平成18年8月8日
中央労働委員会事務局第三部会
  審査官  武田 徹
電話 03-5403-2265(ダイヤルイン)
Fax 03-5403-2250


田中陸運不当労働行為再審査事件
(平成17年(不再)第32号)命令書交付について


 中央労働委員会(第三部会長 荒井史男)は、平成18年8月8日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 田中陸運有限会社(広島県三原市)道路貨物運送業を営む。従業員数12名(15.6.23現在)
 再審査被申立人全日本建設交運一般労働組合広島県本部福山地域支部田中陸運分会−組合員2名(15.6.23現在)

II 事案の概要
 本件は、会社が、組合員に対し不公平な配車を行ったことが不当労働行為であるとして、初審広島県労委に救済申立てがなされた事件である。
 広島県労委は、会社に対し、(1)公平な配車の実施、(2)配車差別を行わなければ得たであろう所定時間外手当相当額との差額の支払い、(3)履行報告を命じたところ、これを不服として会社が再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 (1)初審命令主文第2項を次のとおり変更し、同第3項を削除する。
 再審査申立人は、再審査被申立人組合執行委員長Uに対し、111,000円、同書記長Kに対し、113,000円を支払わなければならない。
 (2)その余の本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1)労使関係について
 組合による県労委へのあっせん申請を契機として組合活動が活発となり、別件団交事件の和解が平成14年に成立した後も、その実施状況をめぐって、組合が回答を求めたり、団体交渉が行われている状況等からすれば、組合と会社は労働条件をめぐり厳しい対立状態にあった。
 これに団交等における会社の態度を併せ考えると、会社は組合の存在を嫌悪しているとみるのが相当である。
(2)本件売上格差の有無
 組合提出の資料は売上額の全体を示すものではないが、組合員と非組合員との間の配車に係る売上格差の有無を判断するには十分な資料であり、同資料によれば組合員2名と非組合員4名との間で売上計上日数及び売上額に格差が生じており、組合員と非組合員との間に所定時間外手当の格差が生じていると推認される。
(3)本件売上格差の合理性
 売上計上日数の格差について
 売上計上日数の格差が生じたことは、本件申入れ(組合員が土、日及び祝日に休む事)により休日の配車が制限されたことによるものと解するのが相当であり、不当労働行為意思によるものとは認められない。
 売上単価の格差について
 会社は、金から土あるいは日から月のように、休日を含んで2日にわたる九州方面等への長距離配車が組合員に対し少なくなっているため、売上単価に格差が生じていると主張する。
 このような配車は土及び月に売上が計上されるから、土及び月に計上される売上単価においてのみ非組合員との間で大きな格差が生じることになる。
 しかしながら、組合員2名の売上単価を売上計上日ベースで曜日ごとに非組合員の平均と比較すると、委員長はすべての曜日で非組合員の平均を下回っており、書記長は火を除くすべての曜日で非組合員の平均を下回っている。さらに、書記長の土及び月にあっては、むしろ同人の木及び金より格差が小さくなっている。
 以上から、売上単価の格差について、会社の合理的な説明がなされたとはいえない。
(4)不当労働行為の成否
 本件売上格差が生じたことについて、売上計上日数面からの格差は一応合理的な理由があるといえるが、売上単価については一部に非組合員のほうがかえって低い結果を示している部分が見受けられるものの、全体としてみれば、格差が総じて大きく、その結果、組合員2名の所定時間外手当について、非組合員との間に格差が生じたものと認められ、この格差について合理的な理由があるものとは認め難い。そして、本件売上格差が、労使間の厳しい緊張関係の中で発生したこと及び団体交渉等での会社の態度を併せ考えると、会社が組合の存在を嫌悪して、組合員に対し配車差別を行ったことによるものと認めるほかはない。
 したがって、会社が組合員2名に対し、本件売上単価の面で所定時間外手当において格差が生じるような配車をしたことは、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為であると判断される。
(5)救済方法について
 格差を是正するために、広島県労委が示した計算式を修正した上で、救済すべき金額を確定し、履行を図ることが適当と考える。また、救済する金額は、売上単価において、非組合員の方が低い結果を示している部分が散見されることから、所定時間外手当の格差のすべてが必ずしも配車差別によるものとは認めることができないので、同計算式に基づき算出した額の約7割に相当する額をもって相当とする。

【参考】
  初審救済申立日  平成15年6月23日
  初審命令交付日  同 17年4月20日
  再審査申立日  同17年4月28日

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