平成18年6月27日
中央労働委員会事務局
 第一部会担当審査総括室
  室長    西野  幸雄
  Tel 03−5403−2157
  Fax 03−5403−2250


渡島信用金庫不当労働行為再審査事件
(中労委平成17年(不再)第45号)命令書交付について


 中央労働委員会第一部会(部会長 山口浩一郎)は、平成18年6月26日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
 1 再審査申立人渡島信用金庫(北海道茅部郡森町)
 従業員 128名(平成17年2月3日現在)
 2 再審査被申立人渡島信用金庫労働組合
 組合員   3名(平成17年2月3日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、金庫が、(1)組合員Hが函館支店において勤務する地位を有することの確認等を求めて提起した民事訴訟(別件民事訴訟)において、同組合員が同支店において勤務する地位を有することを認めた札幌高等裁判所の判決が確定したにもかかわらず、組合との事前の協議なく一方的に同組合員を五稜郭支店に異動させたこと、(2)親元から通勤していた久遠支店勤務の女性組合員Tを一方的に親元から通勤できない今金支店に異動させたり、この人事異動に関するあっせんを北海道労委に申請したことについて、今金支店長Mが組合員Tを非難し申請を取り下げるよう圧力をかけたこと、(3)満55歳に達した職員に対して定期昇給を停止するとともに満56歳時から毎年本給を5パーセント減額すること(昇給停止・逓減措置)等を内容とする新就業規則を組合と協議せず一方的に実施したことが不当労働行為であるとして、北海道労委に救済を申し立てた事件である。
 2 北海道労委は、金庫に対し、(1)組合との誠意ある協議なく組合員Hを一方的に五稜郭支店に異動させることによる支配介入の禁止、(2)組合員Tの異動に関するあっせん申請について、同組合員を批判し圧力をかけることによる支配介入の禁止、(3)就業規則の変更に係る誠実団体交渉応諾、(4)組合と誠意ある交渉を行わないまま就業規則を変更することによる支配介入の禁止、(5)文書掲示を命じたところ、金庫はこれを不服として、上記初審命令の救済部分の取消しを求めて再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文要旨
(1) 初審命令主文のうち上記IIの2の(1)の一部変更。
(2) 初審命令主文のうち上記IIの2の(5)を削る。
(3) その余の本件再審査申立てを棄却。

 2 判断の要旨
(1) 組合員Hの五稜郭支店への異動について
 組合としては、組合員Hの異動発令問題は、同組合員に対する北檜山支店への配置転換が不当労働行為であり無効であるとする確定判決の履行に関する問題、すなわち、不当労働行為たる配置転換事案における原職復帰に関する問題として位置づけていたものであると言える。これに対する金庫の対応は、組合員Hの具体的な異動理由について何ら説明することなく、異動は金庫の業務上の必要性に基づくものと応答するのみで、これに応じなければ就業規則上の手続をとるなどと就業規則上の処分をほのめかすことにより、同組合員に五稜郭支店勤務を強要したものと言える。
 以上からすれば、金庫が、組合員Hを函館支店から五稜郭支店に異動させるに当たり、組合の事前協議等を求める緊急申入れに応じず、組合と協議しなかったことは、同組合員の函館支店勤務を求めてきた組合の存在を無視することにより、その弱体化を企図したものと認められるから、組合の運営に対する支配介入であると判断される。
(2) 支店長Mの組合員Tに対する言動について
 支店長Mの組合員Tに対する発言は、全体としてみると、組合があっせん申請をしたことを非難するとともに、今金支店への配置転換を希望しない組合員Tに圧力をかける内容であったと認められる。
 以上からすれば、金庫の利益代表者である支店長Mがあっせん事項である配置転換の当事者である組合員Tと個別に面談し、上記の発言を行ったことは、組合員に対し個別に圧力をかけることにより組合の弱体化を企図したものと認められるから、組合の運営に対する支配介入であると判断される。
 さらに、上記の言動は、組合員Tの配置転換に係る組合のあっせん申請を契機としてなされたものであり、あっせん申請に際して発言した組合員Tに精神的不利益である圧力をかけるものであったと認められるから、同組合員に対する報復的不利益取扱いであると判断される。
(3) 新就業規則の実施について
 金庫は、新就業規則を実施するに当たり、組合が問題とする昇給停止・逓減措置の必要性については抽象的な回答に終始し、組合が要求したのにもかかわらず、追加の説明及び資料の提示をしていないのであって、その経営状態等を示す具体的な資料を提示する等組合に対し誠実に協議したとは言えない。
 以上からすれば、昇給停止・逓減措置の実施を含む就業規則等の改訂について、金庫が組合と誠実に団体交渉を行ったとは言えず、また、金庫が組合に対しその内容を十分に説明することなく一方的に新就業規則を実施したことは、組合の意向とその存在を無視するものであり、その運営に支配介入するものであると判断される。
(4) 救済方法について
 初審命令主文第5項の文書掲示は履行されたと認められるので、この部分を維持する必要はなくなったものである。よって、初審命令主文第5項を削るものとする。

〔参考〕
 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成16年3月29日(北海道労委平成16年(不)第8号)
  初審命令交付日 平成17年6月14日
  再審査申立日 平成17年6月27日(使)
 初審命令主文要旨
  上記IIの2のとおり

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