平成18年10月25日
中央労働委員会事務局
 第一部会担当審査総括室
  室長    西野 幸雄
  Tel 03−5403−2157
  Fax 03−5403−2250


奥道後温泉観光バス不当労働行為再審査事件
(中労委平成17年(不再)第62号)命令書交付について


 中央労働委員会第一部会(部会長 山口浩一郎)は、平成18年10月24日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
 1 再審査申立人奥道後温泉観光バス株式会社(愛媛県松山市)
 従業員  9名(平成17年6月1日現在)
 2 再審査被申立人奥道後温泉観光バス労働組合(愛媛県松山市)
 組合員 10名(平成17年6月1日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、奥道後温泉観光バス株式会社(会社)が、(1)会社事務所2階の事務室に2台の監視カメラ及び音声モニターのできる防犯装置を設置して、組合の組合員を威圧・監視したこと、(2)貸切バスの配車において、組合員を新会社(タクシー事業と貸切バス事業の一部を経営する新会社として平成16年3月に開業したもの)に転籍した非組合員と比較して差別的に取り扱ったことが不当労働行為であるとして、組合が愛媛県労委に救済を申し立てた事件である。
 2 愛媛県労委は、会社に対し、(1)組合員の事務室での勤務時等における監視カメラ等の作動の禁止、(2)貸切バス運転者に対する配車における組合員と非組合員との公平な取扱い、(3)平成16年4月以降分の組合員の賃金月額の再計算及び差額の支払い、(4)文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社はこれを不服として、上記初審命令の救済部分の取消し及び組合の救済申立ての棄却を求めて再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1) 監視カメラ等の設置について
 会社による監視カメラ等の設置の必要性、運用状況等について検討すると、(1)新会社開業(平成16年3月)の前後を通じて、会社が監視カメラ等を設置するほどの防犯措置を講ずる必要性があったとまでは認められないことに加え、(2)新会社開業以降も労使対立が継続する中で、会社が組合員の動向を把握し得るような監視カメラ等の運用状況にあったこと、(3)監視カメラ等の撤去要求に対する会社の対応は、組合に対して威圧感を与えるような内容であったことが認められる。
 以上のことを併せ考えると、監視カメラ等の設置・運用の主な目的は、希望退職者募集後も会社に残ったバス運転者(継続勤務者)8名が組合に再加入し、整理解雇されたMら2名を中心として活発な組合活動を行うようになったこと及び新会社が開業して会社には9名の組合員のみが在籍することとなったことを契機として、組合員に対し、組合員の動向を常時監視されているのではないかという意識を抱かせ、組合員の組合活動に対する萎縮的効果を与えることにあったというべきである。このような会社の行為は組合の運営に支配介入するものであると判断される。
(2) 貸切バスの配車差別について
 会社は、従来から時間外等労働割増賃金等の手当が付くバス乗務を継続勤務者よりも有期労働契約の嘱託社員(新嘱託)に優先的に配車してきた(本件配車方針)。平成14年7月の継続勤務者8名の組合再加入及び同15年11月のMら2名の職場復帰以降、労使対立が更に強まる中で、本件配車方針の運用状況をみると、時間外等労働割増賃金等の手当が付くバス乗務を組合員である継続勤務者よりも非組合員である新嘱託に優先的に配車する傾向を強め、同16年3月の新会社開業後においては更にその格差が拡大している。
 このように労使対立が更に強まる中で、会社が本件配車方針を採り続けたことは、継続勤務者が再加入した組合の影響力の増大を懸念して、組合員ないし組合に対して報復的な対応をとることによって組合活動を抑制することを企図したものといえる。
 以上からすれば、会社は、貸切バスの配車において、本件配車方針を採り続けることによって、継続勤務者等を組合員であるが故をもって不利益に取り扱うとともに、このことを通じて組合の弱体化を企図してその運営に支配介入するものであると判断される。

〔参考〕
 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成16年7月16日(愛媛県労委平成16年(不)第3号)
  初審命令交付日 平成17年8月25日
  再審査申立日 平成17年9月 8日(使)
 初審命令主文要旨
  上記IIの2のとおり

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