平成18年9月28日
中央労働委員会事務局
審査総括官 藤森和幸
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250


エッソ石油(境港油槽所閉鎖)不当労働行為再審査事件
(平成13年(不再)第20号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 荒井史男)は、平成18年9月28日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合西日本合同分会連合会(以下「西日本合同分会連」)(北九州市)組合員数6名(18.7.18現在)

 再審査被申立人エクソンモービル有限会社(以下「会社」)(東京都港区)従業員数約800名(18.7.18現在)
会社広島支店(以下「広島支店」)

II 事案の概要
 本件は、会社及び広島支店が、(1)平成3年12月31日付けで境港油槽所を閉鎖した(以下「本件油槽所閉鎖」)こと、(2)本件油槽所閉鎖に伴い組合員3名を同4年1月20日付けで糸崎油槽所に転勤させ(以下「本件転勤」)、職種変更を行い交替制の特殊勤務に従事させた(以下「本件職種変更」)こと、(3)上記に関して、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(以下「本部」)の下部組織である中国分会連合会(以下「中国分会連」)及び西日本合同分会連との団交を拒否し、本部との団交においても協議を拒否したことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 同13年4月13日、初審鳥取県労働委員会は、広島支店を被申立人とする申立ては却下し、会社を被申立人とする申立てを棄却したところ、西日本合同分会連はこれを不服として、同月27日に再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1) 広島支店を被申立人とする申立てについて
 労働組合法に規定する使用者は、法律上独立した権利義務の帰属主体であることを要すると解すべきところ、広島支店は会社の地方事業所の一つで、会社の構成部分に過ぎず、独立した権利義務の帰属主体とは認められないから、同支店に対する申立てを却下した初審判断は相当である。
(2) 職場確保に係る救済利益について
 組合員Aは、平成10年8月、同Bは、同年12月をもって、定年により会社を退職しており、会社との間に雇用関係は既に存在しないから、境港油槽所が閉鎖された場合の代替職場として挙げられていた東西オイル株式会社(以下「東西オイル」)境港油槽所に同人らの職場確保を求める救済利益は失われたというべきであり、この点に関する初審判断は相当である。
(3) 本件油槽所閉鎖並びに本件転勤及び本件職種変更について
(1) 本件油槽所閉鎖及び東西オイル境港油槽所の建設計画への不参加について
 本件油槽所閉鎖は、境港市からの撤収要請や、閉鎖後の製品出荷については、山陽地区に有する既存の油槽所から出荷する方が東西オイル境港油槽所を利用し通油料を支払って出荷するよりも経費が割安になるとの経営上の判断で行われている。
 次に、昭和55年11月当時、本社管理部長のCが境港油槽所に来所して「境港油槽所の従業員は東西オイル境港油槽所で働いてもらう」旨の発言(以下「C発言」)や、この発言について団交で労使双方が確認した労使確認(以下「労使確認」)があったが、これは、東西オイルが建設を予定していた同社境港油槽所を会社が利用する旨の会社との協定が前提であり、その後東西オイルがその建設計画を断念したことから、その前提を欠いていた。さらに、その後再び東西オイル境港油槽所の建設計画が持ち上がったものの、その内容は上記内容とは異なったものであったことから、会社の経営判断として、この建設計画に参加しなかったものであり、会社が本件油槽所閉鎖に当たって、上記C発言と労使確認を一方的に反古にしたものとはいえない。
 したがって、会社が境港油槽所を閉鎖し、その後東西オイル境港油槽所の建設計画に参加せず、組合員3名の職場を同油槽所に確保しなかったことは、支配介入に当たるとはいえない。
(2) 組合員3名の本件転勤及び本件職種変更について
 会社は、組合員3名が境港油槽所でドライバーとして従事していたタンクローリー職場の廃止を配送業務の合理化を目的とする経営上の判断で決定しており、このことに業務上の必要性があること、また、就業規則には、会社は都合により従業員に転勤や配置転換を命じることができる旨の規定があり、組合員3名と会社との間に職種及び勤務地を限定する労働契約の合意があったわけではないこと、更に本件転勤後の組合員3名の基本的な労働条件に変更はなく、組合員らが受ける不利益も転勤に通常伴う程度であったことからすれば、本件転勤及び本件職種変更は、支配介入に当たるとはいえない。
(4) 団交について
 会社と本部との団交には、中国分会連の副委員長を兼任していた本部の中央書記長が出席しており、中国分会連の意向が反映されていたと認められる上、会社は境港油槽所閉鎖を本部に通告して以来、20回以上にわたって本部との団交を行い、しかも、本部の質問に対して、開示できるデータは開示し、判断資料を示すなどの対応をしてきていた。そして、本部と会社は、暫定的にせよ本件転勤及び本件職種変更について合意に至っていることからすれば、会社は、本部との団交で誠実に協議していたとみることができる。そして、本部が上記労使確認の実行や組合員3名の職場を東西オイル境港油槽所に確保するよう求める限りは、もはや団交の余地はなく、会社がこれに関する団交を断ったことには正当な理由がある。
 したがって、会社が中国分会連との団交要求に応じず、また、西日本合同分会連との団交要求に応じなかったことには、正当な理由があり、団交拒否に当たるとはいえない。

【参考】 本件審査の経過
  初審救済申立日 平成 4年12月28日(鳥取県労委4年(不)第1号)
  初審命令交付日 平成13年 4月13日
  再審査申立て 平成13年 4月27日

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