではいえない。


【参考】 本件審査の経過
 初審救済申立日  平成14年12月10日 (東京都労委平成14年(不)第120号)
 初審命令交付日  平成16年10月26日
 再審査申立て  平成16年11月 5日 (中労委平成16年(不再)第62号)

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